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≪未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、次第に、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から、殺伐で陰惨な闘争へと駆りたてられてゆく……。少年漂流物語の形をとりながら、人間のあり方を鋭く追究した全世界衝撃の問題作。≫●『蠅の王』●ウィリアム・ゴールディング●新潮文庫●読了日:2006年11月11日今年の夏に買ってみた本です。昔からこの『蠅の王』という題名は知っていました。映画があることも知っていて、ずっとみたいと思いながら、結局観ずじまいです。いつか借りてきて観たいです。海外文学は普段からあんまり読まないのですが、この作品はずんずん引き込まれるし、読みやすい文章だし、とても楽しめました。舞台は未来の戦争なんですが、第二次大戦といっても違和感のないとても原始的な内容です。無人島に不時着した飛行機に乗っていた少年たちが、始めはいろいろと規則を作って仲良くまとまって行動するのですが、次第に派閥ができ、理性と野性がぶつかり合い、大人顔負けの争いが起きます。でもふとしたときにやはりまだ子供である弱弱しい一面が見えたりして、彼らの置かれている立場がこどもにとってどれだけ恐怖かが感じられます。途中ショッキングな出来事も何箇所かあります。馬鹿な私は途中にふと解説を読んでしまい、物語半ばにして結末を知ってしまいました。馬鹿~結末がどうであれ読後感は決してよいものではありません。あと、やっぱり悔やまれるのは、宗教の問題です。海外文学を読むのに欠かせないのが、その国の宗教、特にキリスト教です。この『蠅の王』でも、強く前面に出ているわけではありませんが、底辺には依然として聖書の内容がちりばめられているようです。私は全く疎いのですがタイトルの『蠅の王』という言葉自体が、聖書に出てくるらしく、本文にちょっと説明がしてあったのを読んでようやく知りました。いつかキリスト教サイドも詳しくなりたいです。しかしながらこの小説はなかなか面白かったです。
2006/11/28
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“観相手相十六文、からす堂”江戸は八辻が原のたもとに墨烏の旗が舞う。なりはパッとしないが、近頃江戸で評判の観相名人らしい。そんなからす堂に、お紺姐さんがぞっこんに。「十六文からす堂」「お紺からす堂」収録。●『江戸名物からす堂』全4巻●山手樹一郎●春陽堂文庫全く何ヶ月ぶりの更新でしょう。約4ヶ月ぶり。いえ、ちゃんと本は読んでいましたよ、ただ更新をなまけていただけです。さて、最近はとかく本が恋しくなる季節(も過ぎたような気がしないでもない)。バイト先の友達に誘われて、ミステリーに浮気してみたり、何年も放っておいた本達とよりを戻してみたり、なかなか楽しんでおります。今日は、時代小説と言えばこの人! という人を紹介して見ます。前にも紹介しましたが、山手樹一郎。春陽堂文庫で90冊近くの全集が出ていますが、私も地道に集めています。そんな中でちょいと好きな作品『江戸名物からす堂』です。これは全4巻の構成で、からす堂という若い浪人が手相観相十六文という幟のもと、江戸のいろいろな人の悩みにのったり事件に巻き込まれたりしながら物語が進む、連作短篇のような作品です。山手樹一郎作品に共通するのはずばり「恋愛」。人相見のからす堂先生にぞっこんになってしまうお紺姐さんがいじらしくって、可愛らしいんです。「あたしだけこんなに先生のことが好きで、先生はあたしのことなんかちっとも好きでなかったらどうしよう。」とひとりやきもきしている姿がまた決して若い娘という年ではないだけにいっそう愛らしいのです。そんなからす堂はあることのために、3年の間に千人の人を助けるのが目的だから、お紺姐さんの前でも律儀で真面目に行儀がいい。だけど決してお紺姐さんを嫌いではないところが、読んでいるこちらもやきもきさせられつつもどこか微笑ましい気持ちになるのです。今読んでいるのは最後の第4巻目ですが、登場人物が多彩なので飽きません。私は特に4巻のはじめの話に、ついついほろりとさせられ、読み終わった後は一日中気分がよかったです。
2006/11/26
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≪ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。≫●『変身』●フランツ・カフカ●新潮文庫●読了日:1994年2月14日新潮文庫、夏の百冊に毎年必ず入れられている、カフカの『変身』。読んだのは12年前。覚えているのは、非日常なことが日常の中で進行していて、みんななんとなく不気味に思うんだけど、案外すんなりその情況を受け入れている不可思議さ。主人公のグレーゴル・ザムザという強烈なリズムの名前。(グレゴールと思っていた。今見たらグレーゴルだった)ザムザの背中に林檎が落ちて、それが取れないために、その林檎が段々腐ってきて、背中に林檎が陥没したままやるせなく過ごすザムザ。シュールである。不気味が淡々とつづられているのですが、不思議と不快感はないのです。私が一番よく覚えているのは、解説のところで、カフカがかつて言っていたことを記してある部分。カフカはこの作品に挿絵を添えるなら、醜い芋虫をそのまま描くのではなく、たとえば一家団欒で楽しく食卓についている家族。その向こう側にある部屋の扉がほんの少し開いている、開いた先は暗い闇。そんな挿絵を描いて欲しい。「なるほど」と思いました。カフカ、うまい。
2006/09/03
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≪人生なんて一寸先は闇―飲み過ぎたある夜背中に天使の刺青を背負うヤクザ四方と一夜の過ちを犯してしまったらしい柚木は、それ以来しつこく迫られ肉体関係を強要されるようになってしまう。その上会社からはリストラを宣告され妻には家出されて…。純情ヤクザ×中年リーマンの奇妙な関係の行方は。≫ ●『今宵、天使と杯を』●英田サキ●プラチナ文庫●読了日:2006年8月18日とてつもなく恥ずかしいんですが、これはBL小説です。はい、ごくたまに読んでます。恥をさらして感想書きます。面白かったもので。BL小説って、なにー?(‘-‘)? とかきかないように…。ボーイズラブです。ホモ小説です。一昔前の言い方で言えば「やおい」ですよ。めったに読まないのですが、ときどき読むと、面白いです。BL小説があふれすぎている昨今、文章がうまいBL作家を見つけるのは難しいです。欲情が先走りして、文章がついていっていない人もたくさん。それは最近の少女漫画にも言えるんですけどね…。が、この作家英田サキさんは上手でした。緩急つけるのがうまい。文章がうまい。ストーリー構成がうまい。まず、この作品BLというほどボーイズではなく、主人公は営業成績振るわず、上司からもにらまれ、アル中一歩手前、妻ともしっくり行かない上に(身体的)不能な35歳中年リーマン。それにからんでくる27歳の、感情の起伏がないヤクザ男(本物)。始めから伏線が張ってあって、それがストーリ上にかすかな疑問を感じさせつつ、ちゃんと主流の物語も進行させるといううまい書き方。何しろこのヤクザ・四方(シホウ)隆史が、感情が乏しいくせに、純粋に、だめだめリーマン・柚木(ユギ)成彦を愛すんです。柚木は酒によって四方との関係がどう始まったのか全く覚えておらず、四方の事を嫌い、避けたがるのですが、四方はかまわず柚木を半ば強引に愛そうとします。それが、話が進むうちに柚木はなんとなく四方の事を嫌いじゃなくなり、でも、四方の強引さにとまどいつつ関係は続きます。読んでいるうちに、四方の純粋さや柚木に対する思いがひしひしと伝わってきて、こっちまで切なくなってしまいますよ。柚木のだめ加減も情けなくもどこか憎めないです。BL必須の「営みシーン」(恥ずかしくてなんて書いたらいいかわからん、あえて「営み」)も、そこそこ読ませて、でもどろどろすぎず、妄想的過ぎず(感嘆詞?ばかり使っている小説は、逆に引いてしまう)、いい塩梅でした。イラスト担当のヤマダサクラコさんの描く男の人は色気たっぷりなので、好きです。むしろヤマダさんのイラスト目当てで買ったといってもいいですが、小説もかなりよかったので一石二鳥て感じです。これを買うちょっと前に、同じくヤマダサクラコさんイラストのBL小説を買ってみたら、小説が全っ然面白くなくて、まいった。とにかく、この本は面白かったです。BL小説を読まず嫌いしている方にもおすすめできるかも?私はこれからも何度も読み返したいですよ。四方がかわいくってねー。
2006/08/19
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更新したい気持ちは常にあるのですが、せからしがり屋(福岡方言で面倒くさがり屋)なせいか、全然更新できずにいます。かといって、本を読んでいないわけではありません。ちゃんと読んでいます。皆さん、読んでますか。今年はあんまり読んでいなくて、記録を見ると、今日の時点で76冊。ひと月に9冊程度しか読んでいません。最近は、バイト先のY君に薦めてもらった森博嗣にはまっていて、そればかり読んでいます。積読している本が涙をこらえて、たんすで眠っています。(本棚には既読の本、未読はたんすの中)冒頭に掲げたのは、鯨統一郎の『タイムスリップ明治維新』。前作の『タイムスリップ森鴎外』ではけっこう楽しませてもらったので、このシリーズは集めるつもりです。『タイムスリップ森鴎外』をノベルズで買ってしまい、今回の明治維新は文庫で買ってしまったので、今後どうしようか迷っています。講談社文庫の紙質って、あんまり好きじゃないんだな…。次の『タイムスリップ釈迦如来』も面白そう。私の家にはクーラーがないので、早く秋が来てほしい、今日この頃。でも、読書に集中すると、暑さも忘れる。
2006/08/17
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≪精力絶倫の快楽主義者・西門慶は、八人の夫人と二人の美童を侍らせて、日夜、酒池肉林ともいうべき法悦の宴をひらいていた。この屋敷で、第七夫人・宋恵蓮が両足を切断された無残な屍体で発見される。はたして誰が?何のために―?日本推理小説史上に残る名作「赤い靴」をはじめ、天才・山田風太郎が中国四大奇書の一つ『金瓶梅』の世界に材を採った超絶技巧の連作ミステリ全15篇!さらに単行本未収録の異稿版「人魚灯篭」を加えたファン待望の『妖異金瓶梅』完全版。≫ ●『妖異金瓶梅』●山田風太郎●扶桑社文庫●読了日:2006年7月8日実は理想の男性像は『金瓶梅』の西門慶である。だって、彼ってば美男、風流、金持ち、教養あり、頭もよくって、詩歌に通じ、けっこうなんでも抜群の男性なんです。ただちょっと好色が過ぎるってくらいで。山田風太郎のこの本はそんな西門の旦那はちょっぴり脇役に下がらせて、その友人である応伯爵と西門慶の最強の愛人・潘金蓮が主人公である。西門家で起きるさまざまな殺人事件を、応伯爵が金蓮の言動をヒントに解いていくという内容。殺され方や、事件への伏線が山田風太郎ならではのどろどろげろげろで、読んでいてうなってしまいます。いつもみなまで言わせず、事の真相は金蓮の嫣然とした笑みによって曖昧に隠されます。西門慶も大好きだけど、この本を読んでいてうっかり応伯爵も好きになってしまいました。伯爵は金蓮に恋しているのだけど、その妖しすぎるのに頭のどこかでは警戒しつつも、けっきょく深い関係になってしまうことも二三度。このちゃっかりさが、かわいくてよろしい。物語りも終盤になると、どうまとまらせるのか途方もない展開になっていきます。金蓮の心の内も読み取れないし、応伯爵もどう出てくるかどきどき。その他、多くの人間が金蓮にたぶらかされつつ、妖異の渦の中へ巻き込まれます。書いたり、山田風太郎。さすがだ。
2006/08/08
