趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

January 9, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】おなじ右近、「桃園の宰相の君なむすみ給」などいひののしりけれど、そらごとなりければ、かの君によみてたてまつりける、

よしおもへあまのひろはぬうつせ貝むなしき名をば立つべしや君

となむありける。

【注】
・右近=藤原季縄のむすめ。醍醐天皇の中宮穏子に仕えた。
・桃園の宰相の君=藤原師氏。関白藤原忠平の子。官は正三位、大納言に至った。邸宅名にちなみ、桃園大納言・枇杷大納言と呼ばれた。(913……970年)
・ののしる=くちぐちに、ああだ、こうだと言う。
・そらごと=うそ。
・よし=どうなろうとも。ままよ。

・むなしき名=ありもしないことのうわさ。

【訳】同じ右近が、
「桃園の宰相の君(藤原師氏)が彼女のところにお通いになっている」などと世間の人があれこれ噂したが、事実無根だったので、桃園の宰相の君に作って差し上げた歌、

えい、もう、世間の人なんて好き勝手に想像するがいいわ。それにしても、このまま海女が拾わない空っぽの貝のように、事実無根のむなしい浮き名を立てるおつもりなのですか、あなた。(そのおつもりが無いのなら、私の所へ通ってきて私と結婚なさってくださいな)


と書かれていたとさ。








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Last updated  January 9, 2011 04:28:59 PM
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