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前回、最悪の場合、資産の約3割を失うことが想定される金融商品に投資するとして、許容できる損失額が仮に100万円であれば、投資金額は330万円程度までに留めたほうが良いであろうことを説明しました。しかし、330万円の手元資金では、20年後に手にする金額は、(終価係数表から)利回り5%の場合で約870万円、8%では1,530万円と想定され、目標金額の2,000万円に届きません。そこで、目標金額との差をどう補うかが次の課題となります。年間収支のプラスの積み上がりでその差分を埋められれば良いのですが、そうでなければ、収支を改善して、定年時の資産を目標金額に近づける必要があります。例えば、共働きを検討したり、積極的なキャリアプランを実行することで収入増に繋げられますし、定年後の再雇用、再就職も大切な収入源となります。また、子供の教育費やマイホーム計画など将来の大きな支出を再検討することで将来の収支を改善することもできます。収支改善の結果として得られた資金の一部を積立商品に振り向けることも目標の達成には効果的です。先ほどの例で考えると、(減債基金係数表から)5%の利回りであれば約27,000円、8%の利回りでは約8,000円を毎月積み立てることで、定年時の目標金額に到達することが想定されます。さて、積み立てを始めるのであれば、確定拠出年金(個人型)への加入を優先的に検討したいところです。確定拠出年金は非課税の貯蓄・投資優遇制度で、運用期間中の運用益が非課税となるうえ、受け取る積立金も控除の対象となります。さらに、個人型の場合、毎月の掛け金が全額、課税所得から控除されることから、その節税効果は無視できない大きさとなります(毎月の掛け金の上限は、自営業者などの第1号被保険者で月額68,000円、第2号被保険者で23,000円、年額ではそれぞれ816,000円、276,000円)。確定拠出年金のような非課税の恩恵は得られないものの、投信積立もひとつの方法でしょう。利用者の中には、ノーロード(販売手数料がゼロ)で信託報酬も安いインデックス型投信を中心に組み入れるケースが多くみられるようです。保有期間中に継続して差し引かれる信託報酬はマイナスの複利効果を伴いながら確実にファンドの収益率を劣化させます。老後資金準備のような長期の資産形成の手段として投資信託を考えるのであれば、より保有コストの低いインデックスファンドを軸に据えたいところです。最後に、ポートフォリオの構築では、世界の株式市場に広く分散されたインデックスファンドを中心に置くと、投資機会を広く捉えることができます。TOPIX(東証株価指数)とMSCIコクサイ(日本を除く主要先進国22ヶ国で構成される外国株式指数)の組み合わせは日本の機関投資家がグローバル株式投資のベンチマークとして長く利用しています。さらに新興国株式指数を加えてよりカバレッジの広いベンチマークとするのも最近の傾向です。それらの指数を連動対象とするインデックスファンドやETFを組み合わせたポートフォリオを資産の中核に据えることは、投資機会の拡大とコスト抑制の観点から合理的な判断といえるでしょう。最近では、厚生年金の支給開始年齢を68歳まで引き上げる案が公式な場で議論されるようになりました。個人の自助努力による老後資金準備の必要性はさらに高まってきており、早期に着手する必要があります。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第107号 2011年10月28日発行より) ==========================================================皆様に長きにわたりお楽しみいただいておりました「楽天マネーニュース」ですが、勝手ながら、今回の2011年10月28日号をもって終了させていただくことになりました。これまで「楽天マネーニュース」をご愛顧いただいた皆様に厚く御礼申し上げますとともに、引き続き楽天グループのサービスをお楽しみいただけますよう努めてまいります。
2011.10.28
このところの世界的な株安を受けて金融商品への投資に躊躇する人も多いことでしょう。しかし、自助努力による将来の備えが不可欠と考えられる中、この低金利下にあっては貯蓄だけで十分な資産形成を図ることは難しく、リスク資産の活用から目を背けることはできません。今回は、資産運用を開始するにあたって注意すべきことを考えてみましょう。まず、支出の時期と概算金額を把握することが大切です。単身者であれば結婚が最初に訪れる大きなライフイベントでしょうし、子供のいる家計では学費の支出に占める割合が高まります。また、子供の成長につれて住居の問題も出てくることでしょう。会社勤めの場合、定年退職後の収入減への備えも大きな課題です。近い将来の出費に充てる予定の資金はリスクにさらすべきではなく、生活費の数カ月分の予備資金と合わせて預金口座に預け入れておくべきでしょう。足元の資産の状況と将来の資金収支の見込みから、リスク資産に投じることのできる金額を事前に把握しておき、そこから大きく逸脱しないように心掛けることが大事です。次に、目標金額を明確にすることです。最近では、年金制度に対する不信感などから老後生活に金銭的な不安を感じる人が増えており、定年後の収入減にどう備えるかが大きな課題となっています。「家計調査報告(平成22年度)」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の消費支出は234,555円でした。仮に月25万円の支出を前提にすると、20年間で約6,000万円、30年間では9,000万円ほどが必要で、ここから退職金と年金収入を差し引いた金額が自助努力で準備すべき金額となります。そして、期待利回りと許容できるリスクのバランスを図ることも重要です。ここで、2,000万円を老後資金として用意しなければならないとしましょう。運用期間を20年間、期待利回りを3%として複利運用する場合、20年後に2,000万円を手にするためには(現価係数表から)1,100万円ほどの手元資金が必要となることが分かります。しかし、これが、5%の利回りであれば750万円、8%では430万円ほどの資金で済むことから、手元資金に余裕のないような状況では、つい高めの期待利回りを前提に資産計画を立てがちです。また、運用期間が短くなればなるほど、高めの利回りを設定する傾向はさらに強まります。しかし、高い利回りの裏には高いリスクが潜んでいると考えるべきです。ここでいうリスクとは、期待されるリターンのばらつきのことを指し、リスクが高いということは大きく値上がりするのと同じくらいの確率で、大きく値下がりする可能性もあることを意味します。したがって、リスク資産に投じる金額は、最悪のケースを想定して、たとえ失ったとしても日常の生活に、またその後の資産形成計画に大きな支障を生じないで済む金額に留めるべきです。例えば、最悪のケースで資産の約3割を失う可能性のある金融商品に投資するとして、許容できる損失額が100万円であれば、投資金額は逆算から330万円程度に抑えるべきことが分かります。以上のように、将来の収支を基に目標金額を決め、期待利回りと許容できるリスクのバランスを図りながら投資金額を判断すると無理のない運用計画に落ち着くことでしょう。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第106号 2011年10月14日発行より) ==========================================================
2011.10.14
資産運用を始めたばかりか、これから新たに始めようとする個人投資家の中には、当初はインデックスファンドを購入して投資の知識がある程度身についた時点でアクティブファンドに乗り換えることを考えている人が多くいるようです。あたかも「インデックスファンドは手慣らしで、アクティブファンドが本番」という感じですが、果たしてそうでしょうか。 たしかに、かつてはアクティブファンドが投資信託業界の主流でした。最近、インデックスファンドの認知度が高まりつつあるとはいうものの、今でもスポットライトが当たるのはアクティブファンドのほうです。ベンチマークに打ち勝つ醍醐味のようなものがアクティブファンドの魅力であり、ファンドを提供する側としてはプロ意識もあってアクティブファンドが主戦場という気持ちが強くあります。また、取り扱い手数料が高いことから、投資信託を販売する金融機関がインデックスファンドよりもアクティブファンドに重きを置くのも当然といえるでしょう。 しかし、それはあくまで商品を提供する側の論理であり、自らの資産を投じる投資家は金融機関の思惑にくみする必要はありません。金融機関ではアクティブファンドが主であったとしても、利用者側の立場に立てば見方は逆転します。短期的にベンチマークを上回る成績をあげるアクティブファンドがあったとしても、好成績をその後も維持することは現実的には困難なことです。老後資金の準備といった長期の資産形成に取り組む個人投資家にとってはなおさら、運用成績の浮き沈みが予想されるうえに手数料の高めなアクティブファンドよりも、市場平均並みのパフォーマンスを確実に、しかも安価に提供し続けるインデックスファンドのほうが資産運用の中心に据えやすいといえるでしょう。 資産運用には、コア・サテライトという考え方があります。年金基金などのプロの機関投資家が採用するアプローチです。運用資産の中でも、長期的な観点から行う安定運用部分をコア・ポートフォリオとし、コア部分以外をサテライト的な位置づけとします。そして、資産の中核であるコア・ポートフォリオではグローバルな分散投資を重視し、確実に市場平均リターンを低コストで獲得できるインデックスファンドが採用されます。一方、サテライト部分では、積極運用を行うアクティブファンドを採用し、短中期的に市場平均を上回る超過収益率をあげることを目指します。 同じような取り組みが個人投資家の資産形成にも有効でしょう。老後資金の準備といった長期的な資産運用部分をコア・ポートフォリオとみなしてインデックスファンドに投資し、一方で、有望なアクティブファンドを見出すことにやりがいを感じたい人はサテライト的な位置づけで、ただし長期の資産形成に支障のない範囲内で楽しむ、という取り組み方です。「アクティブファンドかインデックスファンド」ではなく、「アクティブファンドとインデックスファンド」という頭の切り替えが大切といえるでしょう。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第105号 2011年9月30日発行より) ==========================================================
2011.09.30
投資信託は、運用方法による違いからインデックスファンドとアクティブファンドに大別されます。今回は、両者の違いについてまとめてみましょう。 アクティブファンドは、市場や投資銘柄に対するさまざまな調査結果や予測を基にして、運用成績の評価尺度であるベンチマークを上回る運用成果を目指します。投資対象が株式の場合、ベンチマークには株式市場全体の動きを表わす株価指数が採用されます。日本では、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価指数などが一般的です。 アクティブファンドのパフォーマンスの優劣は、このベンチマークを上回る収益率、いわゆる超過収益率の大きさで判断されます。これに対して、インデックスファンドはベンチマークを構成する、ほとんどすべての銘柄に投資し、ベンチマークとほぼ同じ値動きをすることを目指すことから、その良し悪しはベンチマークとの連動性で評価されます。 さて、ベンチマークを上回る収益率を期待できる点がアクティブファンドの最大の魅力ですが、実際には、アクティブファンド間でパフォーマンスに大きな差があります。運用成績の良いファンドで大きな投資成果をあげることができるのと同じくらいの確率で、運用成績の悪いファンドを選択してしまい、市場平均を大きく下回る結果に陥る可能性もあるということを念頭に置いておきましょう。また、短期的にベンチマークを上回るパフォーマンスをあげるファンドがあったとしても、コンスタントに好成績を維持することは現実的には難しいということも覚えておいてください。 ファンドの目利きには自信があるという人もいることでしょうが、そもそも過去の好パフォーマンスが将来の運用成果を保証するものではありません。事前に、将来のパフォーマンスが良いであろうファンドを選ぶことは難しいというのが現実です。 一方、インデックスファンドでは、ベンチマーク収益率、つまり市場全体の平均的なリターンをほぼコンスタントに獲得することができます。しかも、アクティブファンドのように、どの銘柄に投資をするかといった調査を行いませんし、一度、ポートフォリオを構築したら、入出金対応などの調整売買をする程度で、アクティブファンドほど運用に手間がかかりません。そのため、運用の対価として投資家が負担する「信託報酬率」は低めに設定されています。 例えば、日本株を投資対象にしたインデックスファンド(公募投信)の場合、信託報酬は純資産総額の0.4~0.6%程度です。アクティブファンドでは1.4~1.8%程度であり、インデックスファンドの3倍程度の水準に設定されています。また、投資信託を購入する際に販売会社に支払う「販売手数料」は、インデックスファンドで購入時の基準価格の2%程度に対して、アクティブファンドでは3%程度とやはり高めです。 一般的な商品では、高い値段を払えば、より良い商品やサービスを受けられると考えられますが、投資信託では、「手数料の高いファンドほど運用成績がより良いはずだ」とはいえません。むしろ、継続的に純資産から差し引かれる信託報酬はマイナスの複利効果を伴いながら確実にファンドの収益率を劣化させます。老後資金準備といった長期の資産形成の手段として投資信託を考えるのであれば、より保有コストの低いインデックスファンドを軸に据えるのが賢明といえるでしょう。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第104号 2011年9月9日発行より) ==========================================================
2011.09.09
このところ、欧米の景気減速懸念や財政不安などを背景に世界的な株安が進み、リスクを回避しようとする大量の投資資金が円に流れ込んでいます。また、米金融緩和の長期化観測に伴う日米金利差の縮小に着目した円買いもあって、円は3月17日に付けた過去最高値(76円25銭)を更新しました。今回は「為替リスク」を回避する方法について、外国資産を投資対象とする投資信託の場合ではどのような手段があるのか、考えてみましょう。外国資産を投資対象とする投資信託は外国通貨を通じて投資を行っています。そのため、投資信託の換金時において、円の価値が購入時の水準を上回っている状態(円高)では損失が発生してしまいます。この為替差損を回避するために「為替ヘッジ」を行います。「為替ヘッジ」とは、通貨の先渡し取引などを使って、運用成績が為替変動の影響を受けにくくする方法のことです。なお、先渡し取引とは、将来のある時点に、予め定めた価格で、ある商品を売買する予約取引のことです。例えば、円を売ってドルを買った後に、一年後に一定の為替レートで、ドルを売って円を買い戻す予約をすることであり、これによって為替差損をこうむるリスクを抑えることができます。外国資産に投資する投資信託の中には、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」コースが用意されているものがあります。「為替ヘッジあり」コースでは、為替ヘッジを行うことで、基準価額の値動きが為替変動の影響を極力受けないように設計されています。したがって、為替リスクを回避しつつ、外国株式や外国債券などの収益だけを狙いたい人にとっては「為替ヘッジあり」コースを購入するのもひとつの方法でしょう。なお、当然のことながら、「為替ヘッジあり」を選んだ場合で、購入時に比べて換金時の円の価値が外国通貨の価値よりも低い状態(円安)になったときには、「為替ヘッジなし」であれば得られたはずの「為替差益」を得ることができないことになります。また、「為替ヘッジ」を行なうにはコストがかかることも知っておきましょう。ヘッジに伴うコスト(ヘッジコストと呼びます)は、相手国との短期金利差、例えば、ドル・円の場合、米国の短期金利と日本の短期金利の差が反映されます。そのため、投資先の金利が自国の金利よりも高ければ高いほど、ヘッジコストがかかることになります。2008年の金融危機以降、内外の金利差が縮小したことから、ヘッジコストもそれに伴って低い水準で推移しているものの、他国に比べて超低金利下にある日本の状況では、基準価額にマイナスの影響を与えるということは理解しておきましょう。ヘッジコストは、投資信託購入者が直接的に支払うものではないので、気付きづらいものですが、信託財産から日々、差し引かれており、間接的に負担している格好です。ヘッジコストを支払ってでも将来の為替変動を回避したい、つまり、支払うヘッジコスト以上に円高による為替差損の影響が大きいと考える投資家にとって、「為替ヘッジあり」コースは有効な手段といえます。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第103号 2011年8月26日発行より) ==========================================================
2011.08.26