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≪同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川助教授とお嬢様学生の西之園萌絵。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女二名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが…。究極の森ミステリィ第2弾。≫ ●『冷たい密室と博士たち』●森博嗣●講談社文庫●読了日:2006年8月3日バイト先のミステリ好きY君に薦めてもらった森博嗣を今ずっと読んでいる。といっても第二弾までしか読んでいない。が、ミステリは濃厚で内容がつまっているので、たっぷり読んだ気になってしまう。これははまりつつある証拠なのか。でも多分熱狂的なミステリファンにはならない気がします。この作品は犀川助教授と、学生・西之園萌絵が主役です。犀川先生はなかなか感情を表に出さない人のように見受けるが、物語も後半にさしかかり、謎も解けそうなころ、彼の中でもうひとりの自分が暴走し始めるのですが、そこの所の描写が一番好きです。毎回お決まりのように出てくる描写ですが、ここを読んで、森博嗣ってイイナと思ったのです。シリーズは全10冊。もう完結しているので、安心して読めます。3冊目、早く読みたい。バイト先の本屋で買おうとしたら、2日前に売れていたので、それが自動発注によって入荷してくるのをひたすら待つばかりです。
2006/08/06
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≪愛したことが間違いなんじゃない。ただ少し、愛し方を間違えただけ―。完璧に家事をこなす妻を裏切り、若い女と浮気する木島。妻が化粧をするのを許さなかった原田。婚約寸前の彼女がいるのに社内で二股かれた洪一。仕事のために取引先の年上女性に近づく孝次…。裏切られても、傷つけられても、性懲りもなく惹かれあってしまう、恋をせずにいられない男と女のための恋愛小説9篇。≫ ●『ため息の時間』●唯川恵●新潮文庫初めて読みました、唯川恵の小説。結果、ちょっと苦手でした。男性の立場からの視線の描き方は確かにすごくうまいのですが、後味が悪くて悪くて。なんだか、こう、どろどろした、ホラー漫画にあるようなぐるぐる渦巻きがじわじわ広がって終る、そんな後味です。この作品しか読んでいないのでまだかんたんに好き嫌いがいえないのですが、苦手なタイプでした。残念…。
2006/08/05
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≪孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。≫ ●『すべてがFになる』●森博嗣●講談社文庫●読んでいる途中初めての森博嗣。初めての現代ミステリ。バイト先の本屋に新しく社員としてきた人に薦めてもらって、買いました。彼が言うには「森博嗣の作品の中で、一番、すばらしく完成度が高い作品」ミステリ小説はもともと苦手なのです。特に現代モノは全然読まないのですが、何かのきっかけで、苦手なジャンルも好きになれたら、それ以上の幸せはありません。有名すぎるほど有名だし、題名もカッコイイし、気にはなっていたのでちょっと前に読み始めました。読みながらの感想は、人物像がよくつかめない。話のテンポが遅く感じる。専門用語だかなんだか、横文字がよく使われる。イコール…ちょっと読みにくいかも、というのがまず最初の感想でした。が、物語も半ばをすぎた頃段々とじわじわと面白くなってきたかなーと思い始めました。主人公二人のキャラクターはいまいちきちんと形にならないものの、まあ、よしとします。多分に、「ミステリは苦手」という先入観みたいなものが頭のどこかで邪魔をしていて、読みながらつい反抗して天邪鬼になってしまっているのでしょう。読み終わる頃には身震いするほどの面白さを感じたいです。これをきっかけにミステリ好きになれればとも思っています。
2006/07/26
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≪エリート中学生の優は、突如ド田舎の学校に転校することになった。一杯勉強して、東大に入り、有名企業に就職する、という将来プランがぐちゃぐちゃだ。しかも、同級生はたったの3人。1.バカ丸出しのサル男。2.いつもマスクの根暗女。3.アイドル並みの美少女(?)。嗚呼、ここは地獄か、楽園か?これぞ直球ど真ん中青春小説!≫●『楽園のつくりかた』●笹生陽子 ●角川文庫●読了日:2006年7月7日面白かった!読んだことのないジャンル、作家、作品を読んでみようとどっさり買ってきた文庫の中の一冊。あらすじを読んでみて、気軽に読めそうだったのと、表紙絵の爽やかな色使いで我が家にやってきたこの本。「んー、もうそろそろひとひねり欲しいんだが~」と思い始めた頃に「ぁあっ」というような驚きが来る、このテンポのよさ。しかもそのことについては、読者の感性にゆだねて、作者は深く追求もしなければ、まだるっこしい説明もしないから、さっぱりしていて、却って気持ちよく読める。すいすいよんでたら、それこそ「っ!!」といわされる場面に出くわして、ちょっとの間ぽかんとしていた。それなのに、主人公が卑屈にも、悲観的にも、すねたりもしなくて、いつもどおりちょっと皮肉屋な感じなので、安心して次の展開が楽しめた。何回読み返しても、楽しめる作品でした。バイト先の本好きの社員さんにも偶然にもこの作者の小説を薦められた。誰が読んでも面白いということ。
2006/07/11
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●『変身』●東野圭吾●講談社文庫●『すべてがFになる』●森博嗣●講談社文庫バイト先の書店に新しくやってきた社員さんが、私に負けず本を読むというので、オススメをきくとひと言、「僕は講談社です」という。つまりは、ミステリーなんである。講談社文庫といえば、ミステリー。私は普段、全くミステリーおよび現代作家を読まないので、これで読むきっかけとなりそうだ。で、今日は上記の2冊を買ってみた。有名すぎるほど有名で、特に森博嗣の『すべてがFになる』なんて、もろにミステリーなかっちょいいタイトルが気に入っていたので、それを読めるなんて、ちょっとワクワクです。「じゃあ、これ買ってみるけん」と2冊を手にした私に、彼がひと言、「知りませんよ…。ふふ」と笑った。これが吉と出るか凶と出るか、最近読書が楽しくてしょうがない。
2006/07/09
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今年も集英社、角川、新潮各出版社の文庫での夏のフェアが始まりました。集英社は今年、ハチクロ(コミック『ハチミツとクローバー』)で押し出しています。集英社は漫画が強い。角川は映画原作本が多いです。ダヴィンチ・コードでだいぶ儲けてます。新潮は文学の王道を突っ走ってくれてます。ただ、数年前、キャラクターがいまのパンダ(YONDA?君)に変わってから、どうも、コピーが下手になりました。可愛いキャラクターで読者を振り向かせようとする魂胆が見え見えです。あの頃から、フェア用のコピーも無理やりいまの世代に合わせるような文句になったし、出版社から送られてくるPOPもけばけばしくって、なんだかうるさい感じです。岩波のようにどっしりとしていて欲しい新潮、時代の流れには逆らえないか…。さて、昨日買った本、上記の10冊です。『谷川俊太郎』=彼の詩は昔からけっこう好きです。寺山修司とも関係がある詩、詩もいい詩が多いです。『秋の猫』=猫が出てくるので、買って見ました。読みやすそうでしたし。『楽園のつくりかた』=たまにはこういう青春ものもいいなと思って。気楽に読めそう。表紙絵がさっぱりしていたのもポイントです。『偶然の祝福』=短篇で読みやすそう。表紙が大好きな寺田順三さんなので。『狂王の庭』=時代背景が昭和27年て、ツボです。「僕があなたに恋をしていること、あなたにはわからないのですか」というあらすじ冒頭に参りました。読むのに疲れそうですが、楽しみです。バイト先の駅ビルの警備員さん(本好き)にも小池真理子を薦められました。『落下する夕方』=江國香織の文章は、けっこう淡々としているのに、すっと涙が流れてくるような、独特な感じです。ぱらぱらとめくるうちに、何か重大な一行を眼にしてしまったので、ちょっとショックです。『絵のない絵本』=持っているのですが、表紙絵が可愛くなっていたので、再度購入。リンクの表紙は昔のです。新潮の海外文学は安くて助かります。『博士の愛した数式』=読む予定はなかったのですが、バイト先に来た新社員さん(本好き)が「人に本を薦めるときは、僕は必ずこの本を薦めます。本当に素敵な本です」というのが頭に残っていて、つい買ってしまいました。なんだか数式がちりばめられていて、数学がこの世で一番嫌いな私は果たして楽しく読めるのか…。『蠅の王』=昔ッから読もう読もうと思っていました。映画も見ていないのですが、面白そうです。楽しみ。『ため息の時間』=昔、ある人にこの作者を薦められましたが、なんだか読む気がしませんでした。これはちょっと面白そうなので、手にとって見ました。それにしても唯川恵、「めぐみ」だとずっとおもっていましたが、「けい」なんですね。しめて5087円。
2006/07/06
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≪『黒蜥蜴』は1961(昭和36)年に三島由紀夫によって戯曲化されて以来、幾たびか上演され、また映画化もされた人気作品である。美しい女怪盗と名探偵とのあいだで繰り広げられる壮絶な智慧比べ。敵同士でありながらお互いに引かれあっているふたりの心理的ジレンマに、読者は「ドラマ性」を感じ取っているのだろう。また、黒蜥蜴が登場するのは全作品中この短編だけだが、明智小五郎や怪人二十面相、小林少年らと並んで、乱歩作品の人気キャラクターである理由もそこにあるのだろう。彼女を演じた俳優の美輪明宏の当たり役ともなった。≫ ●『江戸川乱歩全集 第9巻 黒蜥蜴』●江戸川乱歩●光文社文庫光文社文庫って、ふっとこういう傑作をシリーズで出すから、たまらない。江戸川乱歩全集の装丁のすばらしさ、帯の文句のかっこよさ、いいですね。この巻『黒蜥蜴』は乱歩の小説では有名な明智小五郎が、女怪盗・黒蜥蜴と対決する作品です。対決シーンよりも、お互いに惹かれつつも惹かれてはいけない、惹かれたら負けだと、精神的な葛藤を繰り広げるところが面白い。それにしても、三輪さん、昔っからはまり役ですね。
2006/07/04
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鬼姫剣法≪御納戸頭取美濃部筑前守は、回船問屋遠州屋を手先に、抜け荷で私腹をこやしていた。この不正を糾明せんとした但馬豊岡二万三千石の戸田将監は謀殺されて、父の仇を討つべく小太刀の名手伊津姫は起った。――時代長編傑作。≫●『鬼姫剣法』●井口朝生●春陽堂●読了日:2006年6月2日もうね、面白かったんです。最高に。これぞ時代小説の醍醐味っていうのが一番最後のページで発揮されてて、読んだ瞬間にやにやしちまいました。井口朝生いいナァ、集めちゃうかな。春陽堂のお客様担当の方、すごく好きです。春陽堂には個人的に何度も問い合わせしているのですが、対応がよくって、ほどほど親身で、もう大好き。春陽堂、昔っからの時代小説を今でもちゃんと出版してくれてる所ですが、憎い箇所も多々。その第一に挙げられるのが、誤植のすばらしさ。版を重ねても誤植はそのまま、という図太さ。しかも楽しい誤植。早川という侍の名が「甲川」になっていたり、ひどい時は物語の前後で仇の名前が変わってたりする。「その名前って確か、味方側の上役の名前じゃなかったっけ…?」みたいなのも平気で出版。春陽堂、大好き。さて、この『鬼姫剣法』ですが、主人公の男女は適度に主人公してますからいいとして、脇役以上に活躍してくれる、よろず屋米吉という男がいいんです。ひょんなことから主人公達を手助けする役目になるんですが、これがなかなか楽しい男。いろんな役を押し付けられても「へい、よろず屋はいつも多忙でござんす。これもあっしの役目でござんす。」といいながらも嬉々として働いてくれる、けなげな男なんである。読み進むうちに、この米吉に惚れてしまうのです。私は。そして、最後の一ページ、ラスト、うすうすわかっていたものの、憎らしいほどの演出に思わずにやりです。米吉、最後で一番おいしいところさらっていきやがって~。ニクイ!
