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2007.06.26

娘の恋愛、結婚★「彼岸花」

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

ローアングルが持ち味のホームドラマの名手と言えば‥‥はい、この方ですね。

日本クラウンオムニバス／小津安二郎映画音楽集～小津安二郎生誕100年記念企画作品～

サイレント時代から、ホームドラマの監督としての頭角を現わし、
一見淡々とした映像展開の中にも、
シニカルな人間模様を浮き彫りにした傑作を
数多く世に出した小津安二郎監督 ‥‥
その独自の映像世界は海外でも評価が高く、
死後半世紀近くが過ぎようとしている今も、
小津監督を師と仰ぐ映画人は数多いです。

きょうはそんな小津作品の傑作のひとつ、
'58年の「彼岸花」 (松竹）を紹介します！

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商事会社の重役・平山渉（佐分利信）は、旧友三上（笠智衆）の娘・文子（久我美子）が、父親の意に背き、恋人と同棲している上、
バーに勤めていることを知り、心配になって文子に会いに行った。
しかし文子は恋人との結婚を真面目に考えているので、平山は彼女を応援したいくらいの気持ちになった。
ところが‥‥ これが自分の娘のこととなると、話はまるで逆。
平山は適齢期の長女・節子（有馬稲子）には、自分がまとめた縁談で嫁がせようとしていたのだが、
節子には既に谷口（佐田啓二）という恋人がいたのだ！
平山は驚き、戸惑い、節子を責めるのだが‥‥

「恋愛結婚はふしだら」なんて、まだ一部で言われていた時代のお話ゆえか、
自分で恋人を見つけた娘に対して「裏切られた」ような思いを抱く父親像が
まったく違和感なく伝わりましたね。
「おい、まさか関係があるんじゃないだろうな？」なんて娘に露骨に詰問し、
それに娘が反論もせず、始終無言でいるシーンには、ちょっと感心しました。
「はああ、この娘、もう恋人とはとっくにできてるかも‥‥」なんて勘繰ったりして‥‥
夫にハイハイとつき従っているようで、実はひややかなほど冷静な妻（田中絹代）、どこまでも能天気な妹娘（桑野みゆき）の姿も、おもしろかったです。
京都の旅館の女将役の浪花千栄子が、トボけた味を出してましたね。
久我美子のホステスになっても失わない上品さと、山本富士子のいかにも「京女」といった華やかさが、
この作品に花を添えています。

小津監督は脚本家・野田高梧との名コンビでもよく知られ、
この作品のシナリオも、小津・野田コンビによる傑作です。

しかし、この小津監督、一度も結婚したことないのに、
どうして夫婦の機微や、家族のすれ違いなどが、ここまで上手に表現できるのか‥‥？
不思議でたまらないモイラでございます。

★もっと小津安二郎!★