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2007.07.05

恨めしや、恐ろしや‥‥★「東海道四谷怪談」

(7)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

田中絹代、若杉嘉津子、中田康子、岡田茉莉子、関根恵子、高岡早紀、小雪‥‥
夏の風物詩（？）お岩さんを演じた女優たちです。
話の面白さ、怖さゆえに、何度も映画化された四世鶴屋南北の「東海道四谷怪談」‥‥
その中でも「最も怖くて美しい」と、ホラー映画ファンの人気を集めているのが、
'59年新東宝、中川信夫監督の「東海道四谷怪談」です！

【中古】東海道四谷怪談／天知茂,若杉嘉津子,大友純,池内淳子,江見俊太郎,中川信夫,大蔵貢,鶴屋南北【中古】afb

時は元禄。民谷伊右衛門（天知茂）は岩（若杉嘉津子）に惚れるが、
岩の父・左門から反対され、逆上して殺害。
左門を殺したのはご金蔵破りの浪人者だと嘘を言い、岩とともに江戸へ行き、夫婦となった。
貧乏長屋で暮らす二人の間に子が生まれるが、一向に父の仇討ちをしようとしない伊右衛門に
岩は愚痴をこぼすようになった。
伊右衛門は伊右衛門で、愚痴っぽい病弱な岩に嫌気がさしていった。
そんな時、彼は梅（池内淳子）という旗本の娘と
ふとしたことから密会を続けるようになり、病弱な岩が邪魔に‥‥

本でも分厚い、歌舞伎でもやたら長い「東海道四谷怪談」の余計な部分をすべてそぎとり、
７６分の作品に仕立てた中川監督の手腕に、舌を巻きました。
これだけ尺を短くしても、見せ場はしっかり見せ、観客の恐怖心をかきたてています。
天知茂演じる伊右衛門が、根っからの悪党ではなく、
江見俊太郎演じる下男・直助に弱味を握られ、そそのかされ、
おのれの欲望と良心の呵責の間で揺れ動く男というのが、またいいですね。
どこかマクベスを思わせます。

若杉嘉津子の岩は、身震いするほど恐ろしかったです！
顔が崩れ、髪に櫛をあてると、髪がばさばさ抜け落ち、頭皮から血が滴る‥‥
これがシネスコ画面でアップになるのですから、迫力満点です。
モイラは観ていて、「ひいいい‥‥」と、マジで震え上がりましたもん。
中川監督は岩の亡霊が出る場面では、「ヒュウ～～、ドロドロドロ‥‥」と、お化け屋敷の効果音を使っていて、
それがまた、怖い怖い！カルト名作「地獄」でもそうでしたが、見世物に徹した作り方でしたね。

この作品は何年か前の世界の（日本の、ではありませんよ）ホラー映画ファン投票で、
堂々１位に輝いた傑作だそうです。
「ドラキュラ」「フランケンシュタイン」を抜いて１位‥‥恐るべし、お岩さん！　恐るべし、中川監督！

★げに恐ろしき中川信夫の世界‥‥★