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2007.05.31

ブルカの内側から見た祖国★「カンダハール」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

６年前、アメリカの侵攻によって崩壊したアフガニスタンのタリバン政権。
女性は（医師になる場合は例外）教育を受けられない
音楽は奏楽も鑑賞も禁止
小鳥を飼うことは禁止
男性は髭がはえていないと監獄に入れられ、髭が伸びるまで出所できない
‥‥とまあ、日本では考えられないような禁止事項だらけの監視社会で、
世界中から批難を浴びていましたね。

そんなタリバン政権下のアフガンの姿を、亡命者の視点から創り上げたのが、
アッバス・キアロスタミ監督と並ぶイラン映画の巨匠
モフセン・マフマルバフ監督の名作「カンダハール」（'01年　イラン＝フランス）！

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アフガニスタンからカナダに亡命した女性ジャーナリスト・ナファス（ニルファ・パズィラ）は、
祖国に残した妹が、地雷で片足を失ったことに絶望し、
２０世紀最後の皆既日食の前に自殺すると告げた手紙に驚き、
妹を救うために、イランから国境を越え、妹が住むカンダハールを目指していた。
複数の妻を持つアフガン人男性の妻というふれこみで、
彼の家族と共に、幌馬車でカンダハールへと急ぐナファス。
ところが馬車はゲリラに奪われ、ナファスは一人で国境を越えることに。
途中、イスラム神学校を退学になったアフガン難民の少年や、
かつてソ連と戦うためにアフガンに来て、今もこの地で診察を続けるムスリムのアメリカ黒人医師と出会い、
地雷で命や身体の一部を失う人々、他のイスラム諸国でもありえない女性差別、
規律にがんじがらめの国民、恐ろしく不十分な医療、貧困など、
祖国の厳しい現実を、改めて目のあたりにした。
カンダハールの近くに来ると、町の前には検問所。
ナファスはブルカの女性ばかりの花嫁行列に紛れ込んで、検問所を突破しようとするが‥‥

主演のニルファ・パズィラ自身が、アフガンからカナダに亡命した女性ジャーナリスト。
冒頭、砂漠をバックに、彼女がカメラの前で、ブルカをかぶるシーンが非常に印象的でした。
先進国の女性から見ると、顔を覆うブルカは女性差別、封建主義の象徴のようにも見えますが、
激しい砂塵が舞う砂漠地帯では、目を守る必需品だそうです。
しかし、ブルカをかぶった女性たちの姿は、見慣れぬ人々には異様に映りますね。
途中、ナファスを乗せた大家族の幌馬車が行商人と出会い、
アフガン人男性の妻たちが、ブルカをかぶったまま、タリバン政権下では禁止の化粧品を、興味津々手にとり、
人目をはばかるようにマニキュアを塗るシーンが、なんだか痛々しく目に映りました。
３日後の日食までに、なんとか妹が住むカンダハールへと急ぎ、
激しい風と砂塵を顔や身体に受けながら、果敢に砂漠を歩くナファスの姿は
とても勇ましく、清々しささえ感じました。
タリバン政権が教育を受ける権利さえも奪った女性は、
実はこんなにたくましいのだと、訴えかけているようでした。

マフマルバフ監督は、この作品で、ことさら声高にタリバン政権批判をしているわけではありません。
実に淡々と、むしろ静かなトーンで、タリバン政権下のアフガンの実態を撮っています。
声高に批難の声をあげていないからこそ、この政権の歪みがよりはっきりとクローズアップされています。

タリバン政権崩壊後も、治安の悪化など、混迷を続けるアフガニスタン‥‥
どうにかならないものかと思います、ほんとに‥‥

★モフセン･マフマルバフ監督作品★