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2007.07.04

男たちの静かな熱き闘い★「眼下の敵」

(6)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

アメリカとナチス・ドイツの海戦を題材にした映画の中でも、
キャストの素晴らしさ、シナリオの面白さ、卓越した特撮、緊迫したサスペンスなどで、
他作品と一線を画している映画‥‥それが、'57年の２０世紀フォックス作品「眼下の敵」です。

　眼下の敵

第二次大戦‥‥南大西洋沖で、米駆逐艦ヘインズ号のレーダーが、
連合軍が最も恐れているナチス･ドイツのＵボートをとらえた。
ヘインズ号のマレル艦長（ロバート・ミッチャム）は、Ｕボートの発射した二発の魚雷をぎりぎりかわし、爆雷による攻撃を命令。
フォン・シュトルベルク艦長（クルト・ユルゲンス）率いるＵボートは、何とか爆雷の攻撃をかわして海底深く潜った。
息を詰め、静かに攻撃の機会をうかがう両者。
海上と海底で繰り広げられるかけひき、心理戦、頭脳戦‥‥
しかし、今にもはじけそうな緊迫感の中、両艦長は互いの顔を知らぬまま、
互いの手腕に尊敬にも近い思いを抱くのだった‥‥

すさまじい爆雷攻撃、迫力満点の魚雷攻撃と、戦闘シーンは壮観！
でもそれより味わい深いのは、米独双方の静かな心理戦、頭脳戦。
どちらの艦長の采配に軍配が上がるか‥‥ 観ていてドキドキの連続でした。
また、両艦長の人物設定がユニークでしたね。
マレル艦長は民間人あがりで、兵卒たちから「船酔いで艦長室に閉じこもってる」
などと揶揄されるけど、指揮官としては素晴らしい采配を振るう男。
かたやフォン・シュトルベルク艦長は、第一次大戦でも戦った生粋の軍人だが、
息子二人を第二次大戦でなくし、今度の戦争に疑問を抱いている男。
「前の大戦は負けても栄誉だった。だが今度の大戦は勝っても醜悪だ」
このフォン･シュトルベルクのセリフが、忘れられません。
米側のレーダーにキャッチされぬよう、海底深く潜り、息をひそめるＵボートのクルー。
しかし潜水艦という逃げ場のない中、息詰まる心理戦に、クルーたちの精神状態はいっぱいいっぱい。
これではいかんと、バカ陽気な歌のレコードをかけ、皆に「歌え！」と命じる艦長の機転には、
正直、目を見張りましたね。歌がまたドイツらしく、ビールの歌なので笑えました。

敵の艦長同士が、「敵ながらあっぱれ！」と、友情のような念すら抱くという奥深い人間ドラマ‥‥
唯一、不満だったのは、Ｕボートの艦長やクルーたちが、英語で会話していたこと。
不自然この上ないです！
せっかくオーストリアの俳優クルト・ユルゲンスを起用したんだから、
彼らの会話はドイツ語にしてほしかったです。

しかし、クルト・ユルゲンスは英語上手ですね‥‥
「コナン・ザ・グレート」の時のシュワちゃんより、ずっとうまいです。

★ロバート･ミッチャム＆クルト･ユルゲンス★