「恐怖指数」(Investor Fear Gauge)という指標があるのをご存知ですか。株式市場に参加している投資家らの相場の先行きに対する不安感、つまり恐怖心理の高まりを数値化した指標のことです。市場で取引されているオプション(ある資産について、将来の一定の期日に、一定の価格で取引する権利を付与・売買する取引のこと)の価格から逆算して、市場参加者が予想する将来のボラティリティ(価格の変動率)を算出し、指数化したものが「ボラティリティ指数(Volatility Index)」であり、別名、「恐怖指数」と呼ばれています。このボラティリティ指数が高い値を示すほど、市場参加者が相場の先行きに対して不安感を募らせていることを意味します。代表的なボラティリティ指数は、アメリカのS&P500種株価指数を対象に、シカゴ オプション取引所(Chicago Board Options Exchange:)が算出・公表している「CBOE SPX Volatility Index(VIX)」です。通常は10~20ポイントの間で推移しますが、相場急落の局面では、そのレンジを大きく超えます。過去の例でいえば、2001年9月のアメリカ同時多発テロ直後に一時49ポイント台まで上昇しました。また、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻直後には42ポイントに、さらにその後、世界金融危機の様相が強まると、2008年10月末には89ポイントをつけました。その水準をピークに、徐々に低下し、しばらく20ポイント前後で推移したものの、2010年5月には、ギリシャの財政問題に端を発する世界同時株安を受けて再び上昇し、48ポイントをつけました。今年に入ってからは20ポイントを下回る水準で推移していましたが、3月の日本の震災を受けて一時的に31ポイント台に上昇しました。その後は再び20ポイント以下の水準で落ち着いていたものの、8月に入ってからは、米連邦債務の上限引き上げ問題の難航と米景気減速懸念の高まりから、40ポイント目前まで急上昇しました(8月5日時点)。米債務問題が決着したものの、米経済指標の悪化を受けて景気の二番底懸念が浮上し、さらに米格付け会社が米国債の長期格付けをダブルAプラスに1段階引き下げたことが投資家の不安心理を煽る格好になりました。日本でも、日経平均225を対象に、「日経平均ボラティリティー指数」が公表されています。通常であれば、20~30ポイントで推移しますが、リーマンショック後の世界金融危機を受けて、2008年10月には91ポイントに達しました。その後、通常の水準で推移したものの、2008年5月のギリシャ・ショック直後には43ポイントに、今年3月の東日本大震災直後には50ポイントまで上昇しました。7月の同指数は20ポイント前後で推移していましたが、8月になってからは米国同様に、上昇傾向にあります。8月5日には前日の24ポイントからいきなり38ポイント台に急上昇しました。相場の先行きについて投資家がどのように感じているのか、その市場心理を確認するうえで参考になる指標です。なお、「日経平均ボラティリティー指数」は、日本経済新聞(朝刊)のマーケット総合欄に毎日、掲載されています。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第102号 2011年8月12日発行より) ==========================================================
2011.08.12
8月1日より、FX(外国為替証拠金取引)の証拠金倍率が現行の最大50倍から25倍に引き下げられます。FX(外国為替証拠金取引)とは、証拠金を業者に預け入れて通貨の売買を行う取引のことで、通常の売買のように直接の現金の受け渡しを行わず、反対売買による差損益金のみで決済を行います(差金決済)。FXの最大の特長は、レバレッジにあります。レバレッジとは英語で梃子の作用/原理のことですが、梃子を利用して小さな力で大きな力を生み出すように、FXでは担保となる証拠金を元手に、その何倍、何十倍もの金額の外貨を取引することができます。例えば、手元に80万円があるとしましょう。1ドル=80円として、レバレッジのない(もしくはレバレッジ1倍の)通常の取引では、10,000ドル(80万円)の外貨しか売買できませんが、10倍のレバレッジを使うと、取引できる金額は100,000ドル(800万円)、25倍では、250,000ドル(2,000万円)となります。仮にドル・円レートが1円動くだけで、レバレッジ10倍では10万円、25倍では25万円の損益が生じます。レバレッジが高ければ高いほど、わずかでも為替レートが思惑と反対の方向に動けば、より大きな損失が発生することになります。そこで、このレバレッジを最大でも25倍までに限定しようとするのが今回の措置なのです。最大倍率の引き下げは今回が2回目で、金融庁は昨年8月にもレバレッジの上限を50倍に限定する規制を導入しました。それまではレバレッジ数百倍を提供する業者もあり、一握りの成功例の裏で、大きな損失を被った投資家の話をよく耳にしました。FXに「投機的」なイメージがつきまとうのは、このようなレバレッジの影響だけではありません。そもそもの為替取引の性質は、株式や債券に投資するのとは異なるということを理解しておきましょう。株式投資の場合、得られるリターンは投資先の生産活動に参加することからもたらされ、株式投資で負うリスクとは資本を提供するリスクということになります。そのリスクに対して支払われる対価としての「リスクプレミアム(リスクに応じて期待する追加的な収益率)」を理屈上、期待することができ、時間をかけてそのリスクプレミアムを獲得することになります。一方、為替のリスクは市場参加者がお互いの見通しの違いに賭けるリスクです。仮に、円を売ってドルを買った人がいれば、その反対側にはドルを売って円を買った人がいます。結果として、どちらかが得をし、どちらかが損をすることになりますが、損益の合計はゼロです。このように為替取引はゼロサムゲーム的な投機の側面が強く、リスクを負うことで追加的なリターンが得られるわけではなく、長期投資の恩恵を受けることは期待できません。リスク資産に投資をする場合は、リスクの大きさ(リターンの変動幅)もさることながら、負うリスクの性質についてもよく理解しておく必要があるといえるでしょう。では、個人はFXとどう付き合えば良いのでしょうか。実は、FXでは為替手数料(スプレッド)が外貨預金の100分の1以下とコスト面で圧倒的に有利です。為替取引のゼロサムゲーム的な側面を理解したうえで外貨投資を行うのであれば、レバレッジを1倍程度に自ら限定することで、FXの良い面だけを活用することができるでしょう。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第101号 2011年7月22日発行より) ==========================================================
2011.07.22
今年の夏のボーナスは、日本経済の先行き不透明感から家計の防衛色が一段と強まり、貯蓄や生活費の補てんを最優先する家計が多いようです。しかし、中には、ボーナスの一部を投資に振り向けることを検討している家計もあることでしょう。住宅ローンを抱える家計でも、ボーナスの一部をローン返済に充てるのではなく、ローン以上の利回りを見込める金融商品の投資に回すという考え方があるようです。ローン返済か、金融商品への投資か、住宅ローンを抱える家計はどちらを優先すべきでしょうか。仮に、住宅ローン金利を3%、有望な投資候補の期待利回りを6%としましょう。期待利回りとは、投資において予想される利回りの平均値であり、ある金融商品が1年後に50%の確率で+15%に、50%の確率で-3%になると予想されるとすれば、15%×50%+(-3%)×50%=+6%が期待利回りとなります。あくまで1年後の収益率の期待値であって、実際には住宅ローン金利の3%を大きく上回るかもしれないし、逆に下回るかもしれず、その結果に大きな差が生じ得ます。次に、住宅ローンの繰り上げ返済を投資的な観点から考えてみましょう。ローンのキャッシュフローは債券投資のキャッシュフローのプラス・マイナスをひっくり返したものと考えることができます。つまり、債券投資では、定期的に利息を受け取る(プラスのキャッシュフロー)のに対して、ローンでは、定期的に支払いが生じます(マイナスのキャッシュフロー)。そこで、例えば、住宅ローン金利が3%であったとしましょう。繰り上げ返済をすることで、その返済額に将来発生するはずであった利払いを回避できることから、結果として将来のマイナスのキャッシュフロー(繰り上げ返済額×3%の利払い分)を軽減することができたことになります。これは、3%の利回りで、しかもゼロリスクで運用することができたことと同じ経済効果となります。一方、ローンをそのままに前述の金融商品(期待利回り6%)に投資したとすると、3%のローン金利との差し引きの3%(=6%-3%)しかない期待リターンで、金融商品のリスク(株式の標準偏差は15~20%)を負うのと同様の取引をしたことになります。以上のように、仮にローン金利に比べて、投資信託などの金融商品の期待利回りが高かったとしても、金融商品への投資結果は不確実(=リスクがある)であり、リスク・リターンの観点からも効率的とはいえません。一方、住宅ローンの返済では負債残高を減らすことで確実に(=リスクなしで)将来の利払いの一部を軽減できることから、ローン返済を最優先に考えたほうが賢明といえるでしょう。なお、これまで繰り上げ返済に励んでこられたような家計では、ローン残高の減少による借り入れ条件の改善が見込まれます。主に、固定金利での借り入れがある家計では、ローン残高が減ることで(月々の支払額が一定として)借入期間が短縮され、金利もより低い水準のものが適用されることになり、ローン負担の軽減が期待できるでしょう。また、1万円から繰り上げ返済できたり、繰り上げ返済時の手数料もかからなかったりと金融機関のサービスはより使い勝手が良くなっています。その点からも借り換えのメリットは大きいといえるでしょう。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第100号 2011年7月8日発行より) ==========================================================
2011.07.08
海外ETFのディスクロージャー資料は、本国で作成されたものが日本語に翻訳されており、横文字が目立ちます。また、ファクトシート(定期的にネット上で更新される簡易的な運用報告書)が日本語に翻訳されてネットに掲載されるまで時間が掛かることから、最新の情報を入手するには、直接、海外のホームページをみたほうが早道です。しかし、馴染みのない言葉が頻繁に出てくると、読み進むのも億劫になりがちです。今回は、海外ETFのディスクロージャー資料でよく目にする用語について解説します。(1)フル・リプリケーション(Full Replication)日本語で完全法といい、連動対象とするベンチマークを構成する全ての銘柄を、ベンチマークの構成通りに組み入れるポートフォリオ構築方法です。リプリケーションは、replicate「複製する、模倣する」の名詞形で、フル(完全)にリプリケート(複製)するから、完全法というわけです。一方で、計量モデル等にもとづき、一部の銘柄を抽出し、ファンドとベンチマークのリスク特性のズレが最も小さくなるように、ポートフォリオを組む方法を最適化法(Optimized Replication)と呼びます。(2)トータル・リターン(Total Return)投資元本に対する一定期間内の総合的な収益率のことです。株価や債券価格の変化(キャピタルゲイン/ロス)と、配当や利子収入(インカムゲイン)を合計したものを、投資元本で割って求めます。なお、配当や利子収入を含まない、株価・債券価格の変化だけの場合は、プライス・リターンと呼びます。(3)NAV(Net Asset Value)一般の投資信託では、ファンドの純資産総額をNAVといいますが、ETFの場合、純資産総額を一口当たりに換算した金額を指します。NAVは、1日に1回、取引所の引けた後に算出されます。さらに、取引時間中にリアルタイムで更新される一口当たり推定純資産額もあり、Indicative NAV(iNAV)と呼ばれています。iNAVの公表により、売買にあたっての透明性が高まり、市場での取引価格とiNAVとを見比べることで、裁定取引(価格差を利用して売買し、利鞘を稼ぐ取引)に取り組み易くなっています。なお、一口当たりに換算する前の純資産総額はトータル・ネット・アセット(Total Net Asset)と表記されることが多いようです。(4)エクスペンス・レシオ(Expense Ratio)運用手数料や口座管理費用、監査費用といったファンド管理に要する費用はファンドの純資産から差し引かれます。その支出額の純資産に対する比率がエクスペンス・レシオであり、この値が低いほど保有コストが低いと評価できます。(5)ポートフォリオ・ターンオーバー(Portfolio Turnover)ターンオーバー(Turnover)とは、一般的に、資本・資産の回転率を指します。ポートフォリオのターンオーバーという場合は、ポートフォリオに組み入れる株式などの有価証券が一定期間内にどれだけ頻繁に売買されたかを示し、ファンド内の取引活動を計る尺度になります。取引コスト抑制の観点から、ターンオーバーが低いほうが好ましいとされます。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第99号 2011年6月24日発行より) ==========================================================
2011.06.24
商品市況の高騰や経済の回復基調を背景に、世界的にインフレ圧力が高まってきている。投資信託に投資してインフレから資産を守るためには、どの様なタイプのファンドがよいだろうか。多くの人が第一にあげるのは株式ファンドであろう。だが、株式投資は常にインフレヘッジになるとは言えない。1980年から2010年までの30年間について、東証第一部の各年間の平均株式投資収益率を消費者物価指数上昇率と比較してみると、株式投資収益率が物価上昇率よりも悪かった年が12年あった。1年という短期で見れば40%の期間、株式投資はインフレヘッジの機能を果たしていない。10年という長期で見ても、20期間中7期間は株式投資収益率が消費者物価上昇率に及ばない。20年ではどうか。この場合でも10期間中3期間がインフレヘッジとなっていない。この3ケースは、1980年代末の株式市場バブル期の頂点で株式を買い20年後のリーマンショックによる暴落時に売却したという異常なケースと言えるかもしれないが、今後そうした状況が再来しないとも限らない。そこで、株式ファンドを補完するために他のタイプのファンドにも分散投資することが望まれよう。その一つは、コモディティファンドである。石油や金属、農産物など商品への投資は昔から効果的なインフレヘッジ手段と言われる。しかもこれらの商品の価格変動は株式市場の変動と動きが大きく異なるので、株式投資と組み合わせれば資産全体のリスク・リターンの向上が期待できる。ただ、コモディティファンドは基準価額の変動が激しいので、短期ではインフレヘッジになるとは限らないこと、また、ファンドは石油とか小麦などの商品に直接投資するのではなく、多くの場合、商品指数に連動するように作られた「仕組み債」に投資するので、仕組み債の発行会社の信用リスクがあることに留意が必要だ。もう一つは不動産投資信託ファンド(REITファンド)である。インフレ期には地価や家賃が値上がりするからREITは好影響を受けるだろう。しかし半面、不動産の維持・管理費用も上昇するというマイナス面も出てくる。また、インフレ期に金利水準が上昇すると株式や債券の利回りが上昇し、REITの利回りの相対的有利性が薄れてくる。こうした点を考えるとインフレヘッジ手段としてのREITファンドの効果は限定的と言えよう。インフレヘッジという観点から投信ポートフォリオを構築するには、株式ファンドをコアとし、コモディティファンド、REITファンドを一部組入れて分散投資効果を図るという組み合わせがよいだろう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第98号 2011年6月10日発行より) ==========================================================
2011.06.10
自分の資産状況に適したアセット・アロケーションを研究し、資産運用を実践する個人投資家が増えています。実際の投資対象として、国内外のインデックス投信やETF(上場投資信託)を組み合わせ、できるだけ低コストでポートフォリオを構築するケースが多く見られ、インデックス・ファンドも個人の資産形成に浸透しつつあるようです。そこで、今回は、インデックス・ファンドのリスク指標であるトラッキングエラーについて考えてみましょう。インデックス・ファンドは市場全体の平均的な収益を獲得することを目的とし、十分に分散化されたポートフォリオを保有します。国内株式では、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が、海外株式ではMSCIコクサイ指数などがベンチマーク(運用成果の比較対象)となる株価指数(インデックス)として一般的です。インデックス・ファンドでは、これらインデックスのすべての構成銘柄、あるいは代表的な銘柄に投資し、基準価格がこれらの株価指数と同じ値動きをすることを目指します。トラッキングエラーとは、連動対象とするベンチマークの収益率からファンドの収益率がどれほど乖離する可能性があるかを表す指標です。実務上、ベンチマークの収益率とファンドの収益率との差(超過収益率)の標準偏差を使って説明されます(標準偏差については、2011年4月22日の「リスクをどう見積もるか」をご確認ください)。トラッキングエラーが大きいほど、運用するポートフォリオがベンチマークに対して大きなリスクを取っていることを意味し、小さいほど(インデックス・ファンドとして)ベンチマークとの連動性が高いと評価されます。なお、トラッキングエラーには、過去の超過収益率の実績値を基に計測される「実績トラッキングエラー」と、分析ツールを用いて推定した「推定トラッキングエラー」の2種類があります。トラッキングエラーは年率化した数値で表示され、例えば、あるインデックス・ファンドのトラッキングエラーが0.20%とすると、1年後にこのファンドの収益率は、約68.3%の確率でベンチマーク収益率から±0.20%の差が生じるだろうということを意味します。つまり、ベンチマークの収益率が1年間で+5.00%であるとすれば、インデックス・ファンドのリターンは+4.80~+5.20%の範囲内に分布するだろうということが推測されるということです。仮に2標準偏差を想定すれば、95.4%の確率でベンチマークの収益率から±0.40%乖離する(インデックス・ファンドのリターンは+4.60~+5.40%の範囲内に分布する)であろうことを意味します。インデックス投信の中には、同じ株価指数を連動対象とするものを各運用会社がそれぞれ提供していることがあるので、選ぶ際には、必ず横比較を行い、トラッキングエラーのより小さいものを選ぶように心掛けましょう。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第97号 2011年5月27日発行より) ==========================================================
2011.05.27
