★モイラの名画座★

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2007.07.15

青春は甘くない★「帰らざる日々」

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

監督デビュー作「非行少年　陽の出の叫び」で、
辛口青春映画の名手と称えられた藤田敏八監督が、
ほろ苦い青春群像を生き生きと描いた'78年の力作‥‥それが「帰らざる日々」（日活）です。

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キャバレーのボーイをしながら作家を目指す辰雄（永島敏行）は、
父の訃報で郷里・信州飯田に帰る列車の中で、高校時代を回想していた。
高校生の辰雄は喫茶店のウエイトレス真紀子（浅野真弓）の大人の女の魅力に、心惹かれていた。
そして真弓の従弟で、孤高で翳のある同級生の隆三（江藤潤）に反感を抱きながらも、
殴りあいの喧嘩をするうちに、友だちになっていった。
ところが隆三も、従姉の真紀子に思いを寄せていた‥‥

少年期なら誰でも一度は経験したことのある、大人の女性への思慕、
少年期特有のはけ口をなかなか求められない、むき出しの性欲、
大人の世界への憧れと失望、
反発しあいながらも、磁石のようにひかれる奇妙な友情‥‥
汗、傷、涙、蹉跌、挫折‥‥
ちっともカッコ良くない、こっぱずかしい青春の帰らざる日々‥‥
特に江藤潤演じる隆三の人間描写が、秀逸でした。
ひねくれ者で、まわりの同級生を「幼稚な連中」と、常にバカにしていて、
「友だちなんかいなくても平気だ！」とばかりに肩をいからせているくせに、
本当はとても繊細で、傷つきやすい‥‥どこかジェームズ・ディーンを彷彿とさせました。
主役の永島敏行も熱演だったけど、ちょっと主役を食っていましたね。
永島敏行も本命の大人の女性にはなかなか手を出せず、
ふとしたはずみで、飲み屋の娘由美（竹田かほり）と一線を越えてしまうところなどは、
「うわ～、俺も覚えがあるなあ‥」と苦笑する男性も多いことでしょう。
怪優・小松方正の怪演も見ものです。

モイラはこの作品を、言うも恥ずかしい青春真っ盛りの時に観て、
蹉跌だらけの青春群像が身につまされ、涙、涙でした。

青春映画の巨匠・藤田敏八の世界