Laub🍃

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2010.05.18
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カテゴリ: .1次題
どうして俺に戦わせない。


どうして。そいつらよりもずっと俺は強いだろう。


だから捕虜を嬲って嬲って殺す寸前まで痛めつけた。
だから博士に幾つも幾つも問題のある兵器たちを生み出させてはマッチポンプで倒した。

それなのに俺は呼ばれない、壁際の闘いに連れて行って貰えない。



簡単な理由だ、壁際に行くとよほど強い者以外は返れなくなる。
捕虜を連れて帰るのはその強い者たちだ。大抵は捕虜の世話を俺達に押し付けてまた戦場に帰っていくが。
その背中が羨ましかった。
亡くなった父上もその背中の一つだったから、憧れた。

倒せるはずだ、今の強さなら。

それなのに。

俺ならあいつらを倒せるのに、母上がそれを止める為に上官に取り入ったりなんてするから。


壁の外に行きたい、あいつらを皆殺しにして、俺もそこで死にたい。


****


「……イクサは、今日も荒れているのか」
「ええ。あの子も、2000年前に生まれていたらきっと英雄になれたでしょうにね」
「君があの子を外に出すなと言ったんだろう?」
「貴方だって賛成したでしょう?あの子は内側に居る方がいいのよ」
「あの子が内側の治安を悪化させてもか?」
「だってそうすれば、あの子を避けて彼らは外に行くでしょう?」

「貴方に言われたくないわ」


外の世界で死ぬ人、外の世界に亡命する人、とにかく内側から外へ出たい人達。
彼らは外の世界、ここよりももっと厳しく、もっと恵まれた世界で生きることが許される。
こんな所で停滞しないように、澱まないように、かき回さないといけない。

「もし世界があの子と死体だけになっても、私達は残ればいいでしょう?」


世界の外には目を閉じて、腕の中の温かさだけに心を寄せる。





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最終更新日  2017.12.17 22:40:12
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