最近募集される新ファンドでは元本確保型とかリスク限定型などという名称がさっぱり聞かれなくなった。それもそのはず、4月から投資信託の規則が変わり、ファンドにそのような名称を付けることが禁止されたのだ。 その背景には、仕組み債を利用して償還時の元本や利回りが株価水準や金利などの複雑な条件によって変動するファンドが、あたかも元本や利回りが確保されるような誤認を与えて資力・理解力の少ない投資家に販売され、リーマンショック後の市場下落で想定外の損失を被ったなどの苦情が投資家から数多く寄せられたことがある。 こうした背景を受けて日本証券業協会と投資信託協会は、金融庁の監督の下、デリバティブ取引に類似した投資信託について販売・勧誘規制を強化した。 販売会社には、販売しようとするファンドのリスク特性等について事前に検証し、年齢や取引経験、財産の状況、投資目的などから勧誘対象となる顧客を選定することが求められた。そして勧誘・販売時には、リスクに関する注意喚起文書を交付し、最悪のシナリオを想定した損失額等の重要事項を説明し、顧客から確認書を受け入れることなど、説明義務の強化が図られた。 このように、今回の自主規制は販売会社が投信を販売する際の基本原則である「適合性原則」の強化が主眼となっており、投信会社に対しては、ファンドの名称に元本や利回りの保証や基準価額の変動リスクが低いかの誤解を与える恐れのある名称を用いないこと、組成したファンドの販売会社への商品説明の徹底、目論見書・運用報告書等によるリスクの開示の徹底を求めることなどにとどまっている。 しかし、投資信託の募集を行うのは投信会社である。販売会社は「募集の取扱い」を行っているのであり、投資家と資金の投資運用契約を結ぶ当事者は投信会社である。こうした観点に立てば、ファンドの製造元である投信会社は、組成したファンドがどのような投資家のどのようなニーズに応える商品であるかを自ら投資家に伝えるべきではないか。 そうして募集した投資家の資金を投資家の利益のために忠実に運用・管理することが、投信会社の「受託者責任」であると言えよう。そのためにはファンドの目論見書に、このファンドはどのような投資家に向けた商品として組成されたものであるか、適合する投資家のタイプや範囲を記載することが望まれる。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第96号 2011年5月13日発行より) ==========================================================
2011.05.13
これから資産運用に取り組もうとされる方の中には、保有する金融資産のうち、どの程度をリスク商品に振り向ければ良いか、判断に迷っている人も多いのではないでしょうか。「あの人がこれくらい投資しているから、私もこれぐらい…」という横並び意識は思わぬ結果に陥りかねません。個々人の置かれている状況(家族構成や資産状況、年齢や健康状況、相続の有無など)によって、取ることのできるリスクが異なるからです。今回は、リスクについて少し考えてみましょう。日常生活において、「リスクが高い」というと「危険が大きい」という意味合いで使われることがほとんどです。主に損失を被る可能性を想定してリスクと呼ぶことが多いのですが、金融の世界においてリスクとは期待されるリターンのばらつきのことを指し、標準偏差というデータの散らばり具合(あるいは、分布の広がり幅)を示す統計学的な数値を使って説明されるのが一般的です。例えば、あるリスク商品の期待リターンが+10%で、1年後のリターンの振れ幅が20%(標準偏差 年率20%)だとすると、1年後にこの資産のリターンは7割弱程度の確率で-10%から+30%の間におさまるだろう(期待リターンの+10%を中心に±20%)ということになります。このようにリターンの取り得る幅を金融の世界ではリスクと呼び、値下がりだけでなく、値上がりも含めて考えます。さて、前述の「7割弱程度の確率で-10%から+30%の間におさまるだろう」とはどういうことでしょうか。ここで、富士山の形をしたグラフをイメージしてください。横軸がリターンで、縦軸はデータの個数です。横軸の中央が期待リターン(ここでは+10%)であり、ここを中心に左右対称にグラフは広がっています。富士山のてっぺんがあるのは、ちょうど中央の期待リターンの上で、そこから左右に裾野が広がっていく、つまり、期待リターンから遠ざかるにつれて発生頻度が下がっていくことになります。このような形のグラフを正規分布といいます。リターンが正規分布することを前提にすると、約68.3%の確率で1標準偏差、つまり期待リターンを中心に±20%の範囲内(-10%から+30%の間)にリターンがおさまることが想定されます。2標準偏差であれば95.4%の確率で期待リターンを中心に±40%(1標準偏差である20%×2)の範囲内に、3標準偏差であれば99.7%の確率で±60%(20%×3)の中に将来のリターンが分布するであろうことを意味します。個々人が取り得るリスクは、最悪の場合、たとえ失ったとしても日常の生活に、またその後の資産形成計画に大きな支障を生じないで済む金額かということをポイントに決定すべきです。ここで、最悪の場合をどう捉えるかですが、マイナス2標準偏差(前述のケースだと期待リターンから40%のマイナス、つまり1年後に30%程度の損)を前提とするのが一般的といえるでしょう。このように過去のリターンのばらつき度合い(標準偏差)と、その発生する確率を手掛かりに将来のリターンの変動幅と可能性を想定することで、資産のどの程度を株や投信などのリスク商品に振り向けるべきかを判断する基準とすることができます。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第95号 2011年4月22日発行より) ==========================================================
2011.04.22
投資信託の投資コストを検討するときは、購入時に支払う「販売手数料」と毎年ファンド財産から支払われる「運用管理費用」(信託報酬)の両方を合わせて見る必要がある。最近は、ノーロードファンドといって販売時に販売手数料を徴収しないファンドも少なくない。しかし、そのようなファンドでも毎年の信託報酬が高ければ、トータルな投資コストは大きくなる場合がある。例えば、販売手数料が3%で信託報酬0.5%のファンドと、販売手数料がゼロで信託報酬が1.5%のファンドを10年間保有した場合のトータルコストを比較してみると、販売手数料ありのファンドは8%であるのに対し、販売手数料なしのファンドは15%とトータルコストははるかに高くなる。一方、10年ではなく2年間という短期保有した場合で見ると、今度は販売手数料なしのファンドの方がトータルコストは3%となり、販売手数料ありのファンドの4%よりも安くなる。この例から分かるように、一時にまとまった資金で購入し長期に保有しようという投資家にとっては、販売手数料が多少高めでも信託報酬が安いファンドが好ましいし、比較的短期で保有する投資家や累積投資目的で定期的に買い付けを行うような投資家は、販売手数料の安いファンドが適していると言えよう。しかし、現在の日本の一般投資家向けファンドは、「販売手数料ありで信託報酬が比較的低い」ものか、「販売手数料なし或いは低率で信託報酬が比較的高い」ものかのいずれか一方の方式をとっており、投資家が選択する余地はない。米国では、一つのファンドでも、投資家が手数料を支払う方法にいくつかの選択肢を設けているのが一般的だ。購入時に販売手数料を徴収し毎年の信託報酬は低めとする方式、購入時は無手数料だが解約時に解約手数料を徴収する方式、購入時も解約時も手数料をとらないがその分信託報酬を高めとする方式などの選択肢を設け、投資家はその中から自分の投資資金の性格や保有期間に適した手数料方式を選ぶことができるようになっている。日本でも、米国流の手数料選択方式をとることは可能である。ファミリーファンド形態で、一つのマザーファンドのもとに販売手数料と信託報酬の徴収方法の異なる数種類のベビーファンドを設け、投資家が選択できるようにすればよい。すでに現在でも、確定拠出年金向けや投信ラップ向けには、手数料体系の異なったベビーファンドが一般投資家向けファンドと同一のマザーファンドに接続されているケースも多い。投資家の側から投資コストを節約できるよう投信手数料の支払方法に選択肢の導入が望まれる。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第94号 2011年3月11日発行より) ==========================================================
2011.03.11
みなさんは、いつから年金がもらえるかご存知ですか。昔であれば、60歳であった厚生年金の支給開始年齢は現在、原則として65歳となっています。「原則として」というのは、現在の定年世代が支給開始時期引き上げの過渡期にあたり、生年月日や性別によって受給開始年齢が異なるからですが、将来的には例外なく、すべての加入者が65歳から支給されることになります。ところで、65歳まで雇用を延長する仕組みが制度化されたものの、国内企業の大半は依然、定年退職年齢を60歳としたままです。したがって、定年後、公的年金支給開始までの5年間ほどは自助努力で収入減に対応しなければなりません。最近は、支給年齢の更なる引き上げが検討されており、自助努力の必要性は一層高まることが予想されます。老後の資産形成は早目に取りかかっておくに越したことはなく、その手段の中心には確定拠出年金制度(日本版401k)の利用を優先的に検討したいところです。確定拠出年金(日本版401k)とは、掛金を確定して、つまり月々の積立金額を決めて、自分で運用商品を選択し、その運用成果を年金給付として(あるいは一時金として)受け取る年金制度です。最初の掛金の拠出から10年以上経過していれば、60歳から受け取ることができます。また、運用期間中の運用益が非課税となるほか、積立金を受け取る場合も、控除の対象(年金として受給する場合は公的年金等控除、一時金として受給すると退職所得控除)となるなど、税制面での優遇は最大のメリットです。特に、支払った掛金は全額が所得控除の対象となり、毎年の確定申告や年末調整の際に所得控除を受けることができます。確定拠出年金には自営業者等が加入できる「個人型年金」と、企業が導入し、従業員を加入させる「企業型年金」の2つのタイプがあります。仮に、勤務先で確定拠出年金制度を導入していない場合でも、独自の企業年金のない会社の従業員は個人型の確定拠出年金に加入することができます。その場合の毎月の掛け金の上限は2万3千円で、年額27万6千円が課税所得から控除され、その節税効果は無視できません。さて、個人型年金に加入する際には、運用会社を選ばなければなりませんが、何を基準に選定すれば良いでしょうか。運用状況の確認や運用指図がインターネットなどを通して簡単に行えるかどうか、といった点も押さえておきたいところですが、より重要なポイントは運用商品のラインナップの充実度と個々の商品で徴収される信託報酬の水準にあります。運用商品には、定期預金や年金積立保険のような元本確保型商品、また国内外の債券や株式に投資する投資信託などの元本変動型商品があります。運用商品を豊富に取り揃えてある運用会社を選んでおくと運用の幅がぐんと広がることになります。また、個々の商品概要を確認する際には必ず信託報酬(投資信託の運用にかかる費用)を確認するようにしてください。信託報酬の横比較をすると、同じタイプの商品でも運用会社によって様々な水準に設定されていることが分かります。より安い信託報酬の商品を揃えてある運用会社を選びたいところです。なお、個人型プランそのものにかかる口座管理手数料の比較も大事ですが、保有コスト全体に占める影響はむしろ信託報酬のほうが大きく、特に長期間の運用ではその差が如実に現れます。 ==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第93号 2011年2月25日発行より) ==========================================================
2011.02.25
最近の投資信託の募集環境は決して良いとは言えないが、新ファンドの募集・設定で見る限りファンド数は大きく増加している。昨年2010年に新規募集・設定されたオープン投信は439本を数える。月に30~40本、多い月は60~70本もの新ファンドが誕生している。新ファンドの顔ぶれを見ると、投資通貨を選択できる通貨選択型ファンドの多いことが目につく。新規設定ファンドのうち、本数で見て約23%、金額で見て約 30%が通貨選択型ファンドである。また、大部分のファンドが5年から10年の償還期限付きのファンドであることも特徴的だ。オープン投信は、本来無期限で投資家がいつでも購入・売却できることが特徴であるはずだが、最近設定のファンは、投資テーマや市場のトレンドに特化して運用する期限付きのユニット型に近いファンドが多い。新規に登場するファンドが多い一方で、静かに退場していくファンドも少なくない。昨年中に140本のファンドが償還されている。償還されたファンドには、 10年の運用期限を終えて定時償還となった日本株ファンドが多いが、それらのほとんどは償還実績が期中分配金を含めても当初元本を大きく割り込んでいる。過去10年、株式相場が低迷したからといえばそれまでだが、仮に運用期間が無期限で運用を継続していけば、今後長期的には基準価額が回復する可能性もあると思われる。また、繰り上げ償還になったファンドを見ると、年月の経過に伴って当初の投資方針が時代に合わなくなり、追加販売が行われず解約一方となって資産額が減少、運用困難となって繰上償還に至るといったケースが多い。しかも、当初投資元本以上で償還されるならまだしも、投資元本を大幅に下回った価額で強制的に償還されるのは投資家にとって耐え難いことであろう。投資信託は長期投資商品と言われるが、このような設定・償還の実情を見ると、現在の日本のオープン投信の大多数は長期投資に向いた商品とは言えないのではないか。唯一、長期投資の対象となり得る商品といえば、それはインデックスファンドであろう。インデックスファンドは本質的に無期限のファンドであり、投資方針が一貫した永続性のある商品である。国内・海外の株式市場や債券市場指数に連動を目指すインデックスファンドを資産運用のコアファンドとして長期投資し、償還期限付きのファンドはコアを補完するサブファンドとして、償還期限にとらわれずに売買して収益向上を図るという方法も、現実に即した資産運用法と言えるだろう。 ========================================================== 金融アナリスト 新藤正悟 (楽天マネーニュース[株・投資]第92号 2011年2月18日発行より) ==========================================================
2011.02.18
「2010年冬のボーナスと家計の実態調査(損保ジャパンDIY生命)」によると、ボーナスの使い道のトップは「預貯金」(70.6%)で、次いで「生活費の補填」(43.6%)、「ローンの支払い」(32.2%)でした。使い道のトップが「預貯金」となるのは例年と変わりませんが、70.6%という比率は冬のボーナス調査の中でも過去最高であり、家計の多くが、依然、収支のやりくりと将来への備えを優先せざるを得ない状況にあることがわかります。この1月から所得税の扶養控除の一部見直し(18歳以下を対象)の適用が始まりました。また、11年度の税制改正関連法案が政府案通りに成立すれば、23歳以上69歳以下の扶養控除が縮小されます。さらに、給与所得控除も縮小の対象です。給与所得控除はサラリーマンが給与収入額から差し引ける(必要経費)概算の控除額で、この控除額を差し引いた後の金額が給与所得額となります。さらにここから扶養控除や配偶者控除などを差し引いて課税所得額が算出され、これに税率を掛けて所得税額が決まります。家計に与える影響は年収によって異なりますが、子供手当の増額や法人実効税率の5%引き下げの財源として、多くの負担を個人に強いる格好となっており、家計は当面、守りの姿勢を崩すことができないでしょう。国の財政状況や日本経済の将来を自分の家計に結び付けて不安を感じる人が増えてきています。生活を安心させるための社会保障制度のはずが、特に年金制度については大きな不安を感じる人が多いというのが実態です。日本経済新聞が実施した「家計・生活ネット1,000人調査」によると、老後の生活に金銭的な不安を感じているかという質問に対して、「まったく不安を感じていない」あるいは「あまり感じていない」と答えた人の割合は1割強程度に過ぎず、8割を超す人が年金制度へ不安を覚え、自助努力の必要性を痛感していることがわかります。同じネット調査で、老後資金として必要な貯蓄額を聞いたところ、2~3千万円未満という回答が最も多かったようです。子供の教育費や住宅購入資金の準備など、何かと出費がかさみがちで手元資金に余裕のない30~40代は、積立運用を利用するなどして少額でも早い時期から老後資金準備を始めたいところです。老後資金準備には、非課税の貯蓄・投資優遇制度である確定拠出年金(日本版401k)への加入を検討するところから始めると良いでしょう。運用期間中の運用益が非課税で、積立金を受け取る場合も、控除の対象となります(年金として受給する際は公的年金等控除、一時金として受給する場合は退職所得控除)。なにより、掛け金が全額、所得控除になるため、その節税効果は無視できません。勤務先で確定拠出年金制度を導入していない場合でも、独自の企業年金のない会社の従業員は個人型の確定拠出年金に加入することができます。個人型に加入可能な会社員は千数百万人に達すると推計されていますが、実際の加入者数は8万人に満たないという報告もあります。個人型加入資格があるかどうかを一度、お勤め先の担当者に確認してみてはいかがでしょうか。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第91号 2011年1月28日発行より) ==========================================================
2011.01.28
日本の投資信託は、2007年10月に純資産総額で82.2兆円のピークをつけた後、2008年秋のリーマン・ショックを受けて2009年1月に49.6兆円まで急減した。その後世界の証券・金融市場の反騰を受けて回復に向かい、2010年4月には65.4兆円まで回復したが、以後、拡大は頭打ちとなり2010年を通じて投信残高は停滞を続けた。投信の拡大が足踏みしているのは、銀行等金融機関による投信販売が伸び悩んでいるためである。金融機関による投信販売は2000年代に入ってからの投信拡大の原動力となってきたが、リーマン・ショック後は頭打ちとなっている。株式投信の販売残高シェアは2003年当時では36%程度だったが、2009年2月時点では53.0%に達し証券会社のシェア46.4%を大きく上回った。しかし直近2010年11月時点ではシェアは47.9%に低下、代わって証券会社のシェアが51.4%に上昇し再び50%を上回った。銀行等金融機関の投信窓販が解禁されたのは1998年末のことだが、それから10年余を経過して、顧客の資産中の預金から投信への移行はほぼ一段落したように見える。個人金融資産中の投資信託の比率は2000年末の2.4%から2007年末には4.7%まで高まったが、これをピークとして2010年6月末では3.4%に低下している。半面、現金・預金の比率は2006年末に50.1%まで低下したものの最近は再び55.8%に高まっている。金融機関による投信販売が伸び悩んでいる背景には、現在の投資信託の主要なマーケットが比較的高年齢層に偏っていることがあると思われる。投信協会の調査によれば、現在投信を保有している投資家の5割は60歳以上の高齢者であり、40歳以下は13%に過ぎない。そうした高齢者が蓄積した金融資産を「貯蓄から投資へ」の流れの中で投資信託に誘導してきたのが、これまでの投信販売、とりわけ銀行窓販だったと言えよう。投資信託が米国のように金融資産中で10%以上もの比率を持つまでに拡大するには、これから金融資産を蓄積する若い世代の資金を投資信託に振り向けてもらうことが必要だ。そのためには投信商品の品揃えについて見直しが求められよう。現在の日本の投信の中心商品は、高利回りを追及する定期分配型など高齢者のインカムニーズに応えたファンドが多いが、これからは、長期の資産形成を目指す若い世代の投資家が、ポートフォリオの中核として長期保有するにふさわしいファンドを開発していくことが望まれる。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第90号 2011年1月14日発行より) ==========================================================
