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2007.02.19

戦争は大嫌い！だけど‥‥★「ハワイ・ミッドウエイ大海空戦　太平洋の嵐」

(6)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

太平洋戦争終結後、わが国では数多くの戦争映画（多くは太平洋戦争を扱ったもの）が作られましたが、
松林宗恵監督ほど、戦争映画の秀作を数多く世に送り出した人を、モイラは知りません。
その松林監督作品の中でも、ドキュメンタリー性、ドラマ性、人間性、社会性に富み、なおかつ精緻な特撮を駆使していると思われるのが、昭和３６年に封切られたこの作品、
「ハワイ・ミッドウエイ大海空戦　太平洋の嵐」（東宝）です！

　ハワイ・ミッドウェイ大海空戦　太平洋の嵐

昭和１６年１２月８日未明、時の連合艦隊司令官長・山本五十六（藤田進）から、「ニイタカヤマノボレ」の暗号電報を受けた北見中尉（夏木陽介）航空母艦・飛龍の海軍将兵たちは、
「興国の興廃この一戦にあり！」の号令のもとに、戦闘機で一路ハワイ真珠湾に向かう。
世に言う真珠湾攻撃はみごと成功！
その後も日本海軍は、東南アジアなどで敵艦を次々と撃沈させ、
「すわ、快進撃とどまるところを知らぬか」と思われたが‥‥
米国留学経験のある山本五十六司令長官はもとより、海軍の参謀・山口長官（三船敏郎）も知っていたのだ。
日本の兵力が、米英のわずか１０分の１しかないことを‥‥！
そして海軍は、ミッドウエイ戦で完膚なきまでに米国にうち負かされ、
海軍の誇りだった戦艦大和は撃沈。
そして空母飛龍も、米軍の砲弾を雨あられのごとく受け、
ついに海軍自らの手で魚雷を撃ち込んで、兵士たちを先に脱出させ、艦内にとどまった加来艦長（田崎潤）、山口長官もろとも、海の藻屑と沈めなければならない悲運をたどる‥‥！

日本の戦争映画にはいろいろあって、戦争の悲惨さや軍隊の非人間性を「これでもか！」と前面に押し出している、反戦色の極めて高いもの。
逆に、「戦争は勇ましいものだ！お国のために命を捨てる行為は、この上なく崇高だ！」とばかりに、戦争を礼賛し、「何も知らない戦後生まれの若者を、国の都合の良いように洗脳しようとしてるんじゃないか？」と疑いたくなるようなもの。
この二つが目立つようですが、松林監督の作品は、そのいずれの立場にもなく、ひたすら「中庸」を行き、
それでいて、戦争の非人間性や残虐性を、ここぞという時に鋭く、しかし押し付けがましくない程度に、批判しています。
さすが、元海軍将校として出兵の経験を持つ松林監督。戦争には肯定できないが、それをあえてしなければならなかった人たち、結婚して家庭を持つこともなく、あたら若い命を戦地に散らした人たちへの、「俺はお前たちを忘れない！」というメッセージが、熱くこめられています。
戦後生まれのモイラには正直、戦争の悲惨さがどれほどのものかは実感できないし、戦地に臨んだ方々の心境もほとんど理解できていないでしょう。
だからせめて、映画を観ることで、少しでも戦争という魔物の実態を知りたいと思うのです。

そうそう、忘れてはいけないのが、この作品の特撮の見事さです。
特技監督はあの円谷英二！
真珠湾攻撃の時に、隊列を組んで岩肌すれすれを旋回する戦闘機、
大プールに精巧に作られた真珠湾と敵艦隊のセット、
実際の海で撮影された空母・赤城の精緻なミニチュア、
そして、クライマックス、ミッドウエイ海空戦のリアルさ！
このすばらしい戦争特撮シーンは、'76年のハリウッド戦争大作映画「ミッドウエイ」（三船敏郎はこれにも出ていた！）に、東宝にまったく無断で流用され、
ハリウッド側があとで、かなりのお金を東宝に支払わなければならない羽目になったそうです。
無断流用は断じて許されないけど、逆に言えば、映画の大御所ハリウッドがそこまでやるほどの、すごい出来ってわけですね。

もうひとつすごいのが、超豪華なキャスティング！
三船敏郎、夏木陽介、鶴田浩二、藤田進、佐藤允、田崎潤、宝田明、池部良、
加東大介、小林桂樹、平田昭彦、志村喬、上原美佐、三益愛子、榎本健一‥‥
いやあ～～、タイトルバックを見ているだけでも、ため息が出ますよ‥‥
團伊久磨の音楽も勇壮でした。

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