恐怖感 南風一
仕事帰りの夜
少し坂道になった交差点がある
自転車のスピードを上げて
その交差点を過ぎるとき
後は 勢いに任せて自転車が走るに任せる
そんなときに決まって頭の中を過ぎる光景
小学生のとき今から思えばそれほど急な坂ではなかったと思うが
とにかく山の斜面の道を姉の漕ぐ自転車の後ろに乗ったのが
いけなかった
私は荷台にただ乗っているだけに過ぎないのに
スピードだけはやたらに出ているように感じる
私は怖くて「止めて」と叫んで
荷台から飛び降りようとした
自転車はバランスを崩して
横転した
姉も私も勢い余って
吹っ飛んだ
二人は顔や膝や手を嫌というほど地面に擦りつけられて
血だらけになった
それから後は家路の遠かったことと
自宅に帰って母からしかられたことを憶えている
姉の自転車の荷台に乗ったまま
横着に山道を下ろうとした私の考えが浅はかだった
荷台に乗っているときに感じるスピード感にまで考えが及ばなかった
スピードを出して
交差点を駆け抜けるとき
今でも決まって「もしここで転んだら痛いだろうな」という恐怖感に襲われる
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