かみかくし日記

かみかくし日記

2012.01.11
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オーディションで六本木へ。
すぐに結果が出る類のヤツで、即日お役御免となる。

雨がぱらついてきたのでミッドタウンで雨宿り。
呼吸を整えて、師匠である伊藤昶さんに電話してみる。

でも最初の一言で「ああ、モエさんか」と、3年半ぶりに声をきく。
(なぜか10回に一回くらいモエがモエさんになるのだ)
ちゃんと喋ろうと思うんだけど、この人の前だと「です」とか「ます」とか忘れちゃうんだよな。

「手術するんだって?」「具合どう?」「一人で暮らしてるの?」「いつから悪いの?」
「誰かお世話してくれてる?」「どこに入院するの?」「話すと疲れる?」

今まで知ってる話し方より、少しゆっくりめかもしれないけど、しっかりした声。

結局10分間きっかり話した。
わたしの話もした。
今別居してること。わたしの方に非があること。
昨年賞を貰って、今社長の事務所にいること。
(社長は師匠と同じ劇団の出身で、先輩にあたる。その人柄を知っているのでとても喜んでくれた)
「それなら頑張らないと」って。

別居っていうのは、前にも後ろにも進んでいない保留のような状態。
だけれど、別々に懸命になる時期でもあることを、よく理解していただいたと思う。
師匠はわたしたちの婚姻届の証人になってくれた人なので、こんな状態なのは本当に申し訳ないんだけど。
「でも好きなことだから、そうまでなっても続けていくんでしょ」って。


でも、今本当に頑張らなかったら、子供も好きなことも、両方手に入らない人生になっちゃうんだなって思うよ。

師匠のように子供がいなくても、たくさんの人に出会って、たくさんの人を手助けして、育てて、人のために人生をちゃんと使える一生があるのを知ってる。目の当たりにしてきた。
そこに行くためには、何かがすごく欠けている。
だからそれを今つくるときなんだね。

「恋なんていつでもできるぞ。さびしいだろうが今は頑張れ」って。


わたしが人前でお酒をあおるのと同じように、師匠はモテアピールをするのだ。

ありがとうってたくさん言われて電話を切る。

手術する場所が難しくて、肋骨を開けるんだって。わたしと同じ開け方だ。
稽古場で「体の力を抜くと、骨から、体がバラバラになってしまいそうでできません」って泣いたことを思い出す。
手術の後、肩に腕がぶら下がっている重みときしみに体が耐えられなかった。
あんな思いをして、かつ治療も続けなきゃいけないんだな。

失恋したって、別居したって、一生会えなくなるわけじゃない。
でもその人のかたちが崩れるくらい弱ってしまったり、わたしのことがわからなくなってしまったり、会えなくなってしまったりするのは、会わないでいることと全然違う。

声をきいて、事情をきいて、安心もしたし、でも心配もつのり、顔がぐしゃぐしゃになる。
このまま家には帰れないので、少し寄り道をして、森アーツセンターギャラリーの「歌川国芳展」に行くことにした。

眺めても眺めても見飽きない。
様式にも、政治的にも、約束事が山ほどあるのに、こんなに人を楽しませるってすごい。
師匠のお見舞いに図録をプレゼントすることに決めた。

そのあと新宿に出て軽い食事。
シャンパンをたのむ。飲み干して決めた。
師匠が無事手術を終え、退院できるまで、お酒は飲みません。

師匠のためだけじゃなく、わたしは今やるべきことがあるみたいだから。
何かを迫られているから。そのためにも。
まずはここから始めます。





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Last updated  2012.01.18 15:30:00
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