★モイラの名画座★

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2007.12.19

クチコミの大ヒット作★「さらば愛しき大地」

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

もう２０年以上前ですが、単館ロードショーであるにもかかわらず、
作品の質の高さから、映画ファンの目に止まり、
クチコミで大ヒットした邦画
それが、'82年の柳町光男監督のこの作品です！

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「クチコミで大ヒットなんて、本当なの？」と、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
でも本当です‥‥このモイラは新宿のシネマスクエアとうきゅうまで
この映画を二度観に行こうとしたけど、
二度とも劇場の人に、「すみません。もう定員いっぱいです」と言われたのです。しかも平日に！

ことあるごとに家族や周囲から、優秀な弟と比較されているという劣等感の強いダンプの運転手・幸雄（根津甚八）は、
ある日突然、二人の幼いわが子を失うという地獄を味わい、
底知れぬ絶望感と深い深い心の傷から、
淫蕩な母親に翻弄されていることで苦しみ、傷を負う女工・順子（秋吉久美子）と、
ふとしたことから男女の関係になり、同棲し始める。
数年後、幸雄は順子との間に女児をもうけ、
弟の明彦（矢吹二朗）と一緒に運送業を始め、滑り出しは順調だったが、
持ち前の要領の悪さと不器用さから、得意先を次々失い、
失意の果てに、覚せい剤に手を出すようになるのだった‥‥

根津甚八、秋吉久美子‥‥この名優二人の名演技には、正直舌を巻きました。
主役級もさることながら、脇役も名優をそろえてましたね。
「十九才の地図」でダメ男を好演した蟹江敬三、森雅之の愛娘・中島葵（あの有島武郎の孫！）、
ロマンポルノの演技派・山口美也子、岡本麗（ドラマ「はぐれ刑事純情派」のおばさん婦警といったほうが、わかりやすいかな）
のちに朝ドラで大ブレイクする小林稔持、ずっと昔からおじいさん役ばっかりやってるような奥村公延、
先月、新潟の舞台を終えたあと、体調不良を訴え、楽屋（？）のソファに座ったまま亡くなった草薙幸二郎等等‥‥
いわゆるオールスターじゃないけど、映画ファンなら目を見張るようなキャスティングですよね。
ロマンポルノ創世記のクイーン・白川和子も、ワンシーンだけ出てましたね。霊媒師の役で。

話の展開は地味で、暗さとやるせなさ、絶望感に満ちていますが、
なぜか後味の悪さを感じさせないのです。
やはりシナリオがきちんとしているからでしょうね。
それと、暗さの中にも、土着的な明るさというか、
人間本来が持つ生命力やたくましさみたいなものが、にじみ出ていて、
それがこの映画の質を、より向上させているんでしょうね。
山口美也子と小林稔持の突然のカラミのシーンには、
思わず笑ってしまいました。「こんなんありかもねー」みたいな‥‥(^。^)

この映画のDVDが置いてあるレンタル店、少ないようですが、
お店をハシゴして探しても、観る価値十二分の逸品です！

★レンタル店になかなか置いていない傑作邦画★