★モイラの名画座★

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2007.01.21

憎しみを捨て、愛を知った男★「ベン・ハー」

(1)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

1959年度アカデミー賞を１１部門も受賞した、チャールトン・ヘストン主演、ウイリアム・ワイラー監督の大傑作！
世界映画史上に燦然と輝く、大スペクタクル史劇「ベン・ハー」！

ベン・ハー　コレクターズ・エディション〈初回限定生産・4枚組〉　税込7,182円

イエス・キリストの生誕、ものすごい数のエキストラを投入したローマ軍のエルサレムへの行進（ローマ兵たちを忌々しげに睨みつけるユダヤの民たちの表情が印象的！）、
地獄絵図のガレー船と、その戦闘シーン（すごい迫力！）
ローマの競技場での馬四頭立て戦車のレース（よくもまあ、あんないい馬たちをそろえたもんです）、
業病におかされた母と妹との涙の再会、
そして‥‥イエスの十字架の処刑‥‥

‥‥とまあ、今さらこのモイラが列挙するまでもないほど、見どころ満載の名画です。
史劇を作る際、時代設定が古くなればなるほど、時代考証もあいまいになりがちなんですが、
この「ベン・ハー」は違う！それはそれは綿密な時代考証をしています。
ローマ占領時代のユダヤ人の生活習慣は無論のこと
（例：当時のユダヤ人は、横たわりながら食事をしていた。だからダ・ヴィンチの、イエスと使徒たちが椅子に座って食事している「最後の晩餐」は大嘘なのです）
食材ひとつに至るまで、当時のものだけしか使っていません。

この作品は大変上質な娯楽作品でもありますが、
イエス・キリストの福音を、キリスト教圏ではない国の人々にも、
わかりやすく伝えたメッセージ性の非常に高い映画でもあります。
主人公ベン・ハーが、かつての友に憎悪を抱き、神の名のもとに復讐を誓うけど、
イエスの福音に触れて、復讐心を捨て、「愛の人」となる‥‥
律法主義で血の復讐も辞さぬユダヤ教から、
「敵を愛し、己を迫害する者のために祈れ」と説くキリスト教への改宗‥‥
それがこの映画の大きなテーマだと、モイラは思います。

モイラが一番心をうたれたのは、囚われの身となったベン・ハーが、
他の囚人とともに護送され、渇きに苦しんで倒れた時、
イエス（映画では後姿だけ）が来て、水を飲ませるシーンです。
「おい、こいつには水をやるなと言ったろう！」と、近づいたローマ兵が、
立ち上がったイエスを見るや、あっと息を呑んで、それ以上、何も言えなくなる‥‥
何しろ相手は「神の御子」ですからね。
イエスの顔を絶対に見せない‥‥
モイラの唯一の不満は、なんであのイエスを演じた役者さんが
オスカー助演賞をとれなかったか‥‥ということですね。

★こちらは'26年作・無声映画の「ベン・ハー」です！★