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2006/05/06
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カテゴリ: 個人図書館
死の棘35刷改版

≪思いやりの深かった妻が、夫の「情事」のために突然神経に異常を来たした。狂気のとりことなって憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻、ひたすら詫び、許しを求める夫。日常の平穏な刻は止まり、現実は砕け散る。狂乱の果てに妻はどこへ行くのか?―ぎりぎりまで追いつめられた夫と妻の姿を生々しく描き、夫婦の絆とは何か、愛とは何かを底の底まで見据えた凄絶な人間記録。≫

●『死の棘』
●島尾敏雄
●新潮文庫
●読了日:2001年1月4日


島尾敏雄という人物について知っているのは、昔、海軍だったということ。
特攻隊の指揮官時代の写真が印象深い。
真白の軍服に、目深にかむった軍帽の下の目がかわいいと思っていた。
そんな可愛い島尾の本当の姿が、この作品で暴露される。

一通り読んでしまって思ったのは、よくもこうだらだらと同じような内容を書き続けられるナァということ。決して悪い意味ではなく。

一体最後はどうなるんだろうという好奇心が、一頁ごとに強くなっていく。
でも結局収拾がつかなくなってしまう結末であった。

十一月には家を出て十二月には自殺する。それがあなたの運命だったと妻はへんな確信を持っている。「あなたは必ずそうなりました」と妻は言う。
この時点で彼女はもう危ないのである。言っていることが少し、おかしい。

読んでいると、作者の人生観、家庭の事情がよくわかる。そして不安になる。二人の子供は果たして正常に育ったのか。

そしてその子供が、イラストレーターのシマオマホさん。

「おとうさん、夜あんまりおそくなると、おかあさんがきちがいになって、うちを出て行っちゃうよ。ぼうやもマヤとくっついて行っちゃうよ」
と伸一は言うのである。5,6歳の子供が。

主人公のトシオは関係していた女に別れを告げに行く。
「もう来ることはできません。今ぼくの生活はいつ破滅するかわからない。もう来ませんから」
もう破滅しとるやろ!

でも女に未練たっぷりなトシオ。
「いいわ、わかったわ。じゃ、あたしのこと、きらいになったのね」
「きらいになったのじゃない」
「すき?」
「うん、すきだ」
言ってしまってから自分で驚き、涙がとめどなく出てきた。

だめだ、こりゃ。

もはや頭に変調をきたした妻であるミホは事あるごとに故郷の言葉(おそらく、奄美大島)を使うのだが、それが却って不気味な感覚を催す。

「ウニマがやってくるの。ウニマがいやなことを思い出させるんだ。ウニマがいろんなことをあたしに言う。ウニマが来る! ウニマが来る」
他の方言には説明があるのに、この「ウニマ」だけは何の説明もない。恐い。不気味。

トシオも途中から一緒に気の狂ったふりを始める。実に見苦しい。
お互いに「出て行く」とか「死ぬ」とか言っては暴れ、一方が一方を必死で止めて、その後は抱き合って、泣く。最悪である。

こんな夫はいやだし、こんな父親も嫌だ。







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最終更新日  2006/05/06 07:59:30 AM
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