Laub🍃

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2010.04.16
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カテゴリ: .1次題
鍛冶屋は好きなものを好きなように作っていた。

笑われても好きなものを作りたかった。

自分の作るものは笑われるものであっても、自分だけは笑わないでいてやろうと思った。

ある時、他の鍛冶屋の為に小道具を作ってやった。

人の為に作る道具。便利で美しいものを作ってやろうと鍛冶屋は自らの仕事よりも力を籠めた。


その小道具を、普段鍛冶屋が作るものを笑い飛ばす村人はべた褒めした。

他の鍛冶屋が作ったものなのだと村人は信じ、絶賛した。

他の鍛冶屋が居ないときに褒めていたので、他の鍛冶屋は否定することがなかった。


そうして村人は鍛冶屋のほうに向き直り、鍛冶屋の仕事を笑い飛ばした。



そうして黙っていることにした。見る目がない者にいくらあざ笑われても気にならないから。


鍛冶屋はやがて村を出た。

鍛冶屋の作ったものを、他の鍛冶屋は作れなかった。

村人は後悔した。


しかしもう鍛冶屋は居ない。




村から遠く離れ、鍛冶屋は溜息を吐いた。

笑われていたのは自分の作ったものではなく、自分自身だった。


鍛冶屋の存在が、言動が、作ったものをみすぼらしく見せるのだろう。

鍛冶屋は、人と接することを諦めた。

いくら人に褒められても、いくら人に頼まれても、もう二度と作らないようにしようと決めた。



鍛冶屋は自分の為に作る道具を、自分の食の為だけに浪費される武具を抱きかかえ、夜ごと泣きながら眠りにつく。





鍛冶屋の作ったものは、鍛冶屋が死んだ後も遺った。

その武具は呪いの武具となった。

握る者が誰だろうと笑いを憎ませ、自身も笑えなくなるようにする武具だった。





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最終更新日  2017.12.07 20:49:05
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