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2007.04.03

演劇的な面白さと恐ろしさ★「吸血鬼ゴケミドロ」

(11)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

特撮怪奇映画と言えば、東宝作品を真っ先に挙げる映画ファンが多いですが、
なんのなんの、大船調が売り物だった松竹も、素晴らしい特撮怪奇映画を作っていたんです。
その中でも、とりわけカルト色が強く、封切りから４０年近くたった今でも、コアなファンから支持されている名作と言えば‥‥！

吸血鬼ゴケミドロ（期間限定）

羽田空港を出発した小型旅客機。どういうわけか空が血のように不気味に赤く、加えて鳥たちが次々と機体にぶつかるという不思議な現象が起こった。
その矢先に、旅客機の上を通過する奇怪な未確認飛行物体！
旅客機は山の中に不時着。生存者は副操縦士の杉坂（吉田輝雄）、客室乗務員のかずみ（佐藤友美）、大物政治家のコバンザメのような会社社長・徳安（金子信雄）、ベトナム戦争で戦死した夫の遺体と対面しに来た米国人女性ニール（キャシー・ホーラン）ほか数名。
彼らはどこともわからぬ山の中で、救助隊が来るのをひたすら待つ。
そんな時、仮死状態だった寺岡（高英男）という謎めいた男が、ふいに意識を取り戻し、機体の外に出た。
寺岡は、山中に停まった謎の飛行物体の中に、誘い込まれるように入ってゆく。
それを怪訝そうに尾行するかずみ。
すると‥‥謎の飛行物体の無機的で不気味な空間の中に立った寺岡の額が、突然ひび割れ‥‥！

山中に不時着した旅客機の乗客たちが、不安と恐怖の中、ある者はエゴをむき出しにし、
ある者は乗客たちのパニックを必死になだめる‥‥
登場人物が少なく、舞台は不時着した旅客機の中と、そのまわりの山中だけなので、
演劇のような効果がありましたね。
しかも登場人物が、大物政治家、その茶坊主の会社社長、大物政治家の愛人になっている社長夫人、ヒューマニストの宇宙物理学者（高橋昌也）、どこか皮肉っぽい精神科医、爆弾魔の若者、戦争反対を訴える米国人女性、パニック状態の中でも冷静さを失わない副操縦士と客室乗務員と、
大変個性豊かで、彼らの織りなす人間ドラマの面白いこと！
人間のエゴ、醜さ、打算などの汚い部分が、これでもかとにじみ出てくる様子が面白かったです。

しかし、一番すごいなあと思ったのは、
宇宙のかなたから地球を征服しにやってきた吸血鬼ゴケミドロに、身体を乗っ取られ、
自らも吸血鬼となってしまう寺岡の役に、シャンソン歌手の高英男を起用したこと！
シャンソンの本場パリ仕込みの身のこなし、独特な容姿。
普通の日本人とはいささか異なる高英男の雰囲気が、地球人を残らず殺してしまう、とてつもなく恐ろしい吸血鬼を、見事に演じさせていたのでしょうね！
特撮は、テレビドラマ「マグマ大使」の特撮を担当したピー・プロダクション。
監督は、「散歩する霊柩車」「海底大戦争」の佐藤肇。
脚本は、「皇帝のいない八月」の小林久三と、「九十九本目の生娘」の高久進。

この超カルトの名作を観ずして、「カルト映画ファンです！」と言うなかれ！

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最終更新日 2007.04.03 11:45:53
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■コメント

白いスーツの高英男さんの強烈なイメージ抜きには語れません。

ITOYA さん

こんばんは。
そうです！白いスーツの高英男さんの強烈なイメージ抜きには語れません！日本人離れした無国籍な感じです。
しかし、私は、高英男さんは、この映画でしか知らなかったので（今もそうですが･･･）シャンソン歌手だったのもずいぶん後で知りました。
いやー、良く引き受けられましたね。
普通の役ではないですからね。 (2007.04.03 21:12:45)

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Re:白いスーツの高英男さんの強烈なイメージ抜きには語れません。(04/03)

モイラ2007 さん

ITOYAさん、こんばんは。

ＴＢありがとうございます！

まったく、高英男さん、よく吸血鬼役を引き受けたものです。
否、それ以前に、高さんを起用した松竹のスタッフの見識に脱帽です。
これがもし東宝作品だったら‥‥
杉坂‥宝田明
かずみ‥星由里子
大物政治家‥田崎潤
徳安‥やっぱり金子信雄
徳安夫人‥水野久美
宇宙物理学者‥平田昭彦
精神科医‥佐原健二
そして寺岡は‥‥土屋嘉男あたりでしょうか？
(2007.04.03 23:28:03)

