★モイラの名画座★

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2007.07.07

歪んだ純愛★「悪い男」

(2)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

先ごろの韓流ブームの呼び物は、日本人が忘れかけていた「純愛」でしたが、
この韓国映画も、ある意味純愛をテーマにしたものかもしれません。
鬼才キム･ギドク監督の「悪い男」（'01年）です。

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発声に障害のあるチンピラ・ハンギ（チョ・ジェヒョン）は、
ベンチに腰掛けていたお嬢様風の女子大生ソナ（ソ・ウォン）に一目惚れするが、
彼女にあからさまな侮蔑の目を向けられ、強引に唇を奪うと、平手打ちされ、「最低の奴！」とののしられ、唾を吐かれた。
怨みと一方的な愛から、ハンギはソナを罠にかけ、借金を背負わせ、自分が仕切る売春宿へ売り飛ばさせた。
女子大生から一転して娼婦に堕ち、ハンギを呪い、泣きながら客をとるソナ。
それをマジックミラー越しに見つめるハンギ。そんな彼の目にも涙が‥‥

この作品で主人公のハンギは、一度しか言葉を発しません。
それなのに、この男の執拗さ、不気味さ、そしてとてつもない不器用さが、
スクリーンの向こうから、ひしひしと伝わってきます。
チンピラという世の中の「クズ」である上に、発声障害もあるハンギは、辛酸ばかりを舐め、
恐らく誰からも愛されたことのない男なのでしょう。
だから女に惚れても、傷つけ、貶め、いたぶるといった愛し方しかできない‥‥
また、好きな女がいろいろな男と寝るのをマジックミラー越しに見守るけれど、
自分は決して彼女に手を出さないというところが、
かなり屈折してはいますが、「これもまた純愛の形なのかなあ‥‥」と思わせます。

ソナがいろいろな客と寝てゆくうちに、次第に大人の娼婦へと変貌してゆく様子も見事でした。
堕ちれば堕ちるほど妖しい美しさに満ちてゆく‥‥ 不思議ですね。
あの売春宿がずらりと並ぶ界隈がまた、表面だけ輝いたまがいものの宝石をちりばめたようで、
独特の雰囲気をかもし出していました。

モイラはかつてソウルで語学留学を始めたばかりの頃、
韓国の秋葉原といわれる竜山（ヨンサン）の電気街へと変圧器を買いに行こうとしたのですが、
道を間違えて、なんと売春宿が狭い道の両側にずらりと並ぶ場所に入ってしまったことがあります。
昼間でしたが、整形しまくりみたいな若い女性が、ルーズソックスにミニスカ姿で、
ショーウインドウのようなガラスの向こうに立っていました。
「うわ‥‥まるで『悪い男』みたい‥‥」
しばし立ち止まってあたりを眺めていましたが、ほどなくあたふたとその界隈を出たものです。

★もっとキム・ギドク監督★

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春夏秋冬そして春

ハン・ヨルム／弓

昨日の「セリフで当てよう、映画の題名！」の正解は、下記の通りです。
10点満点の方、いらっしゃいましたか？

Ｑ１　「転校生」　小林聡美、尾実としのりのセリフ
Ｑ２　「夜逃げ屋本舗」　中村雅俊のセリフ
Ｑ３　「仁義なき戦い　広島死闘篇」　北大路欣也のセリフ
Ｑ４　「太陽を盗んだ男」　沢田研二のセリフ
Ｑ５　「やさぐれ刑事」高橋悦史のセリフ
Ｑ６　「透明人間」　河津清三郎のセリフ
Ｑ７　「鬼龍院花子の生涯」　夏目雅子のセリフ
Ｑ８　「用心棒」　三船敏郎のセリフ
Ｑ９　「霧笛が俺を呼んでいる」　赤木圭一郎のセリフ
Ｑ10　「ゲロッパ！」　西田敏行のセリフ

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