★モイラの名画座★

< 新しい記事

新着記事一覧(全1143件)

過去の記事 >

2007.04.17

アメリカの銃社会を痛烈に批判！★「ボーリング・フォー・コロンバイン」

(5)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

16日、米国ヴァージニア州のヴァージニア工科大学構内で、アジア系らしい男が銃を乱射し、
32人もの犠牲者が出るという、米国犯罪史上最悪の事件が起こりました。
以前から何度も銃の規制を叫ぶ世論があったにもかかわらず、依然としてほとんど銃が野放し状態のアメリカ。
なぜアメリカ人は銃を持ちたがるのか、いったい彼らは何を恐れて銃で身を守ろうとしているのか‥‥?!
それを徹底的に追及したドキュメンタリーの秀作といえば、これです！

ボウリング・フォー・コロンバイン#デラックス版

この映画は1999年、米コロラド州の小さな町リトルトンで、高校生２人が自分たちが通うコロンバイン高校で銃を乱射し、２３人を惨殺、その後自殺した事件を題材に、
「なぜ米国では、これほどまでに銃による凶悪事件が多いのか？」「銃社会とは何か？」を、真摯に、そして皮肉をこめて問いかけたものです。
監督マイケル・ムーア自らが、いろいろな人に試みたインタビューや、ニュースフィルムなどを編集し、
インタビューの対象は、貧しいアフリカ系の人々や、おぞましいメイクをほどこし、神を否定する歌を歌い、良識派から眉をひそめられているロック歌手マリリン・マンソン、ハリウッドの大御所俳優で、銃の所持を奨励しているチャールトン・ヘストンなど、多種多様。
さらにムーア監督は、アメリカ白人が行ってきた暴挙も批判しています。
かつて土着民族を武力で征服し、アフリカの人々を拉致し、奴隷として働かせた彼ら。
しかし、自分たちが支配した人々からの報復を常に恐れ、自らの身の安全をはかるため、銃に頼るようになった。
そしてその銃が、今度は自分たちの命を脅かす凶器となったという、痛烈な皮肉を、
監督は遠慮会釈なく、映画の中でこれでもかと描いています。
第二次大戦後、アメリカが行ってきた他国への武装介入のニュースフィルムが前半に出てきますが、
このときのＢＧＭが、ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」。
まったくパンチのきいたブラック･ジョークです。
ビートルズの曲「ハピネス・イズ・ア・ウオーム・ガン」（幸せとは撃ったばかりの銃）も、効果的に使われています。

この映画は、2003年度アカデミー賞で、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。
時おりしも、イラク戦争真っ只中。
授賞式でマイケル･ムーア監督は果敢にも、こうスピーチしました。
「僕らはこの戦争に反対だ。ブッシュ大統領、恥を知れ！」
このスピーチにはブーイングもありましたが、拍手喝さいする人々もたくさんいました。
モイラはテレビのニュースで彼のスピーチを聞き、アカデミー賞という公の席で堂々と為政者を批判するムーア監督の大胆な姿に大いに驚き、そして心から拍手を贈りました。
日本アカデミー賞やブルーリボン賞受賞式で、時の総理大臣や政治家を、痛烈に批判する映画人が、果たしているでしょうか？
ムーア監督の勇気と、言論の自由が法律の上だけでなく、公に広く認められているアメリカの民主主義に、拍手喝さいですね！
彼の反戦スピーチは、アカデミー賞史上に残る名言となるでしょう。

★もっとマイケル・ムーア監督！★