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懐かしいなー！

愛チャン1753 さん

20年以上前に池袋文芸地下で「佐藤肇特集」で
「吸血鬼ゴケミドロ」と「怪談せ○し男」を観ました。ゴケミドロですが、眉間が裂けてスライム状の宇宙生物が入っていくのは気味が悪かった。アナザヘヴンの元ネタ！？ポイですね。
あと佐藤友美、可愛かったなー。
あとキャシー・ホーラン、水使いすぎで怒られてたなー。翌年の怪奇大作戦「殺人回路」のダイアナも良かったなー。という事で話せば尽きませんが、
「怪談せ○し男」もう一回みたい幻の作品です。 (2007.04.03 23:59:58)

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Re:懐かしいなー！(04/03)

モイラ2007 さん

愛チャン1753さん、おはようございます♪

池袋の文芸地下‥‥その名を聞いただけで
懐かしさのあまり涙するモイラでございます。

佐藤肇監督は、カルトの名作をいくつも作りましたね。
またどこかで特集を組んでくれたら、うれしいんですが‥‥ (2007.04.04 08:32:18)

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Re[1]:白いスーツの高英男さんの強烈なイメージ抜きには語れません。(04/03)

ITOYA さん

モイラ2007さん　こんにちは。ＴＢさせていただきました。ありがとうございます！
＞否、それ以前に、高さんを起用した松竹のスタッフの見識に脱帽です。
そのとおりですね！
＞これがもし東宝作品だったら‥‥
＞そして寺岡は‥‥土屋嘉男あたりでしょうか？
ははははははっ。ほんと！おっしゃるとおりです。そういわれますと、オールキャスト、丸ごと「マタンゴ」のメンバーと入れ替えてみますと
杉坂‥久保明
かずみ‥八代美紀
徳安‥太刀川寛
徳安夫人‥水野久美
宇宙物理学者‥小泉博
精神科医‥佐原健二
寺岡は‥‥やっぱり土屋嘉男
そして大物政治家は‥ 天本英世？(特殊メイクマタンゴ)ちょっと無理があるか？
中島春雄(着ぐるみマタンゴ)ですか？
（あ･･･キャシーホーランが足りない･･･(^_^);;;） (2007.04.04 14:09:22)

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恥かしながら・・・☆

WHO-KO さん

タイトルは知っていますが、未だに未見で・・・☆
この作品は海外でも人気がある様で、タランティーノは確か、「キル・ビル」の中で、この映画のワンシーンを取り入れている・・・と聞いたことがあります☆

もう一つ恥かしながら、高英男さんに関しても詳しくないのですが、小森のおばちゃまの自叙伝を読んだ際、この方のお名前も出て来た・・・と言うのを思い出しました・・・☆ (2007.04.05 07:53:12)

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Re:恥かしながら・・・☆(04/03)

モイラ2007 さん

WHO-KOさん、おはようございます♪

＞タイトルは知っていますが、未だに未見で・・・☆

それならぜひ、ごらんくださいまし！
ものすごい映画ですよ！

＞この作品は海外でも人気がある様で、タランティーノは確か、「キル・ビル」の中で、この映画のワンシーンを取り入れている・・・と聞いたことがあります☆
＞
え？それは存じませんでした。勉強不足ですね。

「吸血鬼ゴケミドロ」は国内外のホラー映画に
かなりの影響を与えた名作と言えるでしょうね。 (2007.04.05 08:58:43)

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『キルビル』

ITOYA さん

お邪魔します。
ザ・ブライドがオーレン・イシイを追って乗った、ジャンボジェットが飛ぶ東京の夕焼けの色は「ゴケミドロ」の空の色で、
その下に広がる東京の街のミニチュアセットは「サンダ対ガイラ」のイメージで、と日本映画おたくのタランティーノが指示したそうですが、
日本で撮影しているにもかかわらず、日本人スタッフは誰もわからなかったとか？
なぜ「サンダ対ガイラ」かというと『二大女優の地球最大の対決』だからで、ユマとルーシーに参考にするようにと「サンダ対ガイラ」のビデオを観せた（何の参考？）そうです。 (2007.04.05 16:11:29)

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Re:『キルビル』(04/03)

モイラ2007 さん

ITOYAさん、こんばんは♪

＞お邪魔します。
＞ザ・ブライドがオーレン・イシイを追って乗った、ジャンボジェットが飛ぶ東京の夕焼けの色は「ゴケミドロ」の空の色で、
＞その下に広がる東京の街のミニチュアセットは「サンダ対ガイラ」のイメージで、と日本映画おたくのタランティーノが指示したそうですが、
＞日本で撮影しているにもかかわらず、日本人スタッフは誰もわからなかったとか？
＞なぜ「サンダ対ガイラ」かというと『二大女優の地球最大の対決』だからで、ユマとルーシーに参考にするようにと「サンダ対ガイラ」のビデオを観せた（何の参考？）そうです。
-----
そうなんですか。あの空の色は、「ゴケミドロ」の‥‥知りませんでした。
恐るべし、「ゴケミドロ」ですね！
そしてITOYAさんの博識も、恐るべし！
これからも映画に関する隠れ話などを、教えてくださいね！
映画人の娘でも、よく知らないことが多い世界ですから。 (2007.04.05 21:57:37)

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