2011.01.14
前回は、ETF選びの5つのチェックポイント((1)連動対象のインデックス情報、(2)運用報酬率、(3)連動性、(4)時価総額、(5)出来高)を確認しました。今回はさらに「ビッド・アスク・スプレッド」と「市場価格と基準価額のかい離」についてみてみましょう。この2点も前回の5つのポイントに次いでETF投資では重要です。まず、「ビッド・アスク・スプレッド」について、例えば、あるETFを購入しようとしたとして、希望する購入価格(ビッド)の999円に対して、売り手の希望売却価格(アスク)が1,000円だとした場合、この購入価格(ビッド)と売却価格(アスク)の差額を「ビッド・アスク・スプレッド」と呼びます。結果として、買い手が1,000円で買わざるを得なかったとすれば、差額の1円だけ買い手が高く買うことになり、この1円は買い手が負担したコストとなります。逆のケースも同様で、仮に売り手が1,000円で売りたいところを買い気配の999円で売らざるを得なかったとすれば、1円の「ビッド・アスク・スプレッド」が売り手の負担する実質的なコストと考えられます。取引手数料のように明示的でないため、コストとしてはなかなか意識されづらいところですが、特に出来高が少ないETFではスプレッドが大きく開いていることがあり、注意が必要です。次に、「市場価格と基準価額のかい離」について考えてみましょう。ETFの大きな特徴は取引所で自由に売買できる点にあります。取引所で売買される値段を市場価格と呼び、ETFの基準価額と区別して考えます。ETFの基準価額は、組み入れられている有価証券を時価評価し、株式であれば配当金、債券であれば利息などの収入を加え、さらに信託報酬などの諸経費を差し引いた純資産総額を、口数で割って求められます。ETFの基準価額は1日に1回算出され、市場価格に対してより公正な価値(フェア・バリュー)を示すものです。ETFの市場価格は市場の需給などの外部要因で決まるところが大きいため、状況によってはこの基準価額から大きくかい離することが考えられます。市場価格が基準価額よりも高いと割高(プレミアム)で、低いと割安(ディスカウント)で取引されているといいます。例えば、海外ETF、中でもアメリカに上場している新興国ETFをみてみると、基準価額に対して市場価格が大きく前後する傾向にあることが分かります。これは、主に、新興国市場とアメリカの間の時差が原因です。例えば、中国株式指数を連動対象とするETFの場合、現地市場が引けた後にアメリカが朝を迎え、株式市場が開きます。現地市場がすでに終了しているので基準価額はおおかた算出済みですが、ニューヨークの取引所では現地市場が終了した後に発表される新しい情報を織り込みながら取引されることから、結果として、基準価額に対して割高/割安となることが想定されます。市場価格と基準価額との間に大きなかい離があるような銘柄では、より公正な価格での取引ができず、場合によっては不利な条件での売買になり得ることから、注意が必要でしょう。なお、海外ETFを提供する運用会社の中には、ホームページ上で、過去の割高/割安の水準の推移が提供されており、ある程度の参考になります。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第89号 2010年12月24日発行より) ==========================================================
2010.12.24
最近、日本と米国の投信協会から2010年夏に実施した投信投資家のアンケート調査が発表された。2つの調査を較べてみると、日米の投信投資家のプロフィールに大きな相違があることが分かる。最も際立った相違点は、投信保有者の年齢構成である。日本で最も多いのは60歳代の高年齢の投資家で34%を占めている。一方、米国では45~55歳の投資家が27%と最も多い。日本では60代、70代の投資家が50%を占めており、50歳未満の投資家は27%にすぎないが、米国では65歳以上の投資家は18%と少なく、55歳未満の投資家が62%に達している。これは、米国では確定拠出年金加入者を中心とした若年層・中年層が、投資信託投資家の中心層となっているからだ。保有している投信の種類にも日米で差異がある。米国では投信保有者の80%が株式投信を保有している。日本でも株式投信の保有比率は68%となっているが、この中には外国債券に投資する実質上は債券型のファンドも含まれているので、これを除けば約35%程度と低くなろう。債券投信の保有比率には株式投信ほど開きはないが、日本では、債券ファンドの中で好利回り、好分配が期待できる外国債券ファンドの比率が高いことが特徴だ。年齢の若い投資家が株式投信を中心に投資信託を保有しているということから想像されるように、米国の投信投資家のリスク許容度は日本に比べてはるかに高いようだ。アンケートの質問が日米で異なっているが、日本では「安定重視型」つまり元本の安定性を重視した投信商品を購入したいという投資家が圧倒的で65%に達している。「利回り追求型」は19%、「値上がり益追求型」は14%と低く、「積極的値上がり追求型」を求める人は2%に及ばない。一方米国では、「平均以下のリスク・平均以下のリターン」と「ノーリスク」を合わせても全投資家の14%に過ぎず、「平均的なリスク・平均的なリターン」を求める投資家が50%を占めている。さらに3人に1人は平均以上のリスクあるいは大きなリスクもいとわないで大きなリターンを期待する投資家である。米国の調査によれば、2005年以降に投信を初めて購入した人の10人に7人は401kなど確定拠出型企業年金を通じて購入しているということであり、401kを通じた投信購入残高は全投信残高の40%にも達している。日本でも、これから金融資産を蓄積していく若い世代の投資家に投信を購入してもらうよう、商品やサービスを拡充していくことが今後の投信拡大のカギとなろう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第88号 2010年12月10日発行より) ==========================================================
2010.12.10
資産運用にインデックス・ファンドを活用する個人投資家が増えてきました。中でも、保有コストの安さに着目してETFを選択する人が多くみられるようになりました。最近では、東京証券取引所に96本の国内ETFが、大阪証券取引所には14本が上場しています。また、海外ETFの取扱い銘柄数も増加し、例えば、楽天証券では120本強の海外ETFが取り揃えられています。多様な商品が揃えられていることは良いことなのですが、購入を検討する側としては、どれを選べば良いのか迷ってしまいます。そこで、今回はETF選びのポイントを確認しましょう。チェックポイントは、連動対象のインデックス、運用報酬率、連動性、時価総額、そして出来高の5点です。まず、どのようなインデックスに投資をしたいのかをはっきりさせるところから始めましょう。株式なのか、債券なのか、コモディティなのか。さらに、株式インデックスであれば、構成銘柄数や業種の内訳などから銘柄間・業種間の分散が十分に図られているかを確認します。グローバル株式であれば、投資国や通貨間の分散が図られているかなどが重要です。投資対象の絞り込みが済んだら、次は、運用報酬率をチェックします。運用報酬は、ポートフォリオの運用・管理の対価として、購入者が毎年負担する手数料です。運用成績にかかわらず保有期間中に継続して徴収されるため、長期間保有するほど受取額への影響が大きくなります。同じインデックスを連動対象としたETFでも、ものによって報酬率が異なるケースがあるので、より低い報酬率のETFを選ぶようにしましょう。連動性も大事な情報です。パッシブ・ファンドは、ベンチマークであるインデックスとのパフォーマンスの差が小さければ小さいほど、精度の高い運用がなされていると評価されます。ETFとインデックスの収益率の差、そして、そのブレ幅(トラッキングエラーといいます)の小さいものを選択するように心がけましょう。時価総額は、ETFの資産規模を確認するうえで重要です。ポートフォリオをインデックスの構成内容(銘柄数やポートフォリオ全体に占める個別銘柄の構成比率、業種別あるいは国別の構成割合など)通りに構築するにはある程度の資金額が必要です。もしも、小額であれば、構成銘柄の一部にしか投資できなくなり、連動性が損なわれる可能性が高まります。ファンドを選ぶときには純資産規模の大きいものを選ぶのが賢明でしょう。最後に、日々の出来高が少ないと、自分の意図するタイミングで売買できなかったり、買えたものの、その後上場廃止になるということも想定されます。その場合、投資計画が中断されることになりますし、他のETFに乗り換えると売買手数料が余計にかかることになります。出来高が十分にあって、安心して取引できるETFを購入したいところです。以上の情報は、運用会社のホームページに公表されている「ファクトシート」などで確認することができます。運用会社によっては、日本語に訳したものを揃えてあるので、活用することをお勧めします。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第87号 2010年11月26日発行より) ==========================================================
2010.11.26
最近、米国でワールド・アセット・アロケーション・ファンド呼ばれるタイプのファンド(世界の株式や債券などに分散投資するファンド)が投資家の注目を集めている。ワールド・アセット・アロケーションは従来からあるが、それらは株式と債券への投資比率を60:40などと固定し、株式はMSCI、債券は世界国債インデックスをベンチマークとして運用するようなファンドが多かった。いま注目されているファンドは、世界の株式・債券・短期金融商品はもちろん、不動産、貴金属、コモディティなどあらゆる資産を対象とし、株式が有望なら100%株式に、コモディティに投資チャンスがあると見れば100%コモディティにと、投資環境に応じて自由にアセット・アロケーションを変更し、銘柄選択もアクティブに行うことによって、トータルリターンの極大化を目指すファンドである。たとえば、アイビー・アセット・ストラテジー・ファンド(資産額約2兆円)は、世界の株式・債券・短期金融商品・貴金属・通貨などを対象に、先物やロング・ショート、オプション、スワップなどを活用し、弾力的にアロケーションを変更する。株式組入比率は現在54%だが、過去5年間では最高78%~最低マイナス12%まで変動させている。こうしたアクティブ・アロケーションによって、過去5年で年率11.4%の高リターンをあげている。このようなアクティブ・アセット・アロケーション・ファンドが注目されている背景には、2008年の金融危機後、伝統的なアセット・アロケーションに飽き足らない投資家が増えていることがある。安定的と思われていたバランス型ファンドもリーマンショックの打撃を回避することはできなかった。そこで、ベンチマークに捉われずアクティブに絶対リターンを追求するファンドが求められてきたのだ。日本でもこの種のファンドはないことはないが数は少ない。比較的規模の大きいファンドとして、日興アセットマネジメントの「プロフェッショナル・ステージ」(資産額52億円)、ブラックロックの「ブラックロック・グローバル・フレキシブル・バランス・ファンド」(資産額35億円)があるくらいだ。 昨今の日本では高利回り外債ファンドやエマージング・マーケット・ファンドなど、投資対象や投資地域を絞ったファンドが人気だが、世界中のあらゆる資産を対象に、アクティブに運用を行うファンドマネジャーの手腕に期待して資産運用を任せることも、投資信託に投資する魅力の一つと言えよう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第86号 2010年11月12日発行より) ==========================================================
2010.11.12
全国の1000人を対象に行われたインターネット・アンケート調査によると、社会保障制度の将来に対して「不安を感じる」と答えた人は過半数を超え、「感じない」と答えた人はわずか2%に過ぎませんでした。社会制度の中でも、不安が集中するのが年金制度で、10人中9人が将来の受給に対して何らかの不安を抱いているようです。そして、「老後の生活に金銭的な不安を感じているか」という問いに対しては、8割の人が「不安を抱えている」と答え、公的年金だけでは生活できないと自助努力の必要性を認識していることが分かりました。そのような中、最近、若い世代を中心に老後資金を含めた資産形成に積極的に取り組む人が増えてきています。積立型商品の中でもニーズが高いのが投信積立です。主な利用者は30~40代の資産形成層が中心ですが、1000円から購入できる商品が発売されてからは、20代の顧客数の伸びが目立ってきました。まとまった資金のない若い世代にとっては手軽に資産運用を始められ、また自動的に銀行口座などから引き落とされるので、手間がかからないのもメリットです。いち早く投信のミニ積立サービスを開始した楽天証券では、(一部を除いて)同社で扱う投信のほとんどを積み立てることができ、積立可能銘柄数は現在850本程度に上ります。利用者の平均的な購入本数は3~4本程度で、自分で勉強して国内外の株式と債券で分散ポートフォリオを組む人が増えており、特に、ノーロード(販売手数料がゼロ)で信託報酬も安いインデックス型投信を中心に組み入れるケースが多くみられるようです。 初めて投資信託を購入するという人の中には、どの商品を選べば良いのか迷う人もいることでしょう。そこで、安全資産との兼ね合いで無理のない金額から始めるということであれば、TOPIX(東証株価指数)とMSCIコクサイ(日本を除く主要先進国22カ国で構成される外国株式指数)を連動対象とするインデックス投信にそれぞれ半分ずつ投資してポートフォリオを組むのもひとつの方法です。そして、その後の家計状況や運用目的の変化に応じて、投資金額の変更やポートフォリオの充実を図っていくと良いでしょう。長引く円高と不安定な株式相場を背景に個人の投資意欲はともすると薄れがちですが、将来の年金受給に対して不信感を募らせる若い世代には早めに資産形成に取り組んでおきたいという強い危機感があります。家計の給与収入が総じて減少する中、1000円から始められる投信積立は、若い世代にとって強い味方となっています。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第85号 2010年10月22日発行より) ==========================================================
2010.10.22
ブラジル・ボンド・ファンドやアセアン株式ファンドなど、投資信託といえば海外の債券や株式に投資するファンドのことと思うほど、投資信託の海外投資が増加している。投資信託協会のデータによれば、8月末の投信純資産に占める外貨建て資産の比率は45%と、ファンド財産の半分近くが外国証券に投資されている。とりわけ債券運用では、外国債券への投資が87%にも達している。投資信託の外国投資比率を主要国で比較してみると、日本の45%に対しドイツは59%、英国は42%、米国13%程度と推察される。この数字から見ると日本の投信の外国投資運用は欧米先進国並みあるいはそれ以上に高く、国際分散投資が定着しているといえるだろう。しかし、そうした国際分散投資の大部分は、外資系の投信会社あるいは外国のファンドを通じて行われており、日本の投信会社による運用の国際化が進展しているとは言い難い。実際、純資産ランキング上位20の外国投資ファンドの運用についてみると、20本中12本は、外資系の投信会社によって運用されているものや、国内系の投信会社の運用ファンドであっても外国の運用会社に運用を委託したり、外国の投資顧問会社のアドバイスを受けたりして運用されているもの、または外国籍のファンドを組み入れるファンドである。日本の投資信託が国際投資運用を外資系の運用機関に依存する傾向が強い背景には、1998年の投信法の改正によって運用の外部委託が解禁されたことと、ファンド・オブ・ファンズ制度が導入されたことが大きく影響している。これによって投信会社は、自社の国際的な投資運用力が乏しくても、外国の運用会社に運用を再委託したり外国のファンドを組み入れたりすることによって、容易に外国投資ファンドを組成し、販売することができるようになったのである。国際投資運用に優れた専門機関を利用することは、ファンドの運用の効率化、パフォーマンス向上のために好ましいことと言えよう。しかし半面、外部委託すればその分運用コストがかさみ信託報酬を高める一因ともなる。現在のような過度の外資依存の状況が続けば、日本の投信会社の国際投資運用業務は空洞化を免れまい。これからは、国際的な投資運用なくして日本の投資信託の運用はありえないだけに、日本の投信会社のグローバルな運用力の強化を望みたい。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第84号 2010年10月8日発行より) ==========================================================
2010.10.08
