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ラウドがタウンポータルから出るとそこはリンケンではなく、枯れないオアシスの一角だった。
ラウド:「ボビ、ここは違うぞ。ここはかれないオアシスだ。」
避けられない戦争、度重なる裏切りととてつもない真実。整理できていないラウドの頭の中はまるで散らかった部屋のようだ。そんな精神状況の中ボビに言う。
ラウド:「ボビ、頼む。早くリンケンへ。」
ボビ:「すいません、私も疲れていて少々照準がずれてしまったみたいで。しかし、ここだけは砂漠の真ん中でなぜこんなにも潤っているのですか?」
ラウドはオアシスの泉の真ん中に生えている大きな木を指差し答えた。
ラウド:「伝説が・・・一つの伝説が語られている。エリプトの時代よりも昔の話だ。この辺りは緑豊かな大地だったと聞く、その豊かな大地に一つの大きな王国があった、そこの王が神々の世界をも自分の物にしようとしたが、神々の怒りに触れ、この辺り一体を草木も生えぬ不毛の地にした。人々は飢え、瞬く間に王国は崩壊した。生き残った人々は天に祈りを捧げ続けた、そして何十年も人々が祈った結果神は最後の希望をこの大地にもたらした。天から大きな光の柱が立つとその下に一本の木が現れ、そこから水が沸き、草や花々が咲き乱れた。そこに人々は集まり、また一から国を作り始めたと聞く。そしてその木にはこの大地が血で染まる時、赤き実を実らせるらしい。だからその木は太陽の樹と呼ばれている」
ラウドは一度髪をかきあげる。落ち着こうとする動作が自然とでたのだろう。
ラウド:「どこにでもある、子供に聞かせるための創作さ。すまないボビ、落ち着いてきた。早くリンケンに・・・」
ボビ:「それならよかった。あのままリンケンに運んでもあなたは何をしていいか分からなかったでしょう。さぁ!いきますよ!!」
またあの白い渦のような物が目の前に現れる。その中に拳をギュッと握り締めながらラウドが入っていく。その後にボビが一度木の方を見て口を歪ませてから中に入っていった。
ラウドが渦から出ると見慣れた風景が見えた。すると向こうから一人の男が駆け寄ってくる。
リンケン衛兵:「ラウドさん!無事だったんですか!?」
ラウド:「あぁ、なんとかな。このボビのおかげだ。すまない、みんなを広場に集めてくれないか?話がある。」
リンケン衛兵:「はい!わかりました!」
ラウドは中央の広場の石のベンチに座り込む。大きく溜め息を吐き頭を抱える。そこにボビがスッと近づきラウドに話しかける。
ボビ:「ラウドさん・・・しっかりしないと・・・、ウィンさんがあんなことになって動揺するのはわかります。でも・・・」
ボビの言葉を遮るようにラウドが、
ラウド:「分かってる!そんな事は分かってる・・・ウィンの事を忘れてどう戦いを止めるかに集中しないといけないっていうのは・・・」
ボビとラウドが会話をかわしている間に続々と人が集まってきた。
カルス:「ラウド姉ちゃん!!おかえり!!あれ?あの兄ちゃんは?」
ラウドは今できる精一杯の笑顔でカルスを抱きしめた。戦いが始まればこの子達を守れるのだろうか。ラウドの心がギュッと締め付けられる。
ラウド:「ちょっとあっちにいってな。これから少し忙しくなるからな。」
スッとラウドは立ち上がり少し高めの台に立つ。集まった人々はラウドの方を覚悟が決まった眼差しで見る。ある程度分かっていたのだろう、戦いが避けられないということを。ラウドはアリアンで起きた出来事を隠さず全てを話した。
リンケン兵:「そんな!スターヒールの奴らが・・・」
リンケン兵:「くそ!ウィンの野郎!信じてたのに!」
リンケンの者達が思い思いの事を口にしだした。そこにラウドが、
ラウド:「あの時クロマティーガードの前に降りて自分が戦ったのもクロマティーガードを助けるためだったわけだ。あのまま戦ったら我々の弓であいつらは死んでいただろうから・・・率先してアリアンについてきたことも全て納得がいく・・・・・
そこでラウドの言葉がつまった。沈黙が続いたあとにラウドが頬に涙を流しながら真っ直ぐみんなの方を向いて口を開く、その言葉はリンケン全員が思ってもいなかった一言だった。
ラウド:「それでも私は彼を信じたい・・・・」
大粒の涙がラウドの顔をツツーっと流れる。その言葉に全員が驚き何も答えれずにいるとき、
カルス:「あのお兄ちゃんは悪い人じゃない!絶対に!」
ヴォルフラム:「そうだそうだ!ラウド姉ちゃんを笑顔にしてくれたんだもん!」
二人の子供がリンケン全員の心を動かそうとしていた。
ラウド:「たぶん・・・いや、必ずウィンは戻ってくる!その時全てが分かるはずだ!みんな、もう少し私のわがままに付き合ってくれるか?全てが分かった今戦う必要はない。リンケンとアリアンの中間あたりでクロマティーガードを待ち、全てを話そう。」
リンケンの町がざわつく、
リンケン兵:「そうだな・・・最後までラウドさんに付き合いますよ。よし!全員準備していくぞ!」
そういうとリンケン兵達は入り口の方に向かっていった。ラウドがヘタッと座り込む。
ラウド:「そうだ、最後まで信じてみよう。あいつが言ったように私が雲なら風を待つしかない。」
雲が自分の力で形を変えてリンケンに希望をもたらした。しかし風がないと動けない、もう目の前に迫っている闇をラウドは振り払えることができるのか。
ただまた風が吹くことだけを信じて・・・・・
続く・・・・・