イエローミワの徒然草

イエローミワの徒然草

林君の野外オペ


高2の生物の時間、先生が言った。「A型の人?」シ~ン、「え?じゃあO型の人?」シ~ン。そう、全員が自分勝手なB型と奇人変人のAB型、それが私の一番大好きだったクラス、理系2年7組である。1年の時、まかり間違えて別棟の特進クラスに入り、えらい目にあった私は、このクラスがパラダイスのよう...いつも笑い転げて腹が痛くなるクラスだった。 
そのクラスメートだけで、キャンプに出かけた事もあった。学校の取り決めだったので、引率の先生も3人ついてきた。しかし、その引率の先生もクセモノだった。(ココでは、もし彼らがまだ教職についていた場合、まずい事になるので、A,B,C先生とする。)彼らは、到着するやいなや酒を酌み交わしだした。 
A先生は、酔っ払って女子テントに潜り込んできて、「誰か、先生なら見せてもいいワって奴はおらんのか~。着替え、見せろ~」と騒ぎ立てた。
B先生にクミコが「実は、ミワ、先生のことが好きで悩んでるみたい…。」と、根も葉もない作り話を耳打ちしたらしく、私のそばによってきては、「ラーメン大好き小池さん」のような顔で、「まあ…ね、青春時代…、いろいろありますぅ。でも、正直、先生はうれしい!!」と、金八口調で語ってくる。クミコ、どうしてくれるんだ!!
C先生は、すごい秘密を語り始めた。「僕はね、生き物を標本にするのが、ダイスキなんだ。蛾や蝶にね、注射をして、針を刺す。モガキ苦しむ時が、たまらない……。アリをつぶす音も、プチッって……。いいよねえ…。ライターで虫を焼く時もあるよ。あれは……」これ以上、文には出来ない!!危なすぎる!!
この酔っ払いティーチャ-ズは、あろう事か、生徒にも酒を飲ませたらしく、ヒロちゃんは出来あがって、目が座っていた。「おい!せんせー。酒つげ!」ヒロちゃんのべろんべろんぶりをみんなで堪能している時、事件が起きた。林君が、錆びた釘を踏んで、足の裏に刺さったらしい。錆びた釘といえば、破傷風になる心配がある。でも、ココは、私達しかいない山の中。先生はべろんべろん。誰かの親に連絡をとり、病院に連れて行こうという意見が男子から出る。「ちょっと、待って。」女子の目は、その傷口を見ながら、妖しく光っていた。「私達をだれやと思うちょると。」実はこのクラスの女子、大多数が大学病院の看護婦コースを目指す集団だった。(13人中11人はそうなった)「ちょっと、ライターと酒、カッタ-と縫い針とガーゼ用意して」と、男子に命令すると、林君を女子テントへと連行していった。「なん?何すると?おい、ちょっと。」私は暴れる林君の上半身の重石役になった。「ミワ、もっとちゃんと押さえて」マキの声が聞こえた。私は、業務に徹していたので、患部で何がおこなわれてるかは、あまり見なかった。(これって、いつも林君が掃除道具箱に隠れて、女子の水泳の着替え覗いていた仕返し?と、少し思った)「針。ほら針、焼いて!動くなってぇ。アハハハ……」女子の恐ろしいまでのハイテンションな笑い声と林君の「ぎゃ~~」という声だけが、夜の山にこだましたのだった。
一夜あけて…、林君は抜け殻のようになりながらも、無事生きていた。
酔っ払いティ-チャ-ズは、「まあ、今回の事は、一夏の秘密という事で……。」と、ばつが悪そうに言った。当たり前だ!こんな事がばれたら、あんたらの妻子はどうなる。誰もこの事をチクる奴は、いないぞ。
私達は、今まで以上に結束を固め、このキャンプを終えようとしていた。
後ろから肩をたたき、話しかけてきたのは…B先生だった!
「あの…ね、暑い日がね、続くけど…ね、体に気をつけて。まあ…今は、学業優先という事で…。」と、少し目をそらしながらはにかんで言った。ゲッ!覚えてる!卒業までその誤解は解けることなく、おかげでB先生は卒業まで私にやさしく微笑みかけてきたのだった。 ううっ……。



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