マル高母の初心者育児日記

マル高母の初心者育児日記

October 20, 2009
XML
カテゴリ: 闘病記

体にいくつも管がついた状態の彼の枕元にすわると、彼は

「自分は病院でみてもらっているのだから、心配いらないよ。
それより、おくさんが倒れちゃったら困るんだから、うちに帰って休みなよ。」

と改めて私に声をかけてきました。

私は笑いながら、

「顔をみないでいるほうが落ち着かないよ。こうしてとなりにいるほうが安心するんだから追い払わないでよ。」

といいました。

すると彼はほほえんで、それ以上はなにもいいませんでした。

私は彼のとなりで、いろいろたわいのないことを話していました。

しかし相槌をうつのもつらそうです。

「無理に答えなくていいよ。聞いていてくれるだけで、私の気がすむんだから。」

と声をかけると、

「女の子は話すことがいっぱいあるんだね・・・。」

とよわよわしく笑いかえしてくれました。

「だって・・・。いっぱい声をかけておかないと、話してくれなくなるような気がして・・・。」

と思わず私はいってしまいました。

すると彼は

「そんなことあるわけないでしょう・・・。」とつぶやくように答えました。

突然、彼がはげしくしゃっくりをし始めました。

胃から逆流があるようで、横隔膜がすぐに刺激されてしまうようです。

あわてて、私は背中をさすりました。

でもとまりません。

とっさに私は人口呼吸をするようなつもりで、鼻をふさぎ、口をあてました。

するとしゃっくりはなんとかとまったようです。

「キスするととまるんだね。」と笑いながらいうと、彼も一緒に微笑みました。

その後も何度かしゃっくりがとまらなくなると、キスで口をふさぐ・・・をしてました。

夜になると痛みがつらくなるようです。

「痛み止めってまたしてもらったらだめなのかな・・・。」と彼は私にいってきました。

「痛みがつらい?痛み止めうってもらってあんまり時間たってないけど・・・。」というと

「さっき痛み止めをうってもらったあととても気持ちよかったから、またうってもらえるといいなー・・・とおもったんだ。」

と冗談めかして彼はいいました。

かなりつらかったんだと思います。

「じゃあ、看護師さんにいってみるね。」とだけ私は答えました。

そして、彼のひたいに手をあてて

「いたいの、いたいの、とんでけー。」とおまじないをしました。

すると彼はすこし笑いながら、目をつぶっていました。

彼の額はすこし熱かったです。

熱が下がらないのでしょう。

思わず涙がこぼれました。

「しんどいよね・・・。痛いよね・・・。夫婦なんだから、痛みも分けられるといいのにね・・・。そうしたらすこしでもラクになるんだったらいいのにね・・・。」

と泣きながら私がつぶやくと、

「夫婦で病院に入院じゃしょうがないでしょ。
それに、おくさんまでたおれたって、僕は看病できないし。

・・・ごめんね。新婚早々、こんな思いばっかりさせて。」

と彼はいいました。

私は涙をぼろぼろこぼしながら

「本当だよ。さっさと病気なんか治して、早く一緒に家でくらそうよ。
今回のことで疲れて、私が家でごろごろしているから
そのときはダンナが私の看病をしてくれなくちゃだめなんだよ。」

と答えました。

「もちろんだよ。ちゃんと看病するからね。」

と私をそっとなでながら答えてくれました。

もちろん、そんなことはまったくの夢であることは2人ともわかっていました。

でもそんなことを語りながら、短すぎる夫婦としての日々を共有していたのです。

3日目のことでした。

お医者様がわたしに声をかけてきました。

「痛みがおさえきれていないようなので、さらに強い薬を投与することになるのですが・・・。
ただ、意識がなくなってしまうので、お話したいことがあれば、今のうちにしておいたほうがいいかと。」

覚悟はしていたつもりです。

確かに痛みがおさえきれていないのもわかっていました。

でも意識がなくなってしまう・・・・それはとてもつらい宣告でした。

病室にもどり、私は彼に

「なにか、私にしてほしいことはない?漫画かってくる?車の雑誌とかは?」

と声をかけました。

すると彼はしばらく考えて、意を決したように

「じゃあ、ひとつ。

これから、なにがあっても僕は奥さんを信じているから、落ち込むなよ。」

といってきたのです。

私は思わず

「ダンナが病気治って帰ってきてくれれば、落ち込んだりしないよ。」

と叫ぶとボロボロと涙がとまらなくなりました。

彼は「うん、わかってるよ・・・。」と私をなでながら悲しげにほほえみました。

そして、それが、彼の私への最後の言葉となったのです。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  October 21, 2009 09:30:43 PM
コメントを書く
[闘病記] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

コメントに書き込みはありません。

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: