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雨に泣いてる [ 真山仁 ] 2015年1月発行・幻冬舎
横浜市立図書館
なんと4ヶ月待ちにしてようやく自分の番が回ってきた。
3日間で一気に読み切った。
2011年3月11日、東日本大震災発災直後の被災地と
それを取材する新聞記者たちの物語。
もちろん、フィクションである。
現場のリーダーとなる、1995年1月16日の阪神淡路大震災を
経験した中堅記者と大規模災害を初めて経験する新人記者たちのやりとりが
非常に面白かった。
著者の真山仁氏は元新聞記者。さすがに描写が生き生きとしている。ここでも著者自らの経験が生きている。
この作品のキーワードは「過去」と「経験」。
かつて同じ地域を襲った津波の記憶が遠く薄れてしまった故に大きな被害を出してしまった今回の津波にも通じるテーマであると感じた。
新人記者時代に阪神淡路の取材で心の傷を負ってしまった主人公が、
かつての自分と同じように右往左往する新人たちをあしらう様は、
過去の自分との戦いであったり、
その後の経験を重ねた記者魂の発露であったりと、
人間の心の揺れをみごとに見せてくれた。
東日本大震災から4年半。
もう被災地の様子がニュースのトップを取ることはめったにない。
しかし、だからといって被災地の復興が進んでいるとも言えない。
むしろ目に触れないことで埋もれていく被災者の方々の苦悩に
時間が経ったからこそ、あえて目を向けるべきではないのか。
物語の後半に突如として出現する、ある過去の重大事件に関するスクープ合戦。
被災地の惨状を伝え、読者の心を揺り動かす記事を書いて
記者としての使命を果たすのだ―などというきれいごとはどこへやら。
他紙には絶対抜かれたくない!―その執念もまた人としての真の姿なのだろう。
現在進行形の被災地を舞台にしたこのフィクションで読後感はすっきりとして楽しんでいた自分にちょっと後ろめたさを感じる。
しかし、この作品で「楽しかった!」と感じた他の読者がそのあと現実の被災地に思いをはせてくれたらとも思う。
だから、本はすごいのだ。
時空を超え、人の思いを運んでいく。事実であろうがフィクションであろうが、その作品が描き出す「真実」こそ
人を動かすエネルギーになるのだから。
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