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本日付の『日経MJ』で、アメリカ東海岸の長距離バス事情が紹介されている。アメリカの長距離バスというと「グレイハウンド」と、今はなき「トレイルウェイズ」が有名で、どうしても「大陸横断」的なイメージが先行する。飛行機なら数時間といった超長距離を何日もかけて移動するというと、低所得者層向けの交通機関で治安もいまひとつ、といった思い込みがある。しかし、大都市同士が近接する東海岸に限って言うと、例えばニューヨーク-ボストンやNY-ワシントンDCは飛行機で1時間強、鉄道や長距離バスで4時間の距離。さらにその間にボルチモアとかフィラデルフィアとか大都市が連続するメガロポリスだから、まさに日本の太平洋ベルト地帯(ちょっと懐かしい響き?)の中を移動するようなものだ。この距離、この所要時間なら「特別な乗り物」(もちろん、「特別に高級」ではなく「特別に安い」)ではなくなる。各社あわせると1時間に数本レベルの多頻度運行がなされているらしい。蛇足ながらこの地域、私も旅行したことがあるのになぜかバスの知識はないなと自分であらためて振り返ってみると、旅行したのは自分が高校生のとき。私が「西口」(新宿高速バスターミナル)のバイトで高速バスに出会ったのが大学生のときだから、まだバス好き?になる前の話だった。逆に、大学時代にヨーロッパで何度も乗った「ユーロラインズ」のおしゃれなボディカラーと統一された営業システム(※)に感化され、日本における高速バスの「伸びしろ」の大きさをより強く確信したことも事実である。それはさておき、アメリカ東海岸の長距離バスには「メガバス」や「ボルトバス」など、新規参入が続いているらしい。いま私たちが取り組んでいるようなレベニューマネジメントをさらに進化させたような手法で柔軟な価格設定を行なう一方、新しいイメージを打ち出して、冒頭に挙げた「低所得者向け」イメージを払拭しているとのことだ。記事をそのまま引用すると<新規参入組は、かつての長距離バスの「暗くて汚い」イメージを一新。新規購入したバス車両は窓が大きく内装も明るい。学生や女性などが一人でも気軽に乗車できるようになった。走行中のネット接続を可能にしたため、ビジネス目的の出張客の利用も増えている。>紙面の写真を見ても斬新なデザインの車両で、なるほど、と思わせる。レガシーシステム(旧来のやり方)から脱却できずに消費者ニーズとかけ離れてしまっている「グレイハウンド」に対抗して新しいコンペティターが出現したのか、と感じ、「ボルトバス」について少し調べてみて驚いた。なんと、この「ボルトバス」。老舗の「グレイハウンド」と、かつては「トレイルウェイズ」に所属していたこともある「ピーターパン・バスラインズ」との共同事業らしい。日本で言えば、JRバスグループと老舗の大手私鉄系事業者が、既存の高速バスとは別に、わざわざ自分たちのブランドを用いず、「ウィラーエクスプレス」とか「オリオンツアー」に相当する全く新しいブランドと、今日の高速ツアーバスのような全く新しい手法で高速バスを共同運行しているようなものだったのである。「グレイハウンド」ブランドや旧来のノウハウを自ら否定するのは勇気がいる決断だったろう。逆に、そうしなければ利用者を取り込めず、ひいては企業としての将来をかけた決断だったのか。こうしてあらためて調べてみると、私自身、「高速バス王国」と言われるすぐお隣の国、韓国や台湾も含め、海外の高速バス事情にあまり詳しくないことに気づかされる。なにも海外の真似をすればいいというわけではないが、自分たちの向かっている方向性が正しいのかどうか常に客観的に見つめなおすためにも、海外の事情をもっと勉強しないと、と感じさせられた。※「ユーロラインズ」の統一された営業システムについては、アメリカの「トレイルウェイズ」、英国の「ナショナルエクスプレス」などと同様、「営業・ブランド(マーケティング)」と「運行(オペレーション)」を明確に分けることで成立している。かつてJRバス関東がその方向を目指したとも言われているし、現在のところウィラートラベルなどがそれに最も近い形と言える。また、ホテルやレンタカー事業などでは普通に行なわれているモデルでもある。
2009.07.31
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月刊の経営誌『日経情報ストラテジー』の連載「改革手法ウォッチング」、今月号のテーマが「レベニューマネジメント」ということで、サイトのビジネスモデルの図表と顔写真入りでご紹介いただいた。同じ記事中には日本航空のほか、「西鉄」「西武」といった私鉄系の会社の名前も見られる。ただし商材は当然バスではないわけだが(「西鉄イン」と「西武ライオンズ」)、西鉄や西武のバスのご担当者はどうお読みになるだろうか。さてレベニューマネジメントそのものは、必ずしも「ウェブ予約」が前提条件というわけではない。今から約30年前、アメリカの航空会社がレベニューマネジメント(当時は「イールドマネジメント」と言った。言い回しが変わっただけで同じものである。ただし、手法は大きく進化したが)を導入した際は、当然、ウェブ予約などなかったのである。ただし、業務(予約センターのオペレータが空席・空室状況やその価格を参照し利用者に伝えたり予約内容を入力したり、窓口やフロントのスタッフが売上金額を利用者から回収したり)に使われる「基幹システム」の存在は大前提である。台帳管理をしているようでは、レベニューマネジメントなど導入することは実務的に不可能だ。さらに、本格的にダイナミックプライシング(需要予測や受注状況に応じてリアルタイムに価格を変動させること)を行なおうと考えるなら、ウェブ予約は必須である。電話予約に比べるとウェブ予約は圧倒的に価格弾力性が大きいし、そもそも電話予約なら、レベニューマネジャーの意思を各オペレータにリアルタイムに伝達するのはオペレーション的に難しいからである。その意味でレベニューマネジメントの発展は、ウェブ予約の定着とともにあるともいえる。一方、ではウェブ予約の比率が大きい商品であればすぐにレベニューマネジメントが普及するかというとそうでもない。2年前、我々が本格的に高速ツアーバスにレベニューマネジメントを導入しようと考えたとき、最大のネックが業界内の反応だった。「バスの料金が日によって違うなんて」「同じ区間の同じ座席タイプなのに」。既存の路線バス事業者の反応ではない。価格変動など当たり前の旅行商品を何年も扱ってきた企画実施会社の反応がそうだったのである。「航空会社が普通にやっていることを、なぜ高速バスでやってはいけないんですか?」という話し合いを何度も重ね、高速ツアーバス業態にレベニューマネジメントが定着したのである。レベニューマネジメントの普及とは、システムの開発ではなく「文化」「考え方」の普及なのだ。そして、利用者からは特段の苦情や不満が出なかった。何のことはない、利用者の方が感覚的には進んでいたのだ。さらに昨年、JR系の「ドリーム号」が、完全なレベニューマネジメントとはいえないものの、国交省と調整のうえ繁閑別の運賃制度を導入し追随して来られた。今後、高速路線バスの規制緩和も検討されている中で、高速バス業界においてレベニューマネジメントはさらに大きなプレゼンスを持つだろう。(日本の)ホテル・旅館業界では、「閑散日に売れ残る部屋の投売り」と誤解を受けている側面もあるレベニューマネジメントだが、もともと価格訴求からスタートした高速ツアーバスについては、ウェブマーケティングによって販売力が逆転したこともあいまって、アベレージレート(販売単価)をうまく上げる方向に作用した。いや、レベニューマネジメントの導入がなければ、未だ高速ツアーバス各社は弱気の価格設定を続けていただろうし、その結果収益性は低いままとなり、今のように専用車両をどんどん投入したり老舗貸切専業者クラスが参入したりすることはなかっただろう。取材の後、今回ご担当いただいた記者さんが「レベニューマネジメントの取材をしていて思うんですが、レベニューマネジメントにたずさわる人って、皆さん本当にレベニューマネジメントという手法に惚れ込んでますよね。皆さんレベニューマネジメントの話になると生き生きとお話されます」とおっしゃっていたが、私自身、前職のホテル時代に出会って以来たしかにレベニューマネジメントは大好きだ。しかしそれ以上に私自信が大好きで、かつ自分の役割だと認識していることが一つある。それは、業界の常識にとらわることなく新しいアイデアを業界に注入し、業界全体をブレークスルーさせるお手伝いをすることである。