2006/06/29
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≪「詩はただ病める魂の所有者と孤独者との寂しい慰めである」といい、ひたすら感情の世界を彷徨しつづけた萩原朔太郎は、言葉そのもののいのちを把握した詩人として、日本の近代詩史上、無二の詩人である。代表作『月に吠える』『青猫』等より創作年次順に編まれた本詩集は、朔太郎(1886‐1942)の軌跡と特質をあますところなくつたえる。≫ ●『萩原朔太郎詩集』●萩原朔太郎●岩波文庫今夏、ジブリが作った映画『ゲド戦記』が上映される。あまり流行りものにがっつくのは好きではないが、ジブリは好きなので、何気なくその主題歌とやらを聞いてみると、このフレーズは…と気になるところがあった。~こころを なにに たとえよう……~というワンフレーズ、これはもしや、萩原朔太郎の≪こころ≫では…? こころをば なにに たとへん こころは あじさゐの花 ももいろに咲く日はあれど うすむらさきの思い出ばかりはせんなくて。とても好きな詩です。それで、調べてみたらやっぱり参考として、この詩を使ってありました。たったワンフレーズだけですが、とてもいい雰囲気に使ってあって、いい歌です。萩原朔太郎は、すごく悲しくて切なくて、かわいらしくて、そしてちょっとぞっとするところを持った詩人です。彼の詩にはいつも寂しさが混じっていて、なかなか複雑な気持ちになります。ゲド戦記の主題歌を聴いているとなんだかほろりときます。ゆったりした懐かしく切ない響き。ちょっと≪悲しくてやりきれない≫に似た心の疼きを感じます。いい歌。http://www.ghibli.jp/ged/
2006/06/24
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≪北斎、お栄、英泉、国直……奔放な絵師たちが闊歩する江戸の街。淡々とした明るさと幻想が織りなす傑作。≫●『百日紅』上・下●杉浦日向子●ちくま文庫●コミック杉浦さんの作品の中でも、ものすごく好きな作品のひとつ。さるすべり。葛飾北斎を中心に、その娘のお栄、弟子の英泉(杉浦さんがいっちすきな英ちゃん)、そして他派ながら北斎を尊敬する国直。ここの人物が個性的で、だれも好きになってしまう。でも、話はいろんなところに飛んで、百物語のように奇奇怪怪なものも登場する。私が好きなのは上巻の其の三「恋」。版元から「あんたの絵はしょせん人まねだ」とぼろくそに言われて、しょげた英泉が、湯屋帰りのお栄に出会う。二人で土手にしゃがみながら、何を話すでもなく、自分の心の中のわだかまりを考えている。聞こえるのは鳥の鳴声ばかり。正面を向いたままお栄が言う。「コウしてると何かいい事あるだろうか」正面を向いたまま英泉が言う。「コウしてりゃやさしい女が声をかきゃしめえかと思って……」お栄がため息つくように「詰まらねえな なんだか」英泉も弱ったように、絵の仕事をまだ2本引き受けているが、人まねになってしまいそうなのを心配していると口にすると、お栄が湯屋帰りの洗い髪をばさっとさせて「エイ 馬鹿野郎」と立ち上がり、土手に吹く風に髪をなびかせてひと言「阿呆らしい」この終り方、すごく好きです。もう一つ、其の二十四「因果娘」何の呪いか、若い娘の両肩にしがみつく干からびた老人の手。荒々しいひげだらけの兄と二人で、元気に毎日練り歯磨きの宣伝商売をしているが、娘はその手がひそかな悩み。ふっと長屋の表を通りかかった祈祷師にお払いしてもらい手をはずそうとするが、何の因果か手はますます食い込むばかり。祈祷師を追い出したあと、娘が「チクショウ こんな体じゃ嫁にゆけん!!」と悔しがるのを「嫁だとォ てめえ 男ができたのかッ!」と兄がにらみつける。「ばかッ 手なんか背負ってどうなるもんでもないわッ 考えてもみやがれッ!!」と眼をとがらせて言い返す娘に、兄は途端にシュンとなって「そうか」「えーん」と兄のひざに泣きつく娘。次の日、興行の準備をする娘が、両肩にしがみつく手にまで白粉をぬっているのを見た兄はぎょっとしてやめさせようとするが、娘は振り返って「いいだろう わたいのんなんだから」ラストは晴れ晴れしいいつもどおりの練り歯磨き宣伝のひとこまでチョン。この終り方もいい。最も秀逸で印象に残るのは、単行本収録の時最終話として収録された其の二十八「野分」これは最初から最後まで、すばらしい。独特の雰囲気。さすがガロ出身。最後のひとこま、なんともいえない。来月の今ごろは杉浦さんの一周忌。作品全部読む一日がやってくる。
2006/06/19
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以前、ポプラ社からハードカバーで刊行されていましたが、2,3年前にソフトカバーで全集刊行したものです。ハードカバーをちまちまと集めていた私にはプチ・青天の霹靂?ハードの方ががっしりしていて、さわり心地もいいし、何せ、挟んであるしおりが毎回イカス。その巻ごとの内容にそった台詞?みたいなのが書いてあります。1巻の『怪人二十面相』のしおりには、 ロマノフ王家のダイヤモンド、国宝級の美術品。すべてこの二十面相がいただこう。警察諸君、むだなあがきはやめたまえ。わたしの素顔はだれにもわからない。ほら、あなたのとなりのだれかに、変装しているかもしれないのだ……。 さあ明智君、二十面相の正体をあばくことができるかね!?わくわくします。私は二十面相の大ファン。彼は確かに盗みはするけど、人殺しや、誰かを悲しませるような盗みは決してしないんです。紳士なんです。いつも明智小五郎や少年探偵にしてやられますが、ちゃんと次の回には牢抜けをして性懲りもなく明智に挑む。彼は明智の「やられた!」という顔がみたくてみたくてたまらないのです。『空飛ぶ二十面相』では二十面相の「戦争」に対する厳しい批判が垣間見えます。世界中のあちこちで二十面相が空を飛びながら人心を、世界中を惑わす、そのわけは…。この回を読んで、私はますます二十面相のファンになりました。児童文学といいながら、乱歩独特の表現が混じって、ぞっとしたりもします。 日本中のひとが死にたえたようなしずけさです。わぉ。そして、表紙絵は私の大好きな藤田新策氏。ミステリー絵の大御所。http://www.shinsakufujita.com/what/what_Frameset.htmかっこよすぎです。(でも説明にある伝書鳩は「ポッポちゃん」ではなく「ピッポちゃん」である。)あー、やっぱりハードカバーで集めようかなー!
2006/06/16
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≪墓から死人が生き返った話、人の言葉をしゃべる猫や巨大な蟒(うわばみ)の事等どこから読んでも面白い江戸の世界話集。中には虚偽の噂話や脚色した話も含まれているが、かえって当時の旗本から庶民までの生き方・考え方がわかって興味深い。巻四~巻七を収録。≫ ●『耳嚢』(みみぶくろ)●根岸鎮衛 ●岩波文庫●読書中面白い。怪談や不可思議ごとや日常の小耳に挟んだこと、上様の徳のこと、いろんな話が入っています。原文で読むといっそう味わいがあります。江戸時代はまだ「不思議」が毎日の中に普通に漂っていたんだナァとよくわかります。現代だったら絶対「恐怖体験」「あなたの知らない世界」とおもしろ恐ろしく括られそうですが、江戸はまだ妖怪やらが闇の中に暮らしていたので、ごく淡々と書いてあります。先日読んだのはこんな話でした。 祐筆をしている役人のところにひとりの旅僧がやってきて言うには、今度よんどころない書の会が行われるので、あなたの右腕を二、三日貸して欲しい。祐筆は貸すといってどう貸せるのかと首を傾げたが、僧は「いいからいいから」というばかり。 僧が去ってから、さて筆を取ろうとしたがどうしたことか右腕がピクリとも動かない。ひと文字もかけなくなった。アラ不思議やと二,三日たった頃、かの僧が戻ってきた。おかげで助かりました、お礼にこれをさし上げます、と僧が記した書の掛け軸を差し出された。「これをかけておけば、火災があっても必ず免れます」 言われたとおりに掛け軸を床の間にかけておいた。その後何度か近隣で火事があったが、不思議とその家だけは焼けなかった。 ある時、掛け軸を床の間からはずして土蔵の中にしまったところ、火事がおきたときに家居は全部焼けたものの土蔵だけは焼けずにいたという。これでこの話は終わりです。それがどういう不思議だったかとか、何の仕業かとかは全く追求しない、それがこの本のスタイルです。ただ、こういう話を聞いた、こういうことがあったと人に聞いたことをそのまま書き記しているだけです。でも、それがいいんです。こういう不思議は江戸にとっては日常茶飯事だったようですから。騒ぐ必要がないんです。もう一つ、昔ぱらっと見たときに印象に残っている話があります。妖怪や不思議系ではないのですが、これも淡々と書いてあるくせになまなましいです。細部は覚えていませんが次のような話です。 竹林に立てた隠居所(みたいなもの)で窓から外を眺めていたら、二人の侍が決闘をしているのが目に入った。ひとりは槍で、ひとりは刀。 そのうち、槍で相手の胴を貫いた。槍は背中を突き抜けている。勝負あったかと見えたが、なんと槍を胴に突き刺したまま、槍を貫かせながらその侍が一歩一歩と向かってくる。 槍を持っているほうは、相手がずんずんと近づいてくるのに驚愕しどうしたらいいかわからない。相手はもはやすぐそばまでやってきてしまった。 そこでとっさに、窓から見ていた老人は「槍を捨てなさい」と叫んだ。はっとして槍を捨てると、脇差で斬りつけて、相手は背中から槍を長く突き出したまま絶命した。と、こういう話。うまく書けなかったのですが、この、腹に槍を貫かせて前進してくるってところが…。ずぶずぶずぶっと。なんだか、面白い。岩波、いいわ。
2006/06/13
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≪最盛期を迎えつつある中国・宋の時代。童顔、小柄の趙希舜は、全国を行脚しながら地方役人の不正を監察する「巡按御史」と呼ばれる秘密捜査官。身分は隠しているものの本来は皇帝の名代。威光は絶大である。従者に傅伯淵、護衛役に賈由育の二人を引き連れ、各地で起こる奇怪な事件を次々と解決していく。中国版「水戸黄門」ともいうべき時代ミステリーの傑作。≫ ●『十八面の骰子(サイコロ)』●森福都●光文社文庫●読了日:2006年3月11日日本で言えば水戸黄門、韓国で言えば暗行御史(アメンオサ)といったところです。ものすっごく面白かったです。どの人物も個性的で、私は主人公にくっついている傅伯淵がお気に入り。主人公の趙希舜と違って背が高くて、色白で、頭もよくって、美男子。なので、いつも彼のほうを御史に見立てて、趙希舜が従者のようにしています。でも趙希舜は言動に威厳がありますし、傅伯淵はいつも礼儀正しく、でもちょっといやみな敬語使い。けっこうひとを食った二人の性格で、ただただ勧善懲悪小説に終ってないのでたのしいです。もう一人の人物・賈由育のキャラもいい。登場の仕方も思わずにやっとさせてしまうし、優雅な二人に比べて荒々しく、がさつな彼、親しみがわきます。傅伯淵のむくわれぬ思いも端々に登場し、彼のファンとしてとてもやきもきします。でも、彼の思い人が誰なのかを知って、唖然。ちょっと悲しいような寂しいような…。彼らの間に何があったのか…。私はいつも思うのですが、小説に置いて、私は特に男性キャラに目が行くのですが、男性読者はやっぱり女性キャラに目が行くものでしょうか。この小説も女の子といえば一人か二人出てくるだけです。私は女の子キャラにあまり興味もないし、かっこいい傅伯淵が好きなのでそれで満足なんですが、男性から見るとどうなのでしょうね。まだまだ奥が深そうな作品ですが、続編書いてくれないかなぁ。
2006/06/12
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≪幼年期より神童と呼ばれ、さまざまな学問に精通、また初めてエレキテルを発明し、晩年は戯作者として時の人となった江戸中期の天才・平賀源内。その奇怪な人生を同時代人の杉田玄白や司馬江漢らとの交流の中に描いた傑作小説。≫ ●『源内先生舟出祝』(げんないせんせいふなでのいわい)●山本昌代●河出文庫●読了日:1995年11月16日彼女の作品のほとんどが絶版状態なので、いままで紹介しなかったけれど、私は彼女の作品がものすごく気に入っている。かなり、独特、だのに、濃くなく、すらすら読めてしまう。ほかに『江戸役者異聞』という小説も最高にいいのだが、『源内先生~』の方も捨てがたい。源内先生や、彼を取り巻く人物が、みんな淡々としているようで、個性的。会話や文章も淡々としているけど、けっこう重要なことを書いていたりする。どちらかといえば、ガロ的な作風。源内先生が、気がふれて、弟子の体をスラリスラリと切りつけていくところなんか、なんだか不思議な感覚に陥る。夢なのか現実なのか、すごく好きな場面である。作者が書くラストはどの作品もちょっと寂しくって、切なくって、でもどこかおどけている。それがいい。絶版にはなっているものの、ネット上の古本屋などけっこう在庫があるので、まだ読んでいない作品も集めたい。数年前に友達に貸したまま『源内先生舟出祝』が却ってこない…。悲しい。
