Laub🍃

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2010.08.09
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
人と関わる時点で自分の価値観は置いておくべきだ。
 勝負をする時点で通常の価値観は置いておくべきだ。
 ここに来た時点で過去の価値観は置いておくべきだ。

 それでもここまでゆるしていいのか。ゆるされるのか。
 どこからなら僕は、どこまでなら僕は踏み込めるのか。





 僕達は最初7人だった。
 元々は10人で目覚める筈だったけど、3人は乾涸びて死んで、生前の姿さえ分からなかった。

 僕達の新たな仲間の内1人はこう言った。

 そして言ったんだ、

「ラッキーだ」
「俺達は幸運な生き残りだ」 

 幸運なのか。こんな世界に放り出されて身内とも二度と会えないことが。
 だけど……まるで自分に言い聞かせるように言っているそいつに、誰も何も言えなかった。

 僕は野球と仲間と家族と故郷を。……彼らもきっと、趣味と仲間と家族と故郷を失ってきたんだろうから。

 だけど、その後。
 大きな大きな虎を、ガイドの彼らが主に仕留めた時ー…
 仲間の遺体を囮にしていた彼らに、貪る獣に畏怖の感情を向けるでもなく、どこか共感を覚えたかのような顔をしている彼らに、どうしようもない疑念を覚えたのも確かだった。

 仲間を貪った虎を、彼女は憎んだ。一刻も早くどこかにやりたがった。
 けれど彼らは虎を、食べ物や毛皮としてしか認識していなかった。

 悼むでも弔うでもなく、ただ新たな獣を呼ばない為、そうして地中の蟲達の胃で循環させる為の作業。

 僕はその時の赤を忘れる事が出来ない。



 そうしてー…15年が経った。


 彼らが居なかったら、全滅していたのかもしれない。

 けれど彼らの価値観に馴染むことが出来ず、かといってどうしてそんなやり方が出来るのか訊く事も出来ずに僕はまだ縮こまっていた。

 ……彼らの本来の”仲間”である、彼女たちに出会うまで。





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最終更新日  2018.07.15 19:54:43
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