★Latchkey Child★

★Latchkey Child★

君の声。



どうしたの?なんて聞けなかった。

ただ嗚咽を繰り返し

泣いてた君のコエを聞くしかなかった。

しばらくして

「ありがと」と言って。

それからはじめて

「どうしたん?」と聞いた。

君はしばらくの沈黙のあと

つぶやいた。

たった一言

「なんもない・・だいじょぶ」と。

うそつき。

そんなに泣いて

どうして「なにもない」なんていえるの?

どうして「ほんとうのこと」はなしてくれないの?

いらついた僕の声に気づいた君は

あわてていた。

そしてまた泣いた。

「ごめん・・・まだいえない」といいながら。

また繰り返す嗚咽の中

沈黙の電話。

・・・身支度を軽く済ませて。

君の部屋の前

ドアに腰掛けて

「泣けば・・?俺はココにいるから」と。

ドア一枚へだてて

君の押し殺したコエが聞こえる。

まだ開けられない重たいドアの向こうから

君の泣き声が聞こえる。

ずっと

ずっと

溜まっていた何かを吐き出すかのように

ずっと

泣いていた。

しばらくして

重たいドアが開いた。

・・・・・・・・。

沈黙したまま

抱きしめることしかできなくて。

何もいうことができないまま

君のクチビルを奪う。

何も言わないまま

裸で抱き合って

お互いにまったく離れないで

ベッドの上で朝を迎える。

隣で寝る君を見ながら

服を着替えて

寝息を立てている君につぶやいた

「おやすみ」と

静かに部屋を出て。

ドアに鍵を閉めて

けだるい朝日を見ながら

結局こういうことでしか慰めれない

俺を残酷なやつだと呪う。

ズボンの中に隠れ住む悪魔をのろいながら

携帯を投げ捨てた。

君とはもう終わりだから。

明日はまた別の人(女)を抱いて

朝を迎えるんだろう。

きっと。

だって

それしか僕には慰めるすべはないから。

そして

僕は

朝の携帯屋に向かう。

使い捨ての新機種を買うために。



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