2006/06/05
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≪生きることは闘いだ、他人はみな敵だ――貧しさゆえに充たされぬ野望をもって社会に挑戦し、挫折していく青年の悲劇を描く長編。≫ ●『青春の蹉跌』●石川達三●新潮文庫●読了日:1998年3月30日だいぶ昔に読んだ作品ながら、ぼんやりとではあるが印象深い。というのも、内容はあまり覚えていないのだが、ただひとつ「いったん関係ができてしまうと、女っていうのはこうも恐ろしいものなのか」と思ったのは、今でも覚えている。主人公は貧しいがゆえに、高い理想、強い野望を持つ青年。周りに対して「けっ」「ふんっ」という態度をとるような孤高な彼、女に対してもそうやすやすと自分の貞操を捨てたりしない。彼は「童貞」ということにすごく誇り高い、純粋なものを抱いている。それが、後半、彼の前に現れた「そう好きでもない」女によって、彼の童貞は失われ、しかもはまりこんでしまうのである。それを必死に心の中で否定しつつ、誘惑に負けてしまう。そして最大の衝撃「私、赤ちゃんができたみたいなの」的発言が女の口から飛び出るのである。そういう場面だけはなんだか覚えてるのだが、他の内容は忘れてしまった。ただ、「安易に関係を持つと大変なことになることもあるんだな…」と空恐ろしくなったのははっきりと覚えている。とにかく面白い小説であることは確かである。題名の示すとおりこれは青春の蹉跌、若気の至り、崖を転がり続けるように堕ちていくさま、誰しもに可能性があるこの設定、若い人に読んでもらいたいです。
2006/06/04
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≪ひたすら“人間の真実”を追い求めた孤高の作家、周五郎ならではの、重みと暗示をたたえた言葉455。生きる勇気を与えてくれる名言集。≫●『泣き言はいわない』●山本周五郎●新潮文庫●読了日:1998年2月13日山本周五郎作品の中から、味のある重みのある言葉、文章、一節を抜き出した名言集。山本周五郎作品はほぼ全部読みました。新潮文庫から50冊近く出ているものも全部持っています。それほど面白くて、それほど好きです。真面目あり、ユーモアあり、涙あり、笑いあり、喜怒哀楽すべて味わえます。時には主人公の吐く言葉にはっとさせられ、時には脇役のつぶやくひと言にじんわり来て…。そんな、心に強く残る言葉をまとめたこの一冊、ときどき開いてはしみじみ考えたりします。 他の千万人にとっては些細なことでも、或る一人にとっては一生を左右するような場合がある。という文章は、今でも心に留めています。 「人間というものは一方から好かれれば、一方から憎まれる、好評と悪評は必ず付いてまわるものだ、あらゆる人間に好かれ、少しも悪評がないというのは、そいつが奸譎(カンケツ)で狡猾だという証拠のようなものだ」そういわれればそうかもしれない。と思ってしまう。周五郎は現代の時代小説家なので、さすがにいまの世の中にも通じる言葉がたくさんですが、格言めいた「こうせよ」「こうあるべきである」という押し付けがましいものはありません。「人間は自分の力でうちかち難い問題にぶっつかると、つい神に訴えたくなるらしい、――これがあなたの御意志ですとかね、それは自分の無力さや弱さや絶望を、神に転嫁しようとする、人間のこすっからい考えかただ」どきり。ときどき、こういった人間のずるさを指摘するところも見えますが、周五郎自信がそうであるのを自分でもわかっているようです。「話だけ聞いて人のよしあしを云うもんじゃないよ、人間にはみんなそれぞれの事情があるもんだ、その人の心の中へ入ってみなければ、本当のことはわかりゃしない」山本周五郎は、視点を多く持てといっているようです。決して一方向からだけ見るのではなく、あらゆる方向から見て、判断する、それが大事だと。他人を批難する前に、その人の立場になって考えてみることが必要だということです。私もそれは痛感します。ちょっとずれますが、仕事上でも交通ルールでもそうかも知れません。買う側の客、売る側の店それぞれの主張があり、考えがあります。客としてみるとおかしいんじゃないかと思うことも、いざ売る側の店員になってみるとそれが妥当だと思われる、そういうこともあります。私はバイクに乗っての通勤ですが、バイクで走る私から見ると、車のマナーに憤ることもありますが、いざ車に乗っている人から見ると、バイク乗りの行動が頭にくることもあると思います。人の立場にたって考えてみる、ということを心がけるようにしています。この本の中で出てきた言葉にはそれぞれ作品名が書かれているので、気になったら、その作品を通して読むこともおすすめします。
2006/06/02
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≪都会の喧噪から逃れ、草深い武蔵野に移り住んだ青年を絶間なく襲う幻覚、予感、焦躁、模索……青春と芸術の危機を語った不朽の名作。≫ ●『田園の憂鬱』●佐藤春夫●新潮文庫●読了日:2001年1月31日彼と彼の妻とは、その時、各々この草屋根の上にさまようていた彼らの瞳を、互いに相手のそれの上に向けて、瞳と瞳で会話をした――「いい家のような予覚がある」「ええ私もそう思うの」なーんていう冒頭にだまされて、きっとこの先明るく爽やかな展開が訪れるんだろうなんて思ってしまった。全然、さわやかでもなければ明るくもないのである。だめオヤジ系列でした。(『死の棘』島尾敏雄、『火宅の人』檀一雄の小説を、私はそう呼ぶ)希望がほの見えるこの会話こそが、その希望の最後のひと燃えだったわけである。春夫のユーウツの始まりである。主人公の男は生活の憂鬱から段々と妻が気に入らなくなる。返事が気に入らないといっては転ぶほど突きとばされたり、打たれたり、何が気に入らないのか二日も三日も一言も口を利こうとはしなかったり……。こんな男、最悪である。「あの時、おれがあの女、あの純潔な素直な娘と一緒になれさえしたならば、あの人が私をよく統一して、おれは今ごろいろいろな意味でもっと美しいもっと善い生活ができていただろうに」おいおい。ひとのせいかよ。統一ってなんだよ。この間歇的な雨は何日まででも降る……。幾日でも降る……。彼の心身を腐らせようとして降る……、世界そのものを腐らせようとして降る…… 何もかも腐れ……、 腐るなら腐れ……、 勝手に腐れ……、 腐れ腐れ……、 お前の頭が腐れ……、 まっさきに腐れ……、 …………………………、 ………………………、 …………………………、 ………………………、 …………………………、 ………………………、ぉおーい、大丈夫か、春夫ーー!この「腐れ……」コーラスを読んだ時、本気で春夫を心配してしまった。爆笑しながら。太宰のような卑屈な道化がない代わり、春夫はまじめに深く、危険な状態に陥っているのではないか。主人公は一つの丘を眺めているうちに、そこがフェアリー・ランドに思えてくる、という下りがある。危ない! なんだ! フェアリー・ランドって!!しかも男は空想が空想を呼び、彼自身がフェアリー・ランドの王になるのである。超現実的な内容に、ちょっと恐くなる。頼むから現実に戻って来い。「おれには天分もなければ、もう何の自信もない……」救いようもない。主人公には、幻視幻聴のオンパレードである。憂鬱よりも躁鬱。小説も救われないまま終るのでした。こんな小説を26歳で書く春夫って…。ある意味、すごい。
2006/05/31
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≪敗北が決定的となったフィリッピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける……。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的作品である。≫ ●『野火』●大岡昇平●岩波文庫、新潮文庫、他●読了日:1996年2月11日戦争小説はこの『野火』を始め、『ビルマの竪琴』やら『輝ける闇』やら有名どころはだいぶ前に読みました。どれも共通して言えるのは、「感覚の麻痺」です。戦争中は麻痺しなければ到底やっていけないような状況だったのでしょう。私の祖父は海軍だったので、陸軍ほど辛い目を見ていないようですが、色々とあったようです。『野火』の中で印象深いのは、主人公がひとりで東南アジアの陸地をさ迷ううちにめぐり合い、行動を共にするようになった兵士が、ふと、肉を調達してくるところです。敗戦の色濃く、食べるものなんて無く、自分も何らかの病気に冒されている中で、その男はどこからか肉を見つけてきては、腹の足しにするようになります。肉を持ってくる男はもちろん、主人公も、読者さえもそれがどこから来た肉なのかうっすらわかっているのに、あえて口にできない、不気味さ。戦争小説って、こういう精神的内面の闇が全体的に浸透しています。主人公が最後にとった行動が正しかったのかそうでなかったのか、また果たして主人公は「そうしたのか」、思わずうなってしまいます。またいつか読み返してみたい小説です。
2006/05/29
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春の雪改版≪維新の功臣を祖父にもつ侯爵家の若き嫡子松枝清顕と、伯爵家の美貌の令嬢綾倉聡子のついに結ばれることのない恋。矜り高い青年が、〈禁じられた恋〉に生命を賭して求めたものは何であったか? ――大正初期の貴族社会を舞台に、破滅へと運命づけられた悲劇的な愛を優雅絢爛たる筆に描く。現世の営為を越えた混沌に誘われて展開する夢と転生の壮麗な物語『豊饒の海』第一巻。≫ ●『春の雪』●三島由紀夫●新潮文庫●読了日:3,4年前 去年、売れた、というのも、妻夫木聡と竹内結子主演で映画が放映されたからです。しかし、ですよ。果たして何人の人が、あの本を読了できたというのか、それが心配です。映画の原作だから、と安易な気持ちで手にするような内容の小説では、決して無いのです。 三島由紀夫には読みやすい本も面白い本もたくさんありますが、三島初読みに『春の雪』はふさわしくないのです。だって、あれを書き終えてすぐに、彼は割腹自殺をしてしまうほどの、熱の入れようなんですよ。それを、何の思い入れもなしに「初めて読む三島の作品」にはして欲しくないのです。 私は、去年3巻まで読んで、ちょっと挫折中。面白いんです、面白いんですが、内容の広がりが膨大すぎて・・・やはり一巻が一番読みやすいのではないでしょうか。舞台も日本だし、若い男女の恋愛もあるし。 2巻3巻と、主人公は、いろんな人物に転生して、友人である本多の前に現れます。3巻では、なんとタイですよ、舞台は。タイで本多は「自分は日本人の生まれ変わりである」というタイの少女と出会うのです。 話は大いにずれますが、タイの首都バンコクの正式名称は長い、というのは有名ですね。この3巻にバンコクの正式名称がカタカナでズラズラ~っとかかれている部分があります。3巻を読んでいる時、私は中国にいまして、タイ人の友達にそこの部分を読んで見せたのです。“クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット” 多少の音の違いはありましたが、タイの友達は「上手ー、あってるー」といってくれました、そして彼女も続けてベラベラベラーっと声に出していってくれました。 だいぶ脱線しました。『春の雪』主題歌は宇多田ヒカルです。なぜ・・・彼女が三島を好きだから。本当か・・・?私はバイト先が書店と言っても、CDコーナーに立っていた時期もあり、その頃は毎日4時間この主題歌を聴いていたのです。 ♪母さん、どうして~、ああーあー・・・という暗い歌いだし、全体的に暗~い歌なのです。でも、あの手の映画に歌は必要ないと思います。荘厳なピアノ協奏曲かなんかで充分いいのに。貴族の話だから。 私も、三島由紀夫にはいまだに、にやけるような浪漫な思い出もあるのですが、長くなるのでやめときます。映画は観にいきました。妻夫木くんのファンだから(笑竹内結子は苦手だけども!原作の雰囲気を崩してはいないのですが、あんまりにもスローすぎて見てて疲れました。でも、本多役の人が最高によかった。聡子が駆け込んだ寺に、清顕が聡子に会いに行くのですが、何度も門前払いを喰らって、清顕がとうとう病に臥せります。それを気の毒がり、友人の本多が寺の尼に掛け合うのですが、その真摯な話しぶり、深い友情がにじみ出ていて、あそこで泣けてしまった。白褌一丁であぐらをかいた妻夫木くんのお腹の出方は異常だった。私の通っていた母校の高校がある市が、妻夫木くんの出身地なのですが、彼があの土地の方言を使うところが想像できずにいます。映画でよかったのは、田口トモロヲでしょう。彼は何の映画でもいい味を出してます。『春の雪』でも「く~、お前~!!」と思わず抱きつきたくなるようなおいしい役をこなしてました。なんだか話が映画に脱線しちゃったな。
