★モイラの名画座★

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2007.02.28

面白いのは後半から…★「タイタニック」

(14)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

1997年、映画ファンはもちろん、ふだんあまり映画を観ない人たちまで劇場に足を運ばせ、
大ヒット記録を樹立した、ジェームス・キャメロン監督の大作「タイタニック」！　

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封切られるや、世界中の映画館は超満員。「沈まぬタイタニック」とまで言われましたね。
1912年に起こった処女航海の豪華客船・タイタニック号の悲惨な沈没事故と
いわゆる「ボーイ・ミーツ・ガール」のお話をドッキングした作品ゆえに、
映画館は、映画鑑賞そのものよりも、デート目的で来た若いカップルの姿が目立ちましたね。

映画の前半部分は、新天地アメリカを目指す画家志望のジャック（レオナルド・ディカプリオ）と、家のために成金とむりやり婚約させられた上流階級の令嬢ローズ（ケイト・ウインスレット）が、船上で運命的な出会いをし、恋に落ちるという、
まあ、「ステキな恋をしたい！」と夢見る若い女の子には、涙うるうるものなのでしょうが、
モイラはあまり買いませんね。出会いと恋に落ちるパターンが、あまりに陳腐で手垢がついてて…
もっと正直に言うと、観ながら鼻で笑ってました。
「バッカじゃないの、このローズって娘…金持ちのフィアンセにくっついてりゃいいのに、こんなどこの馬の骨ともわからない画家志望の風来坊なんかと…」
あきれたのが、二人が知り合って間もないのに、車の中でセックスする場面。
仮にも上流階級の令嬢ですよ?!　知り合ったばかりの、それも風来坊みたいな男に、そんな簡単に身体を許すかあ～?!

「ああ陳腐！退屈！下品！観る映画、間違えたわ…」
と、目うるうるもののカップルたちを横に、客席でため息をついていたら… タイタニック号は氷山にガツ～ン！
そこからです。映画が一気に面白くなってきたのは！
沈みゆく船から、一刻も早く脱出しようともがく人間たちの様子を、キャメロン監督はリアルに、そしてシニカルに、時には崇高に描いています。
親とはぐれて泣いてる子どもをだしに使ってでも、我先に脱出しようとはかるローズのフィアンセ。
「最期まで紳士らしくタキシードを着て死にたい」と、ライフジャケットの着用を拒んで、船のロビーに残る老紳士。
船が半分ほど沈みかけたころ、どうにか脱出の便宜を図ってくれと客に大金を差し出されるが、その金を払いのけ、
「金なんて…もうなんの役にも立たないんだ！」と、ピストル自殺をするボーイ。
でも、モイラの心に深く深く刻まれたのは、楽団の人たちです。
乗客が次々脱出する間、「天国と地獄」「ホフマンの舟歌」を弦楽器で演奏し、
最後に、脱出できなかった客、脱出を拒んだ客のために、賛美歌「十字架のかげに」を静かに演奏。
「♪主よ、みもとに…」の美しいメロディをバックに、
足元まで海水が届いている状況の中でも、幼子たちに童話を聞かせる若い母、
ベッドで抱き合い、二人で天国に行く時を待つ老夫婦の姿を映し出していましたね。
モイラはこの場面で、ボロボロ泣きました。
この時、「ああ、いい映画を観たな…」と思いました。

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