2009.07.29
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東京-青森線「ラ・フォーレ号」の乗車券等取扱い変更の件が、京急バスのサイトで発表されている。正直、ぱっと見るだけで「あーあ」という感じ。この「ラ・フォーレ号」は、京浜急行電鉄(現在は羽田京急バスに移管)、弘南バスのペアとJR系(関東・東北)のペアが競願となった結果、運輸省の調整により4社共同運行で開業した。ダブルトラック化を避けるため4社共同運行となったのに、その後国際興業系の「ブルースター号」が参入しダブルトラック化、さらに「ラ・フォーレ号」と並行して弘南バスが自ら廉価版高速バスの運行を始めたりと、結果だけ見れば「運輸省による調整」とは何だったのか、考えさせられる路線である。ただし、それを無駄な調整だったと見るのは、あくまでも「結果論」である。運輸省に対する当時の京急、弘南、JRらによる「果敢な挑戦」があったからこそ、やがて「高速バスの路線権」概念が完全に成立し、各路線バス事業者は自分のエリアからある程度自由に高速バス路線を開設できるようになったのである。もちろん、さらにその結果、「『平バス』のバス停さえあれば高速バスを開設できる⇒『平バス』のバス停が『金のなる木』になる(既得権益化する)」という側面も生まれたのであるが。さて、今回の取扱い変更の直接的な原因は、4社のうちJRバス関東の撤退である。「高速バスネット」か「マルス」に入っていない路線はJRバス東京駅では取扱いしないというJRバス関東の方針もあるからかなり複雑なことになりそうだという話は各方面から聞いてはいたが、同じ「ラ・フォーレ号」でも、「1・4号(私鉄系ペア)」と「2・3号(JRバス東北)」と、担当する運行会社によって予約方法も発券方法も異なるというのは、利用者にとってはわかりづらいことこの上ない。起終点の窓口でさえ購入できない「1・4号」と、電話予約もウェブ予約もできない「2・3号」とどっちがマシか、などという愚かな比較をしている場合ではない。かつて、中央高速バス富士五湖線が、京王と富士急行の「相互乗入」(「共同運行」ではなく)だったころ、予約センターの電話番号が便によって別々で不評だったが、それよりさらに「後戻り」である。「乗りたかったら切符を買いに来い」という旧来の既存事業者のスタンスが見え隠れする。さらに、ここまで別々に営業するなら別個の路線としてそれぞれの愛称を用いそれぞれのターミナルから出せばいいと思わないでもないが、今の固定客は離したくないということだろう。「利用者の利便性を上げて乗客数を増やす」ことより「今の乗客数でいかに自社の取り分を増やすか」を優先させる路線バス事業者特有の縄張り争いが未だ消えていないことがよくわかる。地域の公共交通である「平バス」の場合は事業者単位の努力ではなかなか抜本的に乗客数を伸ばすのは難しいが、高速バスの場合はやり方しだいではあるのだが。今後も「ラ・フォーレ号」を運行する3社にとって、戦うべき敵は航空であり新幹線であり並走する他社の高速バス(高速ツアーバスを含む)なのである。ライバルは各社とも、積極的なマーケティングによって最大限に需要を喚起しつつ、いかに簡単に予約できるか、いかにストレス無く乗車・搭乗できるか、利用者側の視点で改善に取り組んでいるのに。厳しいことを書いたが、JRバス関東の路線撤退そのものは7月末、上記取扱い変更は8月末ということで、その1ヶ月間というタイムラグが、いかに大変な調整だったかを物語っている。調整(交渉?)を担当なさった方々にはお疲れ様と言いたい。が、やはり、「乗せてやる」「運んでやる」バス産業から、ホスピタリティ産業としてのバス産業へ昇華を急がないと時間切れになりそうな気がする。炭鉱とか銭湯とか、最近だとポケベルとかがそうだが、ある時代には間違いなく社会の役に立っていたが、今は衰退してしまった産業など、いくらでもあるのだから。
2009.07.28
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私の会社(本体の方)が、本日からウェブ上で政治献金を受け付けるサービスを開始した。利用者は、サイト上で(私の会社と契約をしてくれた)政治家を、選挙区や政党名から簡単に検索することができ、それぞれの政治家の実績や主張をよく読んだ(一部には動画も!)上で、「この政治家を応援したい」と考えれば、わずか1000円から献金することができる。献金が成立すれば、私の会社は政治家の先生から手数料を受け取る仕組みだ。「お前の会社、何でもやるなあ」と言われるような気もするが。これまで、われわれ普通の日本人にとって、「政治献金」は至って「遠い世界」の出来事だった。「政治献金」という言葉自体は、おそらく多くの日本人は聞いたことくらいはあるだろう。理念や活動内容に共感した政治家に対し、誰かが応援のためにお金を渡すもの、という理解は、おぼろげながらみんな持っているだろう。しかし、実は自分たち普通の市民でもできるとか、それを(一部の)政治家は喜んで受け入れてくれるとか知っている人は少ないだろうし、仮に「○○議員の話をテレビで見たらすごく共感したから、お小遣いを1000円、献金してみよう」と思ったとして、普通の人はその方法はわからないだろう。それを、ウェブを活用することで、普通の人が普通に献金するように導きたい、というのが、私の会社の担当部門のビジョンである。まずは簡単に献金できる「仕組み」を作って、本日サービス開始した。これから担当部署は、5000万人の会員に対してメールマガジンを送付したり、ウェブ上でショッピングや旅行予約を受け付ける画面で「政治献金がカンタンにできる」というメッセージを表示したり、私の会社以外のサイトで「政治献金」について調べている人にそのサイト上に広告を表示したりといった「需要喚起」をどんどん行なう。そして気軽に政治献金をする人を増やしていく。私の会社がやりたいことは、基本的にはどのサービスも同じである。取扱う「商材」が、政治献金から地方競馬の馬券や結婚式などの祝電まで幅広いわけだが。とにかく「商品としては魅力があるのに買い方がよくわからないもの」や「その魅力がよく伝わっていなかったもの」を、ウェブを使うことで「いかに買いやすくするか」がわれわれの本分である。そして、その「商品としては魅力があるのに買い方がよくわからないもの」や「その魅力がよく伝わっていなかったもの」の代表が、私にとっては「高速バス」なのである。この政治献金については、担当者によると、やはり様々な規制もあるらしい。また、政治献金を受け付けたものの、その名義人が既に亡くなっていたり社会的に好ましくない人たちだったりすると、政治家側の責任が問われるそうで、献金者の本人確認を担保するのも大変だそうだ。あるいは、アメリカでオバマ大統領がウェブで大量の個人献金を集めたのは、もともと「献金文化」があったからで、日本ですぐに同じことが起こるかどうかはわからない。ただ、私がこの会社で高速バスについてやりたいことの中身は、まさに上記「ウェブを使うことで個人献金を定着させる」ことと同じなのである。本日、偶然にも、東京バス協会が特定の政党に肩入れしていた事実が報道されている。そのこと自体の善悪については法律の知識も無いから判断できない。ただ、高度経済成長が歩みを止めたいま、既得権益を守ろうとする限り縮小均衡しかありえないことを認識し、この国を長い目でどう導いていくべきなのか、自分の頭で考えるようにしたいと思う。そして賛同する政治家に出会えれば、自分も1000円でも献金してみたいと考えている。
2009.07.27