個人投資家にとってインデックス投資に取り組みやすい環境が整ってきています。これまでは、日経平均株価やTOPIXなどの国内株価指数や、外国株式ではMSCIコクサイ指数に連動するインデックス投信などが中心でしたが、最近では新興国市場やリート、商品指数に連動するものなども増え、投資対象の幅が広がりつつあります。また、信託報酬が安くなる傾向にあることも喜ばしいことです。信託報酬は運用機関などに毎年支払う手数料で、長期の運用では収益に与える影響が大きくなります。インデックス投信は、市場や銘柄の調査にコストをかけない分、アクティブ投信に比べて信託報酬率が低く設定されています。例えば、日本株のアクティブ投信では年率1.5%前後が主流ですが、インデックス投信では0.6%台が中心となります。さらに、同じインデックスを投資対象にしたものでも、最近では、0.4%台のインデックス投信が売り出されるなど、利用者にとって好ましい環境が整いつつあります。ETF(上場投資信託)の品揃えも充実してきました。日本株にとどまらず、海外株式や商品などを対象にしたものが東証や大証に合わせて107本ほど上場しています。また、ETFでは、インデックス投信よりも運用コストがさらに低く設定されています。例えば、TOPIXを対象にしたETFの運用管理費用(投信の信託報酬に相当)は、0.10%前後に設定されており、個人の長期投資には欠かせない存在になっています。さて、日本の取引所に上場しているETFを「国内ETF」と呼ぶのに対して、海外の取引所に上場するETFを「海外ETF」と呼びます。ネット証券の海外ETF取り扱い銘柄数は現在、多いところでは120本程度に上り、日本にいながらにして、アメリカなどETF先進国の多種多様なインデックス・ファンドに投資できるようになりました。まとまった資金のない若い世代には、毎月少額から積み立てられる「積み立て投資」が便利です。最近では、ネット証券を中心に、1,000円から投信の積み立てができるようになりました。対象ファンドも増えつつあります。中でも、ノーロード(販売手数料がゼロ)で、かつ信託報酬も安いインデックス投信を軸に積み立てを始めるケースが多くみられます。老後資金対策として長期の資産形成を計画している人は、「日本版401K(確定拠出年金)」を利用したインデックス投信の積み立てを検討するのもひとつの方法でしょう。日本版401Kとは、既存の公的年金に上乗せして、自己責任において運用商品を選び、積み立てていく年金制度です。通常の投信積み立てとは異なり、拠出した掛金には所得税がかからないうえ、運用期間中の運用益も課税されないなど税制上の優遇措置を受けることができます。品揃えは、利用する運営管理機関(商品情報の提供や運用指図の取りまとめ、記録管理を行う金融機関)によって異なりますが、インデックス投信は必ずといっていいほど商品ラインナップに組み入れられています。==========================================================ノーザン・トラスト・グローバル・インベストメンツ株式会社ファンドマネージャー 相川雅宏(楽天マネーニュース[株・投資]第83号 2010年9月24日発行より) ==========================================================
2010.09.24
7月1日から投資信託の目論見書の様式が改正された。これまでは100ページを超える分厚いものもめずらしくなかったが、新様式では8ページ程度に簡素化され、読みやすく分かりやすくなった。 投信の目論見書の簡素化は日本だけでなく、今や世界の潮流となっている。日本より一足先に、米国では2009年3月から「要約目論見書」制度が実施されている。欧州では、EU(欧州連合)の証券規制当局(CESR)が「重要投資家情報書」(KIID)と名付けた簡略目論見書案を今年の7月末に公表した。 日本、米国、欧州いずれにおいても、簡素化された目論見書の記載内容は、投資家の投資判断に極めて重要と思われる事項に絞って記載する点は共通している。ただ、日米と欧州で大きく異なる点が一つある。投資リスクについての記載だ。 日本の目論見書は米国の要約目論見書様式に倣っており、投資リスクを基準価額の変動要因と捉え、それらのリスク(例えば株価変動リスク、信用リスク、為替変動リスクなど)を文章で説明することとされている。 一方、欧州のCESRが提案しているKIIDでは、リスクの記載に当たり、「合成リスク・リゥォード(リターン)指標」(SRRI)という定量的指標を導入する。SRRIはファンド過去5年間における週次ベースのリターンのボラティリティをベースとしており、一般的なファンドでは標準偏差で測定される。そしてボラティリティの大きさによって7段階のリスクレベルを設定し、ファンドがどのレベルに位置するかを図示することとしている。 実は、米国でも投資信託への投資リスクを単一の定量的基準で表示することができないかSECを中心に検討されたことがあった。しかし結論は、「投資リスクは投資家によって様々であり、リスク指標の限界を十分に理解できない投資家が、誤用したり過度に依存したりする危険性が大きい」ということから、要約目論見書において定量的なリスクメジャーは採用せず、文章によるリスクの説明になったと言われる。 確かに、単一の定量的指標で投資リスクを表示することには難点もあるだろう。ただ、投資リスクにはいろいろな種類があるが、あらゆるリスクが総合されて基準価額の値上がり値下がりをもたらしているとすれば、ボラティリティによってファンドへの投資リスクの程度を大まかに把握することは現実的であり、CESRのリスク指標は投信投資家にとって利用価値の高い指標といえるだろう。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第82号 2010年9月10日発行より) ==========================================================
2010.09.10
今回は、債券インデックスを提供するインデックス・プロバイダーをご紹介します。日本では、野村証券が提供するNOMURA-BPIが有名です。NOMURA-BPIは、日本の公募債券流通市場全体の動向を表すために開発された投資収益指数で、機関投資家の間で広く利用されています。外国債券のインデックス・プロバイダーとしては、シティグループ・グローバル・マーケッツ・インクがあります。シティグループは、シティバンクなど銀行や証券会社などを傘下に持ち、グローバルに事業を展開する金融持株会社ですが、そのグループ傘下にシティグループ・グローバル・マーケッツ・インクがあります。同社が開発したシティグループ世界国債インデックス(WGBI-World Government Bond Index)は、世界主要国の国債の利回りを各市場の時価総額で加重平均して指数化したもので、外国債券投資のベンチマークとして広く利用されています。毎月分配型ファンドの先駆けとして認知度の高い「グローバル・ソブリン・オープン(通称グロゾブ)」も同インデックスをベンチマークとして採用しています。「シティグループ世界国債インデックス(除く日本)」を連動対象とするETFには、東証上場の「上場インデックスファンド海外債券(Citigroup WGBI)毎月分配型(コード:1677)」があります。次に紹介するのは、バークレイズ・キャピタル社です。同社はバークレイズ銀行(バークレイズ・バンク・ピーエルシー)の投資銀行部門であり、欧州を拠点にグローバルな事業展開を行っています。08年9月のリーマン・ブラザーズ社破綻に伴い、同社の北米事業を買収しました。これによって、これまでリーマン・ブラザーズ社の手掛けていたインデックス業務を引継ぎ、各種債券インデックスの算出・公表を行っています。リーマン・ブラザーズ社は、1973年に世界で初めてトータル・リターン・ベースの債券インデックスを公表してから30年以上にわたるインデックス・プロバイダーとしての実績を有し、同社の各種債券インデックスはアメリカの機関投資家の9割以上、欧州では半数以上の大手投資家に採用されるほど普及していました。バークレイズ・キャピタル米国総合インデックス(旧名称リーマン・ブラザーズ米国総合インデックス)は、アメリカの投資適格債券を対象とする総合的な債券インデックスで、アメリカの投資適格債券市場全体のパフォーマンスを測る指標として広く使われています。投資適格の米国国債、投資適格社債、モーゲージ・パススルー証券およびアセット・バック証券が構成銘柄です。このインデックスを連動対象とするETFとしては、NYSEアーカ上場の「iシェアーズ®・バークレイズ 米国総合ファンド(ティッカー・コード:AGG)」や「バンガード・米国トータル債券市場ETF(BND)」があります。==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第81号 2010年8月27日発行より) ==========================================================
2010.08.27
「ファンド・オブ・ファンズ」という言葉が広く知られるようになったのは、今からちょうど40年前の1970年に「IOSショック」が世界の株式市場を震撼させた時からであろう。 IOSはジュネーブに本拠を置く国際的な投資信託運用・販売会社だったが、その運用する投信は欧米のファンドを組み入れたファンド・オブ・ファンズ(FOF)であった。1960年代の世界的な株価上昇期にヨーロッパ中心に国際的に販売を伸ばし、世界でも屈指の資産残高を誇っていた。しかし、60年代末から株式市場が下降局面に入ると、IOSの運用するFOFに投資家の解約が殺到、IOSは資金捻出のため組入れファンドを売却、そのファンドが組入株式を大量に市場に放出した。 加えてファンドがファンドを組入れ、そのファンドがまた他のファンドに投資するなど複雑な仕組みで、最終的にどんな株式がどれだけ保有されているかのディスクロージャーが不透明であったことが疑心暗鬼を招き、市場の混乱に拍車をかけた。IOSは倒産に追い込まれ、投資家は甚大な損害を被ったのである。 IOSショックを受けて、欧米各国は1970年代以降、FOFの設立・販売を禁止する方向に動いた。それが再び解禁され始めたのは1990年代になってからのことである。その背景には、貯蓄から投資への個人の資産運用ニーズの高まりと、それに呼応した投信プロダクトの多様化、運用合理化への動きがあった。 しかし、依然としてIOSショックの後遺症は根深く、現在でも欧米各国のFOF規制は日本に比べはるかに厳しい。たとえば、FOFが他の1ファンドに投資できる限度は5%、或いは10%に制限されている。日本では投資先の投信会社の同意があれば100%近く投資することも可能である。また、欧米ではFOFと投資先ファンドの手数料合計で料率を規制している国が多いが、日本ではディスクロージャーを求められるだけで手数料率の規制はない。 FOF形態をとれば、専門分野に強い運用機関のファンドを組み合わせることにより、投資家の多様なニーズに応える商品を容易に組成することができる。FOFの仕組みを導入していなければ、日本の投資信託は今日のようにバラエティある商品を投資家に提供できなかっただろう。 しかし、その半面、FOFは投資のエキスパティーズがなくてもファンドを組成できるから、安易な商品設計を助長しやすく、また、間接投資になるから実質上の運用者や投資の実態が見えにくいファンドも出てくる可能性がある。IOSショックの時代とは違いFOFに関する投資家保護規制は厳格になっているが、投資家の立場からはなお一層のディスクロージャーの充実が望まれよう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第80号 2010年8月13日発行より) ==========================================================
2010.08.13
2010年も前半戦が終了しました。2009年は総じて堅調に推移した世界の株式市場でしたが、今年はジェットコースターのように、乱高下する、不安定な相場が続いています。欧州の財政不安を背景に、世界の株価は1月から2月中旬にかけて下落基調をたどりました。ユーロ圏諸国によるギリシャ支援を好感して、反発に転じ、その後も、米国の経済指標の改善を受けて世界景気の回復期待が高まると、4月下旬まで上昇基調となりました。しかし、5月に米大手格付け会社によるギリシャ国債の格下げから、再び、欧州財政問題の先行き不透明感が高まると、株価は急落を余儀なくされました。先進国市場と新興諸国を含む45カ国で構成されるグローバル株式指数の半年間の騰落率(円ベース)は-15%でした。先進国市場と新興国市場では、現地通貨ベースの騰落率が先進国市場では-8%、新興国市場では-7%でした。なお、円ベースの騰落率は、欧州の財政懸念を発端とするリスク傾向の高まりから円高傾向となったため、先進国市場で-15%、新興国市場では-12%でした。下落率(円ベース)の高かった国として、やはり財政不安に揺れるPIIGSが上位に現われます。順に挙げると、ギリシャが-52%と最も高く、次いで、スペイン(-38%)、イタリア(-32%)、ポルトガル(-32%)、ノルウェー(-29%)となりました(アイルランドは9番目の-25%)。下落率の高い上位10カ国中、実に9カ国が先進国市場でした。一方、45カ国中、プラスリターンだったのは5カ国だけで、インドネシア(+8%)、コロンビア(+8%)、タイ(+4%)、マレーシア(+3%)、フィリピン(+1%)と、新興国市場が占めました。なお、日本の騰落率は、45カ国中15番目で、-8%でした。世界的な株安や円高の影響を受けて、投資信託の運用成績もこの上半期は厳しい状況となりました。6月末時点の年初来の基準価額騰落率をみると、100億円以上の資産残高を持つ追加型投信571本のうち、実に85%に当たる486本が下落しました。特に、最近、人気を集めたブラジル株投信は円高・ブラジルレアル安が響き、苦戦を強いられた他、中国株投信も、預金準備率の引き上げや不動産バブル抑制策の実施といった、金融引き締めが株式相場の低迷を招き、パフォーマンスに大きな影響を受けました。世界の株式市場は、欧州発のソブリンリスクに対する警戒感が依然として重石となる地合いが続きそうです。財政再建に向けた欧州各国の取り組みが早く市場の信認を得て、実体経済へのマイナス影響もこなしながら、相場の焦点が新しい局面へ移ることを期待したいところです。========================================================== 金融アナリスト 愛川正博 (楽天マネーニュース[株・投資]第79号 2010年7月23日発行より) ==========================================================
2010.07.23
高利回り外債ファンド人気の陰にあってあまり注目されないが、最近、日本の債券に投資するファンドの販売がじりじり伸びている。なかでも毎月分配型のファンドが好調だ。 ニッセイアセットの「ニッセイ日本インカムオープン[愛称:Jボンド]」の純資産額は、昨年末では10億円にも満たなかったが今年に入って700億円も急増し、直近では720億円に達している。大和投信の「ダイワ日本国債ファンド(毎月分配型)」は昨年末の132億円から199億円へ、国際投信の「ジャパン・ソブリン・オープン」は、81億円から129億円へそれぞれ50~60%の増加を示している(何れも原稿執筆時点)。 ニッセイのファンドは残存期間10年までの社債を中心に運用し、毎月15円の分配を行っており、大和のファンドは残存期間15年までの国債のみの運用で毎月20円、国際のファンドは同じく10年までの国債運用で毎月12円の分配を継続している。高利回り外債ファンドの100円、150円分配とは比べものにならないが、為替リスクがなく、基準価額の変動も小さいことから、安定商品として保守的な投資家に好まれているようだ。 毎月安定した分配を目指すことから、これらのファンドは「ラダー型ポートフォリオ運用」をとっていることが特徴だ。ラダー型運用とは、投資する債券の残存期間毎の投資額面金額が同額となるように運用する方法である。債券の満期構成が「ラダー」(はしご)の形に似ていることから名付けられた。ラダー型運用は短期、中期、長期債の金利変動リスクを平準化しつつ、収益性を確保できる運用といわれている。半面、各残存年数の債券を均等に組み入れ償還までバイ・アンド・ホールドするパッシブ運用の一種であるから、金利予測などによってアクティブに収益を獲得することができないという難点もある。 まだ広がりは小さいとは言え、日本債券に投資するファンドが注目されだしたことは歓迎すべきことだ。最近の投資信託販売は外国投資ファンドのオンパレードで、国内投資ファンドは見向きもされていなかった。 しかし、長期の資産運用には分散投資が欠かせないことは言うまでもない。外債ファンドには為替リスクがあり、基準価額の変動も株式ファンド並みに激しい。日本債券ファンドは、投資信託の中ではリスク度が最も低く、預貯金よりも好利回りを期待できようから、ファンドを組み合わせてリスク分散を図ろうとする人はもちろんのこと、投資信託を初めて購入してみようとする人にもうってつけのファンドと言えよう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第78号 2010年7月9日発行より) ==========================================================
2010.07.09
MSCIバーラ(Barra)社は、同社が提供するMSCI指数の構成銘柄の入れ替えを定期的に行っていますが、5月26日引け後に実施された入れ替えでは、市場区分の見直しも合わせて実施されました。MSCI指数は、先進国市場(Developed Market)指数と新興国市場(Emerging Market)指数に区分されますが、今回の変更は、イスラエルを従来の新興国市場指数から先進国市場指数へと移行するものです。 MSCIバーラ社は、市場区分を見直す際の基準として、1人当たりGDP、時価総額、グローバル・マーケット・アクセスビリティ、地政学的リスクなどを注視しています。グローバル・マーケット・アクセスビリティとは、外国人投資家に対して自由で公平な市場へのアクセスを可能とする環境が整っているかを判断する基準で、特に重要視されます。イスラエルは、外国人が同国の株式、為替を取引するうえで先進国並みに市場環境が整っているものと見られており、同国が先進国としての基準を満たしていると判断されました。 これにより、日本人にとってのグローバル株価指数である、MSCIコクサイ指数にイスラエルが加わり、構成国数が従来の22カ国から23カ国に増えました。(一方、MSCIエマージング指数はイスラエルが削除されたことから、構成国数は従来の22カ国から21カ国に減りました。) 市場区分の見直しは、2001年にギリシャが先進国市場に分類変更されて以来、9年ぶりの変更となります。一部の運用会社からはフォローアップ・レポートが事前に配信されたようですが、その他のファンドではマンスリーレポートでも今回の市場区分の変更について扱っていないものが多くあります。そこで、イスラエルについて、若干、触れておきます。 今回の変更で、新たに、先進国市場指数に加わったイスラエル銘柄は16銘柄です。MSCIコクサイ指数に占める各構成国の時価総額をみると、イスラエルは23カ国のうち上から数えて17番目の規模(構成比0.4%程度)になります。ちなみに、それよりも下位の国は、ノルウェー、アイルランド、オーストリア、ギリシャ、ポルトガル、ニュージーランドです。 イスラエル指数自体の業種別構成比を大きい順でみてみると、ヘルスケア、金融、素材、電気通信サービス、生産財、情報技術となります。中でも、ヘルスケアの比率は、6割強と飛び抜けています。しかも、製薬会社大手のテバ・ファーマスーティカル・インダストリーズ(TEVA)1社だけで、このすべてを占めているというのですから驚きです。銘柄間の、そして、業種間の分散という観点から考えると、偏った構成になっていると言わざるを得ませんが、同社の売上規模は世界の薬品メーカーのトップ20に入っており、時価総額もイスラエル市場では突出して大きな規模を誇ります。したがって、イスラエル市場の時価総額をカバーするうえで、テバ・ファーマスーティカル・インダストリーズは欠くことのできない代表的な銘柄となります。 MSCIコクサイをベンチマークとする投信を保有している人は、次回、お手元に届く運用報告書で、イスラエルの組入状況を確認してみましょう。 ========================================================== 金融アナリスト 愛川正博 (楽天マネーニュース[株・投資]第77号 2010年6月25日発行より) ==========================================================
