Laub🍃

Laub🍃

2010.08.20
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
僕が君に出会えたのは君が産まれたすぐ後。
ぷにぷにと柔らかいほっぺたをしていた君は今では硬い顔と脆い目で鋭い刃を向けてくる。

あの頃の慕い慕われる関係に戻れたらこれ以上はもう望まないのに、君はどうしてそのままでいようとしないんだろう。
君がそれでいいなら僕だってそれで構わないというのに。
僕を嘘つきと君が罵る。
僕にとってはこれこそが君への愛だというのに。



ひたすらに晴天が続く中、君はあの子達の中で土砂降りを経験している。
双眼鏡がたまに君を追えなくなる時、君が何をしているのかなんて知らない。

今日も君は失敗作だ。

ぐるぐると頭が過去を思い出す。
君の無邪気な笑顔が何度も過る。
どこへその懐かしさを捨てればいい。

ぐるぐると同じように目を回している君の、縋りつくような問いに、愛のかけらに、どうこたえられる。答える義務はない。どこへ君のその目ごと捨てればいい。あの世、しかない。

君のあの正義感は結局限りのある消耗品だった。
残ったのは結局君のエゴだけだ。
僕はそんな残りかす、要らない。未来にそんなもの持ってきたことが失敗だった。

君の姿は見えない。
だけど、幻覚の中で君の言葉だけ見えてしまう。
僕が君を知らないことがある。

誰が、どちらが綺麗なのか汚いのかも分からない。だけどこうして殺してしまえばもう悩むことも心配することも必要なくなるんだ。

僕には祖父たちの、父母の悩みはまだわからない。
受け継いだその使命を捨てる宛てもない。
その穴を埋めるようにして育ててきた君たちへの想いをどうすればいいのか。
かつての友だけじゃなくて、新しくできた僕の知らない君を、私の目の前に立つお前を、言葉の裏の裏が見えるまで待っていてくれる仲間に囲まれたお前に、私は手出しができない。


「君」から止まった過去の遺物の 縮まらない隙は何で埋められるだろうか。
 僕だけがあの土砂降りの夏の中でしか生きられない。

 この両手から零れそうなほどの君に渡す愛を、あの子にあげたつもりだった。
 だけど、あの子もそれを拒んだ。
 もうどこにも宛てがない。

 だからせめて、君の親友のように、過去から君たちを押し出そう。

 これで、いいんですよね。


 父さん。





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最終更新日  2017.07.16 19:49:40
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