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『ものつくり敗戦~匠の呪縛が日本を衰退させる~』(著者・木村英紀)を読んだ。理論物理学の研究者の方ということで難解な点も多かったが、がんばって読んだ。カバーに使われている写真は、沈没する旧日本軍の戦艦・伊勢。帯のコピーワークは「日本は同じ過ちを繰り返すのか」「システム思考軽視が、日本を第二の敗戦に導く」とある。必ずしも太平洋戦争の敗戦がテーマの書ではないが、その部分の描写は大変な迫力を持って先の大戦で我が国が敗れた理由について考えさせられる。例えば、旧日本軍の兵器づくりにおいては規格化、互換性といった思想が欠如していたのだという。それは高度な技術(匠の技)を持った熟練工を大量に確保できるという背景から生まれたものらしいが、戦場での運用に当たってはたしかに足手まといになっただろう。戦闘機「ゼロ戦」も、開発当初は間違いなく名機であったが、名人芸による設計を反映したきわめて複雑な機体をしており、その後の拡張性が大きく欠如していたのだという。一方で、レーダーやソナーといった情報兵器の開発には十分なリソースが投入されなかったそうだ。「ものつくり」には信仰に近い強い思いを持つ一方、「それをどう使うか」という発想、想像力に欠けているといえる。交通系の電子マネーのプロジェクトにかかわった方がこうおっしゃっていたのを思い出す。「やっぱり、日本は『職人の国』なんですよ。モバイル(携帯電話)が電子マネー機能も持てば1台2役で便利だよねというアイデアに、日本のエンジニアは、アプリを起動して本人確認して・・・と難しいほうへ難しいほうへ考える。結局、利用者のハードルを上げてしまい気軽に使ってもらえない。でも、ICチップなんて小さいんだから『携帯電話の本体にピタッと貼り付けるICチップ』を商品化すればそれで十分なんだけどね」。首都圏における携帯電話の普及率と、スイカ・パスモの発行枚数に占めるモバイルスイカの比率とを比べれば、まさにその通りなのである。そして、『さらば、ホンダF1』の時にも書いたが、旧日本軍の話になると、最後には、彼我の戦力の差を読み間違うという、おそらくは我々日本人の本質的な特性のところに行き着くのである。「過去の栄光にあぐらをかき、新しい近代戦の様相に目をつぶってきた軍部の怠慢はひどいものであったと言わざるを得ない」という木村氏の指摘は、ホンダF1チームにも、私の前職である国内系老舗ホテルでも、そして今日のバス業界にも共通している。外部環境(太平洋戦争でいえば、大量生産時代の近代戦のあり方。バスでいえば、モータリゼーションの進展等のマーケット環境)は確実に大きく変化しているのに、過去の栄光が忘れられず「われわれは地域の役に立っている」という思い込みから客観的な戦力分析を行なえない。気がつくと、ずるずると戦線を伸ばしてしまい、最後には「神風が吹くはず」という根拠のない希望的観測に頼り特攻隊を送り出すことしかできない状態に追い込まれる。「新興の高速ツアーバスの攻勢に対抗できない既存の高速路線バス」などという小さな話をしているつもりは一切ない。「平バス」を中心に、高速バスも貸切バスも含め、「日本のバス産業」の今後を考えるに当たって、「地域の役に立っている」「利用者に満足してもらっている」という現状肯定から入っていいものか、問いたいのである。本当に役に立っているのなら、産業全体がこんな苦境に追い込まれていないはずなのである。
2009.07.26
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マーケティングの教科書の、いわば最初のページに登場する「4つのP」という考え方がある(マーケティングの世界では既にこの概念を「古い」という人も多いが、基礎の基礎に当たる考え方としては十分に有効だろう)。マーケティングを構築するのは、「Product(製品、商品そのもの)」「Price(価格)」「Place(販路、流通網)」「Promotion(販売促進活動)」という4つの要素の組み合わせである。これらを有機的に、バランスよくコントロールしていくことで、自社の商品をより多くの人に使ってもらうことを考えるのがマーケティング担当者の仕事である。では、我が「高速バス」にこの4Pをあてはめるとどうなるか。従来から、「商品」「価格」については十分な力があった。ただ、「販路」「販売促進」という「残り二つのP」に合格点をつけることはできなかっただろう。例えば東京に住んで夏休みの旅行を計画している人が「快適そうだし(商品力は十分)、安いし(価格力も十分)高速バスで行ってみるか」と考えたとき、新潟に行くなら西武バス、信州だったら京王バス、秋田だったら小田急バスの予約センターやウェブサイトなら予約ができると、そらんじて言えるだろうか。あるいはそもそも、「高速バスで行こう」と思いつくだろうか。鉄道や航空は、一人でも多くの人に「次の旅行は鉄道(航空)で」と思わせるために、JR東日本なら吉永小百合さん、ANAなら石川遼君といった有名人を使ったテレビCMがバンバン放映されているのである。その「販路」と「販売促進」については、高速ツアーバス各社は、インターネット(ウェブマーケティング)活用によりブレークスルーしたと言ってよい。また、これまで既存事業者が、「バス業界の常識」からはみ出せなかった「商品」「価格」についても、(安全面等に議論はあるとはいえ)ブレークスルーしつつある。一方、既存事業者の高速路線バスは、たしかにウェブ予約を導入しているが「ウェブマーケティング」ができているわけではない。しょせん「新潟方面には西武バス」とあらかじめ知っている利用者が西武バスの自社サイトを訪れ、そのまま「発車オーライネット」にリンクで誘導され予約できているに過ぎない。新しい需要を喚起する機能は、恐縮だが「発車オーライネット」にも「高速バスネット」にも「ハイウェイバスドットコム」にも存在しない。もとより、サイトとしての目的が違うのである。街の老舗の和菓子屋、という例を考えてみたい。職人による「匠の技」で見た目も味も十分である。かつてこの街の住民は、知人への手土産にはかならずこの和菓子を持っていっていた。ただしこの和菓子は、工房に隣接した直営店でしか売っておらず、みな当然のようにそこまで買いに行っていた。しかし最近、駅前に大きなスーパーが進出し、そこでは工場で大量生産する安い和菓子や、おしゃれな洋菓子も売り始めた。若い人や新しく越してきた人は不便なところにある老舗和菓子屋の直営店の存在さえ知らず、便利な駅前スーパーで安いお菓子を買うようになった。スーパーの和菓子は安いし、洋菓子はお洒落だし、スーパーが積極的にチラシを配ったりするものだから、その街のお菓子需要全体は大きく成長した。一方で老舗和菓子屋の売上は低迷した。そのとき、老舗の和菓子屋は何をすべきか。職人としては「工場で大量生産した和菓子なんて、あんなの和菓子じゃない」と文句も言いたくなるだろう。「いまどきの若いもんはお菓子の味も知らん」と客のせいにもしたくなるだろう。しかし、本当に負けているのは商品力(お菓子の味や価格)ではないのである。駅前スーパーで安い和菓子を買っている客の中には「もうちょっと高くても本物のお菓子が欲しいのに」と感じている人も多いはずである。実際に負けているのは「販路」であり「販売促進活動」なのである。老舗和菓子屋の職人は、駅前スーパーを恨んでいるかも知れない。でも、その職人が理解していない点が一つある。実は駅前スーパーの側も、いつまでも安い商品「だけ」を売っていてはブランドイメージも利益率も上がらない。ここは、ぜひ、スーパーのメインの入口を入った正面の目立つブロックに、地元で定評ある老舗和菓子屋にテナントとして進出してもらいたいと、それが実現したときの図面まで用意して待っているのである。
2009.07.25
