★モイラの名画座★

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2007.02.20

不屈の男★「パピヨン」

(7)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

「脱獄もの」と呼ばれる映画は、古今東西数々あれど、
この名作に勝るものなし‥‥モイラがそう信じて疑わないのが、スティーブ・マックイーン主演の「パピヨン」 ('73年　フランス）です！

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この映画は、無実の罪でなんと１３年もの獄中生活を強いられた男性の手記をもとにしたものです。
胸に蝶の刺青があることから、パピヨン（仏語で蝶の意）と呼ばれる男（マックイーン）は、無実の罪で懲役刑の判決を下され、
他の囚人たちと数珠つなぎにされ、船に乗せられ、南米の仏領ギアナの監獄に送られます。
パピヨンは船から脱出を試みるも失敗し、両手足を縛られて船の機関室に閉じ込められ、
手も使えず、犬のように腹ばいで食事をとらされる‥‥出だしからして凄惨です。

長旅の末、送り込まれた監獄がまたすごい！
アウシュビッツ顔負けの恐ろしいたたずまい、まわりはほとんど未開の地。
そのうえ、１度脱走に失敗したら、けもの部屋のように狭い不潔な独房入り、
２度めの脱走に失敗したら、前よりも長い期間、これまた恐ろしい独房入り、
そして、３度めの脱走に失敗したら‥‥ ギロチンによる斬首刑！
実際、脱走しそこねた男が、囚人たちの目の前で、恐怖にひきつった顔で泣きながらギロチンにかけられて、首を落とされるんです。
こんな恐ろしい監獄、モイラならもう震え上がって、たとえ無実の罪で入れられたとしても、
「刑期をまっとうするまで、ひたすらがまんしよう‥‥」と思っちゃいます。
だけどパピヨンは違う！常に脱走の機会をうかがい、それを実行するんですよね！
でも捕まって、独房に送り込まれ、ろくな食事も与えられず、房内を這うムカデまで食べる。（劇場で観た時、隣の若い男性が「ウエッ」と顔をそむけてました）

パピヨンは監獄にいる間、偽札作りの名人ドカ（ダスティン・ホフマン）と友情を育み、ともに苦悩を分かち合いますが、
自由への渇望から、また牢破りをし、南国の小さな島にたどり着きます。
そこは美しい天国のような島。パピヨンは監獄生活の疲れを癒し、つかの間の自由を味わいますが、
こともあろうに島の教会の尼僧たちに売られ、あの恐ろしい監獄に逆戻り！
数年間の地獄の独房生活の末、今度は脱獄不可能といわれる孤島に送られます。
島のまわりは崖っぷち。その崖下には深く、波高い荒海。
パピヨンはそれでも、命をかけて島から脱出しようと試みます。
彼は自分より先に孤島に送られていたドカも、島抜けに誘いますが、
ドカは「もう俺は年だし、一生ここにいてもいいと思っている」とかぶりを振ります。
ひたすら自由を求める男と、自由をあきらめた男‥‥二人が抱き合って別れを惜しむ場面は、涙を誘います。
そしてついに、パピヨンは島抜けを実行！椰子の実をつめこんだ麻袋を抱いて海に飛び込み、漂流するのです！

パピヨンが椰子の実の袋に乗って荒海を漂流しながら、「ちくしょう！　俺はくたばらねえぞー！」と、空に向かって大声で叫ぶラスト・シーン‥‥感動的でした。モイラは人目もはばからず、客席ですすり泣きました。
「パピヨン、あんたすごいよ‥‥あんたほどの不屈の男、見たことないよ‥‥」
心の中で何度もそうつぶやきましたね。
理不尽に自由を奪われた人間の、恐ろしいまでの自由への渇望を、パピヨンという無名の男を通して、丹念に描かれています。
そして、「どんな逆境に陥っても、決して希望を捨ててはならない」ということを、
ラストのパピヨンの絶叫が教えてくれました。

陰惨極まりない監獄と、パピヨンが逃げ込んだ美しい南の島のコントラストも、冴えてます。
脚本は「ジョニーは戦場へ行った」の原作者で、数々の名作シナリオを世に出しているダルトン・トランボ
監督は「猿の惑星」のフランクリン・シャフナー
ダスティン・ホフマンもうまく老け役を演じ、いい味出してましたね。さすが名優！

この映画は観て、ぜーったい損はありませんよ!!

★もっとマックイーン！★