Laub🍃

Laub🍃

2010.11.03
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カテゴリ: 🌾7種2次表
※卯浪視点施設裏話風二次創作小説
※胸糞
※最終試験準備編

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俺の人柄を知ってる同僚は俺の名前を笑う。

正義。
確かに俺には似合わない名前だ。

だが俺の周囲の奴らだって大したもんじゃないから、俺は別段気にしない。

生徒達の名前、「夏」であるために季語辞典から適当に選ばれた名前と比べれば余程「一般人」らしい名前だしな。





餌兎・誤

*******


動物愛誤という「定義」があるらしい。
執着が行き過ぎたのか躾が行き過ぎたのか「愛」が行き過ぎたのか、とにかく「悪気なく」正常な成長を妨げるようなことをして心身に悪影響を及ぼす行為を言うらしい。

なら、俺は躾という名の支配意識、要は執着が行き過ぎている生徒への「愛誤」を繰り返しているのかもしれん。

ここ数年要と良くつるみ、最終試験内容にも口出ししてくる出世頭の貴士はよく分からんが。


だが、この施設では異常こそが正常だ。
未来では「現在の誤」こそが「生き残る為の正」になっている可能性が高い。
サバイバルでは文明も倫理も邪魔になり兼ねないのだから。

「俺達がしていることは正しいんだよな」
「……正しい正しくないではなく、『やらねばいけないこと』です」


やり遂げなければならない。
何を犠牲にしてでも。

数か月前「例の部屋」に放り込んだ後の安居が頭を過る。
船の実習で茂と何か言い争いをして一人甲板に佇んでいた背中。

「捨てる」覚悟を背負った背中だった。

俺達はその姿を見る為に折れるほどに叩き削る。

いつか生徒達も身に着いた力を武器にして闘い、「あそこで学んで良かった」と思うに決まっているのだから。
誇りを胸に抱き、使命を背負って。

「所で例の件は…」
「今マップを作ってる。生徒には誘導の標識で動物には植生や獣道での誘導だろ?全く面倒なことを」
「ダムに水没させてしまうのももったいないし、序盤から有能な生徒が殺されてしまうのも、逆に団結して動物が全て食糧にされてしまうのも意図から外れてしまいますから」
「資源は有効に使わないとっていう奴か」
「何分資金が足りませんから」
「本当の世紀末には有り余るってのに…その17年前に準備なんてするから」
「事前の準備が大事なんですよ。予測が外れて17年経つ前に隕石が落ちるかもしれないじゃないですか……それにコールドスリープ機能がうまくいっているかを確かめる目的もあります」
「…まあいいけどよ」


……俺達の『夏』がもしも全滅した時の為に「もう1度」『夏』用に赤ん坊を育て直す計画なんじゃないかと思わなくもないが、鉄壁の無表情はそんなことを夢にも思っていないようだ。
ここまで試練を乗り越えてきた奴らだ、俺達の成果だ。
…そうだな、大丈夫だよな。

……さて、動物愛護をしているクラス……特に源五郎…への試験内容をまた練るとするか。




最近は会議の趣向が変わってきている。

職員室の隣、会議室でホワイトボードと机の上に並べた地図やグラフやマッピング等とにらめっこ。
以前は育てる為の会議だったんだがなと思いながらマッピングにまた最終試験のアイディアを書き込む。

これが終わったら明日の嫌がらせ、もとい「注意力」試験の準備を始めることになる。
どうせ対象はあゆが担当する「食材」だから無意味だろうが。

銃をどの程度壊したら暴発するか試す試験だとかどれぐらい変質させたらロープが体重で切れるかの試験だとかは面倒だからもうまっぴらだが、張り合いがないのも退屈だ。

ぎりぎりで登れる奴と登れない奴を分けるのに丁度いい崖とか、絶妙に地下水を探しやすい地盤を探索していた頃が懐かしい。

以前は生徒にも若干の努力猶予だの助言だのを与えていたのに比べて今回はなし、生徒それぞれの17年間の蓄積と素質がものを言う試験。
……だからこそ、これまでよりも容赦のない試験が出来るんだが。

地形、地質、地盤状態、水流、天候、生徒同士の影響、生物の移動しやすい経路、植生エトセトラエトセトラ。

全滅しないように見張る監視カメラに、必要な時以外の教師の隠れ場所、極力目当ての生徒以外に見付からないようにする為の経路、森が燃えた際周囲全てを燃やし尽くさない為の常緑樹や間隙。囮用の村落や廃船や坑道への足止め物資。

まるでダンジョンを作るゲームみたいだと誰か別の教師が言っていたが鼻で笑い飛ばした。
気持ちは分かるがな。

貴士は何故か廃船に色々仕込みたがっているようだった。「どうでもいいが確かそこは俺の待機場所だったよな?巻き込むなよ」と言うと「大丈夫、もし万が一卯浪先生に『何か』あっても守れる仕掛けを作りますから」と返された。碌な事を考えてない様子だ。

「……まあ、楽しみにさせてもらう」

そう言って嗤うと、貴士も笑みを深くした。


俺達は正しい。

だから、生徒達が誤った道を選んだら×を付ける権利がある。
罰を下す権利がある。





隕石か最終試験の巻き添えで死ぬ前に、正しさを残す義務がある。





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最終更新日  2018.01.05 01:03:16
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