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2007.03.06

ようこそ神話の世界へ‥‥★「日本誕生」

(6)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

史劇スペクタクルというと、ハリウッドの「十戒」「ベン・ハー」「スパルタカス」あたりを思い浮かべる人が多いことでしょう‥‥
しかし、日本もかつて、壮大な史劇スペクタクル映画の名作を、世に送り出したのです。
その名作とは‥‥ 稲垣浩監督の「日本誕生」（'59年　東宝）です！

日本誕生

この「日本誕生」は、'59年度藝術祭参加作品で、さらには、東宝映画1000本記念作品なのです！
そんな鳴り物入りの大作ですから、当然、東宝オールスターキャスト！
三船敏郎、鶴田浩二、宝田明、久保明、平田昭彦、
志村喬、田崎潤、小林桂樹、加東大介、有島一郎、藤木悠、左卜全、
司葉子、原節子、香川京子、水野久美、上原美佐、乙羽信子、
中村雁治郎、杉村春子といったベテランや、三木のり平、榎本健一、柳屋金語楼といったお笑い系も出演。
撮影は名カメラマンの山田一夫、
脚本は、「夫婦善哉」等の傑作を数々生み出した八住利雄と、黒澤映画でおなじみの菊島隆三、
そして‥‥特撮はもちろん、世界の円谷英二大先生！
もうため息が出るような、超豪華なキャスト・スタッフです！

主人公・日本武尊（ヤマトタケル・三船敏郎）の熊曽討伐、大和朝廷の裏で画策された陰謀によって、東国遠征に出る一大冒険物語に、
弟橘姫（オトタチバナヒメ・司葉子）、美夜受姫（ミヤズヒメ・香川京子）との哀しくも切なく、美しいラブ・ストーリーが華を添え、
そして、イザナギ、イザナミの国生みをはじめ、天宇受命（アメノウズメノミコト・乙羽信子）の天の岩戸での明るく、おおらかなストリップ（注・昭和30年代の映画ですので、全裸は披露していません）、
須佐之男命（スサノオノミコト・三船敏郎が二役）のヤマタノオロチ退治、
日本の神話のエピソードが随所に織り込まれた
まさに、史劇と神話がみごとに融合した大スペクタクル映画です。

世界のミフネ演じる日本武尊は、人を分け隔てしない優しい心根の持ち主で、武勇の誉れも高い。けれども、やや猪突猛進型。
そんな彼に剣で倒されながらも、「戦うよりも、まず話し合いが大切だ‥‥」と諭した熊曽王の弟（鶴田浩二）の言葉が、印象的でしたね。
この一言によって、日本武尊は自分から敵に剣を向けることをやめるのですから。
「和をもって尊し」（モイラはあまり好きな言葉ではありませんが）とする日本人の心の原点でしょうね。

ヤマタノオロチは、安手にこしらえたゴジラの首を長くして８つにしたような
案外ちゃちっこい作りで、怖さもあまり感じず、ちょっとがっかりしましたね。
動きもあまり細かくなかったし‥‥
ヤマタノオロチ討伐を夜のシーンじゃなく、昼にして、
もっと不気味でリアルな怪物に仕立てて、須佐之男が剣で斬りつけるたびに、
血がビューッと噴き出るようにしたら、見ものだったと思います。
だけど、他の特撮はお見事！
日本武尊たちが乗る帆船の艦隊が、すさまじい嵐に見舞われるシーン、
火山が爆発し、オレンジ色の溶岩がドロドロと流れ、ものすごい地割れが起こり、
おまけに湖水まであふれて大洪水をひき起こし、朝廷のおびただしい兵隊たちを飲み込むシーン‥‥
本当にリアルで、目が釘付け状態でしたね。
嗚呼、恐るべし、円谷英二‥‥！　
なぜ円谷氏が人間国宝にならなかったのかと、思わず歯噛みするモイラです。

★もっと円谷英二！★