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JRバス東北の「仙台・新宿号」が、8月1日土曜日と、お盆期間に急遽臨時便を設定するそうだ。朝の下り便は通常9:00発だが、この期間のみ9:30発も運行されるとのこと。おそらく、新宿側のターミナルのキャパシティの問題から、9:00発にこれ以上続行便を設定できなかったための苦肉の策かと思われるが、路線バス事業者では珍しい運用である。いろいろお手間もかかったであろうが「やればできる」感じが伝わってきて刺激される。この首都圏~仙台線は、以前から繰り返し書いているとおり圧倒的に高速ツアーバスが強い路線である。推計値だが、高速ツアーバス各社合計の輸送人員は、高速路線バスの5倍は軽く超えているだろう。その分、価格は逆転傾向にあり、特にこの臨時便が設定されるような繁忙日(8月1日は通常の夏休みの週末需要にコンサートの特需が加わる)には明らかに高速ツアーバスの方が高い(その様子は、昨年6月18日付けの日本経済新聞に詳しく報じられている)。首都圏~仙台線に代表される「第3フェーズ」型路線の最大の特徴が、車両タイプの相違や繁閑に応じたきめ細かな価格設定である。これはもちろん、高速ツアーバスが持ち込んだ手法に既存の高速路線バスが追随した結果、定着したものだ。一方、これまで高速路線バス側がどうしても追随しづらかった、高速ツアーバスのもう一つの「強み」が、冒頭に挙げたような柔軟な商品設定と車両運用である。高速ツアーバス側の価格設定は、法的には以前から自由に柔軟に変動させることが可能であったとはいえ、習慣的に「週末は500円アップ」程度の運用にとどまってきた。そこに、私のサイトが、各企画実施会社がリアルタイムに1円単位で価格を変動できるようシステム改修を行なった際、我々では同時に「レベニューマネジメント」概念を持ち込んだ。精密なデータ分析に基づき、出発日ごとの「適切な価格」と「適切な台数」を各企画実施会社にアドバイスするのである。その結果、これまでの続行便の設定に加え、「スポット運行」という概念も定着した。ごくごく普通の貸切バス事業者でも、自社またはグループ内で保有する旅行業免許によって旅行会社として利用者を募集し自社のバスを運行させる。これまで高速バスを運行するといえば、国の許可が必要な高速路線バスはもちろん、高速ツアーバスであっても、予約センターの開設やパンフレットの制作など相応の費用が必要で通年運行しないと回収できなかったが、このやり方だと、私のサイトのフォーキャスト(需要予測)に基づき供給座席量の不足が確実な日の確実な路線にだけ、バスを運行すればいいのである。実際に入った予約に対しての送客手数料は私のサイトがいただくし、センディング等のコストは多少は発生するが、新規事業としてのまとまった初期投資は必要ない。昨今の不況やインフルエンザによるインバウンド(訪日客)の減少により、最近ではいろいろな貸切バス事業者が私のサイトに電話を下さり、どの日のどの路線にバスを出すべきかスタッフと常時打ち合わせを行なっている。そんな話を既存の路線バス事業者の皆様にすると、当然、最初は嫌な顔をなさる。自分たちが路線を開設できるまでには様々な調整が必要なのに、高速ツアーバス業態ならその場その場の判断で台数が足りない方面にバスを運行できる。それは当然不公平に映るだろう。また「実踏(下見)も無しで?」ともたずねられる。初めての路線を実踏も無しに走らせるなどありえない、とお感じになるだろう。ところが、その後の反応は二者に分かれる。「実踏無しで新路線?ありえない」という方。そしてもう一方が「ウチの会社でも、まあ、貸切として走るときは実踏なんかしないもんな。貸切で仙台とか大阪に行くのと一緒と言えば一緒か」もちろん私は、私鉄系の一流の事業者で貸切の担当となる乗務員、なかでも独車をはれたりリーダーとして梯団を引っ張ったりできる乗務員のスキルが一流であることはよくよく承知している。だから、ブランドを背負った既存事業者に同じ事をしろとは言わない。そもそも、価格に加え、自分たちが「資産」だと感じてきた路線という概念さえ流動化していることに恐怖を感じる気持ちはわかる。しかし、あるいはだからこそ、このお話をしたときの各路線バス事業者の皆様の反応は何かを象徴している。保守的な路線バス事業者の中にあっても、従来の自分たちの感覚から、はみ出せる人(会社)と、はみ出せない人(会社)の差が、失礼ながら見えてくるのである。
2009.07.24
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本日は、既存の大手事業者向けのプレゼンテーションだった。営業担当の役員さん以下、4人の皆様にわざわざ私の会社までお越しいただいた。プレゼン自体は、まあまあうまくいったと思う。既にお話の骨子は先方に伝わっていたので、先方でもご自身で私のサイトを使ってみてくださっていたりして、友好的な中でお話を終えることができたと思う。次回の打ち合わせまでに、私の方で何点か「宿題」を預かったから、明日以降その回答に向けて資料の作成に入る。実はプレゼン中、余計な一言を言っちゃったかな、と、ちょっとヒヤッとした。既存事業者の皆様も、私のサイトで高速バスを販売すれば乗客数が増えるであろうことは、頭の中では、理屈ではわかってくださっているのだ。ただ、業界事情もあるし、おおむね保守的な会社の雰囲気からご決断いただいていないだけなのだ。既存事業者に流れる空気は、失礼ながら本当に「バス」くらいのゆっくりしたスピードである。一方、現実に高速ツアーバスの送客数が右肩上がりに伸びている(今月は今のところ対前年+47%と順調だ)現状を見ると、私としては一刻も早く既存の高速路線バスへもそのお客様をお送りしたく、ついつい、彼らの「速度感」「スピード感」よりも速いスピードで事を実現したくなってしまう。その結果、気をつけているつもりでも、うっかり「なんでそんなに決断が遅いの」という「棘」が口調に現われてしまう。まあ、その「棘」に先方が気がつかなかったのか、それとも気がつかないフリをしてくださったのか、プレゼン全体はうまくいき玄関までお見送りした。うまくいっただけに「あの一言は不要だったな」とプレゼンを反芻しつつデスクに戻ると、ちょうど、いつもいろいろ助けてもらっているMさんからお電話が。Mさんは既存事業者の人ではないが、既存事業者に極めて近いところでお仕事をなさっていて、既存事業者への私の営業活動を当初から影に日なたに助けてくださっている。昨日、私がMさんあてに送った近況報告のメールの文面に、上記「棘」が見えたらしい。「気持ちはよくわかるけど…」物理的な距離は遠く離れたMさんの事務所からの電話だったが、あまりのタイミングのよさもあって、まるで向かい合って一緒にお酒を飲んでいるときのような近さと温かさを感じた。「ここが踏ん張りどころだから」「俺たちがいまのように既存事業者と一緒に仕事ができるようになるまでは、もどかしい思いをすることが何度もあって、ようやくようやく実現したんだから」「でも、それだけ、成定さんが高速バス、特に高速路線バスに本気なんだっていうことが、逆によく伝わってきたよ」たしかに、正直、既存事業者のスピード感にイライラすることもある。だが、そこで喧嘩してしまえば負けである。私は決めたのだ。なんとしてでも、高速バス業界がこれまで苦手としてきた面(広い意味でのマーケティング)をお手伝いすることで、もっともっと成長させる。いまよりもっと多くの乗客に高速バスを使ってもらう。それは一定の成果をあげたが、いまのところその対象は高速ツアーバス業態だけに留まっている。とすれば、いまの会社で高速路線バス業態の取扱いを始めることが象徴的にも意義が大きい。将来は別の角度からお手伝いをするかも知れないが、まず一歩目は彼ら既存事業者との契約である。その一歩を実現するためにも、既存事業者の皆様に何度も何度も同じご説明を繰り返すほかない。そのためには、逸る気持ちをぐっと抑えることも必要である。ほかでもない、私自身の夢を実現するためなのだから。
2009.07.22