2006/05/28
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野ざらし姫 舞姫改版 天人五衰改版 石川啄木新訂版 にんじん改版 明治波濤歌(下) 青銅の基督改版 文鳥改版 俘虜記改版 妖異金瓶梅 漢方以上。いやー、壮観壮観。6月から読み始める予定の本です。なんだか、この前の記事にも載っていた本もちらほら。買いだめした本が多すぎて、切羽詰って何十冊も同時読みをします。それで、とりあえず全部手をつけてみて、面白いと思ったものを集中して読みつつ、他の本もちょこちょこ読み進めるという、かなり邪道な読書方法です。上記の本はまだ全く手をつけていない本であって、手をつけた本は他に25冊ほどありまして、それも同時に読むとなるともう何がなんだかわからないです。50冊同時読みか。無理だーそうなると、いつまでもお手つきにならないかわいそうな本が出てくるのですが、がんばって読みます。と同時に、急にまた中国語の勉強を始めたり。この熱しやすく冷めやすい性格、どうにかしないと…。それにしても、新書にいたってはエロ系の本が多いのって、趣味が知れますね。や、でも新書って面白いんですよ。
2006/05/26
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「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って」そう言い残して逝った女の墓の傍で、男は百年待った…。不可思議な幻を紡ぐ「夢十夜」そして、美しさを追い、心のやすらぎを求めた「草枕」。絵画的で詩情あふれる文章の中に“理智の人・漱石”の側面をも覗かせる名作。 ●『夢十夜』●夏目漱石●集英社文庫、他●読了日:1997年7月16日漱石にしてはとっても不思議な短編集である。浪漫あり、哀しみあり、精神の奥を覗く恐怖あり、ユーモアあり、みた夢を淡々とつづっているだけなのだが、どれもこれも印象深い。腕組みをして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。第一夜。和尚の室を退がって、廊下伝いに自分の部屋へ帰ると行燈がぼんやり点っている。片膝に座布団の上に突いて、燈心を掻き立てたとき、花のような丁子がぱたりと朱塗りの台に落ちた。同時に部屋がぱっと明るくなった。第二夜。六つになる子供を負っている。確かに自分の子である。只不思議な事には何時の間にか目が潰れて、青坊主になっている。自分が御前の眼は何時潰れたのかいと聞くと、なに昔からさと答えた。声は子供の声に相違ないが、言葉つきはまるで大人である。しかも対等だ。第三夜。等等、どの夢の書き出しも見事である。始めには必ず「こんな夢を見た」とつく。淡々と。第一夜はとても好き。女がかわいらしい。第二夜は迫り来る精神的圧迫。しかもそれがなんなのか正体がわからない不安。最後の一行の幕切れのよさ。第三夜はちょっとした怪談仕立て、でもかなり不気味。第四夜は、けっこうな恐怖をさらりと書いている。言葉のリズムが秀逸。第五夜は不思議。夢はいつの間にかそう設定されていて違和感なく進むのだが、どこか異様である。第六夜は時代の空間が交わった不思議な話。第七夜は死への深い恐怖と、それをいままさに味わいつつ死へ落ち込んでいく、漱石の心の闇。第八夜は白と赤のコントラスト。第九夜は子供の頃の思い出、恐怖の潜伏。第十夜は次々に現れる豚が象徴しているものを想像させられる。最後の一行が漱石流の〆。『夢十夜』かなり好きです。
2006/05/24
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ある時代が混乱して見えるのは、見るほうの精神が混乱しているからにすぎない。良くも悪くもジャン・コクトー。ジャン・コクトー
2006/05/23
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≪中島敦は、幼時よりの漢学の教養と広範な読書から得た独自な近代的憂愁を加味して、知識人の宿命、孤独を唱えた作家で、三十四歳で歿した。彼の不幸な作家生活は太平洋戦争のさなかに重なり、疑惑と恐怖に陥った自我は、古伝説や歴史に人間関係の諸相を物語化しつつ、異常な緊張感をもって芸術の高貴性を現出させた。≫●『山月記』●中島敦これは目で読むよりも、声に出して読んだ方が、音のすばらしさがよく伝わります。私は音読はよくしませんが、朗読CD を聴くのは好きです。昔は朗読CDなんて暇でしょうがなかったのですが、ある日朗読CDお試し版みたいなCDを手に入れて聞いた中にこの『山月記』があったのです。朗読者は江守徹。江守徹の朗読がすばらしい。彼は声もいいし、かつぜつも、台詞回しもなめらかで、聞いていて心地いいです。彼の声が『山月記』の冒頭部分を読み出したとき、とても気持ちよかったです。目で見るだけでは漢語の羅列で難しすぎるのですが、耳にするとこうも心地よいとは。『山月記』は孤独な人間の心をつづった作品です。自分に才能があり、ありすぎるための傲慢さで受け入れられず、それを自嘲しつつも自分が受け入れられる日を夢見る、悲しい男の話です。なんだか、作者の中島敦とダブってきます。彼も孤独に死んでいったように思えてなりません。朗読CDは新潮社より。↓http://book.shinchosha.co.jp/cgi-bin/webfind3.cfm?ISBN=831003-9
2006/05/23
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少年少女の仏教新装版●『少年少女の仏教』●土屋昭之 ●朝日新聞社 バイト先と違う本屋で、面白そうな本を物色していると、ふと手にとって、ふと開いたページに書かれていたことがなんとなし胸に残り、つい買ってしまった。私は個人的に仏教徒なんですが、こういう言葉はなんだか救われます。ほとけ様のことば お前はお前でちょうどよい 顔も身体も名前も姓も それはお前にちょうどよい 貧も富も親も子も 息子の嫁もその孫も それはお前にちょうどよい 幸も不幸も喜びも 悲しみさえもちょうどよい 歩いたお前の人生は 悪くもなければ良くもない お前にとってちょうどよい 地獄へ行こうと 極楽へ行こうと 行ったところがちょうどよい うぬぼれる要もなく 卑下する要もない 上もなければ下もない 死ぬ日月さえちょうどよい 仏さまと二人づれの人生ちょうどよくないはずがない これでよかったと戴けた時 億年の信が生まれます
2006/05/18
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「父ちゃんと母ちゃんは相談をしてね、かあいい文六ちゃんが、狐になってしまったから、わたしたちもこの世に何の楽しみもなくなってしまったで、人間をやめて、狐になることにきめますよ」 ≪新美南吉(1913-43)は,わずか29歳,2冊の童話を出版しただけでこの世を去ったが,底抜けに明るく,ユーモアと正義感にあふれた彼の童話は,今日多くの人の心をとらえ,賢治,未明,三重吉らとならぶ児童文学の代表的作家の1人となった.「ごん狐」「おじいさんのランプ」「最後の胡弓弾き」「花のき村と盗人たち」等14篇を収録.≫●『新美南吉童話集』●新美南吉(にいみ なんきち)●岩波文庫●読了日:2,3年前の或る日 『ごんぎつね』や『手袋を買いに』で有名な新美南吉です。でも、私が思わず声を出して泣いてしまったのは、この『狐』という作品です。 文六ちゃんは近所の子達に連れられてお祭りに行きます。大人の下駄をはいてきてしまった文六ちゃんのために、みんなは途中で下駄屋に入って、小さい下駄を買ってあげます。すると、そこのおばあさんが「晩に新しい下駄を下ろすと、狐につかれるぞ」といいます。 それで、みんな何だか恐くなって、祭りが終ってもだれも文六ちゃんを家まで送っていこうとしません。 一人さびしく家に帰った文六ちゃんは、お母さんの胸に抱かれてねむりながら、言います。「もし、僕が、ほんとに狐になっちゃったらどうする?」お母さんは笑って答えませんが、文六ちゃんがしつこく聞くので、真面目な顔つきになって、それじゃあ、私たちも狐になるよと言います。文六ちゃんは、冬、餌をとりに山へ出たとき、猟師に見つかったらどうする?とお母さんにたずねます。するとお母さんは答えますが、それを聞いた文六ちゃんは泣き出してしまいます。 お母さんが、何と言ったか、私はあえてここでは書きません。お母さんの言った言葉に、文六ちゃんと同じく、私も泣き出してしまいました。大変な、母の愛です。いつ読んでも胸がギューッとなります。童話って、子供心にも大人心にもいいものです。※yahooブログからの転載です。アシカラズ。
2006/05/16
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●『帯をギュッとね!』●河合克敏●小学館(サンデー)●コミック≪5人の中学生が昇段試験で黒帯をとった。その5人が高校で再会。そして全員一年生の新生・浜名湖(はまなこ)高柔道部がスタート!!≫昨日に引き続いてサンデーコミックです。こちらは柔道漫画。柔道漫画って言うと「押忍ッ!!」とか「おりゃー!」とか汗臭いごついイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、この漫画は爽やか、かつ、ギャグ満載な内容です。部員がまずほどほどかっこいい&かわいい(女子キャラあり)です。これ読んでると、柔道始めようかなァ、なんて考えてしまいます。もちろんどのキャラクターも魅力的、トコトン嫌なキャラなんて出てきません。すっごく強いライバルでもギャグに巻き込まれるし、でも決めるところはしっかり真面目に決める、緩急ほどよいストーリー展開。その時代時代のギャグが盛り込まれているので、20代後半から30代後半の人が読むと、多分かなり笑えます。絵がしっかりしていて、手抜かりがないので、読んでて安心。おすすめ柔道漫画です。
2006/05/15
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●『健太やります!』●満田拓也●小学館(サンデー)●コミック野球漫画『MAJOR』で人気の作者のバレー漫画です。メジャーも最初の頃は読んでましたが、なんだか途中で飽きちゃいました。主人公が横着だから。その点、けっこう昔に描かれたこの『健太やります!』の主人公・井口(いぐち)健太はお人よしで、あんまり自信もなく、(バレーをするにしては)背が低いというコンプレックスを持った男子高校生。ストーリーは高校に入学した健太が中学でもやっていた(ただし、補欠)バレーを続けようと、バレー部に入部するが、先輩はたったの3人、やる気無し、実力無しのダメ部員。そこへ、健太と同じく入部を希望する前田隆彦がやってくる。背も高く、バレーの才能も抜群。やる気満々の新入生二人に先輩達はたじたじとなりながらも次第に、部は活気付いてくる。というべたべたな話なんですが、これがまた泣けるところも満載で…。とにかく、健太の泣き落としがけなげなのです。あと、それを取り巻く先輩、ライバル、友達、コーチなど、人物がいたって個性的、且つ魅力的。中盤から登場する、めちゃくちゃ厳しいコーチが、またかっこいいんです。ああいう人、惚れる。メジャーなんかの比じゃありません(と私は思う)。絵こそ始めはマアマアですが、中盤辺りから確実にうまくなってるし、コマ割りもストーリーも上手だから、ぐいぐい読ませます。何せ、この数日間重要な試験の勉強で頭が爆発しそうだった私が、息抜きにと1巻を手に取ったが最後、26冊全巻読んじゃいましたから。(私の持っているのはコミック版サイズ)サンデーのスポーツ漫画は面白いな。ほかにもいつか紹介します。あとはJOJOを全巻、集めたい。
