★モイラの名画座★

< 新しい記事

新着記事一覧(全1143件)

過去の記事 >

2007.06.11

水爆実験の申し子★「美女と液体人間」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

水爆実験は、ゴジラという恐ろしい巨大生物を生み出しましたが、
このおぞましい生き物も、生み出したのです。
そいつの名は‥‥ 液体人間！
きょうの映画は、'58年の東宝の傑作特撮SF 「美女と液体人間」です！

美女と液体人間【TDV-15057D】=＞20%OFF!美女と液体人間

雨の東京、麻薬盗賊団の一人が、盗んだ麻薬と衣服を置いて跡形もなく消え去るという奇怪な事件が発生した。
盗賊団の者は、消えた男の彼女で、キャバレー歌手の千加子（白川由美）が、
男をどこかに匿ったのではないかと睨み、彼女を脅した。
その時‥‥ ぶにゅぶにゅぶにゅうううう～～～、ヌチャヌチャヌチャ～～～
人間の形をした青い液体のようなものが、賊に襲いかかるや、
みるみるうちに、絶叫する賊を溶かしてしまった！
そいつの正体は、かつて南洋の島で行われた水爆実験の灰を浴び、
そのために肉体が液化してしまった液体人間だったのだ‥‥！

特撮はもっちろん円谷英二大先生。
監督は本多猪四郎。脚本は木村武。かの「地球防衛軍」と同じコンビです。
液体人間のぬめぬめした動き、めっちゃ気味悪かったですね。
その液体人間が気味悪ければ悪いほど、ヒロイン白川由美が、より美しく映えるのが、非常に印象的でした。
「また水爆か‥‥」と、東宝特撮にありがちな題材に、
モイラは大して期待もせず、今はなき浅草東宝のオールナイトで観たのですが、
いやあ‥‥見どころ満載だわ、サスペンスを効かせてるわ、テイストも大人だわで、
ため息をつきました。
佐原健二、平田昭彦、土屋嘉男といった、東宝特撮ではおなじみの顔に加え、
小沢栄太郎、千田是也といった、俳優座の大御所も共演していて、
作品に深みを加えていましたね。
終盤、盗賊団の一人、佐藤允が白川サンを連れて、マンホールに隠した麻薬を手に入れるため、下水道を走るシーンは、
まるで「第三の男」を思わせました。
しかーし、オールナイトで観ていた時、ここでズッコケるようなセリフが‥‥
それは、佐藤允が白川サンにつぶやく一言（正確じゃないかもしれませんが、記憶している限り、再現します）‥‥
「この麻薬を売りさばいてみろ。トラック一杯の五千円札だぜ！」
そうなんです。この映画が製作された当時はまだ、一万円札というものがなかったのです！
観客（ほとんどが特撮マニアの青年）は爆笑。中には手を叩く人も。モイラも思わず噴き出してしまいました。
でもまあ、しょうがないです。時代の流れというものは‥‥
それにしても佐藤允は、この作品に限らず、悪役の似合わない役者だなあと思いました。

もっと東宝特撮！