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航の頭の中は やっと手にしたこのゲームのことでいっぱいである。
しばらく遊んでいると
航のちちが覇気のない声で「おはよう」と起きてきた。
その声に 航もゲームを続けたい気持ちを取り合えずしまい込み
出かける準備を始める。
風邪をこじらせ ひどい頭痛に悩まされていた航のははは
今日は家で少し休ませてもらうことにした。
今日の会場は1匹勝負で1日に3試合ある。
このところ 航のちちは航の手に改良を試しみている。
そのため 手が不安定で結果に結びつかない。
航の年内の優勝はもうないかも・・・航のちちもははも諦めムード。
しかも 今日はサンタさんからのプレゼントが
航の心の大半を占めているんじゃないかと懸念していた。
ちょうど正午に航のちちからメールが入った。
「3回戦敗退・・・」「は~やっぱりダメか・・・」
そして第2試合目も「1回戦敗退」のメール。
「うわあ~。
やっぱりあの子はサンタさんからもらったゲームのことばっり考えてるんじゃないの?
あ~今日の夜にしておけばよかったかな~」
プレゼントのせいなのか・・・航の心は今どこにあるのか・・・分からなかった。
このごろの航はムシキングに対して飽和状態にあるような気がする。
お腹いっぱいなのだ。
試合は毎週末 ちちが探してくれ、連れてってくれ、
これに負けても次がある。っていう気持ちが手に取るように分かる。
負けた時 悔し涙を見せても「だから、次に何をしよう」
という動機にまではつながらない。
始めた頃は 負けた時 会場ではケロッとしていたのに
家に帰って ちちとお風呂に入ると「強くなりたい」って泣き出したよね。
湯けむりの中で涙を拭く航を見て
航のちちは「絶対 強くしてやる!」と航の涙に誓ったんだと思う。
あの頃の航は ちちの話しを一所懸命聞いてたよ。
ところが、昨今の様子を見ていると
あの時のハングリーな部分が欠けてしまったような気がするよ。
どこへ行っちゃったのかなぁ。
そうこう考えているうちに
第3試合目の結果が・・・「3回戦敗退・・・」
「まあ、仕方ないかぁ・・・」 ぐるぐる言い訳を並べて
ふたりの帰りを待つことにした。
夕方 航のちちから「駅に着いたから迎えに来て」と連絡があった。
駅へ迎えに行くと 以外と明るい雰囲気で車に乗り込んできた。
航も航のちちも 吹っ切れちゃったのかなぁと思った。
「航 どうだった?」と聞くと
「ダメだった」と お決まりの会話。
「そっかぁ」なんて言っていると 航が 黒いケースを目の前に出してきた。
「あれ? 何これ?」 航のちちの顔を見て「どうしたの?」と聞くと
「優勝したんだよ」と ふたりでにこにこ・・・。
「え? 本当? 本当なの?」ははは 嬉しいはずなのに
何故か喜びが湧いてこない。
いつもはメールで「優勝したけど、航には知らないふりをしてね」と 入れてくるのに
今日は最後まで黙っていたのだ。
もう さっきまで「仕方ない」って 自分に言い聞かせていたにのに!
「いやぁ 第2試合 1回戦敗退の時は航平に気合い入れ直したよ。
なぁ 航平! お昼ご飯の時に なっ」
「うん。 でも それで 気合いが入った!
それがなかったら 優勝できなかったかも」
「ぼくは いつもパパにおこってもらいたいんだ」と ふたりは大盛り上がりだ。
「これは ママにクリスマスプレゼントだよなぁ。
行く時 ふたりで言ってたんだよな。 優勝して ママにしよう。 ってな!」
「うん!」 ふたりの会話は弾んでていいよな。
そっかぁ 今日はクリスマス・・・プレゼント?
「うわ~ ありがとう 何よりのプレゼントだよ~」 ははは会話に乗り遅れる。
「航はさぁ しばらく(優勝できて良かった。優勝できて良かった。)
って喜びに浸ってたよ。 珍しいよなぁ~あんなに言うの」
「あっ でも帰ったらゲームやってもいい?」
あっ やっぱり ゲームのこと考えてたんだ!
「何だよ お前はー」 その切り替えの早さに 航のちちは口をとがらす。
「だって パパ 優勝したらいいよって言ってたよ」
家に着いて 夕飯の支度に台所に立っていると、
航のちちが食器を取りにやってきた。
「ママも ホッとしたでしょ 今年はもう 優勝ないかと思っていたもんね」と
話しかける。
「何だか まだ 実感が湧いてこないんだよね」
そう答えるははに ちちはいたずらっぽく笑って居間に戻って行った。
航のははは 「航は本当に優勝したのかなぁ~」と
頭痛のうえに消化不良まで起こしていた。
(2005.12.29)