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2007.06.03

凄惨な女たちのリンチ！★「肉体の門」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

敗戦後、戦地から引き揚げた男たちは敗北感で意気消沈‥‥
しかし、貧困と食糧不足、混乱の中、たくましく、したたかに生き抜いた女たちがいました。
そんな彼女たちの生態を、鬼才・鈴木清順監督が生々しく、独特のタッチで描いた傑作が、
'64年の「肉体の門」（日活）です！

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戦争で孤児となった上に、米兵に犯された17歳のマヤ（野川由美子）は、
生きるために、小政のせん（河西都子）をリーダーとする夜の女たちのグループに入った。
廃ビルの地下をねぐらとする彼女たちには、
１、他のグループに縄張りを荒らさせない、
２、金をとらずに男と寝ない、
以上、２つの掟があり、掟を破った者はリンチにかけられるという決まりだった。
モンペ姿の田舎臭い娘だったマヤは、見る見る毒々しい夜の花へと変貌。
もともとクリスチャンの彼女は、身体を売る生活をやめるようにと、
米国人牧師に諭されると、心が揺れ動くが、
生きるためには仕方のないことだった。
そんなある日、新太郎（宍戸錠）という復員兵が、
進駐軍の兵隊を半殺しにしたことで追われ、せんの助けで彼女らのねぐらに逃げ込んだ。
夜の女たちと寝起きを共にする新太郎。
やがて女たちは、恋愛感情にも似た思いを、若く、たくましい新太郎に抱き始めるのだ‥‥

田村泰次郎の同名のベストセラー小説の映画化で、
この清順監督作品は、２度目の映画化。（４度、映画化されています）
ところどころに、女たちの背景やバッグなどの小道具に、赤、黄色、青の原色をうまく使い、
独特の映像を創り上げています。
敗戦後の焼け跡や、気力を失った男たちが灰色ならば、
身体を資本にしてしたたかに生きる女たちは、まさに原色ですよね。
黒人の米国人牧師の使い方が、また上手だなあと感心しました。
マヤに「売春をやめなさい」と諭しながら、彼女の誘惑に負けてしまうところなど、
人間臭いなと思いました。
ただ、清順監督はキリスト教についてあまり詳しくないようで、
十字を切らないプロテスタントのマヤが、牧師に十字を切ったり、
牧師のいる教会が、どう見てもカトリック教会の造りだったりしたのが、
ちょっと気になりました。

掟を破った女が受けるリンチのシーンは、凄惨でしたね。
素っ裸で天井から両手を吊るされて、棒で殴る！蹴る！
明日の糧が身体にかかっているからこその、血の制裁なのでしょうが、いやはや、すさまじい！
このリンチのシーンを観るだけでも、一見の価値のある作品です。

あの清順監督の映画にしては、カルト度が低く、内容も非常にわかりやすいです。
「清順はちょっと‥‥」とおっしゃる方にも、おすすめですね！

★清順ワールド！★