2006/05/14
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≪時は明治。有名な大学教授・酒井の下で修行する文学士・早瀬主税が密かに所帯を持っていたのは、芸者あがりのお蔦であった。ところが酒井の愛娘に縁談が持ち上がり、お蔦との関係を師に責められた主税は別離を決意、お蔦は泣く泣く身を引いた。これが後に舞台で満場の紅涙を絞った「湯島の白梅」の名場面である。純愛の難しかった時代の、お蔦を始め女性たちの健気な愛が胸を打つ。≫ ●『婦系図』(おんなけいず)●泉鏡花●新潮文庫●読了日:2001年1月30日素顔に口紅で美いから、その色に紛うけれども、可愛い音は唇が鳴るのではない。お蔦は、白歯に酸漿を含んで居る。…… 泉鏡花『婦系図』の冒頭です。きれいです。この鏡花独特のリズムが好きです。次に続く江戸弁も気持ちがいいです。 鏡花は女の人というものに、無限の愛情と同情と尊敬、そして恋慕の情を持っているから、だから彼の作品に出てくる女の人は、愛らしくてせつないのだと思う。 これは、鏡花の実体験を織り交ぜた作品として有名です。主人公である早瀬主税は書生。道学先生こと酒井先生の下で勉強する身でありながら、お蔦という女郎に惚れてしまいます。早瀬が鏡花、酒井が尾崎紅葉、お蔦が鏡花夫人。師匠である紅葉が鏡花に言ったという、「俺を取るか女を取るか!!」と言う場面もあります。 小説では早瀬は酒井についていくことにして、お蔦とは泣く泣く分かれます。実際には鏡花も先には恋人を諦めるフリを見せて、紅葉が逝去してから、晴れて夫婦になっています。 酒井の登場場面が、これまたかっこいいんです!早瀬がお蔦との相性を知りたいために、古本屋の前で三世相(相性本)を買うか買うまいか悩んでいる場面、店主に値を聞いて、あまりに高いので怒って立ち上がる主税。。。 憤然として立った。主税の肩越しにきらりと飛んで、かんてらの燻った明を切って玉の如く、古本の上に異彩を放った銀貨があった。同時に、 「要るものなら買って置け。」と錆のある、凛とした声がかかった。 主税は思わず身をすくめた。帽子を払って、は、と手を下げて、「先生。」 かっこいい~。で、慌てて「や、要りません」と言う早瀬に。。酒井は、すらりと懐手のまま、斜めに見返って、 「要らないものを、何だって値を聞くんだ。ひやかすのかい、お前は。」 「…………」 「ひやかすのかよ。」 「ええ、別に、」とうつむいて恨めしそうに、三世相を揉み、且つ捻くる。 やー、尾崎紅葉のすごさがわかる…。有無を言わせないですね。ラスト近くになって、お蔦は胸をわずらい、瀕死の状態になった時、酒井はとうとう二人を許します。が、早瀬は遠くの国にいて、逢う事ができません。お蔦はそばにいる酒井を早瀬と思い込んで、手を取って、病床から言います。「早瀬さん。」 「お蔦。」 「早瀬さん……」 「むむ、」 「せ、先生が逢ってもいいって、嬉しいねえ!」 酒井は、はらはらと落涙した。 酒井先生の言葉が、また、泣けるのです。「未来で会え、未来で会え。未来で会ったら一生懸命縋り付いて居て離れるな。己のような邪魔者の入らないように用心しろ。きっと離れるなよ。先生なんぞ持つな。(略)共倒れが不便だから、剣突を喰わしたんだが、可哀相に、両方とも国を隔たって煩って、胸ひとつ擦って貰えないのは、お前たち何の因果だ。さぞ待って居るだろうな、早瀬の来るのを。あれがくるから、と言って、お前、昨夜髪を結ったそうだ。ああ、高島田が好く出来た、己が見たよ。」 鏡花の作品って、どうしていつも悲しいのですか・・・。
2006/05/07
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≪思いやりの深かった妻が、夫の「情事」のために突然神経に異常を来たした。狂気のとりことなって憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻、ひたすら詫び、許しを求める夫。日常の平穏な刻は止まり、現実は砕け散る。狂乱の果てに妻はどこへ行くのか?―ぎりぎりまで追いつめられた夫と妻の姿を生々しく描き、夫婦の絆とは何か、愛とは何かを底の底まで見据えた凄絶な人間記録。≫ ●『死の棘』●島尾敏雄●新潮文庫●読了日:2001年1月4日島尾敏雄という人物について知っているのは、昔、海軍だったということ。特攻隊の指揮官時代の写真が印象深い。真白の軍服に、目深にかむった軍帽の下の目がかわいいと思っていた。そんな可愛い島尾の本当の姿が、この作品で暴露される。一通り読んでしまって思ったのは、よくもこうだらだらと同じような内容を書き続けられるナァということ。決して悪い意味ではなく。一体最後はどうなるんだろうという好奇心が、一頁ごとに強くなっていく。でも結局収拾がつかなくなってしまう結末であった。十一月には家を出て十二月には自殺する。それがあなたの運命だったと妻はへんな確信を持っている。「あなたは必ずそうなりました」と妻は言う。この時点で彼女はもう危ないのである。言っていることが少し、おかしい。読んでいると、作者の人生観、家庭の事情がよくわかる。そして不安になる。二人の子供は果たして正常に育ったのか。解説によると、小説内で伸一という子供は、作者の息子であり、のちに画家になったらしいが、どんな絵を描くのだろう。そしてその子供が、イラストレーターのシマオマホさん。「おとうさん、夜あんまりおそくなると、おかあさんがきちがいになって、うちを出て行っちゃうよ。ぼうやもマヤとくっついて行っちゃうよ」と伸一は言うのである。5,6歳の子供が。主人公のトシオは関係していた女に別れを告げに行く。「もう来ることはできません。今ぼくの生活はいつ破滅するかわからない。もう来ませんから」もう破滅しとるやろ!でも女に未練たっぷりなトシオ。「いいわ、わかったわ。じゃ、あたしのこと、きらいになったのね」「きらいになったのじゃない」「すき?」「うん、すきだ」言ってしまってから自分で驚き、涙がとめどなく出てきた。だめだ、こりゃ。もはや頭に変調をきたした妻であるミホは事あるごとに故郷の言葉(おそらく、奄美大島)を使うのだが、それが却って不気味な感覚を催す。「ウニマがやってくるの。ウニマがいやなことを思い出させるんだ。ウニマがいろんなことをあたしに言う。ウニマが来る! ウニマが来る」他の方言には説明があるのに、この「ウニマ」だけは何の説明もない。恐い。不気味。トシオも途中から一緒に気の狂ったふりを始める。実に見苦しい。お互いに「出て行く」とか「死ぬ」とか言っては暴れ、一方が一方を必死で止めて、その後は抱き合って、泣く。最悪である。こんな夫はいやだし、こんな父親も嫌だ。なんだか汚い人間だと思った。救われない小説でもあり、救いようのない、また救いたくもない小説である。
2006/05/06
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≪愛する男との性交渉にオルガスムス=音楽をきくことのできぬ美貌の女性の過去を探る精神分析医――人間心理の奥底を突く長編小説。≫●『音楽』●三島由紀夫●新潮文庫●読了日:1997年7月19日最近、三島由紀夫が主演・監督した『憂國』のDVDを見てからというもの、切腹ショックに陥っています。貴重な映像なのに、二度とは見たくない、リアルすぎる切腹シーン。ぅぅう…。三島由紀夫の作品の中で比較的軽めで明るめな『音楽』。読んだのが9年前で、しかもその頃上海にいたような気がするので、詳しくは覚えていないのですが、楽しい小説でした。オルガスムス=音楽という感覚の用い方がまず楽しい。そしてそれを探るために、精神科医や他の人が協力するのですが、なんだかわくわくします。さて、気になる最後、音楽が聴けたかどうか…。それは読んでからのお楽しみ。三島のかたっくるしい文学もいいですが、こういった軽めの小説も大好きです。それにしても『憂國』のなかの三島由紀夫。絶対自己陶酔の極みです。軍帽を目深にかむって、白褌一丁って、どうよ!?
2006/05/05
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≪人間にとって最もだらしがない気分とは?カーディガンを着る人に悪人はいないのか?新聞、人名、日常会話、あるいはバレリーナの足に関する考察から、その裏に潜む宇宙の真理に迫る。牛に向かってひたすら歩き続け「牛的人生」を探究する岸田賞作家が、独自の視点で解き明かす奇妙な現象の数々。本書を一読すれば、退屈な日常がなんだかシュールで過激な世界に変わってくる。≫●『牛への道』●宮沢章夫●新潮文庫●読了日:去年の或る日 宮沢章夫の文章は、濃すぎない笑いが感じられて、面白いです。笑いを狙っているのではなくて、日常の些細なことを、ありのままに書いているのに、読んでいると、つい「っふ…」とにやけてしまいます。 その描写は、つい想像して、やはり「っふ」となってしまいます。こういったエッセイにある「あー、あるそういう状況、わかるー」ということも出てきます。ふと力を抜きたいときに読むのに、おすすめです。※ヤフーブログのほうからコピーです。最近全然本を読まなくて。そういう時期らしい。
2006/05/02
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『太陽の帝国』スピルバーグ監督出演:クリスチャン・ベール/ジョン・マルコヴィッチ/伊武雅刀DVDです。高校生の頃、近所のレンタルビデオやでふとみつけて見て以来、今でも好きで見てます。第二次大戦中に上海の租界地に住むイギリスの少年が、親とはぐれ、アメリカ人たちと付き合いながら収容所でたくましく育っていく話。始めは金持ちの坊っちゃんで身なりもきれいだったのが、収容所暮らしのなかで次第にチンピラみたいになるのですが、心は純で弱くて、優しい子です。当時の上海の様子も忠実に再現されていて、見ていて楽しいです。主人公のジムが上海の浮浪者の男の子に追いかけられながら上海の町を全速力で駆けるときの恐怖感なんか、よく伝わります。日本軍も重要な役割で出てきますが、ナガタ軍曹に伊武雅刀。伊武さん、大好きです。あと、片岡孝太郎も特攻隊の若者役で出てきます。最後に行くにつれて、とおく東の空に原爆の光を見る場面も神々しい演出です。その後、ロシアの参加により戦争は終結するのですが、誰もいなくなった収容所をジムが大声で笑いながら自転車を乗り回していると、ふっと前に立ちはだかるロシア軍人にぶつかります。ジムははっとしながら、おずおずと懐からミルクの缶詰を取り出し、片手で差し出しながら言います。“I Surrender……”ロシア軍人が缶詰を受取り、ミルクを一口ごくりと飲む場面、とても印象深いです。そして、ラストがまた泣けるのです。何度見ても、いいです。
2006/04/29
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戦争が道徳を失わせたというのは嘘だ。道徳はいつどこにでもころがっている。しかし運動をするものに運動神経が必要とされるように、道徳的な神経がなくては道徳はつかまらない。戦争が失わせたのは道徳的神経だ。この神経なしには人は道徳的な行為をすることができぬ。従ってまた真の意味の不徳に到達することもできぬ筈だった。 三島の匂いがぷんぷんします。彼はこういう人だ。頭がいいんです。『鍵のかかる部屋』収録の『慈善』の一節。鍵のかかる部屋改版
2006/04/27