2010.06.25
最近、投信会社のウエブサイトで「基準価額下落についてのお知らせ」といった見出しをよく目にする。その内容は、基準価額が前日比で5%以上値下がりしたファンド名を公表したものだが、そのリストを見ると、株式ファンドだけでなく外国債券ファンドも含まれていることが注目される。株式ファンドはともかく、債券ファンドの基準価額が1日に5%以上も変動するとは、従来は考えられなかったことである。基準価額の変動率の大小を見るのに最も適した指標は、ファンドの標準偏差である。標準偏差は、ある期間のファンドの月次リターン(分配金再投資後の月間の基準価額の変化率)の平均値から各月のリターンがどれだけ離れているか、その程度を表している。標準偏差が大きいことは、ファンドの基準価額の上下変動が大きいことを意味し、将来の期待リターンに対する不確実性が増す。つまりリスクが高くなるということになる。近年のファンドの標準偏差の動向を見ると、リーマンショック以降、標準偏差の水準が明らかに上方シフトしている。今年の4月末に終わる過去3年間の標準偏差を、その前の2007年4月に終わる3年間の標準偏差と比べてみると、国内株式型のTOPIXインデックスファンドが14.7から19.7へ上昇となっているのに対し、グローバル株式型は平均13.6から24.6へ、グローバル債券型は5.4から12.4へと、外国投資ファンドの標準偏差の上昇が大きい。とりわけ上昇が顕著なのは、ハイ・イールド債やエマージング債に投資するファンドで、たとえば「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」は7.9から20.8へ「エマージング債券ファンド(毎月分配型)」は9.6から19.6へ急激にレベルが高まり、TOPIXインデックスファンド並みの標準偏差を持つようになった。外債ファンドの標準偏差が大きくなったのは、リーマンショックによる世界の金融・為替市場の大波乱を反映したものといえよう。最近は落ち着きを取り戻してきているとはいえ、株式市場・債券市場・為替市場の不安定な状況は今後もなお続くと考えられる。外債ファンドの基準価額の値動きは激しくなっており、投資リスクは高まっている。エマージング債券やハイ・イールド債券に投資するファンドは、債券ファンドというよりは株式ファンドと同等の投資リスクを持つファンドと考えた方がよさそうだ。 ========================================================== 金融アナリスト 新藤正悟 (楽天マネーニュース[株・投資]第76号 2010年6月11日発行より) ==========================================================
2010.06.11
今回は、グローバル株価指数の開発で世界的にも知名度の高いアメリカのMSCI バーラ社とイギリスのFTSE社を紹介します。 グローバル株価指数の開発が始まったのは1969年で、当時、初めてキャピタル・インターナショナル・S.A.(Capital International S.A.)が開発・構築を手掛けました。その後、1986年にアメリカの証券会社モルガン・スタンレーが、指数の権利を買い取り、MSCI(Morgan Stanley Capital International)指数としました。 モルガン・スタンレー傘下ではあるものの、MSCI社は別会社として独立的な立場で運営されてきました。2004年にモルガン・スタンレーがバーラ社(Barra)を買収すると、MSCI社とバーラ社は統合されて、現在のMSCI バーラ社となりました。なお、バーラ社は、1975年にバー・ローゼンバーグ博士らによって設立され、バーラモデルと呼ばれるリスクモデルの開発やコンサルティング・サービスを長年、提供してきた実績があります。 現在、MSCI バーラ社が算出・公表している株価指数には、国別および地域別の指数に加えて、業種別、セクター別、さらにサイズ別、スタイル別指数などがあり、幅広いインデックスを世界の投資家に提供しています。 「MSCIコクサイ指数」は、日本を除く先進国23カ国(2010年5月27日よりイスラエルが先進国市場として追加されました)の約1,300銘柄で構成されており、日本の投資家にとってのグローバル指数として、多くの機関投資家に利用されています。 ETFとしては、「MSCIコクサイ指数」を連動対象とする「iシェアーズ・MSCI コクサイ・インデックス・ファンド(TOK)」が2007年12月にニューヨーク証券取引所Arcaに、2010年1月29日には「上場インデックスファンド海外先進国株式(1680)」が東京証券取引所に上場し、取引されています。 FTSE社は、イギリスで金融新聞を発行するファイナンシャル・タイムズ社とロンドン証券取引所の合弁会社で、インデックスの開発を行っています。代表的な株価指数としてはFTSE100種総合株価指数が有名です。ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額の大きい上位100銘柄で構成されています。この100銘柄でロンドン証券取引所に上場する企業の時価総額の約8割を占めることから、同取引所の株価の動きを示す代表的な指標として知られています。 また、FTSE社は、FTSE100種総合株価指数以外にも、グローバルな株価指数である「FTSEグローバル株式インデックス・シリーズ(GEIS)」を算出・公表しています。中でも、「FTSE オールワールド・インデックス」は、先進国だけではなく、新興国も含めた47カ国の約2,700銘柄で構成され、グローバル投資家向けのベンチマーク指数として利用されています。 ETFとしては、この「FTSE オールワールド・インデックス」を連動対象とする「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)」がニューヨーク証券取引所Arcaに上場しています。 ========================================================== 金融アナリスト 愛川正博 (楽天マネーニュース[株・投資]第75号 2010年5月28日発行より) ==========================================================
2010.05.28
オープン投信とは、本来、運用期間は無期限で投資家がいつでも購入・解約することができる長期投資向きのファンドであるはずだ。ところが最近高額設定されているオープン投信を見ると、運用期間が5年、長くても10年に限定されたファンドの多いことが目立つ。 4月に1,933億円もの資金を集めた野村アセットの「野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(バスケット通貨選択型)」は、2015年3月までの5年間を運用期間とするファンドである。同じく野村の「野村クラウドコンピューティング&スマートグリッド関連株投信」(設定額1,127億円)、国際投信の「世界投資適格債オープン(通貨選択型)」(同417億円)、ニッセイアセットマネジメントの「次世代輸送関連株ファンド(限定追加型)」(同519億円)も運用期間を5年に限定している。 年初来4月までに設定されたオープン投信は133本あるが、そのうち運用期間(信託期間)が「無期限」というファンドは32本しかなく、51本が5年以下、50本が5年から10年までのファンドとなっており、75%が長くても10年に運用期間を限定したファンドである。設定額で見るとその割合はさらに大きく、5年以下のファンドで全体の設定額の55%、5年から10年のファンドで40%と、実に10年以下運用のファンドが95%を占めている。 投資家の人気を集めているファンドは、上記のファンド名からも分かるように、高利回りと為替益の両方が望める通貨選択型ファンドや、世界経済の回復・成長で有望な産業やセクターに絞って投資するファンドが多い。これらのファンドで運用期間を5年、10年に限定しているのは、投信会社が現在の債券・為替市場の好環境や株式市場の投資テーマは長続きすることはないと想定しているからであろう。 その時々の株式市場・債券市場・為替市場のサイクルや投資テーマを捉えて運用するファンドが提供されることは、投資家にとって投資のチャンスが広がり、リターンの向上に役立つだろう。ただ、そうした期限付きのファンドは、想定した市場環境やテーマの永続性に問題があるし、また、2008年のリーマン・ショックのような相場急落時にたまたま運用期限が来ると、ファンドは元本割れ償還にならないとも限らない。 したがって、長期投資家としては、まず投信ポートフォリオの70%程度はインデックスファンドなど無期限の一般分散型ファンドとし、残りの30%以内でテーマやセクターに特化した期限付きのファンドを購入して、ポートフォリオ全体のリターンの向上を図っていくことが賢明な投資方法といえるだろう。 ========================================================== 金融アナリスト 新藤正悟 (楽天マネーニュース[株・投資]第74号 2010年5月14日発行より) ==========================================================
2010.05.14
今回も引き続き、海外のインデックス・プロバイダーを紹介します。アメリカのメジャーなプロバイダーである、ナスダックとラッセル・インベストメント・グループです。 ナスダックとは、全米証券業協会(NASD)によって運営・管理されている株価の自動通知システムであり、また、このシステムを使って取引される店頭株式市場のことを指します。世界最大の新興企業向け株式市場です。証券取引を開始したのは1971年で、世界初の電子株式市場として、注目を集めました。マイクロソフトやインテルといったハイテク企業・高成長企業が取引されています。「ナスダック総合指数」は、ナスダックで取り引きされる約3000銘柄全てを時価総額加重平均で算出したものです。指数全体にハイテク関連株の占める割合が高く、その業績の動向を示す指数といわれています。 ETFとしては、ナスダック総合指数そのものを対象としているものはありませんが、時価総額が大きくかつ売買高の多い100銘柄(金融業を除く)で構成される「ナスダック100指数」を連動対象とする「パワーシェアーズ QQQ・トラスト・シリーズ1(QQQQ)」がアメリカで人気があり、活発に取引されています。 ラッセル・インベストメント・グループは、世界の年金基金などの機関投資家や、個人投資家を対象に、資産運用に関わるサービス全般(コンサルティングなど)、また、株式インデックスの開発など幅広い業務を行っています。 ラッセル3000指数は、米国株式のうち時価総額上位 3000 銘柄からなる指数で、構成銘柄はアメリカ株式市場の時価総額のおおよそ98% を占めています。ラッセル1000指数はラッセル3000指数のうち上位 1000 企業株で構成され、大型株全体のパフォーマンスを、そして、ラッセル2000指数はラッセル3000指数の時価総額 1001~3000位の 2000 銘柄 から構成され、小型株のパフォーマンスを示す指数です。 代表的なETFは、「iシェアーズ・ラッセル1000・インデックス・ファンド(IWB)」、「iシェアーズ・ラッセル2000・インデックス・ファンド(IWM)」、「iシェアーズ・ラッセル3000・インデックス・ファンド(IWV)」がニューヨーク証券取引所アーカで取引されています。なお、日本での取り扱いがあるのは、「iシェアーズ・ラッセル2000・インデックス・ファンド(IWM)」のみのようです。 ========================================================== 金融アナリスト 愛川正博 (楽天マネーニュース[株・投資]第73号 2010年4月23日発行より) ==========================================================
2010.04.23
世界的な証券市場の回復を受けて投資信託への資金流入が増加している。今年1~2月の追加型株式投資信託の純資金流入額は月間平均で4,600億円となり、2009年の月間平均2,700億円を大きく上回っている。このような資金流入の増加は、通貨選択型の外債ファンド、高利回り外国株ファンド、エマージング国投資ファンド、海外REIT投資ファンドなど、外国投資ファンドへの個人投資家の旺盛な投資需要によってもたらされている。 これらの外国投資ファンドで目立つのは、外国の運用機関が設立したファンドに投資する「ファンド・オブ・ファンズ」(FOF)形態をとるファンドが多いことだ。FOFといえば、一般に、既存の多数のファンドの中からパフォーマンスや運用プロセスが優れたファンドを選び出し、それらを組み合わせてFOFの投資目的に最も適した投信ポートフォリオを作るという仕組みを意味するが、日本ではそうしたFOFは少ない。 ほとんどは、外国の運用会社にFOFの投資方針に沿った専用ファンドを作ってもらい、そのファンドをほぼ100%組み入れるという形のFOFである。言ってみれば、ファンドの運用を外国の運用会社に再委託していることと変わらない。 海外マーケットを熟知し、投資経験の豊富な外国の運用会社に海外投資運用を一任することは投資家にとって悪いことではない。ただ問題は、これらのFOFではどういう運用会社やファンドマネージャーがファンドを運用しているのか、運用者の顔が十分に見えないファンドが少なくないことである。 現行の目論見書作成ルールでは、ファンドを設定する投信会社は、目論見書にファンドの運用方針や運用体制、運用の意思決定の流れ、リスク管理体制などについて詳細に記載することが求められている。しかし、FOFについては、投資先ファンドの選定方針、選定したファンドの名称、運用の基本方針、主要投資対象、運用会社の名称の記載しか求められていない。このため、FOFの目論見書の多くは、組み入れファンドの名前と簡単なファンド内容の紹介だけで、その運用会社がどのような運用哲学でどんな運用プロセスを構築し、どのような運用実績を上げてきたかなどにつての記載が少ない。 投資家が知りたいのは、実際に、誰がどのようにファンドを運用しているかである。ファンドの実質的な運用者の顔が見えるよう、ファンド・オブ・ファンズの運用会社についての十分な情報開示が望まれる。 ========================================================== 金融アナリスト 新藤正悟 (楽天マネーニュース[株・投資]第72号 2010年4月9日発行より)==========================================================
2010.04.09
海外ETFの商品ラインナップを見ると、その数の多さに驚かされます。多くのETFが上場しているということは、連動対象となるインデックスもそれだけ数多く海外には存在しているということです。インデックスを投資家に提供する会社は、インデックス・プロバイダー、あるいは、インデックス・ベンダーなどと呼ばれています。日本であれば、TOPIXを算出・公表している東京証券取引所や、日経平均を算出・公表している日本経済新聞社などが代表的なインデックス・プロバイダーに当たります。 それでは、海外のインデックス・プロバイダーをいくつご存知でしょうか。主なところとしては、アメリカの投資情報会社であるダウ・ジョーンズ社、スタンダード・アンド・プアーズ社、ナスダック、ラッセル・インベストメント・グループ、MSCI指数の算出で知られるMSCI バーラ社、そして、イギリスのFTSEグループ(FTSE)などが挙げられます。今回は、ダウ・ジョーンズ社とスタンダード・アンド・プアーズ社について紹介しましょう。 ダウ・ジョーンズ社は、アメリカの経済新聞「ウォールストリート・ジャーナル」の発行元の出版社で、1896年にアメリカの主要業種の中で代表的な12銘柄の単純平均株価の算出・公表を始めました。その後、この株価指数が米国株式の指針として幅広く活用されるようになり、1928年には30種平均となりました。ダウ工業株30種平均指数は、「ニューヨーク株価指数」「ニューヨークダウ」などと呼ばれ、株式市場全体の動きを表わす指標と見なされています。 アメリカで最も良く知られた株価指数といっても間違いではないでしょう。 ETFとしては、ニューヨーク証券取引所アーカで取引される「ダイヤモンズ・トラスト・シリーズ 1(ティッカーコード:DIA)」が有名です。また、昨年12月に東京証券取引所に上場した「Simple-X NYダウ・ジョーンズ・インデックス上場投信(1679)」もダウ工業株30種平均指数を連動対象としています。 さて、格付情報の提供でよく知られるスタンダード・アンド・プアーズ社ですが、株価指数の算出も手掛けています。中でも、S&P500株価指数は、機関投資家の間でパフォーマンスを測る際のベンチマークとしてよく利用されています。同指数は、ニューヨーク証券取引所、アメリカン証券取引所、NASDAQに上場している銘柄群から選ばれた、代表的な500銘柄の株価を基に算出される時価総額加重平均型株価指数です。S&P500株価指数を連動対象とするETFは、「スパイダー・トラスト・シリーズ 1(SPY)」と「iシェアーズ S&P500 インデックス・ファンド(IVV)」があります。 各インデックス・プロバイダーのホームページでは、自社が算出・公表しているインデックスの一覧や算出方法などの説明が掲載されているので、一度、確認してみると良いでしょう==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第71号 2010年3月26日発行より) ==========================================================
2010.03.26
