Laub🍃

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2010.05.24
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カテゴリ: .1次題
掃除の最中、妻の携帯を見つけた。
今のスマートフォンではない、機種変更する前の、紛失したと思われていた携帯だ。
埃をかぶったジップロックを開け、捨てるに捨てられなかった充電器ー今回捨てるつもりだったがーを使い充電すると、問題なく操作できた。ネットなどは繋がっていないが、大事なのはそこではない。メールとメモ帳。この携帯に残る記憶。

今のようにロックはかかっていないし、妻自身この時期は仕事と家にしか連絡を取っていないと嘆いていたので、あまり罪悪感なくメールを流し見る。

主に見るのは妻の送信メール。そして、自分の送信メール。

無機質な文字が、冷静に、公平に俺に言葉を思い出させる。

ああこのときは無神経なことを言ってしまった、悪いことしたなだとか、妻めちゃくちゃ可愛いなだとか思って、ひとしきり楽しんで携帯を閉じた。

ポケットに入れると、小さい、若い頃の妻が一緒に居てくれる気がしてくる。
現実とは違って。



もう少ししたら離婚調停でもしようかと思っている。

どちらが悪いというわけでもなく、あえて言うなら俺が少し悪いけど、きっとどちらにもできることがもっとあったはずだった。


昔のラブラブだった頃への未練もあったが、この携帯さえあれば、もういいと思える。

「さて、もういいかな」


ほのかに温かい携帯を撫で、引越し業者を見送り。

俺はスーツケースを引いて、記憶の残る家を出た。
出た瞬間に家のことは忘れた。俺達の全てが冷戦と喧嘩とで塗り潰された家だから。

この携帯だけが、俺と妻の全てだ。





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最終更新日  2017.12.08 15:15:27
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