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2007.07.16

許されぬ愛の結末は‥？★「嘆きのテレーズ」

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

サスペンス映画と言えば、ヒッチコック監督を思い浮かべる映画ファンが多いですが、
この1952年のフランス発サスペンス名画も、忘れられない一作です。
エミール・ゾラ原作、マルセル・カルネ監督、シモーヌ・シニョレ主演の
「嘆きのテレーズ」です。

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リヨンの小さな布地店‥
病弱なくせに居丈高でマザコンの夫カミーユ（ジャック・デュビ）と
息子を溺愛し、何かと恩着せがましい義母との暮らしが息苦しくてたまらないテレーズ（シモーヌ・シニョレ）。
ある日彼女は、たくましい運転手のローラン（ラフ・ヴァローニ）と知り合い、
恋に落ち、密会を重ねるが、カミーユにばれ、
むりやり列車でパリに連れて行かれそうになった。
ところが列車に乗りこんだローランが、カミーユと喧嘩になり、
ローランはカミーユを走る列車の外に突き飛ばし、死なせてしまう羽目に‥
思わぬ展開に、恐怖に慄くテレーズとローラン。
しかし‥‥ もっと恐ろしい出来事が彼らを待ち受けていたのだ！

不倫の果てに、情人と夫殺しにまで加担してしまった女‥‥と書くと、
ワイドショーなどで取り上げられる、情欲に溺れ、良心を失った女のようですが、
このテレーズは憎めません。むしろ大変不運で気の毒に思えます。
みなし児で、少女時代、親戚であるカミーユの母に引き取られ、
その恩だけで病弱でわがままなカミーユと結婚し、
義母の店でこき使われ、灰色の人生を送っていたわけですから。
溺愛していた息子の死のショックから、全身不随になり、
看病をするテレーズを睨みつける義母の目は、とても怖かったです。
「あたしゃ知ってるんだ。お前と情夫がかわいい息子を殺したことを‥！」と
叫んでいるようでしたね。
テレーズとローランが目撃者の脅迫に遭うくだり、
そのあとの、あっと驚く恐ろしい展開が、サスペンスを盛り上げていました。

難を言えば、テレーズ役のシモーヌ・シニョレがいささかゴツくて、
横顔あたりが気の強そうな感じが、あまりいただけなかったです。
ふだんはマザコン亭主と息子べったりのエゴイストの義母に踏みつけにされ、
いつもおどおどと顔色を伺っているような雰囲気を、出してもらいたかった。

この映画は２０年ほど前、「土曜ワイド劇場」でTVドラマ化されています。
東京下町の小さな印刷屋を舞台に、テレーズ役が確か市毛良枝、
鬼の義母役は乙羽信子‥見事なはまり役でした。

★マルセル･カルネ監督の世界★