米国で、従来型の投資信託(ミューチュアルファンド)と上場投資信託(ETF)の間の垣根が崩れ始めた。これまでは、ETFといえばインデックス運用のファンド、ミューチュアルファンドはアクティブ運用中心のファンドと棲み分けができていた。ところが最近、ETFでアクティブ運用を行うファンドが登場してきたのである。 そもそもETFがインデックスファンド形態をとっている理由は、ポートフォリオ組入れ銘柄の透明性にある。インデックスファンドなら、どんな銘柄が組み入れられているかを投資家は常に知ることができる。ところがアクティブファンドでは、ポートフォリオの中身はファンドマネジャーの裁量によって随時変更され、ディスクロージャーも年に数回しか行われないから、投資家は直近のポートフォリオ内容を知ることができない。このためアクティブ運用ETFでは市場価格と純資産価額の乖離が大きくなり、ETFの売買がスムースに行われなくなる懸念がある。こうした理由から、SEC(証券取引委員会)は、ETFはインデックス運用ファンドに限るとしてきたのである。 しかし、近年、アクティブ運用ETFへのニーズの高まりを受けて、ディスクロージャーの難点を解消したアクティブ運用ETFが開発され、SECも認可することとなった。 現在までにアクティブ運用ETFを設定したのはパワーシェアーズ社、グレイル社などまだ数社だが、その仕組みはポートフォリオ組入れ銘柄内容を毎日取引開始前に公表し、取引時間中は概算基準価額を15秒おきに発表するという方法で、投資家が常にポートフォリオの中身を把握できるようにしている。 昨年末には、債券投信運用の最大手であるピムコがボンドファンドの分野でアクティブETFに参入し、大きな話題を呼んでいる。債券のインデックスは採用銘柄が多いため、全銘柄を組み入れたインデックスファンドを組成することは難しい。ピムコは、定評あるリサーチを生かしたクレジット分析で銘柄を選択し、アクティブに運用するETFを目指している。ピムコに続いてレッグ・メイソン社も近くアクティブETFを設定する予定であり、そのほかT・ロウプライス、ラッセル、ジョンハンコック、ゴールドマン・サックスなど大手投信会社も急拡大するETF市場に参入する意向といわれている。 米国の動きはやがて日本にも波及してくるだろう。アクティブETFが導入されれば、投資家にとってコスト安で利便性の高い投資信託の選択肢が一段と増えることになろう。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第70号 2010年3月12日発行より)==========================================================
2010.03.12
国内の証券取引所に上場するETF(上場投資信託)の本数は2007年の40本から、2010年1月末時点で、ほぼ倍の81本となりました。今月に入っても3本ほどが上場しているので、着実に商品ラインナップは増えつつあります。 1月末には、MSCI-KOKUSAI 指数との連動を目指す「上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI)(コード:1680)」が上場しました。MSCI-KOKUSAI 指数は、日本を除く先進国22カ国の株式市場を投資対象としており、日本の機関投資家が国際分散投資を行う際にベンチマークとしてよく利用するグローバル株価指数であることから、個人投資家にとっても国内での上場が待ち望まれた商品でした。 MSCI-KOKUSAI指数を連動対象としたETFはニューヨーク証券取引所に上場する「iシェアーズ MSCI KOKUSAI(コクサイ)・インデックス・ファンド(TOK)」がありますが、信託報酬率は両者とも0.25%程度と大差ないものの、「TOK」の売買は米ドル建てとなり、為替手数料がかかります。また、証券会社に対して支払う売買委託手数料も国内株式のほうが安く設定されていることから、コスト面では、「1680」が有利となります。また、「1680」の売買単位は10口で、株価が1,000円ほどですから、10,000円程度で投資をスタートでき、個人投資家には使い勝手が良いでしょう。 もちろん、上場したばかりですから、今後の連動性や流動性を注視する必要がありますが、個人が手軽に、かつ、低コストで、機関投資家並みの分散の効いたポートフォリオを持つことができるわけですから、基本的な商品設計は良心的と評価できます。 ところで、大阪証券取引所に上場していた3つのETFがこの2月に上場廃止となりました。銘柄は「NEXT FUNDSインド通貨ルピー連動型上場投信(1340)」、「NEXT FUNDSブラジル通貨レアル連動型上場投信(1341)」、「NEXT FUNDSロシア通貨ルーブル連動型上場投信(1342)」で、純資産額が設定当初の水準から大きく減少し、連動性の維持が困難となったことが上場廃止の理由とのことです。対象がFXでの取り扱いがない新興国通貨でしたので、もっと個人の注目を集めてもよかったのでしょうが、中身が通貨だけのポートフォリオの割には、0.85%の信託報酬率は高すぎたのではないでしょうか。1日当たりの売買代金は、平均して3百万円程度、「1342」は1百万円程度とかなり低調でした。 2月16日に上場廃止となりましたが、それまでに売却し損なった人は、販売会社に対して受益権の買取請求を行うことになります。買取請求先は、ETFを購入した証券会社ではなく、そのETFの販売会社である野村證券になるので、野村證券に取引口座がない場合は新たに口座開設をしたうえで、買取請求を行うことになり、若干の手間がかかります。今後も、運用会社がETFを開発し、上場させる一方で、投資家からの支持を得られないものは、廃れていくことでしょう。ETF投資に際しては、上場廃止リスクにも留意しながら、銘柄を選択する必要があります。 ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第69号 2010年2月26日発行より) ==========================================================
2010.02.26
金融庁は昨年末に投資信託目論見書に関する規則の改正を行い、投資家が読みやすく分かりやすいものとするよう目論見書の改善を図ることになった。 改正規則によると、目論見書の記載内容を投資家の投資判断に極めて重要な次の6項目に絞り、これらを分かりやすく読みやすいものとして数ページに収めることとされている。(1)投信会社の役割 (2)ファンドの基本性格、仕組み、投資対象、投資方針、分配方針 (3)投資リスクとその管理体制 (4)運用実績・分配金の推移 (5)購入・換金の手続き、手数料・信託報酬、税金 (6)その他追加的情報である。 投資信託の目論見書は、販売会社が投資信託を販売する際に投資家に必ず交付しなければならないが、これまではファンド設立の際に当局へ届け出る有価証券届出書の記載事項をそのまま写しているため、100ページを超える長文のものもめずらしくなく、どこが重要な項目か分からないなどの不満が多かった。投資信託協会は今回の規則改正にもとづいて具体的な記載内容を定め、本年の7月1以降に作成される目論見書から適用するとしている。長年の懸案であった投資信託目論見書の簡素化がようやく実現することになった。 目論見書の簡素化の次に望みたいのは、運用報告書の簡素化である。とりわけ改善が急がれるのは、現在オープン投信の主流となっているファンド・オブ・ファンズ形態の投信の運用報告書だ。例えば、野村アセットの「マイストーリー分配型(年6回)」の直近の運用報告書は476ページにも及んでいる。なぜそんなにページ数が多くなるかというと、投資しているファンド51本のそれぞれについて直近の運用内容を記載することと規則で定められているからである。 しかし、問題はファンドの決算日と投資先ファンドの決算日が必ずしも同一日でないことである。このファンドの決算日は7月21日だが、投資先ファンドの決算日が年一回8月の場合は、前年の8月時点の運用報告書の内容が掲載されることになる。1年も前の運用状況を記載しても全く無意味である。そんなアウト・オブ・デートな情報を載せるよりも、ファンドの運用経過やパフォーマンス、経費支出の状況、今後の運用戦略の説明などにページ数を割いてもらった方が余程ファンドの理解に役に立つ。 運用報告書を簡素化すればインターネットで閲覧することが容易になり、既存の受益者のみならず、ファンドを購入しようとする投資家にとっても利用価値が高まるだろう。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第68号 2010年2月12日発行より)==========================================================
2010.02.12
2009年の外国株式市場は金融危機と実体経済の悪化を受けて、1~3月期まで下落基調をたどったものの、その後は、企業業績・景気底入れ期待の高まりや金融不安の後退を背景に、上昇に転じました。一時的に下落する局面もあったものの、世界の株式市場は総じて堅調に推移して2009年を終えました。MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の公表するオール・カントリー・ワールド・インデックス(先進国市場と新興諸国を含む45カ国で構成される世界の株価指数)の年間の騰落率は+32%でした。なお、ここでの騰落率はUSドルをベースに計算されたものです。 2009年の外国株式市場の大きな特徴は、新興国市場の回復の目覚ましさが際立つ一年となった点にあります。先進国市場の騰落率が+27%であったのに対して、新興国市場は+75%と大きなものでした。アメリカの低金利を背景に米ドル安が進み、新興国への資金流入が促進されたことなどが背景にあります。上昇率の上位10カ国中、9カ国が新興国で、ブラジルが+121%で1位、次いでインドネシア(+120%)、インド(+101%)、ロシア(+100%)が続いています。 一方、騰落率の低い10カ国中、8カ国が先進国市場でした。唯一、マイナスとなったモロッコ(-8%)が最下位で、二番目に低かったのが日本(+4%)でした。そして、フィンランド(+7%)、アイルランド(+10%)、チェコ(+20%)の順となっています。なお、金融危機の震源地であるアメリカの騰落率は+24%に留まり、パフォーマンス・ランキングでは下から10番目でした。 小型株のパフォーマンスが良かったのも2009年の外国株式市場の特徴です。大型・中型株のパフォーマンスが+32%であったのに対して、小型株指数のパフォーマンスは+49%でした。 2009年は、日本株の回復が他市場に較べて限定的で、改めて海外に幅広く分散投資することの意義を確認する年となりました。最近は、安い信託報酬の外国株式インデックス・ファンドが、ものによってはノーロード(販売手数料無料)で提供されています。また、海外の先進国株式で構成される「MSCIコクサイ指数」に連動するETFが1月に、新興国株式で構成される「MSCIエマージング指数」に連動するETFが2月に、それぞれ東京証券取引所に上場する予定です。 外国の小型株に興味のある投資家には、海外の小型株で構成されるインデックスを連動対象とした海外ETFがあり、国内のネット証券から購入することができます。海外分散投資を低コストでスタートしたい投資家には、ようやくその環境が整いつつあるといえるでしょう。 ========================================================== 金融アナリスト 愛川正博 (楽天マネーニュース[株・投資]第67号 2010年1月22日発行より) ==========================================================
2010.01.22
「貯蓄から投資へ」をモットーとした2000年代最初の10年が終わり、今年から次の10年が始まろうとしている。貯蓄から投資への流れを促進する大きな役割を期待された投資信託は、この10年間どう動いてきたのだろうか。 1999年末の公募投資信託の純資産残高は51.4兆円であった。当時の証券市場はITバブル相場のピークであったが、2000年代に入ると下げ相場に転じ、投信純資産残高は2003年4月には34.4兆円に落ち込んだ。その後、世界的な景気回復、証券市場の上昇を受けて純資産残高は回復に向かい、2007年の10月に82.2兆円の史上最高を記録した。しかし、2008年秋のリーマン・ショックにより純資産残高は再び急減し、2009年1月には49.6兆円に減少した。その後は回復基調を取り戻し、2009年11月で58.1兆円まで回復した。 このような投資信託純資産残高の推移を反映して、家計の金融資産残高に占める投資信託の比率は、1999年末では2.1%であったものが2007年末には4.7%に高まった。一方この間、定期・貯蓄性預金の比率は43.4%から29.0%へ大きく低下し、「貯蓄から投資へ」の流れが鮮明となった。リーマン・ショック後はやや「投資から貯蓄へ」の回帰が見られ、投資信託が3.6%と若干低下した一方、定期・貯蓄性預金の比率は32.5%に漸増している。 2000年代最初の10年間に投資信託を成長させた最大の原動力は、銀行等金融機関による投信窓販である。1998年に解禁された銀行窓販の残高は、2000年末では投信全体の11%にすぎなかったが、2007年末には43%へ急増している。高年齢の銀行預金者層を中心に、毎月分配型や高金利通貨建てファンドなどを販売し、投信投資家層を拡大したのだ。しかし、2008年以降は銀行窓販の比率は42%近辺で伸び悩んでおり、そのようなすでに蓄積された金融資産の中での預金から投信への資金シフトは一段落したように見える。 そうであるならば、次の10年、2010年代に投資信託の拡大をもたらす原動力は何であろうか。それは、今後、急速な普及が予想される確定拠出年金(日本版401k)による投資信託への資金流入であろうと思われる。米国では、1980年代後半から始まった銀行窓販と1990年代に普及した401k年金による大量の資金流入によって、投資信託は急成長を遂げた。 401kを通じた投信購入は、蓄積された金融資産の中での預貯金から投信への資金シフトではなく、若い世代がこれから蓄積していく金融資産の積立金が投信へ流入するのであるから、将来にわたって着実な資金流入の継続と流入額の増大が見込まれるのである。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第66号 2010年1月8日発行より)==========================================================
2010.01.08
個人の資産運用の手段のひとつとして、ETFが新聞・雑誌などで取り上げられる機会が増えてきました。国内ETFの本数は07年以降に急増し、海外ETFの取扱いもネット証券を中心に劇的に増え、今では100本超の海外ETFに日本から投資することができるようになりました。個人が投資する金融商品の筆頭に投資信託がありますが、ETFと投資信託では、どちらがより有利なのか、コスト比較をしてみましょう。 国内ETFにかかるコストには、主に「信託報酬」、「売買委託手数料」があり、海外ETFでは、さらに「為替手数料」がかかります。(「その他費用」は簡便化のため省略) 「信託報酬」は、ETFの運用・管理に対する対価として日々、純資産から日割りで差し引かれる、継続的なコストである一方、残りの2つは売買時に証券会社に支払う一時的なコストです。ETFの「信託報酬」は、おおよそ0.1%弱~1%程度の低水準に設定されています。 「売買委託手数料」は、大手ネット証券を例にとると、国内ETFで0.1%台前半の手数料率となっています。米国ETFの売買委託手数料は26ドル前後(1,000株まで)、香港上場のETFでは約定代金の0.3~0.4%程度(最低手数料は31.5~73.5香港ドル)がかかります。仮に、100万円相当を投資したとすると、米国ETFでは0.2%程度、香港上場のETFでは0.3~0.4%程度のコスト負担率となります。 次に、「為替手数料」ですが、米国ETFを取引した場合、(大手ネット証券で)1取引当たり1ドルにつき25銭がかかります。100万円相当を投資した場合、0.3%弱のコスト率となります。香港ドル建てETFでは、コスト率が跳ね上がります。1取引当たり1ドルにつき15~30銭の為替手数料が設定されていますが、同じ100万円相当を投資した場合でも、現地通貨ベースでみると、米ドルと香港ドルでは、香港ドルのほうが、金額が大きくなり、結果として支払う為替手数料が高くなることが理由です。100万円相当を香港ドル建てETFに投資した場合のコスト率は1.2~2.5%程度となり、3つの手数料の中でも突出しています。 以上を勘案すると、ETFの総コストは0.2~4.9%程度となります。最も低いのは、国内に上場しているトピックスETFをネット証券で購入した場合で、最も高いのは香港上場の中国株ETFを購入した場合です。 一方、投資信託では、購入時に販売会社に支払う「販売手数料」と「信託報酬」が主なコスト(監査報酬や信託財産留保金などの費用は簡便化のため省略)となります。販売手数料は1~3%程度と商品によってばらつきがあり、アクティブ投信の場合で3%超を徴収するものもあります。一方、インデックス投信で、ノーロードと呼ばれる販売手数料をまったく取らないものが増えてきただけでなく、信託報酬の低いものが最近、新たに設定されたことから、投信全体の総コストも0.4~5%程度と、ETFとよい勝負になってきました。 このように、投信でもコスト面で魅力のあるものが現われてきていることから、ETFだから無条件に安かろうと考えるのではなく、若干の時間をかけて横比較をすることをお勧めします。また、比較・検討には、総コストで捉えるようにすると間違いがないでしょう。========================================================== 金融アナリスト 愛川正博 (楽天マネーニュース[株・投資]第65号 2009年12月25日発行より)==========================================================
2009.12.25
投資信託を購入した後、最も気になるのは基準価額の動きであろう。投信は長期投資だから目先の動きに一喜一憂すべきではないとはいえ、昨今のように株式市場や為替相場が大きく変動すると、保有しているファンドの先行きがどうなるか気にせざるを得ない。そこで欲しいのがファンドを購入した後のフォローアップ情報だ。 ファンドのフォローアップ情報として最も包括的かつ詳細なものは、「運用報告書」であろう。運用報告書はファンドを購入した受益者に交付が義務付けられている法定のディスクロージャー文書だが、ほとんどの投信会社は投資家の利便性を考慮して自社のWebサイトにも掲載している。ただし、運用報告書は、1年決算ファンドの場合は1年に1回、毎月決算ファンドの場合でも6カ月ごとにしか作成されない。 そこで、アップ・ツー・デートなフォローアップ情報を知りたい場合は、投信会社のサイトに掲載されている月次報告書(または週次報告書)を見ることになる。 月次報告書は、運用報告書とは異なり法定のディスクロージャー文書ではなく、投信会社が自主的に行う「適時開示」資料である。一応、投信協会の自主規則で、基準価額の推移、騰落率、分配実績、資産の組み入れ状況等について開示することとされているが、運用報告書の必須記載事項である運用経過や今後の運用方針は開示項目に入っていない。このため適時開示の内容は非常にバラツキが多く、基準価額の騰落率と上位組み入れ銘柄程度しか記載されていないファンドも少なくない。投資家が知りたいのは、運用者はどう運用してきたか、今後どのように運用していく方針かを示してもらうことである。 投信会社では、月報のほか、リーマン・ショック時や世界同時株安時など基準価額が大きく変動した際に「臨時レポート」を出すことがある。タイムリーな情報サービスとして評価できるが、臨時レポートを出すか否かは投信会社の任意である。一応、一日に基準価額が5%以上下落した時に臨時レポートを出すという投信会社が多いようだ。ただ、その内容は、基準価額下落の背景となったマーケットコメントに終始しているものが多く、個々のファンドについての具体的な対応に触れているものが少なく、物足りない。 概して投信会社のサイトでは、ファンドを購入する投資家向けに、ファンドの仕組みやリスクを解説した情報は充実しているが、ファンドを購入した投資家向けのフォローアップ情報は十分とは言えない。==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第64号 2009年12月11日発行より)==========================================================
