** 長島便り **

2004/01/31
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もう数年前の話になってしまうのですが、どうにもこうにも腑に落ちないこんな出来事がありました。

当時私は派遣会社を通して日系最大手の航空会社で接客の仕事をしていました。
私を含め10数人の日本人の女性が、その会社からH1Bという、いわゆる労働ビザをサポートしてもらっていました。

ある日、突然派遣会社の社長から電話があり、労働ビザで働いている私たち10人が派遣会社のオフィスに呼ばれ、雇い主ではなく、派遣会社の社長の口から「Bad news, today was your last day for ○○○(雇われていた企業名). They want your ID back.」「悪い知らせだが、君達が○○○で働くのは今日が最後だったんだ。IDを返して欲しいそうだ。」とアッサリ言われたのです。

私達は一瞬「クビになった」という状況が把握できずしばし呆然。実は数週間前からこうなるのではないかという予感は多少あったのですが、まさかこんな風に突然何のadvanced noticeも無しにクビ切られるとは思ってもいなかったので、とにかく言葉が出なかった。

私は状況が飲み込めるとまず、明日からの生活、健康保険、学資ローンの返済、ビザのこと、帰国となれば車や家具の始末や、契約したばかりのアパートのこと等が一気に脳みそを駆け巡りました。

せっかく手に入れた自分のライフスタイル、少ないお給料から少しづつ積み立てた貯金、学生時代使っていた家具を手放して、少しづつ少しづつやっと買い揃えたお気に入りの家具、やっと余裕が出来て始めた習い事、これらはみんなどうするの??

私達が解雇の理由を訊ねても、派遣会社の社長は「僕の口からは何も言えない」と言うだけでした。

原因は私達とは全く関係の無いことなのです。


都合の良いように会社に利用されたとは思いたくないですし、こちらも恩着せがましいことを言うのは嫌です。
でも会社側からせめて一言、これまで様々なイレギュラーの中仕事をしてきた私たちに対して多少なりの「感謝と労いの気持ち」と、せめて「解雇に至った理由」だけでも教えて欲しくて、いいえ、私たちには知る権利があると思いましたので翌日皆で職場へ向かいました。

昨日まで制服を着て働いていた場所に、その日は私服で皆が勢揃いしました。
労働ビザ以外でそこに勤務している人達は、労働ビザで勤務していた私達の解雇を、私達と同じ昨日に知らされたらしく大変困惑している様子でした。
この旅客部門は事実上、労働ビザで働いていた私達が通常業務を殆どこなしていたようなもので、そのマンパワーが一気に全部無くなってしまい、その日からしばらくは大変な混乱があったようです。

この日、つまり解雇された翌日は、所長も総務課長もなぜか姿をくらましてしまい、ついに話を聞くことが出来ませんでした。ここがとっても誠意の無いところなのです。まぁ、大きな企業は皆そうなのかもしれませんが、昨日まで一緒に仕事をしてきた部下を他人伝いで解雇通達し、翌日は押しかけて来られそうだから身を隠すって、あまりにも誠意が無さ過ぎ。

そして翌日からは土日で総務のオフィスの人々は出勤しない日なので、私達はその3日後の月曜日に再び"元"職場を訪れました。

所長室に通された私達10人は、本当に世間知らずの、お人好しな20代の女の子達でした。誰もこの場で言うべきことを知りませんでした。皆突然の解雇に当惑し、これからの生活のことを考えると頭の中が大パニック状態でした。とにかく何でこんな事になってしまったのか真相が知りたかった。

日本人のお客に対し、日本人ならではのサービスを提供できるようにするため、日本人スタッフを増やそうと私達を直接面接して雇った所長は大変すまなそうに深々と頭を下げておられました。

そして所長の「皆さんには本当に感謝しています」という言葉を聞いた時、私は初めて「あ、本当に解雇されたんだ」という気持ちになれました。それからは涙をこらえるのに必死でした。

総務課長においては、私達を面接したわけでもなく数ヶ月前に日本からこの支部に赴任してきたばかりなためか、私達に対する情は欠片もないといった様子で、何故か敵対心丸出しの態度。何もケンカをしにきたわけではないのに。しかもこんな娘っ子ばかり相手に。


一日も早く次の仕事を見つけて(でも労働ビザをサポートしてくれる職場を見付けるのは至難の業なのです)不法滞在にならないようにしなければいけません。

そこで一人が「今度の就職活動にあたって、推薦状が必要になった時はこちらにお願いできるのでしょうか?」と質問しました。
すると、総務課長は眉をしかめて「あなた達は△△△(派遣会社の名前)の社員さん達ですから、うち○○○とはもう一切関係ありません。今後のことも一切当社とは関わり無しということになりますので。」と言い切りました。

この会社の制服を着させて、社章のついたIDをつけさせて、お客さんの苦情の対応は全て私達に頭を下げさせてきたくせに、都合の悪いときは他人扱いです。

私も非常に混乱状態だったため、この時何を話されたのかよく記憶に残っていないのですが、所長も総務課長もとにかく「解雇の理由は言えない」の一点張りでした。



こんな20代の女の子達が、急に職とビザを失って、数週間のうちに新しい仕事とその労働ビザを取らねば不法滞在になる状況にあるのです。出るべき所に出ていくような気持ちやお金の余裕はある訳無いのです。

が、総務課長は私の最後の言葉が終わる前に、たたみかけるように言いました「Kangさん(私の名前)がそのつもりなら、当社としてもKangさんに対してそれなりの処置をとることになりますが。」と。

私は背中が寒くなるという経験を、この時初めてしました。
なぜ、これだけ会社に尽くした全く非の無い私を不当に解雇し、私がせめて解雇理由だけでも知りたいと言っているだけなのに、私を名指しで、しかも大企業が脅しをかけるようなことを言うなんて、今なら「汚いぞ~!!」と叫んでやりたい~!

次回へ続きます。






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最終更新日  2004/02/23 03:33:01 PM


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