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●山手樹一郎●春陽文庫 なんとしても寂しい。東助は金をしまってなにかを求めるように茶の間へきた。今まで津也が座っていた炬燵へ膝を入れて、ぼんやりあたりを見まわすと、箪笥の前へ片寄せた針箱と並べて、脱いだふだん着がそでだたみにしておいてある。(略)じいんと目の奥が熱くなって、思わず横になりながら手をのばしてそれを引きよせ、枕がわりに頬をうずめた。しみいるような妻のにおいが胸を揺さぶる。「これだけはそっともらっておいてもよかろう」そんな気になると、ひとりでに涙がわいてきた。ほかほかとあたたかい炬燵である。 時代小説というと、皆さんは、池波正太郎や山本周五郎、藤沢周平などを思い浮かべるかもしれません。が、私がひそかに大好きな時代小説家は、この人、山手樹一郎なのです。 彼の小説は春陽堂の文庫で出ています。昔から、書店の本棚の一角にある猩猩緋色の背表紙、その存在を認めつつ、滅多に手をのばしませんでした。何かの拍子で手に取ったことがあっても、表紙の国貞の浮世絵になんだか、池波正太郎たちと違う雰囲気を読み取って、やっぱり棚に戻しました。 が、なぜでしょう、去年、ふっと彼の短編時代小説全集を買ったしまったのです。すると、これが、面白い。池波正太郎よりのめりこみ、山本周五郎より明るくて、藤沢周平の悲哀が漂わない。一言で言えば、後味がよい小説 なんです。 さすが桃太郎侍の作家です。途中色々とあるけど、終わりはじわじわと口元がゆるんでしまうような、ハッピーエンドです。 上で引用した文章の作品、旦那さんがなんとなくかわいそうで愛しいです。いつまでも心を開いてくれない妻に、勤務上の失態で永のお暇となるのをきっかけに、とうとう離縁状をそれとわからせずにもたせるのですが、それでも未練が残って、炬燵に入りながら、妻が脱いでいった着物を引き寄せて、顔をうずめ、涙を浮かべながら、うとうとしてしまう。 可愛いじゃありませんか。 猩猩緋の背表紙は長篇時代小説全集のほうです。花浅黄色の背表紙が短編時代小説全集、一冊だけ品切れで買えなかったのが、とても残念です。この全集も、棺に入れる本リストの中に入っています。私の棺は、重いが、さぞよく燃えることでしょう。 春陽文庫、山手樹一郎の短篇小説の再刊を始めています。背表紙は燃えるような赤。旧装丁もいいけど、新装丁もいい。買わなきゃ。
2006/04/26
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≪氷雪舞う「皇国」最北の地に鋼の奔流が押し寄せた。最新の装備に身を固めた「帝国」軍の破竹の進撃に「皇国」軍は為す術なく壊走する。敵情偵察を命じられた殿軍の兵站将校、新城中尉は僚友の為、剣牙虎の千早と共に死力を尽くし、敵の猛攻に立ち向かうが…。≫ ●『皇国の守護者』●原作:佐藤大輔/漫画: 伊藤悠 ●原作:中央公論社(ノベルズ)漫画:集英社バイト先の本屋での棚卸しの時から気になっていた漫画です。制服フェチの私としては、兵隊ものなんかは気になるのです。一瞬、2.26事件モノかと思ったけど、どうもそうではない様子。先日、第3巻が出ていて、その帯に『安彦良和 絶賛!!』と謳ってありました。安彦さん、めちゃくちゃ好きなんです。で、買ってみました。結果、面白かった。どこがどう面白いとはうまくいえないほど、展開にまだついていけてないのですが。キャラクターもなじめそうと思ったら死んだりして、設定がいさぎよく「こういう世界である」という風に、説明ナシに色々な生き物が活躍するので、なんだかとても新鮮です。いささか展開が速いようにも思えるのですが、絵がうまいので気にしない。主人公が魅力的なので気にしない。どこが魅力的と言えないのも気にしない。調べていたら、漫画を描いている伊藤悠氏は女性だという話でしたが、本当だったら、この絵のごつさ、うまさに拍手します。絵が上手だと思う基準はオヤジキャラがちゃんと描けているかどうか。少女漫画におけるオヤジキャラの線の細さといったら…。伊藤悠氏の絵は素朴ですが、しっかりしていて、何しろオヤジキャラがうまい。むしろかっこいい。オヤジ好きの私にとっては素敵な漫画です。さっきうっかりネタバレアリのサイトを見てしまい「あいつも死んじゃうのかよ…」としょげてしまいました。多少話がつかめないところは原作で補うとしましょう。原作えらい出てる。壮大なクロニクルと思えば、楽しめそうです。
2006/04/23
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●『星の王子さま』●サン・テグ・ジュぺリ/内藤濯訳●岩波書店 『星の王子さま』といえば、岩波少年文庫から出ているあれが、定番でした。訳者の内藤濯(あろう。いい名前)さんが、いい日本語を使っています。 でも、最近は色々な出版社から、色々な作家さんが新しく訳した『星の王子さま』が出版されるようです。 新聞記事曰く、「内藤さんの訳は子供向けだから、新訳にすると、味わいが変わってくるだろう」とのこと。ちょっと心配。 物語の中に、きつねが出てきます。 「きみ、だれだい?とてもきれいなふうをしてるじゃないか……」と王子さまがいいました。 「おれ、キツネだよ」と、キツネがいいました。キツネは王子さまに仲良くしてくれと頼みます。 「でも、どうしたらいいの?」と王子さまがいいました。 キツネが答えました。 「しんぼうが大事だよ。最初は、おれからすこしはなれて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目でみる。あんたは、なんにもいわない。それも、ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだんと近いところへきてすわれるようになるんだ……」 あくる日もやってきた王子さまに、キツネは言います。 「いつも、おなじ時刻にやってくるほうがいいんだ。あんたが午後四時にやってくるとすると、おれ、三時には、もう、うれしくなりだすというものだ。そして、時刻がたつにつれて、おれはうれしくなるだろう。四時には、もう、おちおちしていられなくなって、おれは、幸福のありがたさを身にしみて思う」(中略) 王子さまが、わかれていく時刻が近づくと、キツネがいいました。 「ああ!……きっと、おれ、泣いちゃうよ」 そして、さよならを言いに来た王子さまに、キツネは、ひとつ、秘密をおくります。 「なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」 この言葉は、『星の王子さま』を語るのに、欠かせない言葉ですね。キツネが王子さまに教えたんです。私はやっぱり、内藤さんの訳が好きです。一応、新訳も読んでみますが、内藤さんの言葉にはある種の含みがあるように思われます。
2006/04/22
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≪『猫は煙を気にする様である。消えて行く煙の行方をノラは一心に見つめている。…「こら、ノラ、猫の癖して何を思索するか」「ニャア」と返事をしてこっちを向いた。ノラはこの頃返事をする。』(「ノラや」より)。百間宅に入りこみ、ふいに戻らなくなったノラ。愛猫の行方を案じ嘆き続ける「ノラや」を始めとして、猫の話ばかりを集めた二十二篇。≫ ●『ノラや』●内田百間(うちだひゃっけん。けんは門に月ですが、字が出ないので、記事の中では間で代用します)●中公文庫、ちくま文庫うちには猫が6匹います。みんなそれぞれノラを拾ってきて、いつのまにか6匹になりました。みんなかわいくて、個性が強くて、仲もよいです。その中の1匹が、もう1週間ほど戻りません。彼は1週間前にも3日くらい戻ってこなくて、ふっと帰ってきて、みんなで喜んでいたら2,3日たった夜にまた出て行きました。それ以来戻ってこない。それで、この本を引っ張り出してきました。理由はないのですが、百間先生の気持ちに浸りたくて。百間先生は猫なんかすきでもなかったのが、ある日庭に迷い込んできたのらねこを飼う事になります。それこそ猫かわいがりに可愛がって、始終「ノラやノラや」といっている。そのノラがある日ふっと帰らなくなった。三月二十八日木曜日半晴半曇ストーヴをつける。夕方から雨となり夜は大雨。ノラが昨日の昼過ぎから帰らない。一晩戻らなかつた事はあるが、翌朝は帰つて来た。今日は午後になつても帰らない。これが百間先生の悲しみの始まりです。ノラのことを思うと涙が止まらず、夜も寝られず、食欲も出ない。毎日毎日ノラのことが気がかりで、探しに出ては肩を落として帰ってき、物音がすればノラかと思い、猫好きの人に猫の行動をたずねては一喜一憂し、読んでいるこちらが百間先生の弱りぶりに泣いてしまう。寂しくてしょうがないから、弟子や友人に泊まりに来てもらったりするが、その人たちが帰るとノラのことが思い出されたまた泣いてしまう先生。夕方平山からの電話の時、猫捕りに持つて行かれたのではないか、居酒屋のあのおやぢさんがさう云つたと云ふ。それは今まで考へなかつた事ではないが、さう云はれてまた悲しくなり、暗くなるまで声を立てた泣いた。何の根拠でそんな事を云ふのか。風呂蓋の上にノラが寝てゐた座布団と掛け布団用の風呂敷がその儘ある。その上に額を押しつけ、ゐないノラを呼んで、ノラやノラやノラやと云つて止められない。百間先生は迷子猫のビラをたくさん作って、警察署にも配ります。英文も用意すれば、子供が見てもわかるようにと友人に頼んで新仮名遣いのビラも作ってもらう。するといろんなところから「ノラではないか」との情報がはいり、そのたびに奥さんが確かめに駆けてゆくのですが、どれも違っていたとの報告にまたも涙する百間先生。ビラには電話番号も書いているから、ひどいいたずら電話もかかってきます。「もう戻つてきませんよ」だの「殺されて三味線の皮に張られましたよ」だの言ってぷつっと切る。ひどい。何ヶ月も立った頃庭にノラとそっくりの猫が迷い込んできます。その猫を見るたびにノラの事が思い出されてまた涙。ある日近所の猫がその猫をいじめようとするのを奥さんが助けるのですが、この猫はこうしてたすけてやれるけど、いなくなったノラがどこかでいじめられた時誰がたすけてくれるのだろうかと思うと、また涙。やがてその猫もクルツと名づけられて、百間先生の家で飼われることとなります。このクルツのことを書いた日記も、昨日読んでいて号泣してしまいました。読むたびに泣いてしまう。あの頑固でしょうがない百間先生が猫のことでこんなになるなんてと、或いは滑稽に見えるかもしれませんが、猫好きのわたしには笑えないものがあるのです。ひたすら胸がしめつけられるのでした。うちの猫も早く帰ってきてくれないかしら・・・。
2006/04/15
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「介錯がないから、深く切ろうと思う。見苦しいこともあるかもしれないが、畏がってはいかん。どのみち死というものは、傍から見たら怖ろしいものだ。それを見て挫けてはならん。いいな」 ≪十六歳で、少年の倦怠を描いた作品『花ざかりの森』を発表して以来、様々な技巧と完璧なスタイルを駆使して、確固たる短編小説の世界を現出させてきた作品群から、著者自らが厳選し、解説を付した作品集。著者の生涯にわたる文学的テーマや、切実な問題の萌芽を秘めた『中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃』『詩を書く少年』『海と夕焼』『憂国』など、13編を収める。≫ ●『花ざかりの森・憂国』●三島由紀夫●新潮文庫●読了日:1996年1月30日 二・二六事件を背景にした、一中尉の切腹を題材にした小説。 二・二六事件より三日後、武山信二中尉は親友達が反乱軍に参加していることに懊悩し、自宅にて割腹自殺を遂げる。結婚して半年に満たない麗子夫人もその後を追って自刃する。 私はこれは三島の「自慰的小説」のような気がしてなりません。この作品を読むと、三島の最後がいつも思い出されます。昭和も戦後のあの時代に、なぜ敢えて切腹による自殺を考えたのか…。三島は、自分に酔っている所が多かった人のような気がします。肉体改造や、肉体美を強調した写真集を出したり、武士道を提唱したり、やたらと切腹してみたがったり。 この『憂国』と言う作品では、武山中尉と麗子夫人の、死を前にした、飽く事なき甘美な情事が描かれ、つづいて、中尉の切腹場面になります。この切腹の描写、かなり詳しいです。5ページにわたり、準備から最後首かき切るまで、私はこわばったまま読みました。血を見るのが苦手な人は、読まないほうがいいと思います。 三島はこの場面を書きながら性的興奮をしていたのではないかというくらい、詳しく、執拗に描かれています。多分、いつか自分が死ぬ時を想像していたのではないでしょうか。 解説は三島自身がしていますが、中でこう言っています。ここに描かれた愛と死の光景、エロスと大義との完全な融合と相乗作用は、私がこの人生に期待する唯一の至福であると云ってよい。(略)かつて私は「もし、忙しい人が、三島の小説の中から一編だけ、三島のよいところ悪いところすべてを凝縮したエキスのような小説を読みたいと求めたら、『憂国』の一編を読んでもらえばよい」と書いたことがあるが、この気持ちには今も変りはない とにかく、切腹場面の描写だけでも、読む価値ありです。食事しながら読まないように…。上面、リンクしているのは今月末に発売される『憂国』のDVDです。この幻のフィルムが見つかったのは昨年でしたか、その記事を読んだ時めまいがしました。三島由紀夫自らが演じる、『憂国』。台詞は一切なくモノクロですが、それがいいです。即予約しちゃったもんね。楽しみ・・・。新潮文庫で出ているはずなのに、楽天アフィリエイトに文庫本がなかったのでDVDを挙げました。文庫本冒頭には映画『憂国』のワンシーン写真が載っています。新潮文庫のあの装丁、かなりかっこいいのになぁ。白地にオレンジの明朝体ででかでかと題名が書いてあるあの装丁、しびれる・・・。
