★モイラの名画座★

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2008.01.15

少年の成長★「仔鹿物語」（'47年）

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

子どもの頃、多くの人が一度は読んだことのあるピューリッツア賞受賞作「仔鹿物語」。
映画も素晴らしい作品です。

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19世紀、フロリダ北部の荒地に近い大地で、自然の脅威と闘いながら農作と畜産に汗を流すバクスター一家。
11歳の一人息子ジョディは、森や小川、大地に棲む小動物が遊び相手だが、兄弟がいないのが寂しい。
実は父（グレゴリー・ペック）と母（ジェーン・ワイマン）の間には、ジョディの他にも子が生まれたのだが、
自然相手の厳しい暮らしの中、赤子のうちに皆死に、残ったのはジョディ一人。
父と同様、働き者の上に、子を何人も失った哀しみを背負う母は、遊び盛りのジョディを始終叱っているが、
ただ一人の子どもの彼を何よりも愛しく思っている。
耕作した農地を荒らす野獣との闘い、隣家（といっても馬で行くほど遠い）とのトラブル、毒蛇の襲撃‥‥
自然との闘いは試練の連続だ。
ある日ジョディは、親をなくした可愛い仔鹿を森の中で拾い、
ペットにしたいと父母に頼む。
親鹿を殺して、その肝を毒蛇の解毒に使って命をとりとめた父と
息子が兄弟のいない寂しさを抱えていることを知る母は承諾する。
ジョディは大喜びで、フラッグと名づけた仔鹿を弟がわりに可愛がり、ともに遊ぶが、
日に日に成長する仔鹿は、一家の糧である畑を荒らし、植えたとうもろこしの苗を食べるように‥‥

農作を糧とする者にとって、植えた苗を食い荒らす獣は、命を脅かす天敵です。
このモイラもまだ経験が浅いながら、農作を糧としている農婦ですので、それが実感としてよくわかります。
しかし、生きることの厳しさをまだよく知らない少年には、
「畑を荒らす者＝自分たちを飢えさせる天敵」という図式が頭でわかっていても、実感としてはわからない。
まして相手が、弟のように可愛がっているペットならなおのこと。
そういう子どもの思いも、かつて子どもだったモイラにはわかるから、
観ていてとてもせつないものを感じましたね。

グレゴリー･ペック演じるお父さんは、素晴らしい！
自然を相手に懸命に働く姿を見せながら、生きることの厳しさ、尊さ
小難しい理屈など抜きで子どもに教えています。
お母さんもしかり。一見無愛想で、どこか冷たい感じがするけど、
苛酷な開拓生活の中、何人もの子を失った悲しみを刻みつけた
生半可な甘えを許さぬ、しかし慈愛は決して忘れていない優しい母です。

遠い隣家の背骨の曲がった、ちょっと風変わりな男の子も印象的でしたね。
ジョディの同年代の唯一の友だちだった彼が死んでしまうシーンは、泣けました。

余談ですが、モイラもジョディが仔鹿を可愛がっていたように、
鶏五羽をわが子のように可愛がっています。
しかしちょっと目を離したすきに、彼らが畑のキャベツの葉を食べた時は、
布団叩きで叩いて怒りました。
以来、鶏たちは決してキャベツ畑には入りません。

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