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2021.05.05

不器用に、そしてひたむきに……★「居酒屋兆治」（1983年　田中プロモーション＝東宝）

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

こんばんは、映画狂のモイラでございます♪

今宵お届けする名画は、お酒飲みにはたまらないんじゃないかな……
その名も…… 「居酒屋兆治」です！

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藤野英治（高倉健）は、函館の町はずれで
妻・茂子（加藤登紀子）と「兆治」という小さな居酒屋を営んでいた。
店の名前の由来は、元ロッテオリオンズのエース・村田兆治。
英治は高校時代、野球部で投手を務めていたが、肩を痛めて野球をやめた。
その後は地元の造船所・北洋ドックに入社し、サラリーマンをやっていたが、
オイルショックの時、専務の吉野（佐藤慶）から、
出世と引き換えに同僚たちの馘首を命じられ、それに反発して退職した。
その後は酒に溺れたものの、気を取り直し、焼き鳥屋の主人・松川（東野英治郎）に頭を下げて弟子入りし、
やがて自ら「兆治」を開くまでになった。
そんな「兆治」の常連客は、高校時代にバッテリーを組んだ岩下（田中邦衛）、元英治の同僚・有田（山谷初男）、その部下の越智（平田満）、
酒癖の悪いタクシー会社社長の河原（伊丹十三）タクシー運転手の秋本（小松政夫）、
生命保険会社社員の堀江（池部良）、市役所職員の佐野（細野晴臣）などなど……
寡黙で不器用だが、実直な英治の人柄に惹かれて来る客も多かった。
そんなある時、かつて英治の恋人で、今は大牧場経営者・神谷久太郎（左とん平）の妻さよ（大原麗子）が、
家で火の不始末をした挙句、函館から姿を消してしまうのだった……

原作は山口瞳の同名小説。
小説の舞台は東京の国立市だけど、映画は国立よりもずっと絵になる（国立市民の方、ごめんなさい！）函館です。
モイラ、この映画は大学時代、ロードショーで観たのですが、
時代に取り残されたような居酒屋「兆治」の雰囲気に、たちまち酔ってしまいました……
「兆治」に集う市井の人々の哀感こもるエピソードも良かったけど、
何より寡黙で不器用な主人と、それを助ける女房の夫婦愛に、ぞっこんになっちゃった！
加藤登紀子さん、これが映画初出演とは思えないほど、
働き者の居酒屋のおかみさんの役を、上手に演じていましたね。
モイラもいつか結婚するようになったら、こういう妻になりたいと思いました。
（モイラ結婚して〇十年、今でも茂子みたいな妻にはなれていませんがね……）
「兆治」の向かいの小料理屋「若草」の陽気な女将・峰子（ちあきなおみ）も良かったなあ……
本業は歌手なのに、演技力抜群！
ちあきさん、今でもまだご夫君（郷鍈治）の喪に服しているんですってね。もうカムバックは望めないのかな……

人妻となってもなお英治に想いを寄せるさよ役の大原麗子も、
あの独特なハスキー・ヴォイスと危い雰囲気で、観客を魅了させていました。
函館の家を出て、札幌の大歓楽街・すすきののキャバレーのホステスとなり、
夜毎酒に溺れる哀しい演技は、見ものでしたね。
そんな破滅的なさよに一方的に惚れる越智を演じた平田満も、芸達者でした。

あのYMOの細野晴臣氏も、加藤登紀子さん同様、映画初出演……
こちらは居酒屋に出てきただけで、観客席から笑い声が聞こえてきましたね。
この映画が作られた1983年には、やはり YMOの坂本龍一氏が、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」に、重要な役で出ていたので、
それに対抗したつもりなんでしょうか……？
細野氏は演技が下手以下のレベルながらも、映画でギャグを飛ばしてましたよ。

伊丹十三演じるタクシー会社社長河原の存在感は、すごいものがあります。
どこにでもいますよね？　威張り屋で何かと人を見下す嫌な奴って。
十三氏はそんな嫌われ役を、巧みに演じてました。
河原の娘役で、まだ新人の中島唱子も可愛かったな。

だけど、この映画に登場した役者さん、健さんをはじめとして、もう殆どが亡くなってしまってますね……
嗚呼、昭和は遠くなりにけり……

昭和の香りを嗅ぎたい方には、超おすすめの一作ですよ！

監督は、「冬の華」「駅　STATION」などの降旗康男
脚本は、女性にしては骨太なシナリオ構成で知られる、「東京湾炎上」「未完の対局」などの大野靖子

未見の方は、今すぐレンタル店にGO！！

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