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2007.01.18

生きるって何だろう‥‥？★「ペパーミント・キャンディ」

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カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

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イランの巨匠、アッバス・キアロスタミ監督が絶賛した珠玉の名作「ペパーミント・キャンディ」（'99年　韓国）。
なんともやるせない、哀しい、それでいて美しい映画でした。
そして、「生きるって何だろう‥‥？」と、つくづく考えさせられる映画でした。

ファースト・シーンからして印象的でした。
よれよれのスーツ姿の疲れた中年男が、
招待されてもいない野外での同窓会にふらりと顔を出し、
ベロベロに酔って、カラオケでヤケクソに歌い、踊り、
かたまっている同窓生たちの前で、鉄橋に登り、
走りこむ列車に、背後から倒れこむように飛び込む‥‥！
そして列車が走る線路は、自殺した男の過去へ過去へと観客を導きます。
その過程で、男が事業に失敗し、借金で首が回らず、
妻子にも逃げられ、袋小路に追い詰められたこと‥‥
絶望のさなか、初恋の女性の見舞いに行ったら
彼女は末期ガンで余命いくばくもなく、会話すら交わせなかったこと‥‥
そして男はかつて刑事で、犯人逮捕の際に足に怪我を負い
以後、片足をひきずるようになったこと‥‥
彼が出会った女たちとの甘く、時にはほろ苦く、時にはつらい想い出‥‥
記憶の外に放り出したくても、心の底にこびりついて消えないトラウマ‥‥
時代は90年代から徐々に70年代へとさかのぼり、
その時代時代に韓国という国が抱えてきた政治的な問題も
やんわりとクローズアップされます。

モイラはこの映画を最初、ソウル・明洞の映画館で観ました。
韓国語の題名「パッカサタン（はっか飴）」というのに、
「へえ、どういう映画だろう‥‥？」と、引き寄せられるように、窓口でチケットを買いました。
正直、あまり期待してませんでした。
それまでにも（90年代前半から）韓国で韓国映画をいろいろ観てきたけど
「当たり」よりも「はずれ」の方が多かったので。
でも‥‥ この映画は「大当たり」でした!!
スクリーンに幕が下りた直後、モイラの脳内で鐘が３つ大きく鳴りました。
日本語字幕はなく、せりふは半分ほどしか聞き取れなかったけど
「ああ、いい映画を観たなあ‥‥」と、１日中、幸福感に浸れました。
韓国では70年代後半、サヌルリム（山彦）というロック・グループが、若者の人気を得ていて、
そのサヌルリムの「ナ・オトッケ（僕、どうしたらいいの？）」という歌が
この映画で非常に効果的に使われていましたね。
ファースト・シーン、ソル・ギョング演じる主人公が、
カラオケでがなりながら歌うのもこの歌。
ラスト・シーン、主人公の大学の友人たちが、キャンパスで車座になって歌うのもこの歌。

　　♪僕、どうしたらいいの？　君が突然行ってしまったら
　　　僕、どうしたらいいの？　君なしで生きていけないよ‥‥

そういえば、この映画を撮ったイ・チャンドン監督は、
やはりソル・ギョング主演の「オアシス」でも
70年代大ヒットの韓国ロックの名曲「ミイン（美人）」を、使っていましたね。
あの頃の韓国ロックは、歌詞もメロディも美しいものが多いから、使いたくなるんでしょうね‥‥

しかし、ソル・ギョングはほんっとに「名優」の名にふさわしい役者だと思います。
何しろ、主人公の４０代から２０代前半までを演じるのですから‥‥

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