山への情熱 音楽への愛

山への情熱 音楽への愛

2012年09月15日
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カテゴリ: クライミング

9月12日4時起床5時出発。昨日の雨もあがり、天気は上々、心軽く涸沢方面を歩く。岩小屋あとまえで渡渉ポイントへ横断。昨日の雨で増水を懸念したが思ったほどではなかった。しかし岩と岩を結んで飛び移れる状態ではないので、ネオプレーンの沢靴下に履き替えて渡った。

対岸からは急なガレ道をT4尾根の取り付きまで登る。ここのガレ場は岩が固いので助かった。1ルンゼをつめる。次第に傾斜がきつくなりガラガラのルンゼから右に踏み後をたどり、上部はほとんど岩を攀じ登ってT4尾根の取り付きに到着した。

屏風岩は前穂高岳北尾根の末端に位置し、横尾から垂直にそびえ立ち、幅1000m標高差600m。穂高連峰で最大のスケールを誇る。中でも最も急峻な東壁の初登ルートである雲稜ルートはフリーが多く、硬い岩と高度感満点の穂高を代表する好ルート、T4尾根まで4ピッチ、T4尾根から上部6ピッチ、そのうち人工登攀が1ピッチ含まれている。

9.15  byoubu  gaido to.jpg いざ、雲稜へ  それにしてもこの体格差!

T4尾根は4級の岩場。ここから登攀開始する。ブッシュ帯含め4P。1P目、2P目の凹角、3P目は草つき帯で100m程登るとT4直下の露岩チムニー下へ出、ここを超えてT4尾根に着いた。ちょっとしたマルチである。

テラスでエネルギーを補充し、いよいよここからが勝負・本番である。第1ピッチは50mのディエドール。直上する大凹角。一昨年楽しんだシャモニーは赤い針峰群・フリゾン・ロッシュメモリアルルートの縮小版に思えた。開脚し足をつっぱりステミングで昇った。上部に行く程傾斜が増し、最後はかぶり気味となりちいさな私は圧迫された。長かった。

9.15 unnryou dai1P.jpg50mの大凹角

2P目40mは右上の小ピナクルを越えてテラスから少し右へトラバース。右に一歩出て細かいフェースを登る。さらに上のピナクルへ右上し階段状草付きを左上し扇岩テラスへ。

3P目、ここが雲稜ルート核心部。フリーで5.11+のルート。垂直の壁にリングボルトが連打され、色あせたスリングがいくつも目に入る。昨夜夢に出てきた人工登攀部分である。4年ほど前に瑞牆山の大ヤスリ岩であぶみを落として以来、人工登攀はトラウマになっている。しかしそんなこと言ってる場合ではない。ここが超えられなければ敗退である。そんなことには絶対なりたくない。

9.15 abumi 3Pitti.jpg 第3ピッチ、アブミの掛け替え

しかし案ずるより生むが易し。頭はアブミを忘れていたが、体が覚えていてくれた。落ち着いて一つ一つ手順を確認し、じっくり尺取り虫のように上に昇った。岩には下向きで抜けそうなボルトやリング、風雪に晒されて色あせ、切れそうなスリングばかりだった。その下向きのボルトにあぶみを掛け自分の体重を乗せる時はさすがに不安だったが、行くしかない!!足も手もどこもかしこも遠く、アブミの最上段まで足を入れなければ次のリングに手が届かない。真剣勝負だった。そうして遂に第3Pを乗り越えた。やったぁ!!

しかし喜ぶのはまだ早い。次の4Pも出だしがお助けスリングをかけてもめちゃくちゃ遠く、もう何でもありの心境になって持てる物は何でも持った。だか剥がれ落ちそうなフレークが左上にあり、昨日のフレーク落下で懲りていた私は手を掛けるホールドに細心の注意を払って昇った。更に「慎重なトラバース」とガイドブックに必ず書かれているハング下のトラバースだが私はここは平気で難なく通過。

9.jpg

目がまわりそうな高度感だった。私は高い所はけっこう平気なのだが、さすがに自分が立っている岩の下が切れ落ちて見えず、遙か下の樹林帯しか見えないというのは宙に浮いてるような気がして、珍しく下を余裕をもって見れなかった。

9.15 byoubuiwa yuriko.jpg9.15 byoubuiwa yuriko2.jpg

5P~6Pは東壁ルンゼに入り草付きのフェースを直上する。最終ピッチのスラブには水がしみ出して濡れていて滑りそうだったが何とか乗り越えて終了点へ到着した。反対側の常念の山並みがのびやかに広がって、至福の一瞬を迎えた。

9.15 jyounenn.jpgのびやかな常念・蝶が岳の稜線

休む暇無くすぐに懸垂下降する。ほぼ50mの懸垂下降を5回繰り返しT4へ降り立った。更に取り付きまで4回都合9回ほど懸垂下降を繰り返した。時間との勝負なので素早い行動を求められるが私はとろくて自己嫌悪になった。取り付きに降り立った時は安堵した。やっと地面に立てた。岩もいいが地面は安定感がいい。

達成感に満たされながら再びガレ場を下り、渡渉し、遂に横尾山荘に到着した。そこでザックを整理し、トレッキング体制になって、上高地まで下山。足親指がじくじくとうずいている。平日午後4時30分過ぎの上高地は閑散としていた。穂高連峰にはガスがたなびいてのどかだった。3日間の山旅が無事終了した。

これで穂高三大岩壁の滝谷(ドーム中央稜)、奥又白(前穂四峰正面壁北条・新村ルート)、屏風(右岩壁・雲稜)を経験した。嬉しい。やればできる。  9.15 kamikouti hodaka.jpg

                   午後遅くの穂高連峰 






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Last updated  2012年09月15日 16時48分18秒
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