蒼い森に於いて

蒼い森に於いて

赤い牢獄




あの壁を越えたら

穢れたこの体は 浄化

忌まわしい感覚は 消え去り

純白の魂が蘇る そして

新しい名を借りて 共に生きるのだ

そう仰る貴方の 夢物語 けれど

私はこの涙が 嬉しさよりも

悲しさで溢れるのを

隠していたのです


私は知っています

貴方が私に見るという崇高な光も

所詮は幻

情婦が聖母には成れない

聖母になりたくもない


愛する貴方 左様なら

私はこの 赤い世界を生き抜いて

何時か 独り死に行く運命

ひとつにはなれないのです


最後の茶菓子を召し上がったら

振り向かないでお行きなさい

此の世界を記憶から消して

二度とお越しにならぬよう


白い 白い 雪の朝

薄暗い小部屋にひとり

貴方の影が消えていくのを

ずっと ずっと 見ていました


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