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先週末は、京王の高速バスターミナル(通称:西口)アルバイト時代の友人たちと、JRバス関東の新路線「新宿~伊勢崎線」初乗車。連休初日の「1000円高速渋滞」にはまって2時間以上遅れ「運賃1500円で4時間20分もバス旅を楽しめてコストパフォーマンス高かったね」などと馬鹿話をしつつ、渋滞はやっぱり疲れた。疲れたのは乗客よりも乗務員だろうが、下車時に乗車券を回収しながら「これに懲りず次回もお願いします」と乗客一人ひとりに声をかけていた乗務員さん(東北道統括支店の名札)にさすが、の一言。さてこの路線、素性は悪くない路線に思えた。つまり、相応のポテンシャルはあるだろう。無事に独り立ちできるかどうかは、やっぱり「売り方」しだいか。例えば、この路線、「高速バスネット」による座席指定制を採っている。当然、それなりの理由があるのだろう。一番大きいのは、新宿側のターミナルのキャパシティの問題から自由席・先着順乗車で乗客に並んでもらうわけにいかない点だろう。また、「高速バスネット」を使えば、ある程度、運賃のコントロールも可能である。いま現在は、ウェブ予約に限定しない「開業記念運賃」が設定されているが、将来的にはウェブのみ繁閑に応じて運賃差をつけることも容易である。一方、ウェブ予約と、それを前提とした柔軟な運賃・料金設定は、回数券や往復割引といった旧来の施策の運用を難しくする。現に私のサイトでも、2年前にホテルや航空業界同様に「レベニューマネジメント」概念を高速ツアーバス業態に持ち込み、各企画実施会社が料金を1円単位で自由に、かつリアルタイムに変動させられるようにシステム改修をした際、往復割引という制度自体を廃止した。「その日」の「その便」に対して最も適切な価格を各社につけてもらうように考え方を変えるに当たり、「往復だったら安い」という旧来の概念が邪魔になって往復割引を廃止したのだ。その後、JRバス関東系のいくつかの路線(特に繁閑によって運賃に差をつけた首都圏~京阪神線)においても同様に往復割引が廃止されているから(他にもいくつか廃止の理由はあるだろうが)、ウェブ予約の本格活用と、その結果としての柔軟な運賃・料金設定の導入は、現在のところは回数券や往復割引の運用を犠牲にせざるを得ないのだろう。ただ、事前予約・事前決済(発券)を前提とし、かつ買い回り品的な要素が大きい(乗客が、事前に他の輸送モードや高速バス同士で比較検討した上で予約行動を起こす)長距離の夜行便と異なり、「新宿~伊勢崎線」のような多頻度短距離路線は、どちらかというと最寄り品的な要素が大きい。つまり、レベニューマネジメント概念を本格導入して運賃を変動させることで乗車率をコントロールし収益性をドライブするというよりは、「気軽に乗れる」雰囲気を提供することで「日常の足」に近い頻度で数多く使ってもらうことを優先すべき路線だろう。その意味では、この路線と同タイプの路線を数多くもつ西鉄が導入した「定数券」制度が最も現実的かなあ、と感じた。私自身も、西口でアルバイトしていたときには、「回数券を握り締めて」窓口にお越しになるお客様を多く見かけた。日常づかいをする上では、たとえモバイルから簡単に予約動作ができるとしても、その簡単さの何倍もの安心感を「紙」が与えてくれる気がする。もちろんそう遠くない将来には、高速バスにもICカードが本格導入(もちろん決済だけでなく、予約情報や回数券情報もICカードに保有させ、紙の回数券なしでも回数割引が適用されるようになるだろう)されたり、航空会社のようにウェブ回数券が導入されたりすることになるだろうが。部外者の立場で好き勝手書いたが、JRさんにはJRさんの理由や考え方でこの路線を予約制としたものだろう。一度乗車してみたくらいで勝手な判断をするのは早計である。ただ、「楽座」の新車が集中的に運用されているあたりを見ても、この路線にかけるJRバス関東の意気込みを感じる一方、それが「オーバースペック」になっていないかちょっと気になった。さて、伊勢崎市の「運賃無料」つまり100%税金から費用が出ているコミュニティバス「あおぞら」に乗車。そして日本中央バスの「前橋~池袋・新宿線」で新宿に戻り、いつものとおりビールで乾杯。コミバスのあり方について、そして未だ新宿駅周辺に停留所を確保できない日本中央バスについて、といった話題から、お酒が進むとともにいつの間にか西口バイト時代の思い出話に移っていったのも、いつものとおりだった。
2009.07.21
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週明けに、ある大手既存事業者向けのプレゼンテーションが待っているので、いまその資料を作っている。営業担当の役員の方以下、営業部長さんら対象の大きなプレゼンだ。もしかしたら、私がいま最優先で取り組んでいる件(既存の高速路線バスを私のサイトで取扱いすること)の帰趨を決めるプレゼンになるかも知れない。これが成功して最終的にこの事業者の商品が私のサイトに並べば業界には大きなインパクトになるだろうし、私がいまの会社に転職してから3年と少しだが、その時点でやっと私の「転職」が完了するというか、ようやく、私がこの会社で実現したい「夢」のスタートラインに立てるということになる。とはいえ、営業資料づくりというのは、大きな案件だろうが小さな案件だろうが何も変わらない。一言でいえば「相手をハダカにする」それだけである。相手の会社を客観的に眺め、分析し、その会社の現状では「足りない」点を抽出する。そして不足を埋めるために自分なら、あるいは自分の会社なら何をお手伝いできるか、ご説明する。それだけである(もちろん、大手既存事業者の乗合商品を私のサイトで取り扱うというのは極めてデリケートな問題を孕むわけで、「理屈ではこうなのに、なぜそうしないの?」という言い方は控えないといけないのは確かだが)。私たちが既存事業者のお手伝いをしたいのは「販売」という側面だから、販売面について「相手をハダカにする」ことになる。相手の路線の乗客群(いま現在利用している乗客群と、今後利用する可能性がある乗客群)を、属性(居住地や年齢、性別など)や利用目的(観光、出張)などで細かくセグメンテーションしていく。そしてそれぞれのセグメントに対して、その事業者がいったいどのようなアクションをしているか、書き出していく。すると、高速バスの場合は、大変恐縮だが、適切なアクションが取れている例は多くない。例えば、東京に居住し近郊の観光地へ向かう観光客というセグメントに対しどのようなアプローチが必要か。まず、「高速バス」という輸送モードの「知名度」自体は決して低くない。世の中の人に「高速バスって知ってますか?」とたずねると、「イエス」という答えがほぼ100%だろう。しかしながら、「○○温泉まで高速バスが走っていることを知っていますが?」という質問になると「イエス」の率は格段に落ちるだろう。さらに「絶対知名度」ではもっと低くなる。つまり「○○温泉までの交通機関を挙げてください」と自由に答えさせると「電車、あとは、ええーっと・・・自家用車」となるだろう。では、その「知名度」なかでも「絶対知名度」を上げさせるにはどうすればいいか。もし広告宣伝費が潤沢であれば何も臆することはない。鉄道や航空であれば吉永小百合さん(JR東日本の場合)や石川遼くん(ANAの場合)のようなイメージリーダーを起用したテレビCMをどんどん放映すればよい。しかし高速バスの場合はそうはいかない。「効率よく」というのが必須である。その効率よいアプローチを、私のサイトならこのようにしてお手伝いできますよ、というシナリオをわかりやすく説明するのが、私のプレゼン資料ということになる。一番わかりやすい例を挙げれば、まさに○○温泉の宿泊予約をしようとしている、またはしたばっかりのお客様に「宿までの足はお決まりですか?」と、高速バスの情報をサイト上で自動的にお見せしますよ、ということだ。マクドナルドの「ご一緒にポテトはいかがですか?」作戦である。もちろんこれ以外にも、プッシュ型、プル型あわせて多数の手法が考えられる。効率のよさが求められる高速バスの販売だが、他の商品より簡単な点が二つ。一つは、皮肉な話だが、これまで、高速バスの存在や利点が十分にマーケットに認知されておらず、かつ予約しようとすれば事業者別に窓口が分かれていて予約しづらいなど、既存事業者には失礼ながらネガティブな要素が多かったので、それを取り除いてあげれば簡単に予約数を伸ばせると考えている。もう一つ、高速バスは鉄道などからシェアを奪う挑戦者だから、これもまた伸びしろの大きさを示している。具体的には、例えば小田急ロマンスカー(鉄道)の乗客数をこれ以上増やそうと考えれば、箱根というデスティネーションの価値そのものを上げないといけないが、高速バスの予約数を増やすには、○○温泉に行こうとしている旅行客に「そこに行くなら高速バスもありますよ」と耳元でささやいてあげればそれで十分なのである。そんなわけで、いま私は、ある大手事業者をパワポ資料上で「ハダカ」にしようとしている。マーケティング担当者は皆そうかもしれないが、この瞬間は本当に甘美である。「ああやって、こうやって」というアイデアがどんどん生まれてくる。そしてこのプレゼンがうまく通れば、それを実現する困難が待ち受ける。だが、その困難を乗り越える努力や工夫もまた甘美である。早くその困難を味わいたく、正直に言うと資料を作りながら気がはやっている。
2009.07.17
