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2007.04.16

おぞましき汚職の構図★「悪い奴ほどよく眠る」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

「七人の侍」「蜘蛛巣城」「隠し砦の三悪人」など、黒澤明監督は、時代劇も得意としましたが、
現代劇、ことに重厚なサスペンス・ドラマでも、映画人としての才能を十二分に発揮しました。
黒澤現代劇の代表作と言えるのが、１月にご紹介した「天国と地獄」ですが、
この映画も見逃せません！

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日本未利用土地開発公団の副総裁・岩淵（森雅之）の秘書・西幸一（三船敏郎）は、
岩淵の娘・佳子（香川京子）と結婚。
その披露宴会場に、５年前、不正入札によって建てられたと噂される公団の新築庁舎をかたどったケーキが届く。
その新築庁舎型のケーキの７階の窓には、一輪の紅のバラ。
実は５年前、不正入札の詳細を知る当時の公団の課長補佐が、庁舎の７階から飛び降り自殺をしたのだ！
ケーキを見て青ざめる公団の上層部の連中！
一方、公団にはまた汚職の匂いがしていて、汚職の実行犯と目された契約課の和田課長補佐（藤原釜足）が警察に連行。
上司をかばい、完全黙秘を通した和田は、上層部に因果を含められ、火山で投身自殺を図ろうとするが、それを西が止める。
実は西は、５年前に汚職の罪を一人でかぶり、上司に言い含められて新築庁舎の７階から飛び降り自殺した、当時の課長補佐の遺児！
父を自殺に追いやった岩淵やその側近への復讐のために、友人と戸籍を交換し、岩淵の懐に飛び込んだのだ！
西は友人の板倉（加藤武）や和田と組んで、壮絶な復讐を始めるが‥‥

汚職の構図を題材とした、上質で重厚な社会派サスペンスです。
役所がらみの汚職で必ずといっていいほど見られる、「トカゲのしっぽ切り」。
部下をわずかな金で飼いならし、罪をその人一人に着せ、因果を含めて自殺に追い込むという、おぞましい汚職の構図‥‥
「上司の言うことは絶対」で、一人が他と違うことをすれば、たちまちつぶされてしまう、化物のような官僚機構。
黒澤監督はそんな官僚機構や弱い者いじめの構図を、激しい怒りをこめて告発しています。

最初の披露宴の場面で、観客をぐっとひきつけていますね。
汚職の匂いをかぎつけた警察や、新聞記者がつめかけ、汚職の指揮官と目される公団の上層部が、内心ハラハラしながらスピーチをする。
そして、５年前の課長補佐自殺を告発するケーキの登場！
思わずモイラは目を見張りましたね。
西の復讐のやり方も、父を殺された恨みに満ちあふれ、凄まじかったです。
シナリオの構成が実によくできています！
冒頭から観客をひきつけて離さない。中盤もダレたところがない。
このまま復讐がうまくいくかな～と思ったら‥‥西の正体が敵に知れて大ピンチ！
でもその直後、西は変化球を効かせて、一気に優勢。
ハラハラドキドキの連続。手に汗握る復讐劇。まさにサスペンスの王道を行っていましたね。
しかし‥‥ラストは‥‥

ただ不満だったのは、西を演じた三船敏郎が老けすぎていたことです。
もっと若い役者を起用できなかったのかなと思います。
写真に写っている学生時代の西は、とても学生には見えませんでした。
でも宝田明じゃちょっとハンサムすぎて青臭いし、平田昭彦じゃちょっと地味で、インテリ臭がきついし、佐藤允じゃ粗野な雰囲気になっちゃうし、夏木陽介は演技が下手すぎる‥‥
仕方なかったんでしょうかねえ‥‥
気弱な課長補佐役の藤原釜足、ワルの下っ端の西村晃、副総裁役の森雅之は、目を見張るほどの名演でした。
特に森雅之は、アクの強い老け役メイクをし、最初、「この役者、誰？」と思ったものです。

この映画のシナリオを読むことも、おすすめします！ほんとによくできています。

★もっと黒澤明！★