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「装束を着け、面をつけて、その重みと不自由さで、身体が主体的に統御できない状態に身を置くことでわかったことがあります。能が要求しているのは、身体運用の技術を高めて舞台上で審美的なパフォーマンスを達成することではない。そうではなくて、能が要求しているのは、周りから送られる幽かな、ごく曖昧なシグナルを感知できるような高い身体感受性を作ることである、と。」

「稽古を始めて10年目くらいの時に、ワキ方の安田登さんと対談することがありました。そのときに、舞囃子の稽古を始めるようになってから、どうも空間が「粘る」んですよね、という話をしました。ヒラキをするときに、扇や袖にものが引っ掛かる感じがしてきた。何だかゼリーの中を動いているような感じがする。能舞台にびっしりとゼリー状のものが詰まっていて、そのゼリーの中を歩いていくような感じがする。何もない空間で手が動かすときは、どんな方向に、どう曲げても、空気抵抗なんかないにわけですけれど、舞の中だと、かすかではあるんですが、空気に物質性がある。粘り気が感じられる。だから、「それ」がまとわりつかないような手の動かし方を工夫するようになる。一番空気抵抗のない、体幹の筋肉とつながった強い動きをするようになる。腰の回転も使うし、重心の移動も使う。
 「なんかゼリーの中で動いているみたいな、かすかな粘り気を感じるんです」と申し上げたら、安田さんは「うちの流儀では『寒天』と申します」とおっしゃいました。それを聞いて、僕の感覚は間違っていなかったんだと安心しました。」

ブログ「内田樹の研究室」内「能楽と武道」2017年01月12日 http://blog.tatsuru.com/2017/01/12_0917.php




この記事には気づかず、恩師に教えていただきました。

内田氏は素人弟子として能に関わってこられた点では、私の先輩です。
私も舞囃子を舞ったことがありますが、このような事はまったく感じたことがありませんでした。

もっと稽古を積めばこのような感覚を得られるのでしょうか。






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最終更新日  2017年05月13日 22時44分03秒
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