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夏休みは、当然の話だが、高速ツアーバス各社がどんどんと新しい路線を企画する。私のサイトでも、初登場の路線、1年ぶりに復活する路線などが続々と登場している。一口に「新路線」といっても様々だ。競合環境で言えば、既に高速路線バスが一定の存在感を持つ区間に高速ツアーバスが後発参入するものもあるし、これまで高速路線バスが無かったマーケットを狙いに行くケースもある。路線の性格で言えば、高速ツアーバスが得意とする都市間・長距離夜行もあれば、その名称とは裏腹に高速ツアーバスが苦手としてきた観光地路線もある。例えば、仙台-弘前・青森の夜行便は、既存の高速路線バスには設定がない商品だし、大阪-奥飛騨線は、直行の高速バスがこれまで無かったが宿泊客などの送客を期待でき、路線の性格で言うと基本的には観光地路線だ。同じ観光地路線で言えば大阪-若狭の「海水浴バス」などは、高速路線バスと並行していると言えなくはない一方で、近鉄/福井鉄道が「わかさライナー」を運行開始するよりも何倍も長い歴史のある(もちろん都市間の高速ツアーバスが現在のような状況を迎えるずっとずっと前から走っている)「伝統の路線」だったりして面白い。そういった路線を私のサイトに登録して、すぐにバンバン売れるかというとそうではない。以前にも書いたが、「路線を育てる」という感覚は、実は既存の高速路線バスとそう変わらない。だから、私のサイトの販売力だけを頼りに新しい路線を設定されると各社痛い目に合うので、事前にご相談をいただくと「うーん、難しいですよ」とお伝えする。だがそこは各社とも旅行会社としては私のサイトなどよりよほど先輩格だから、宿泊とのパッケージ販売や『じゃらん』などへの広告出稿、そして代理店や大学生協に大量にパンフレットを設置するなど販路拡大に努めてこられる。その上で、販路の一つとして私のサイトでも販売をしていただくと、それはそれで多少は予約が入るから、こっちが驚いたりする。私のサイトとしては、新しい路線をお手伝いしたい気持ちはある一方で、限られたマーケティング費用やリソースをどこに割くかいうと、やはりボリュームがあり効果が期待できる路線、ということになる。東京(首都圏)-大阪(京阪神)線など、例えば明日は連休前日の夜だから、高速ツアーバス全社を合わせると上り下り合計で一晩で約400台(推計)のバスが動く。どうしても、我々のマーケティングはそこに注力されてしまう。プッシュ型のマーケティングとしては、本日も、登録の住所が青森県、宮城県になっている会員に限定して、青森-東京線や仙台-東京線を告知するメールマガジンを配信したが、県別に原稿を作成したり配信リストを準備したりと相応の手間がかかるわけで、細かい路線のためにそこまでやっていられない。プル型のマーケティングとしては、検索エンジンで「高速バス 大阪」や「ディズニー バス」と言ったワードで検索された際に上位に表示されるよう様々な対策を行なっているが、「若狭 バス」というワードのために貴重なコストとリソースを割いてはおれない。ところが、余り積極的にコストとリソースをかけていない上記の新路線でも、ボリュームは遥かに小さいとはいえ相応に予約が入るのである。ということは、私のサイトに来れば「高速バス」の予約が取れる、ということをなんとなくご存知の方がとりあえず私のサイトを訪問したところ、ご希望の商品があったので予約した、ということになる。上に挙げたような、ほんの数路線の新路線だけで、相応の数を各社にお送りできているわけで、仮に「全国のあらゆる高速バス」を私のサイトに並べることができれば、より積極的なマーケティングで需要開拓をすることもできるし、かなりの数の新しい予約を各社にお送りできるのになあ、とついつい考えてしまう。例えば東京-草津温泉線がそうだが、フリーククエンシーや乗下車地の設定など、明らかに既存の高速路線バスの方が強く価格差もほとんど無い商品が少しとはいえ私のサイトで売れているのを見ると、お客様は既存事業者のサイトと見比べて予約しているわけではなさそうで、「たまたま入ったお店」にその商品しかなかったから高速ツアーバスを予約していることになる。逆に、そのわずか1往復さえ高速ツアーバスが走っていない他の路線を探して私のサイトを訪れた人は、無事に既存事業者のサイトにたどり着いて予約まで至ったかどうか、心配になってしまう。その路線を繰り返し利用する地元の利用者はともかく、例えば観光地に向かう大都市の利用者に高速バスの存在や利点を訴求し、わかりやすく予約まで導くというのが私のサイトの役割であるのだが、それが100%実現するのはいったいいつになるのだろうか。
2009.07.16
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本日は、JFN(ジャパンエフエムネットワーク)が製作する全国ネットのFMラジオ番組『OH! HAPPY MORNING』の中の「ワンランク上のハッピー・ライフスタイルを提案していく」コーナー、『OH! HAPPY STYLE』に生出演。おかげさまでテレビのインタビューには少し慣れたが、ラジオとはいえ、生放送ということで緊張した。ほっておくと長々と話してしまう性質なので、短い時間で要領よく話すことに注力。パーソナリティの御影倫代さんが長野県ご出身ということで、高速バスには思い入れが強い様子。私のサイトで扱っている「一番長い距離を走る高速バスは?」というご質問をいただいたので「東京から福岡までの路線ですね」とお答えしたら「あ、『はかた号』ですね。私、見たことあります!」。高速バスターミナルの話題になって「だいたい、新宿か池袋ですよね」。まさに長野ご出身で京王系や西武系の高速路線バスをよくお使いになっている方のご発言。もちろん、御影さんには何ら罪は無いのだが、今の私の立場では微妙な、かなり気を遣うやりとりとなった。「残念ながら“まだ”『はかた号』はお取扱いさせていただいてないんですよ。お取扱いしているのは、例えば『キラキラ号』ですね」と辛くも切り抜けたら「あ、女性が喜びそうなかわいらしい名前!」とおっしゃっていただき、ほっと一息ついた。やっぱり、生放送は終わるとどっと疲れが出る。それにしても、一般の方の素直な感覚で言えば、コンビニに行けばアサヒのビールもキリンのビールも並んでいるように、あるいは私のサイトで高級ホテルも小さな民宿も予約が取れるように、私のサイトでは全ての高速バスを比較しながら予約できるんだろうと、そう思うのが普通だろう。それが実現していないのは私の努力不足にほかならず、もっともっとがんばって既存事業者の皆様にご説明しないと、と決意を新たにした。それから「ラジオって、最近はスポンサーから広告費が出なくなって大変だろうなあ」というのも感じた。いや、これはテレビや新聞もおおむね同じだろうが、ある時代には「インフラ」に近いくらい生活に欠かせなかったラジオやテレビや新聞という媒体に接する時間が、インターネットの普及や娯楽の多様化によって、気が付いたら少しずつ減っている。しばらくは企業も惰性でそれらに広告出稿するとしても、今般の金融危機といった外的ショックが加わると企業は一気に冷静になり、それらの媒体の価値を計り始めるだろう。まだまだ放送局や新聞社が倒産するような事態にはなっていないものの、バスも、気が付いたら世の中から不要なものになっている、ということにだけはならないよう、消費者の変化についていかないと、と感じた。それはそれとして、さあ、夏休みが始まる。1年で最も多くのお客様に高速バスをご利用いただく時期である。それはつまり、在庫の手配や単価コントロール、あるいはマーケティングの采配ひとつで大きく実績がぶれる時期ということでもある。ますます気を引き締めていかないと。それと、既存事業者へのご提案もそろそろ大詰め。そちらも、焦ってことを仕損じることのないよう、先方とよく呼吸を合わせて進めて行こう。
2009.07.14
