最近の投資信託の募集環境は決して良いとは言えないが、新ファンドの募集・設定で見る限りファンド数は大きく増加している。昨年2010年に新規募集・設定されたオープン投信は439本を数える。月に30~40本、多い月は60~70本もの新ファンドが誕生している。
新ファンドの顔ぶれを見ると、投資通貨を選択できる通貨選択型ファンドの多いことが目につく。新規設定ファンドのうち、本数で見て約23%、金額で見て約 30%が通貨選択型ファンドである。また、大部分のファンドが5年から10年の償還期限付きのファンドであることも特徴的だ。オープン投信は、本来無期限で投資家がいつでも購入・売却できることが特徴であるはずだが、最近設定のファンは、投資テーマや市場のトレンドに特化して運用する期限付きのユニット型に近いファンドが多い。
新規に登場するファンドが多い一方で、静かに退場していくファンドも少なくない。昨年中に140本のファンドが償還されている。償還されたファンドには、 10年の運用期限を終えて定時償還となった日本株ファンドが多いが、それらのほとんどは償還実績が期中分配金を含めても当初元本を大きく割り込んでいる。過去10年、株式相場が低迷したからといえばそれまでだが、仮に運用期間が無期限で運用を継続していけば、今後長期的には基準価額が回復する可能性もあると思われる。
また、繰り上げ償還になったファンドを見ると、年月の経過に伴って当初の投資方針が時代に合わなくなり、追加販売が行われず解約一方となって資産額が減少、運用困難となって繰上償還に至るといったケースが多い。しかも、当初投資元本以上で償還されるならまだしも、投資元本を大幅に下回った価額で強制的に償還されるのは投資家にとって耐え難いことであろう。
投資信託は長期投資商品と言われるが、このような設定・償還の実情を見ると、現在の日本のオープン投信の大多数は長期投資に向いた商品とは言えないのではないか。唯一、長期投資の対象となり得る商品といえば、それはインデックスファンドであろう。インデックスファンドは本質的に無期限のファンドであり、投資方針が一貫した永続性のある商品である。
国内・海外の株式市場や債券市場指数に連動を目指すインデックスファンドを資産運用のコアファンドとして長期投資し、償還期限付きのファンドはコアを補完するサブファンドとして、償還期限にとらわれずに売買して収益向上を図るという方法も、現実に即した資産運用法と言えるだろう。
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(楽天マネーニュース[株・投資]第92号 2011年2月18日発行より) ==========================================================