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「あの梅の木は」 第12話 次の日、仕事終わってすぐ香織に電話を入れた。 「裕也、私も今電話しようと思ってたとこ」 「やっぱ気になるよな」 「そりゃそうよぉ、お酒の力を借りて何とか眠れたけど、 目覚めた瞬間にあの木のことが気になってリビングに下りてって 窓の外を見てたら、『おはよう!』ってママが大きな声で 言ったから、そんな大きな声出さなくてもって言ったら『もう、 これで3度目だけど!』って叱られちゃった・・・」 「そっか、やっぱり気になるよな、俺も同じだから今日にでも ブルースに行ってみるよ」 「でも、またお仕事のじゃまをしちゃ悪いじゃない?」 「うん、だからラストオーダーのちょい前に行ってマスター のご都合を聞いてみるつもりだ」 「あ、それがいいわね。じゃあ私を迎えに来てくれる?」 「え、俺はいいけど、昨日の今日じゃ香織パパの頭に角が生える んじゃないか?」 「平気よ、いくらパパが頭に角を立てても、ママは女版桃太郎だし、 私は1の子分だから、大丈夫」 「・・・・・・・・・・・・」 「うん?どうかした?」 「いや、ちょっと俺の未来図が頭をよぎって・・・」 「私が女版桃太郎で、娘が1の子分っていう家族構成になったらっ て?・・あれ、どうした?」 「いや、俺の思い過ごしだよな」 「いいえ、君の想像は当たってます、百パー当たると思うよ」 「うへーー・・・」 電話の向こうで、香織の豪快な笑い声がした。 「じゃあラストオーダーに間に合うように、迎えに来てね、いい?」 「ああ、わかった・・・」 「元気出せよ、裕也君、がはは、ガチャ!」 (電話切る音、声に出すか?普通・・・) 喫茶「ブルース」の一日は 1stオープンが11時~13時まで 2nd オープン 18時~21時まで ラストオーダーは20時 アルコールは無し、ノンアルコールビールは最近需要が増えて きたので置くようになった。 その日、二人が「ブルース」のドアを開けたのは19時50分 頃、もうすぐラストオーダーという時間である。 「いらっしゃい、おや今日は遅い時間で、もうすぐラストです けど・・・」 「はい、分かっています。僕はカレー大盛りで、」 「私も同じのお願いします」 「?大盛りってこと?」 「はい、ちょっとお腹空いちゃって・・・」 「カレーの大盛り二つですね」 「はい、お願いします」 「かしこまりました」 やがて21時閉店の時間。 店内に残るのは、ラストオーダーでコーヒーを注文した裕也と香織 の二人一組だけとなった。 客を送り出したあとマスターはテーブルを片づけ始めた。 トレイとダスターを手にして先ほどまでお客さんがいた テーブルを拭き食器を片づけていく。 「マスター、手伝います。カウンターの上にあるトレイとダスター お借りしますね」 マスターは気さくに応じた。 「何か話があるみたいだから、お願いしようか」 香織が立ち上がり、 「じゃあ、マスター、裕也が手伝っている間にお会計をお願い してもいいですか?」 マスターは香織の申し出を受けて裕也に目をやった。 「マスター、良かったらそうして下さい」 「そうかい、じゃあ悪いけど」 会計を済ますと、マスターはカウンターの中に入って 「話は洗い物をしながらでいい?」 「はい、お願いします。というかお忙しい時にすいません」 「いや、他ならぬ常連さんのことだから」 「ありがとうございます」 香織も同時に頭を下げる。 「実は僕らの身の回りで、ちょっと不思議なことがありまして」 「不思議なこと?」 「はい、それが僕のような文系の頭では難しすぎて」 「私がマスターに聞いてもらえたら、って彼に言ったんです」 「ほう、それは一体?」 「マスター、あの南台3丁目の信号の角っこの八百屋さん、 ご存じじゃないですか?」 「・・ああ、谷川のこと?」 「はい。以前母とあの八百屋さんで買い物してて、その時偶然 マスターがいらしてジャガイモ、玉ねぎとかを買われていて、 あそこの若いご主人と少しだけ立ち話をされてました。で、 マスターが帰られた後、ご主人が教えてくれたんです、『彼 は僕なんかとは違って大学で物理学を専攻してて、同級生の 中じゃとても優秀な奴なんです』って・・・」 「あいつ、余計なことを・・・じゃあ僕に話ってのは、理系 の知識を要することなわけ?」 再び裕也が香織からバトンを受ける。 「五次元の関係だと思うんです・・なのでどういうことなの か、僕らが体験したことがちょっと・いや、かなり変わっ てまして・・・」 「ほう、それは一体どういうことなのか、聞きたいね」 「あの、ぼくらは今でも構いませんが、マスターはお仕事 終わられたばかりで、ご都合の良い日、店休日とかその 前夜でもマスターに合わせますから」 「いや、今聞くよ、最近退屈な毎日でね、何だか面白そうだし 聞かせて」 「あの、知識のない僕らにとっては、眠れなくなることもあって 、それでお知恵をおかりしようと」 裕也の真剣な眼差しを見て、マスターは頭をかいた。 「すまない、じっくり聞かせてもらうから、先に洗い物済ませて いい?」 「お願いします」 二人は声をそろえて言い、頭を下げた。 いつも有難うございます。(^^♪
2026.05.04
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反復記号 5 大きく見開いた目で勇一の目を覗きこんでいた洋子は息を吐き、勇一の足元に目をやるとつぶやいた。「面白くない」顔を上げた。「そんな冗談、面白くも何ともない!」「信じられない・よな」「当たり前だろ!『異次元の俺の町』だなんて、ふざけないでよ!」洋子は振り返って後ろに石壁があるのを確かめた。右ひざを曲げ、真新しいバッシュのアウトソールを壁面に押し当て、支えとして背中を預けた。腕を組んでいるのは、ご機嫌斜めということ。「じゃあさ、こうしよう!」何か閃いたわけだ。「どんな作戦が閃いたのさ・・・」勇一の目が大きく見開いた。(テレパスか?) それは置いといて「俺んち、行こう」「え!いいのかよ・・・」洋子の背中は石壁から離れ、組んでた腕も解かれた。「俺の感が当たってりゃ、不自然な事に出くわす」「不自然な事?」「そうだ、今から俺が高二の時にどじった事を教えるから、それを憶えてくれ」「・・・・・・・・?」洋子の首を傾げる仕草、勇一のフェチだが、今は忘れる。「家族なら誰でも憶えてる事だ、その話をして誰も憶えて無かったら・・・変だろ?」「笑える話なの?」「まあな・・・けど笑ったら後悔させてやる」ふん!洋子は鼻を鳴らした。「上等だね、やれるもんならだけど・・・さあ、聞こうか、あんたのドジ話」勇一は顎をなでながら、空を見た。記憶が鮮明に蘇ってくる・・・ いつも応援ポチ、有難うございます。 今回もよろしくお願いします♪
2015.06.11
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