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「高速ツアーバス戦略フォーラム2009」の翌日は、「高速ツアーバス連絡協議会」の2009年度の総会だった。本来的には、この二つのイベントはなんら関係ないものだ。前者は、私の会社が主催し、取引先に集まってもらって販売面の戦略を共有する純粋にビジネス的なイベントだ。後者は、私の会社で事務局を務めているとはいえ、あくまで業界横断的な業界団体の総会である。ただ、多くの参加者が共通する上に遠方からの参加も多いことから、「協議会」の理事に顔を連ねる、私の会社にとってはライバルに当たる他の予約サイトの皆様にもご了解をいただき、連日で開催とさせていただいた。戦略フォーラムの方は企画実施会社45人の参加であったが、協議会総会については、さらに運行会社(貸切バス事業者)、受託販売会社(予約サイト)、さらにセンディング会社まで集まり参加者は80人を超えた。私達は事務局であるから、会場の手配や案内状の送付、議案の作成などの準備から、当日の受付、司会、議長、そして来賓のお迎えお見送りと、気持ち的には前日の自社イベント同様、ホスト側である。国土交通省自動車交通局からは総勢7人、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)からは3人の方々をご来賓としてお迎えした。国交省自交局には会員各社への講話をお願いした。山崎・安全政策課長からは「事業用自動車総合安全プラン2009」について、細かい点まで、熱のこもったお話をいただいた。旅客課のバスご担当、黒須・企画官からは、「貸切バス事業者の安全性等評価・認定制度」や「バス産業勉強会」についてのお話があった。NASVAの金澤理事長にはご来賓のご挨拶をお願いしたが、国交省で航空、観光、自動車と幅広く行政に携わった理事長のご経歴を踏まえ、安全の必要性について心のこもったお話を頂戴した。総会としては、引き続きオリオンツアーの橋本氏を会長に選任、ウィラートラベルの村瀬氏、杉崎観光バスの杉崎氏、平成エンタープライズの田倉氏をそれぞれ副会長に選任し無事に閉会となり、懇親会となった。懇親会は、会員である貸切専業者の経営者クラスが、直接、国交省の本省の皆様とお話しするいい機会になったようだ。どんな話になっているのか事務局としては正直ヒヤヒヤしないでもないが任せておいた。というよりも、受託販売会社である私達も、運行会社と直接話す機会はこの協議会くらいなものだから、なるだけ多くの方にご挨拶することに心を配った。お話していて、なるほど、と感じた点が一点。企画実施会社(自社で企画実施する運行会社を含む)には、私達もよくお話しするし、その中で高速ツアーバスを巡る様々な報道についても共有している。しかし純粋な運行会社にはそれは伝わらないから、運行会社としては『バスラマ』が重要な情報源ということだ。ただ『バスラマ』では、いろいろ事情があって高速ツアーバスにはネガティブな記事が続いているから、自らの事業の正当性について不安な気持ちになったりするようだ。そういった皆様には、『運輸と経済』の「特集・新時代の高速バス」をお読みになるようお勧めした。政府系機関発行の研究誌に、西鉄や常磐交通といった既存事業者の担当者、大学の研究者らが執筆しているわけだから公平性は十分だ。この特集を読めば、少なくとも自分達の事業の正当性について不安になることはないだろう。ただ、高速ツアーバスというビジネスモデルが合法であるということと、駐停車禁止違反や乗務員の拘束時間基準違反など個別の違反がない、ということは別の問題である。この「連絡協議会」への行政のご協力に代表されるように高速ツアーバスに対する社会的認知が進むということは、比例して社会的責任が大きくなっているのだということを、会員企業みながよくよく認識していかなければならない。
2009.07.12
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先日書いたように月曜、火曜とイベントが続いた上に、その後は大手のバス事業者の社長、役員クラス、あとはさほど気は遣わない相手とはいえ議員さんとのアポイントなどが相次ぎ、ふらふらになりながらようやく休日を迎えた。さて、まずは月曜日の「高速ツアーバス戦略フォーラム」。私の会社が主催し、全国の取引先(高速ツアーバスの企画実施会社)に集まっていただいてのセミナーだ。4回目となる本年は、高速ツアーバス企画実施会社が45人。その中には、小田急箱根高速バスやサンデン交通のように、本来的には明らかに既存事業者だが、ツアー商品に限って私の会社で販売してくださっている会社もある。また、イーグルバスや高知駅前観光のように、空港連絡バスについては本当にご苦労なさって乗合許可を取得、路線バス業態で参入されたが、都市間の高速バス進出に当たっては、両者のメリットデメリットを比較した上で高速ツアーバス業態を選択した事業者も含まれている。そしてこのイベントには昨年から大手の既存事業者にも「傍聴」の形でお越しいただいていて、本年も既存事業者およびその関係者10人に聴講していただいた。そのうちお一人など、ホテルでのセミナー、懇親会の後、近くの居酒屋での二次会までお付き合いいただいた。高速ツアーバスの企画実施会社、既存の乗合事業者、それに私のサイトのスタッフという変な取り合わせの飲み会だったが、最後はバスとはぜんぜん関係ないプライベートな話題で盛り上がり、私の目指す「みんなで仲良く競争することで業界全体で成長」という姿を一足先に実現させた気分がした。セミナーでは、つねづね申し上げているように「お客様が高速バスを選んで乗る時代」を迎えた中での戦略と戦術をお話させていただいた。首都圏-関西圏のような大都市間(「第1フェーズ」型)路線では、車両タイプや繁閑に応じ細分化された価格設定やウェブマーケティングによる集客など、高速ツアーバスが持ち込んだ手法が(JRバスなどがそれを追随したことで)定着しているので、その手法をいっそう進化させることで高速バス市場のさらなる成長を目指す。高速ツアーバス各社には、レベニューマネジメントによる料金・台数コントロールの方法や、顧客属性(性別や年齢など)、利用目的(帰省やコンサートなど)によってより細分化されたマーケットに合致した商品作りとその見せ方をご説明させていただいた。既存事業者の皆様は、これまで出会ったことのない「マーケティング」的な手法に目を白黒させていたようだ。次の課題は、既に高速路線バスが一定程度定着している「第2フェーズ」型路線の今後であることもご説明した。高速ツアーバスが(厳密には、業態が路線かツアーかとは関係なく「新規参入組」が)これらの路線で既存の高速路線バスを逆転するのは難しいだろう。ただ、既存事業者たちが、現在の高速バスの事業規模(マーケットシェア)で満足しこれ以上の成長を望まないならば、彼らがまだ掘り起こせていない利用者と出会い高速バス利用者を増やすことは当然できないばかりか、移ろいやすい消費者の変化についていけず規模は縮小に向かってしまう。彼らはより強い消費者志向、そして挑戦者としての立場を取り戻さないといけない。そうしなければ高速ツアーバス(または新規参入組)に「付け入る隙」を与え、現状維持さえ難しいという大きな流れが、「傍聴」してくださっていた既存事業者やその関係者の方には伝わったはずである。水曜、木曜とお目にかかった大手の社長、役員の方は、別々にお会いした相手なのだが、たまたまお二人とも航空業界ご出身の方であった。どちらの方も、既存バス事業者の顧客指向不足、成長意欲の不足を嘆いておられた。「このままだと会社つぶれるぞ、って、いつも部下に言ってるんですよ。すると彼らは『営業よりも、安全が、社会的責任が』って、二言目には言うんですけどね」。それに対し私が「はい。既存事業者の皆様が、安全や地域に対し真剣であることには敬意を払わないといけない、といつも思っているんです」と申し上げるとこう返ってきた「成定さん、あんまりおだてない方がいいですよ。安全意識や社会的責任なら、バスも航空も変わらない。でも、航空会社はもっと『前向き』『お客様向き』ですよ」。
2009.07.11