2009.12.11
通貨選択型ファンドの大型設定を背景に、10月の新規投信の販売額は4,000億円を超え、2年ぶりの高水準となりました。2016年のオリンピック開催が決定したこともあって、ブラジル・レアルコースの人気が引き続き高いようです。そのブラジルは、10月20日より海外投資家によるブラジル債券および株式購入に伴う為替取引(ブラジル・レアルの買い)に対して一律2.0%の金融取引税(IOF税)の課税を実施しました。各運用会社が臨時レポートで伝えている通り、金融取引税は以前も海外投資家がブラジル債券を購入する際に徴収されていました。リーマン・ショックを契機とした金融危機の深刻化を受けて08年10月以降、0%に据え置かれていましたが、今回、課税対象を広げて再び導入されることになりました。金融取引税の復活は、最近の急速なレアル高を警戒した措置と伝えられています。ブラジルの代表的な株価指数である「ボベスパ指数」は、リーマン・ショック後に一時、4割程の急落を余儀なくされましたが、今年の春先以降は資源や農産物など国際商品価格の上昇を背景に上昇基調に転じ、5月にリーマン・ショック直前の水準を回復してからも堅調に推移していました。また、高金利を目当てにした、海外からの多額の資金流入もあって、ブラジル・レアルは対円で年初来3割超上昇(08年12月末の38円台後半に対して、金融取引税の再導入直前は53円台前半まで上昇)し、急ピッチなレアル高の輸出企業に与える影響がブラジル国内の懸念材料となっていました。金融取引税が再び導入された10月20日に海外からの投資資金引き揚げの動きがみられ、ボベスパ指数とブラジル・レアルはいったん大きく下落しました。しかし、一時的な影響は免れないものの、ブラジル経済の潜在成長力を踏まえると、中長期的には金融取引税のブラジル株式・債券市場に与える影響は限定的と見る向きが多いようです。2%という税率も海外投資家の意欲を削ぐほどではなく、海外からの投資資金流入を鈍らせる程度には妥当な水準という意見も聞かれます。それでは、日本の投資信託に与える影響はどうでしょうか。通貨選択型ファンドは、為替ヘッジの手段としてNDF(NonDeliverableForward)というオフショアの為替予約取引を利用していますが、NDFは金融取引税の対象ではないことから、今回の措置の直接的な影響はないとみられています。一方、ブラジル株式を投資対象とする投資信託では、現地株購入時のレアル送金にかかる金融取引税はそのままファンドの負担となります。そこで、現地株の購入を避けて、ブラジル企業を対象に発行される、米預託証券(ADR)を一旦購入してから現地株に転換し、課税を免れるという抜け穴がありましたが、11月19日にADRから現地株へ転換する際にも1.5%の税金が課されるようになり、この抜け穴も塞がれてしまいました。ただし、転換をしなければ課税の対象とはならないことから、ファンドの多くはADRを購入し、転換せずにそのまま保有し続けることになります。引き続きADRに対する買い需要が増すと想定されることから、ADRがブラジル国内の株式よりも割高に取引される状態が当面は続くものと考えられます。==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第63号 2009年11月27日発行より==========================================================
2009.11.27
通貨選択型ファンドが1000億円、2000億円という高額設定をして新聞紙上を賑わせている一方で、ひそかに消えていくファンドが増えている。「投資信託の信託終了のお知らせ」、「ファンド繰上償還のお知らせ」などという公告を目にしたことはないだろうか。 大抵は、ファンドの純資産規模が小さくなってファンドが目的とする運用が困難になったという理由から、当初予定の信託期間の途中で繰上償還させるというものだ。ほとんどのファンドは、約款に、ファンドの残存口数が当初設定口数の10分の1以下になった場合や、純資産額が10億円を下回った場合などに、受益者の同意を得た上で繰上償還をすることができる旨の条項を備えている。この規定に従って公告を行い受益者の意向を問うているのだが、ほとんどの場合、異議を申立てる受益者は少なく繰上償還となる。筆者の知る限りでは、受益者の反対で繰上償還を断念したファンドは1例しかない。 法的手続きとしては、一応、受益者の承認を得た上での繰上償還という形にはなっているが、投資家にとってははなはだ不本意な結末ではないだろうか。投資家の立場からすれば、繰上償還されるとファンド購入時に意図した投資目的の達成が頓挫し、資産運用計画に支障をきたすことになる。しかも、当初投資額以上で償還されるならまだしも、投資額を大幅に下回った金額で強制償還されるのは耐え難いことであろう。 さらに問題なのは、繰上償還されるファンドの中には、確定拠出年金専用ファンドやターゲットイヤー・ファンドがあることだ。これらのファンドは、401k年金の投資対象として、あるいは2030年、2040年をターゲットにした長期的な資産形成のための商品として提供されたファンドであるはずだ。2007年に長期投資を標榜して設定されたターゲットイヤー・ファンドが、わずか2年で繰上償還されるというのは、そもそも当初の設定自体が無謀だったと言われても仕方があるまい。 目新しいファンドばかりを募集・設定し、古いファンドは店ざらしという日本の投信業界の体質が変わらない限り、今後も資産規模が縮小して繰上償還に追い込まれるファンドが増加するだろう。このような状況下では、投資家は今後ファンドの購入にあたって「繰上償還リスク」を考慮しなければなるまい。そして、そのリスクを小さくしようと思うなら、長期の運用実績があり(少なくとも3年以上)、相応の純資産規模に達している(少なくとも50億円以上)ファンドを選ぶことが賢明といえよう。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第62号 2009年11月13日発行より)==========================================================
2009.11.13
投資信託の購入時には必ず信託報酬率を確認しましょう。信託報酬は、運用の対価として投資家が金融機関に毎年支払う手数料で、長期間保有する場合、パフォーマンスに与える影響が大きくなり、無視できません。最近では、この信託報酬率を低めに設定した投資信託が徐々に増えてきています。代表的なものとして、インデックス型投資信託があり、コストを意識する投資家は、市場平均並みの運用成果で構わないから、より信託報酬率の低いインデックス投信を選ぶ傾向にあるようです。 投資信託は、運用方法の違いから、「パッシブ型」と「アクティブ型」の2つに分かれます。「パッシブ型」は、市場全体の平均的な収益率(ベンチマークの収益率)を得ることを目的とし、分散が十分に効いたポートフォリオを保有します。インデックス投信はこのパッシブ型の代表です。パッシブ型のメリットは、コストの安さにあります。 一度、ポートフォリオを構築したら、その後は、資金の流出入や定期的な構成銘柄の入れ替えなどに対応した売買を行う程度で、比較的維持コストがかかりません。信託報酬が安く設定されている理由もここにあります。また、ベンチマークとの連動を目指す運用方針であることから、リスクをはじめとする運用内容が把握しやすいという点もパッシブ型の長所でしょう。 一方、「アクティブ型」は、市場や投資銘柄に対するさまざまな調査結果や予測を基にして、市場の平均的な収益率を上回る運用成果をあげようとするものです。アクティブ型には、ヘッジファンドや、不動産投資、ベンチャーキャピタルといった「オルタナティブ投資」なども含まれます。「オルタナティブ投資」とは、株式や債券などの伝統的な運用資産にとどまらず、先物・オプションなどの派生商品や不動産、商品などを投資対象に様々な運用手法を用いる投資の総称です。 アクティブ型のメリットとしては、有効性の高い運用手法を持つファンドを選択した場合に市場平均以上の成果が期待できる点が挙げられます。デメリットは、コストが高いことです。投資対象である市場や個別銘柄の調査に掛かる費用を名目に、信託報酬が全般的に高めに設定されています。また、ポートフォリオ内で売買を比較的頻繁に行いますから、コストがかさむ傾向にあります。 アクティブ型投信の信託報酬率は年間1.5~2.0%程度で、ものによっては2%を超えますが、インデックス投信では年間0.5%~1.5%の範囲に収まるものがほとんどです。(国内株式投信と外国株式投信の両方を対象としています。)高い信託報酬を払ってでも、市場平均以上の運用成果を狙うのが投資の醍醐味ともいえますが、ベンチマークに勝つアクティブ投信を事前に選ぶことは現実には難しいことです。運用成績は市場平均並みでも信託報酬がより安いインデックス投信を選ぶ人が増えてきているというのも納得できます。 ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第61号 2009年10月23日発行より)==========================================================
2009.10.23
敬老の日に因んだ総務省の人口推計によると、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合は22.7%と過去最高になったという。将来、この比率は40%台にも高まるだろうと予想されている。そうした高齢者の急速な増加に伴って、資産運用対象としての投資信託の役割はますます大きくなっていくと考えられるが、現在の投信商品で高齢者向けといえるファンドはあるだろうか。 一つ思い浮かぶのは定期分配型のファンドである。グローバル・ソブリン・オープンなど、毎月あるいは四半期ごとに収益分配金を支払う定期分配型ファンドは、必ずしも高齢者だけを対象にしたファンドではないが、退職後の年金収入の補完として高齢者のニーズにも応えているファンドといえよう。しかし、分配金はあくまでも年金の補完であって、老後の生活費をまかなうには、よほどの投資資産がない限り分配金だけでは不十分であろう。そこで考えられるのは、投資資産から一定額を引き出して毎月の生活費に充てていくという方法である。 最近、米国で注目され始めたファンドに「リタイヤメント・インカム・ファンド」と呼ばれるファンドがある。開発したのは、ターゲットイヤー・ファンドの設定で団塊世代の退職資金運用で先鞭をつけたフィデリティ投信で、バンガード投信がこれに続いている。 フィデリティの「インカムリプレイスメント・ファンド」は、10年、20年などの償還期限付きのファンドで、投資家は、投資した資産から毎年、運用収益と元本の一部取り崩し分とを合わせて、おおよそ決まった金額を償還時まで毎月受け取ることができるという、いわば投信版年金ファンドともいえるファンドである。 バンガードの「マネージド・ペイアウト・ファンド」は、償還期限はないが、長期的なインフレヘッジを図りつつ資産の成長と安定を目指して運用し、ファンドの収益と元本の一部取り崩しによって、投資家に毎月一定率の分配金支払いを目指すファンドとなっている。 フィデリティのファンドもバンガードのファンドも、方式は違うがすでに蓄積した資産を運用しながら、毎月あらかじめ定められた方式で計算された金額を受け取ることができるという、年金式引出し型の高齢者向きの投資信託ということができよう。 日本でも団塊世代が退職期に入っていることもあり、今後は定期分配型だけでなく、高齢者のニーズに応じた年金式引出し型の投資信託の開発が望まれよう。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第60号 2009年10月9日発行より)==========================================================
2009.10.09
商品を連動対象にした国内ETFの上場が相次いでいます。8月3日に原油価格に連動する国内初のETFが大証に、24日には金、銀、プラチナなどを連動対象にしたETF 5本が東証に上場しました。商品を対象にしたETFは、それまで国内に3本しか上場していなかったのが、これで一気に9本に増えたことになります。 大証に上場した「WTI原油価格連動型上場投信(1671)」は、ニューヨークのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物の直近限月の価格を円換算したものが連動対象です。商品投資に関心があっても先物取引には抵抗を感じる個人投資家にとって、商品ETFは手掛けやすく、商品投資がより身近なものになると期待されています。値上がり益を狙う目的以外にも、08年上期のように、原油価格の急騰でガソリン代や日用品などの値段が上昇した場合のリスクヘッジ、また、長期的には株式などの伝統的資産と値動きが異なることから分散効果が働く、などといった理由で、個人投資家の注目を集めているようです。 ところで、商品ETF(国内)の取引はどれほどの盛り上がりを見せているのでしょうか。すでに上場している「金価格連動型上場投資信託(1328)」、「SPDRゴールド・シェア受益証券(1326)」、「イージーETF S&P GSCI商品指数クラスA米ドル建受益証券(1327)」の3本の過去1年間(08年8月~09年7月)の出来高の平均をみてみると、それぞれ16万口(売買代金 約4.3億円)、1.9万口(約1.6億円)、3千口弱(約1千万円)程度となっています。(「イージーETF S&P GSCI」については、上場日の08年10月以降のデータ) 最も取引の多い「金価格連動型上場投信(1328)」でも、少ない時には、売買代金が7千万円程度(出来高は2万口台)しかない日もあり、商品ETF(国内)の取引の厚みは十分ではありません。例えば、海外との比較では、ニューヨーク証券取引所に上場している「SPDRゴールド・シェア(GLD)」の売買代金(同じく過去1年間の平均)は1千億円を超えており、規模の差は歴然です。 以上のように、個人に人気といっても、国内上場の商品ETFの市場規模はまだまだですが、それだけ今後の拡大の余地があるとも考えられなくもありません。保有コストが1%を割る水準に設定されていたり、売買単位が(一部を除いて)1口であることから数千円程度の小口資金で投資できるものがあったりなど、個人には好ましい特徴をそなえています。 とはいうものの、商品は株式や債券と違って企業の生産活動に資本を持って参加するものではなく、配当や利子を生むわけではありません。価格は需給によって決まり、商品投資で負うリスクは、売り手と買い手の損益の合計がゼロとなる、ゼロサム・ゲーム的なものであることから、商品ETFへの投資は投資資金全体の一部に留めるなど、若干の注意が必要でしょう。 ==========================================================金融アナリスト 愛川正博(楽天マネーニュース[株・投資]第59号 2009年9月18日発行より)==========================================================
2009.09.18
インデックスファンドは手軽に分散投資ができるコスト安の投資信託として、初心者からベテランまで人気のある商品である。かつては、インデックスファンドといえば日経225やTOPIX(東証株価指数)に連動するファンドだけだったが、現在では、国内の株価指数はもとより、海外の株式市場インデックス、債券市場インデックス、不動産・コモディティ(商品)指数を対象としたインデックスファンドまで多種多様なファンドが提供されている。それらのインデックスファンドを上手に組み合わせれば、インデックスファンドだけで自分のニーズに合った資産分散ポートフォリオを作ることもできよう。 ただ、そうしたインデックスファンドに投資する際にはいくつかの留意点がある。 第1は、ファンドが対象としているインデックスにはどんな特徴があるかを知ることである。対象とする株式は大型株、小型株、グロース株、バリュー株のどのウエイトが高いか、エマージング・マーケット・インデックスがカバーしている国はどこかなど、特徴をよく理解して自分の投資目的に合ったファンドを選びたい。 第2に、インデックスファンドはその性格上、常にマーケットフォロワー(順張りの投資)であることを認識することだ。これは、従来のインデックスのほとんどが、採用銘柄の時価総額ウエイト方式で構築されているためである。このため、たとえば1999年のITバブル相場時に、ファンドは、マーケットでオーバーバリューされていると感じながらも、IT銘柄をオーバーウエイトしなければならず、その結果、ITバブルの崩壊によって投資家は大きな損失を余儀なくされたのである。 第3として、インデックスファンドの中には、そのインデックスが対象としている証券等を直接組入れるのではなく、対象インデックスに連動して価格が変動する仕組み債に投資するファンドもある。コモディティ・インデックスファンドがその例だが、このようなファンドでは、インデックスの価格変動リスクに加えて、仕組み債の発行体の信用リスクがあることに注意が必要だ。 最後に、投資コストにも留意したい。インデックスファンドはアクティブ運用ファンドのようにインデックスを上回る超過収益を上げることが目的ではないから、超過収益で運用コストをまかなうわけにはいかない。したがって、コストがかかればかかるほどインデックスとの連動性は悪くなるのである。 ==========================================================金融アナリスト 新藤正悟(楽天マネーニュース[株・投資]第58号 2009年9月11日発行より)==========================================================
2009.09.11
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