趣味の漢詩と日本文学

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August 25, 2005
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送少微上人遊天台

石橋人不到、獨往更迢迢。
乞食山家少、尋鐘野道遥。
松門風自掃、瀑布雪難消。
秋夜聞清梵、餘音逐海潮。
【韻字】迢・遥・消・潮(平声、蕭韻)。
【訓読文】
少微上人の天台に遊ぶを送る。
石橋人到らず、獨(ひとり)往くこと更に迢迢たり。

松門風自(おのづ)から掃ひ、瀑布雪消え難し。
秋夜清梵を聞けば、餘音(ヨイン)海潮を逐(お)ふ。
【注】
○少微上人 劉長卿の知人の僧。未詳。
○天台 浙江省台州天台県の北の名山。仏教の霊地。天台宗発生の地。
○石橋 石で造った橋。駱賓王《霊隠寺》「天台の路に入るを待ち、余の石橋を渡るを看よ」。
○独往 たったひとりで行く。
○迢迢 はるかにとおいさま。
○乞食 僧の修行の一つで、人家の戸口で米や金銭の施しを受けてまわること。
○山家 山のなかの人家。
○尋鐘 「尋」は、さがす。鐘の音が聞こえてくるほうには寺があるはずで、寺までたどりつけば宿と食事にありつけることになる。

○松門 松の木を門の代用にしたもの。
○掃 掃除する。
○瀑布 滝。
○清梵 経文を読むきよらかな声。
○餘音 音声がとだえたあとに残るひびき。余韻。

【訳】
少微上人が天台山まで旅されるのを見送る。
天台山の石橋のあたりは険しくて人もめったに訪れないというが、このたび上人さまはたったひとりでここから遥かとおく、かの地に向かわれる。
托鉢をしようにも山のなかの家は少なく、鐘の音をたよりに寺をさがされても野なかの道は遥かとおい。
松を門とする山中の家の前は風がかってに木の葉を掃除るほど強く吹き、滝のそばは雪が消えないほどおさむいでしょう。
そのように厳しい環境と辛い修行が待っているのでしょうが、秋の夜に上人さまが経文を読むきよらかな声を聞けば、その余韻は観音様の説法のように多くの人々を教化することでしょう。





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Last updated  August 25, 2005 07:35:49 PM
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