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週明けの月曜・火曜とイベントが続く。月曜日は、毎年開催している取引先を集めての戦略フォーラム。火曜日は、私の会社が事務局を務める業界団体「高速ツアーバス連絡協議会」の年次総会だ。そういえば、昨年のこの時期に、「協議会」の設立準備会を開催した。業界横断的、中立的な組織にするための業界各社との調整や、正式に業界団体として認知していただくための自交局(国土交通省自動車交通局)とのあらゆる事項の確認なども事務局として引き受けていたし、毎日新聞社主催の「ツアーバス 安全シンポジウム」も同日開催だったから、昨年の今頃は(実際には6月末だったが)連日、遅くまで意識朦朧としながら仕事をしていたような気が。その後、協議会は昨年10月に正式設立され、現在では、日本バス協会会長宛に自交局から発出される通達類のうち、高速バスや貸切バスに関係するものは、高速ツアーバス連絡協議会会長宛にも発出されるなどしており、正式に業界団体の一つとして扱っていただいている。今年の総会も、約80人が出席予定だが、スタッフの段取りも手馴れたもので「会の立ち上げ」から始めないといけなかった昨年に比べると平和なものだ。とはいえ、今年も、協議会の総会には、自交局から安全政策課長や旅客課のご担当の企画官にお越しいただき講話などをお願いしているから、イベントの準備・段取りなど手を抜くわけにはいかない。いま最後の詰めを行なっているところである。もうひとつ、明後日にせまった、私の会社として開催する取引先対象の戦略フォーラムでのプレゼン資料も最後の仕上げを行なっている。今回で4回目となるこのイベントだが、当初の2回は「安全」もテーマの一つで、それこそ自交局やNASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)、それに自動車事故研究の権威である大学の名誉教授の先生などを来賓としてお迎えし大変だったが、昨年、協議会ができてからは安全面はそちらに譲り営業面でのセミナーに特化している。そして昨年から、大手の路線バス事業者の方々にも「傍聴」のような形でお越しいただいていて、今年も大手事業者、それに大手事業者と関係が深い企業さらには公的な機関にもお越しいただく予定である。そこでのプレゼンのためにあらためて日本の高速バスの歴史を振り返ったが、それがまさに行政(規制)との戦いの歴史であったことをあらためて実感した。当初、国鉄バスにだけ高速バスの認可を与えようという国の方針に対し、現在の日本バス協会が民間事業者の参入を「勝ち取った」。しかしその時点では、日本急行バスなど高速バス専業の事業者を合弁で立ち上げる必要があり、民間事業者が直接参入することは原則不可だった。それを京王、阪急、西鉄といった大手事業者が「共同運行」「クローズドドア」といった手法を導入することで自ら参入する権利を「勝ち取って」いく。中央高速バス伊那飯田線のように、国鉄による「高速バスが開業すれば並行して走る鉄道のローカル線の赤字額が増える」という理由での反対などを押し切って開業にこぎつけた路線もある。この「ローカル線」の論理など、「高速バス同士の競争激化が地方の『平バス』を廃止に追い込む」といった論理と共通する部分もあるが、高速バスの歴史が規制との戦いの歴史であり、それが今も続いていることを象徴している。あらためて実感したことは、高速路線バス事業者はみな、挑戦者の立場で高速バス事業をここまで大きくしてきたことである。そのことに対して、私たちは大いに敬意を表しないといけない。しかし、もし今、彼らが「挑戦者の立場」を忘れているならば、現状の事業規模で満足しているならばそれは違う。ましてや、利用者の目線を忘れ、移ろいやすい利用者の変化についていくこ努力を忘れているのなら、それを思い出す必要がある。高速ツアーバス各社向けのセミナーを、後ろの席で傍聴してくださる路線バス関係者の皆様に、そこをお伝えできればと考えている。
2009.07.04
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昨日から大阪出張で、今日は午後の新幹線で東京に戻ってきた。やはり、東京と大阪を新幹線で往復するたびに、「のぞみ」号の本数の多さに圧倒される。この輸送力と比べると、わが高速バスの輸送人員など微々たる数字に思え、われながら「小さい仕事をしているな」と悲しくなると同時に、これからの「伸びしろ」の大きさを思って元気付けられる。昨日は早朝から大阪に向かったので、同じような出張ビジネスマンで車内はほぼ満席。帰りは午後の中途半端な時間帯だったから、京都から乗車の観光客の姿も見られたが空席も目立った。私など、ついつい、時間帯を気軽に選べる、多頻度運行の鉄道など、もっともっとレベニューマネジメント的な要素を取り入れ曜日や時間帯によって価格を変動させ、観光客など時間帯にこだわらない乗客を乗車率の悪い時間帯に誘導すれば、乗車率の平準化につながり鉄道事業者は収益性が向上するとともに、「どうしてもこの時間帯に乗りたい」という乗客(多忙なビジネスマンなど)は多少高い運賃を支払ってでも希望の時間帯に席が取れ、みんな得なのに、と考えてしまう。ただ、同じ公共交通機関でも、レベニューマネジメントが定着している航空に比べて鉄道ではほとんど見られないのには、ひとつ理由があると考えている。輸送量に繁閑の波動がある(朝夕や週末、夏休みなどは混雑し、それ以外は利用者が少ない)のは、航空でも鉄道でも同じである。ただ、航空の場合、運行にかかわるコストの多くは機材の大きさに依存する。「繁」の便のために大きな機材を購入してしまうと、「閑」の便であっても、燃油、着陸料、客室乗務員の数、そして機材の減価償却など大型機材相応のコストがかかってくる。だから、航空業界では「繁」と「閑」の需要量の中間くらいに合わせた機材を購入する。そのため「繁」の便は満席になる確率が大きく、したがって高く販売できる可能性が大きいし、逆に「閑」の日に席を売り余らせてしまえば、コストを大きく無駄に消化することになる。それに対して鉄道の場合、コストの多くは地上の設備に投下される。新幹線を10両編成で走らせるか16両つなげるかで、コストが変わらないとは言わないが、機材の大きさがコストに直結する航空に比べると、編成の長さ(つまり座席数)がコストに与えるインパクトは小さい。だから鉄道事業者は、おおむね「繁」の便の需要量に近い編成を用意する。そのため航空に比べて満席となる確率は小さいし、逆に平日の昼間に席を売り余らせてもコスト的にさほど無駄にはならない。そういった「提供座席数(機材や編成)に関する考え方」の違いから、航空業界ではレベニューマネジメントの導入が収益性の向上に直結し、一方で鉄道ではその必要性に迫られない。では高速バスはどうか。高速バスの場合、続行便や臨時便といった形で、「繁」の便には提供座席数を増やせる、という選択肢がある。小さめの機材で我慢せざるを得ない航空業界から見れば、鉄道以上にうらやましく見えることだろう。ふだんは貸切バスとして走っている車両を、高速バスが「繁」の日には高速バスとして使用できるし、高速バスの「繁」の日(お盆や年末)は、おおむね貸切バスの「閑」の日できわめて都合がいい。従来は、往復で一定の乗車率を確保することを前提に事業計画を立て販売単価(つまり高速路線バスで言えば運賃、高速ツアーバスで言えば料金)を決めていたから、片道輸送になっては利益が出せなかったわけだが、このレベニューマネジメント概念を導入し、乗車日や時間帯によって販売価格を大きくコントロールすることで(つまり「繁」の日に高く販売することで)片道輸送でも利益を確保できるようになり、さらなる増発を可能にしたのである。その「さらなる増発」がなければバスを利用したくても満席であきらめていた利用者の中で、多少高くてもバスがいい、という人は相当数いるわけで、結果としてその人たちにバスでの移動を提供することができているのである。需要と供給のバランスに合わせて価格を変動させるなど、路線バス事業者にすれば信じがたいことに見えるかも知れない。しかし、事業者のメリットと利用者のメリットが重ね合わせていくと、おのずとこの形に行き着くはずである。そもそも、同じ「公共交通機関」である航空(国際線はもちろん国内線でも)このレベニューマネジメントが既に定着しているわけで、それを見習わない手はどこにもない。日本バス協会などが言う「高速路線バスの規制を高速ツアーバス並みに緩和」するという件の一つの例が、この、よりリアルタイムな価格変動だろう。そして、規制がゆるくなり自由度が上がれば、その自由をうまく使いこなす腕が求められることになる。
2009.07.03
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