2006/04/11
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≪ある時は“コケティッシュ”な女、ある時は赤い三年子の金魚。犀星の理想の“女のひと”の結晶・変幻自在の金魚と老作家の会話で構築する艶やかな超現実主義的小説≫●『蜜のあわれ/われはうたえどもやぶれかぶれ』●室生犀星●講談社文芸文庫●読了日:去年の春前々から、ひそかに絶賛されていた、室生犀星の『蜜のあはれ』です。解説からチョッと内容を写させてもらいます。 これは全編対話だけで、物語が進みます。会話をしているのは、金魚の化身の少女「あたい」と、「あたい」が「おじさま」と呼ぶ70歳位の小説家上山。「あたい」はよく「おじさま」のところへ行き、すねごとやよしないことやおねだりをするのです。 この不思議な物語、「あたい」の喋りが可愛くて、しょうがないのです。冒頭からして可愛い。。 「おじさま、お早うございます。」 「あ、お早う、好いご機嫌らしいね。」 「こんなよいお天気なのに、誰だって機嫌よくしていなきゃ悪いわ、おじさまも、 さばさばしたお顔でいらっしゃる。」 「こんなに朝早くやって来て、またおねだりかね。どうも、あやしいな。」 「ううん、いや、ちがう。」 「じゃ何だ。言ってご覧。」 「あのね、このあいだね。あの、」 「うん。」 「このあいだね、小説の雑誌巻頭にあたいの絵をおかきになったでしょう。」 「あたい」は「おじさま」が自分をモデルにして原稿料をもらったのに、一銭も分けてくれないから残ったお金を頂戴と言いにきたのです。で、「おじさま」にもらったお金で買い物に出かけ、危うく軟派されるところを急いでかえってくるのです。で、一部始終を「おじさま」に話してから言います。 「おじさまに話したら、ブルブルが取れちゃった、あたい、そんなにうきうきして見えるかしら、 それが気になるのよ。」もう、かわいい! 室生犀星の言葉の使い方、リズムが心地よくて、読んでいて、「あたい」や「おじさま」が愛しくなってきます。
2006/04/10
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≪日本のアンデルセンとも称される浜田広介。彼は、子ども心だけでなく、大人の心にも訴える、善意や理想に基づいた名作を数多く遺し、それまでは勧善懲悪の形式でしか存在しなかった子どもの読みものに新風を起こした。本書では、人間たちと友達になりたい赤おにと、赤おにのために自己を犠牲にする青おにの友情の物語「泣いた赤おに」、恐ろしい外見を持つ龍が、少年に優しい心を注がれて、子どもたちのために尽くそうと決意する「りゅうの目のなみだ」などの代表作を含む、「ひろすけ童話」珠玉の二十三篇を収録した。≫●『泣いた赤おに』●浜田広助●小学館文庫●読了日:一昨年の或る日日本の児童文学というのは、とても質が高いと思います。といっても、どこの国でも児童文学はいいものが揃っていると思います。 私の好きな児童文学は主に、明治から大正、昭和に多くの作品を残した作家達の作品です。あの頃の日本語が一番美しいです。新美南吉は『ごんぎつね』で知りました。小川未明は小学生の時教科書に載っていた『野ばら』が大変印象深く、何度も読み返しています。鈴木三重吉は『赤い鳥』のボスです。有島武郎の『火事とポチ』に涙しました。 で、今日は前に買っていた浜田廣助の『泣いた赤おに』を読み進めました。かなり知名度の高いこの作品ですが、実は最近初めて読んだのでした。村の人とどうにかして仲良くしたいと赤鬼はお菓子やお茶を毎日用意して、家の前には看板を立てます。「ココロノ ヤサシイ オニノ ウチデス。 ドナタデモ オイデ クダサイ。 オイシイ オカシガ ゴザイマス。 オチャモ ワカシテ ゴザイマス。」でも鬼を怖がる村人は赤鬼の顔を見ただけで逃げ出してしまいます。赤鬼ががっくり来ているとこに、遠くから青鬼がやってきます。 青鬼は赤鬼に「自分が村に行って暴れるから、君がぼくをやっつけてくれ。そしたらみんなは君をほめたてるから」と提案します。赤鬼が「そんなこと、きみにもうしわけない」と言うと、青鬼はもの悲しげな眼つきで言います。「何か、ひとつの、めぼしいことをやりとげるには、きっと、どこかで、いたい思いか、損をしなくちゃならないさ。だれかが、ぎせいに、身がわりに、なるのでなくちゃ、できないさ」 そして2人は計画通りに演じて、村人は赤鬼をすっかり信用し、家にも遊びに来るようになりました。でも、赤鬼はずっと気にかかる事がありました。あの日以来青鬼が顔を見せなくなったのです。 そこで、赤鬼は一日家を空けて青鬼の家を訪ねました。家に青鬼はいませんでしたが、戸の前にはり紙がしてあるのに赤鬼は気づきます。赤鬼はそれを読んで泣いてしまいます。 はり紙に何とかいてあったか、みなさんぜひ自分の目で確かめてください。赤鬼と同じように泣いてしまいます。私も泣いてしまいました。美しい日本語がこんなに心に響くなんて...。児童文学はけっして言葉がやさしいだけのお話ではありません。読んだことがない方はぜひ読んでください。いつか地元図書館の児童書コーナーを片っ端から借りてきたいですね。児童書ってけっこう読み応えあって、こころに残るものが多いです。※一部ヤフーブログからのコピーです。悪しからず。
2006/04/09
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≪あの「ダ・ヴィンチ」の大人気連載を大幅加筆、遂に単行本化。二十世紀の百年間に日本文学史上で話題となったベストセラーを希代の本読みふたりが大解剖。文学的評価や世間の評判なんて歯牙にもかけず、ダメなものはダメと断ずる痛快至極な文芸対談。≫●『百年の誤読』●岡野宏文 /豊崎由美 ●ぴあ●ソフトカバーダ・ヴィンチに連載されていた頃から、読んでいてとても気持ちよかったです。世にベストセラーとして受けている本でも、内容がだめならだめとはっきり言う二人。私も「何でこんな本が売れるの」と疑問に思っていたベストセラーもばっさばっさと斬り捨ててあってめちゃくちゃ気持ちよかった。でも私がひそかに「面白かった、よかった」と思った本もばっさり斬られていたりして「あ…」と思ったりも。特に読み応えがあるのはリアルタイムでベストセラーの現代作品の部分。yoshiやらハリーポッターやら鈴木健二やら俵万智など有名どころ、盲目ベストセラーどころがこれでもかってほどに斬ってあり、快感爽快大満足です。とくにyoshiについての批評は気持ちよかったです。あれは、もう、小説ではないですから。バイト先(本屋)でyoshiのPOP書いてと頼まれた時に、本当に迷いました。参考のためにぱらぱら読んでみたけど、爆笑の嵐でした。自分の中では。国語力の低下に拍車をかけているとしか思えない内容でした。合掌。
2006/04/08
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≪少女の心と瞳がとらえた愛のイメージを、詩人・寺山修司が豊かな感性と華麗なレトリックで織りなすオリジナル詩集。≫●『寺山修司少女詩集』●寺山修司●角川文庫『階段』一段目に夏二段目にぼく三段目にみずえ四段目に腰かけて五段目で初恋だった六段目で何をしたのか七段目で神さまが見てた八段目でみずえが立上ると九段目でぼくは淋しくなった十段目で哲学し自省し感傷して十一段目で訪れる秋をむかえよう十二段目で翼のように両手ひろげて十三段目さま人生さまみんなさよならアングラな寺山修司も好きだけど、こういう浪漫的な寺山もいいです。いまNHKテレビ「知るを楽しむ」は寺山特集なので、毎週嬉しいです。しかも解説が三輪明宏さん。最高だ。 それにしても角川文庫、寺山修司作品の表紙をhanaeちゃんに変えたけど、はやいところ林静一氏のイラストに戻してくれないでしょうか。林静一のほうが断然よかったです。角川のバカ。角川のキャラクターはカバ。
2006/04/08
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「……お兄さま、お兄さま、お兄さま、お兄さま、お兄さま……お隣のお部屋にいらっしゃるお兄様……あたしです。あたしです。お兄様の許婚だった……あなたの未来の妻でしたあたし……あたしです。あたしです。どうぞ……今のお声をモウ一度聞かして頂戴……聞かして……聞かしてェーッ……お兄様、お兄様、お兄様、お兄様……おにいさまァーッ……」≪空前絶後!!猟奇と幻想の推理「純」文学。昭和10年の発売当時<日本一幻魔怪奇の本格探偵小説><幻怪、妖麗、グロテスク、エロティシズムの極>とうたわれた本書は、読書界の大きな話題を呼んだ。<これを書くために生きてきた>と著者自ら語り、十余年の歳月をかけて完成された内容は、狂人の書いた推理小説という、異常な設定の中に、著者の思想、知識を集大成する。読む者は、一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大奇書。≫●『ドグラ・マグラ』●夢野久作●角川文庫●読了日:1996年4月28日/6月10日「これを読む者は、一度は精神に異常をきたす」 と言われている、昭和最大の奇書。 時計の音で始まるこの『ドグラ・マグラ』は、大正15年1月20日、九州帝国大学医学部精神病科第一病棟7号室にいる<私>が目覚めるところから始まります。 は目覚めた時点で、自分が誰なのか、わからなくなっています。どこにいるのかもわからないまま、思わず叫ぶと隣の部屋から、自分とあなたとは許婚だといい続ける娘の声が聞こえてきます。 この娘の言っていることも支離滅裂で、次に病棟へやってきた九州大学の医学部長の若林の説明で、<私>は精神病の治療の実験者になっていることを知ります。 説明を受けるうちに<私>は『キチガイ外道祭文』と言う小冊子を手に取り、無我夢中で読み進めてしまいます。読者は、ここから一緒にこの『外道祭文』を読むことになります。 それが終わったと思うと、また次々と、別の書面や手紙や報告書が出てきて、読者は作中作をこれでもかと見せつけられます。 作中作が進む中で、段々と物語りも進んでいき、<私>の重大な過去も明らかになってきます。最後の方は、モウ何がなんだかわからないです。すみません、説明、放棄…。説明のしようがないです、、、。 とにかく、久作イッチャッテマスカラ。多用されるカタカナ、笑い声、不気味さが充満しています。 数年前に一度しか読んでないんですが、いつかまた読み返したいです。ラスト数行が秀逸です。頭、おかしくなりそうです。 夢野久作はちくま文庫で全集を買いましたが、かなりいいです。彼の頭はイキ過ぎてます。ところどころに出てくる地元福岡の地名や、方言がまた不気味さをつのらせていい効果です。昭和って、すごいな。いまの時代こういう作品を書くこういう作家は出てこないでしょう。※記事の一部はヤフーブログからの写しです。悪しからず。
2006/04/07
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≪ある昼下がりのこと、チョッキを着た白ウサギを追いかけて大きな穴にとびこむとそこには…。アリスがたどる奇妙で不思議な冒険の物語は、作者キャロルが幼い三姉妹と出かけたピクニックで、次女のアリス・リデルにせがまれて即興的に作ったお話でした。1865年にイギリスで刊行されて以来、世界中で親しまれている傑作ファンタジーを金子国義のカラー挿画でお届けするオリジナル版。 ≫●『不思議の国のアリス』●ルイス・キャロル/矢川澄子 ●新潮文庫●読了日:去年のある日「あー、忙しい忙しい、急がなきゃ急がなきゃ」と時計を手にした兎を追いかけて、アリスが不思議の国へ入っていく、おなじみの小説。いろんな出版社から出ていますが、私は新潮文庫が出している矢川さんの訳が一番好きです。すごく独特で、かなりいいテンポの文章です。今、ものすごく取りにくい本棚の奥にこの本があるので名訳を紹介することはできないのですが…。訳してて楽しかったろうなと思います。それに何しろ、金子國義氏の挿絵ですよ!金子氏の絵、大好きなんです。『鏡の国のアリス』も欲しいですよ。
2006/04/05
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