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2007.02.07

消えたユートピア★「素ッ裸の年令」

(6)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

鈴木清順監督、赤木圭一郎主演の隠れた名作といえば、'59年に封切られた「素ッ裸の年令」（日活）！

親の経済的、精神的な貧困、無視、あるいは過干渉、教師の無理解などで、家庭でも学校でも居場所を失った少年少女たちは、
19歳の健（赤木圭一郎）をリーダーとする非行グループに加わり、
無免でオートバイを乗り回したり、窃盗や恐喝をはたらいたり、
日ごろの鬱憤を晴らすかのように、無軌道な青春を送っていた。
バイク乗りの達人で、頭もきっぷもよい健は、「理想のアニキ」として少年たちに慕われ、崇拝され、
健を中心に郊外の廃倉庫にたむろする少年たちは、この「はみだし者たちのコミュニティ」を「ユートピア」と見立て、そこを安住の地と信じて、健の言うことを何でも素直に聞いていた。
ところが‥‥健は陰で、少年たちに行状についてあることないことを、悪徳新聞記者に話しては、記事にさせ、金をもらっていた。
なぜ健がそんなことを‥‥？それは‥‥彼には夢があったのだ。
「 20歳になったら、俺はいっさいの悪事から足を洗ってカタギになる。そして今まで貯めた金で船を買って、死んだ親父みたいに、郷里の房総で猟師として暮らすんだ！」
しかし、少年たちは健の裏切りを知り、そのうえ、
彼らが「お姉ちゃん」とあがめ、ほのかな思いを抱いていた年上の女性（堀恭子）が
廃倉庫で健に抱かれたあと、無惨に捨てられたことまで知ってしまう。
少年たちが思い描いていたユートピアが、ガラガラと音をたてて崩れた時、
20歳を目前に控えた健が予想もしなかった、悲惨な出来事が起こる‥‥！

半世紀近く前の作品ですが、居場所をなくした少年たちの暴走、不安定な心情、自己破壊は、現代でも通用するテーマです。さすがは清順監督ですね！
「どの世界にもユートピアなんてない。他人は決して自分の居場所を提供してくれない。居場所がなければ、自分の力でそれを作るしかない」
この作品は、そう訴えかけているような気がしてなりません。
若さや青春は多くの場合、讃えられ、謳歌されますが、
その一方で、非常にもろく、不安定。
若さと青春の「負の側面」を、冷たいほど突き放して描いた傑作です。

「素ッ裸の年令」は赤木圭一郎の第１回主演作品。
彼はこの作品で注目され、やがて石原裕次郎、小林旭と並ぶ日活の大スターとなりましたが、
彼の俳優人生は、あまりにも短いものでした‥‥