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2024.03.18

それでも生きる女たち★「赤線地帯」（1956年　大映）

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

こんばんは、映画狂のモイラでございます。

今宵の名画は、世界のケンジ・ミゾグチの遺作…… 「赤線地帯」でございます！

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国会で売春防止法案が審議されている昭和31年……
日本で最も有名な赤線地帯・吉原の特殊飲食店「夢の里」では、
金を貯めることに執着するやすみ（若尾文子）、
未亡人で１人息子との同居を夢見る年増のゆめ子（三益愛子）、
恋人との結婚に憧れを抱くより江（町田博子）、
病気の夫と幼子を抱えて苦労しているハナエ（木暮実千代）が
夜ごとに道行く男たちに声をかけ、春をひさいでいた。
そこへある日、神戸の大きな貿易会社の社長の娘だが、
父親のあまりの女道楽ぶりに嫌気がさして家出し、
やがてグレていったマンボスタイルの娘・ミッキー（京マチ子）がやってきて……

赤線地帯で哀しくも逞しく生きる女たちの群像劇で、
それぞれの女たちが、実に個性豊かで、リアリティ満点なんですね。
父親の借金のために、泣く泣く苦海に身を沈めたやすみは、
同僚相手に金貸し稼業をし、馴染み客からは大金を貢がせ、
なんとか赤線から抜け出し、商売を始めようとする……
ゆめ子は１人息子を育てるために娼妓をしていたのに、
それを息子になじられ、「お前みたいな汚い母親はいらない！」と、絶縁される……
より江は恋人と結婚したが、嫁した先では朝から晩まで家業の手伝いを強いられ、
結婚生活はほどなく破綻し、吉原に舞い戻ってくる……
ミッキーは父親が吉原まで迎えに来るが、
好きだった母親が死んで間もないのに後妻を貰った父親に猛反発し、
また父親が自分を迎えに来た目的は、長女が吉原の娼妓では次女の結婚に差し障るし、
第一世間体が悪いからだということを知り、激昂する……
「うちはパパを見習うたまでや！自分がさんざん女道楽しといて、今更何が世間体や！」
このミッキーの血を吐くような台詞は、モイラの心にグサリと突き刺さりましたね。

「夢の里」の主人（進藤英太郎）と女将（沢村貞子）も、
いかにも赤線にいそうな夫婦でした。
娼妓たちに、「売春防止法ができたら、お前たちは飯が食えなくなるんだぞ」と、
因果を含めるあたりは、さすがヴェテラン・バイプレイヤーのお二方でしたね。

赤線の女を描いた作品は数々ありますが、
モイラが観た作品の中では、この「赤線地帯」が最高傑作です！

脚本は溝口監督とよくコンビを組んでいた依田義賢ではなく、成沢昌茂。
実にうまく練られたシナリオです！
台詞がまたうまいんですよね。
初店で意気消沈し、己の運命を呪う少女にかけるミッキーの言葉が忘れられません。
「堅気の女もつまらん男にただで（処女を）捨てるのが、ぎょうさんおるんやで！」

観て絶対、ぜーったい損のない作品ですよ！

★溝口健二監督の世界★