★モイラの名画座★

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2007.02.06

全人類に警告！★「独裁者」

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

喜劇王チャールズ･チャップリンは風刺の大天才で、人々の心に強く訴えかける皮肉のこもった、それでいてペーソスも巧みにきかせた名作をいくつも世に出しましたが、
中でもこの作品は、天才喜劇王の巧みな風刺、痛烈な皮肉、鋭い世相批判がてんこ盛りです。
その名も‥‥ 「独裁者」（'40年作品）！

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「トーキーだと、英語のわからない人々には、自分の作品にこめたメッセージが伝わらないから」と、
映画界がトーキー作品の製作に躍起になっても、身ぶり手ぶりで観客に作品の意図を伝えることができるサイレントにこだわったチャップリン。
しかし、また大戦の気配が世界を覆い始め、ヒトラー総督率いるナチスが幅をきかせるようになった時、
「これは大変だ‥‥いよいよ自分も、はっきりモノを言わなければ！」と思い、苦心惨憺、試行錯誤の連続、そして国内外からの脅迫の絶えぬ中で、作りあげた名作です。

独裁者ヒンケルの演説の模様‥‥ まんまヒトラーでしたね！よくもまあ、あそこまで似せたものです。
ヒンケル率いる党のマークがハーケンクロイツならぬ、バッテン二つなのには、笑いました。ヒンケルがオープンカーで街を行く時、沿道の「考える人」の像が「ハイル･ヒンケル！」と片手を上にあげていたのにも爆笑。
よく名場面として語られるのが、ヒンケルが地球の形をした風船を、陶酔しきった表情で自在にもてあそぶシーンですが、
権力の権化となった独裁者の狂気が、あのワンシーンで見事に表現されていますよね。

ヒンケルと、第一次大戦で記憶を失ったユダヤ人の床屋が瓜二つという設定も、唸ります。
その床屋が、ブラームスの「ハンガリアン舞曲」にあわせてお客のヒゲを剃るシーンにも、大笑い。
そして、皮肉がとてもきいていたのが、ユダヤ人たちが話し合いで、「ヒンケルを爆弾もろとも吹っ飛ばすために、誰か1人が犠牲になろう」ということになり、
ボルトの入ったプリンを食べた男が、自爆テロの実行犯になる‥‥というシーン。
女たちは「自爆テロなんて、恐ろしいことはだめ‥‥」と、男たちのプリン全部にボルトを入れ、
プリンの中にあったボルトを最初に噛んでしまう、チャップリンの雷にうたれたような表情‥‥！
チャップリンはあわててボルトを隣の人のプリンのお皿に移します。
でも隣の人もボルトが口の中にあるのを知ると、あわててまた隣の皿にボルトを置く。それの繰り返し‥‥
コミカルな音楽の効果もばっちりで、モイラは名画座でアゴがはずれるほど笑いました。
「自分たちの自由と解放のために、あえて自ら命を捨てる」なんてことは、
頭の中では思ってみても、いざ実行となると、とてもそんな簡単に出来るもんじゃない‥‥！
人間のずるさ、弱さ、哀しさ、滑稽さを、実に皮肉っぽく、コミカルに描いた名場面です。

でも一番の名場面は、誰もが言いますが、ラスト、
ヒンケルに間違えられたユダヤ人の床屋が、世界中の人々に演説で、平和の尊さ、民主主義の素晴らしさを訴えかける、あの名シーンです！
「人々よ、失望してはならない。
　貪欲はやがて姿を消し、恐怖もやがて消え去り、
　独裁者は死に絶える。
　大衆は再び権力を取り戻し、自由は決して失われぬ！
兵士諸君、犠牲になるな！
独裁者の奴隷になるな！ 」

ああ‥‥もう何も言うことありません‥‥！
常に時代の先を見つめたチャップリンは、偉大すぎます‥‥!!

★もっとチャップリン！★